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MAGIC MASTER

25竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2011/08/20(土) 15:37:46 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 『クライシス』の中はわいわいと騒がしく盛り上がっていた。
 久しぶりのコウヤの帰還。カンナという新しい仲間の誕生。彼らにとっては家族が帰ってきて、一人増えたような、そういう嬉しさがあるのだと思う。
 コウヤはジンと睨み合って、飲み物に一切手をつけようとしてないし、アランはカウンターで上品そうに一人でワイングラスを傾けている。そのほかにも中年男性が肩を組んで酒を呑んでいたり、男達が何かの議論で熱くなっていたりと、昼と変わらない風景が広がっていた。
 カンナはそんな光景を眺めていた。
 ここが自分の帰る場所で、皆が自分の家族なんだと。
「気に入ってくれた?」
 カンナの横にリリィが座る。
 何だかんだでカンナはリリィとスィーナとは仲良く出来ていた。
 スィーナは奥の部屋で免許を発行しているらしく、今はこの場所にいない。
「うん……騒がしいけど、こういうのもいいかなって」
「でも大変だよ?皆いつものように喧嘩とかするから、たまーに投げられた物が当たったり…」
 そう言った矢先、カコーンとコミカルな音を立ててリリィのつむじに空き缶がぶつけられる。
 ぶつけたと思われる人物は、昼間のコウヤとジンの喧騒を止めた露出高めの長い黒髪の女性だ。
 彼女は酒をビンで飲んでいて、ビンの中を飲み干すと、
「お高く止まってんじゃねーよ。お前だってよく暴れるじゃねぇか。この暴走女」
 ビキッ!!とリリィのこめかみに青筋が浮かぶ。
 リリィは無理矢理に引きつった笑みを浮かべ、
「アンタよりマシだっつーの。何?何なの?何なんですか?いちいち喧嘩腰でしか話せないの、あら可愛そうに」
 
 瞬間、リリィと相手の女がつかみ合いになって女の恐ろしい喧嘩が始まる。

「おうおう、お前だって一緒じゃねーか。いつものように酒呑んで早々に酔いつぶれろっての」
「今日は気分じゃないのよ。つーか私もアンタも未成年しょうが、私は昨日のうちにお酒やめましたー!」
 女特有の陰湿な戦いだ。
 この喧嘩に今まで騒いでいた男達はさらに盛り上がり、姉の怖さにジンはうな垂れる。
 コウヤはいつものことのように飲み物を飲んでいる。
「り、リリィちゃんってこんな怖いの?」
「まあ、リリィちゃんはイヴと仲が悪いからね。コウヤとジン程じゃないけど、たまにああなるのよ」
 スィーナが苦笑いを浮かべて戻ってきた。
 何故かリリィとイヴの戦いから他のところまで喧嘩が移っており『クライシス』内はバトル・ロワイヤル状態となっていた。
「カンナちゃん、免許できたよ。どうぞ」
 カンナはスィーナから免許を受け取る。
 顔写真などはなく、名前と性別と『クライシス』に入った日付が記載されていた。一番下には『ナンバー』が書かれている。これはカンナが何番目に入ったかを表していた。
 カンナは免許をぎゅっと握り締めて、
「ありがとうございます、スィーナさん!!」
「どういたしまして。こっちとしても家族が増えたみたいで嬉しいよ」
 カンナの頭にゴン!!と小さな樽がぶつけられる。
 場が静まり返る。
 カンナは俯き、指をコキコキと鳴らしてから、
「全ッ員ッ!!ぶち殺したらァァ!!」
 拳に氷を纏い、喧嘩の輪に入っていった。
 結局、この喧嘩に参加しなかったのはコウヤとジンとスィーナの三人だけだった。


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