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心の氷、涙の音色。

3神音 光希 ◆ptZpvaYoVY:2011/06/25(土) 12:36:04 HOST:i118-17-46-116.s10.a021.ap.plala.or.jp
「………」

 ゆっくりと目を開ける。あれからどれくらいの時間がたたったのだろう。カイトが私の手を握って寝てしまっている。
ゆっくりとカイトを起こさないようにベッドから降りて部屋の隅にあるピアノの蓋を開ける。私は手を鍵盤におくと「カイトと私が一番好きな曲……別れの曲」と小さく呟き引き始める。
音は軽やかに流れ、きっと城の外にも聞こえているだろう。私はそんなのお構いなしに引く。

「あ……。リ、リアちゃん?」

後ろから名前を呼ばれる。私がピタリ、と手を止め振り向くと眠そうに欠伸をしつつ目をこするカイトがいた。私が振り向くと嬉しそうにほわほわと笑う。

 何かが……心臓がズキズキと痛む。カイトの笑顔を見ると、必ず。これはきっと、醜く歪んだ私の“ココロ”。私の頬にツゥーッと何かがこぼれ落ちた。生暖かい雫がポタポタと落ち、その場にペタン、と座り込む。座っても涙はと止まらず、赤い絨毯に涙が染み込んでいく。カイトは焦ったようにあわわわとして「ちょっ、大丈夫!? リリアちゃん!?」と早口にしゃべり、私と同じ目線になるように座る。普段は見えない左目がチラリと見える。ひんやりとする私の手を握り「大丈夫だよ、リリアちゃん。リリアちゃんには……ボクがいるから、ね」と優しく言う。




 氷の国のお姫様。優しく気高く美しい。それが本来のお姫様。だけど私は違う。平凡なごく普通っぽい少女。水色のワンピース。ピンク色のリボン。気高くもなく優しくもない美しいだけの少女。けれども彼だけは優しくしてくれた。それがカイト。
 カイトのお父様は私のお母様の兄。よく私と遊んでたせいもある。私の一番の理解者であるカイトが、私を裏切ってしまったらー……?
小さくそんな予感がする。明らかに無いと思われる未来。



……私は、ごく、極々普通の少女でいたかった。


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