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desiderio -デジデリオ-

3*椿 優奈*:2011/06/14(火) 01:49:12 HOST:s161.HtokyoFL13.vectant.ne.jp
「おかえり」

 珍しく、そいつは私を受け入れた。
ひとつ屋根の下に住んでいるとはいえ、
会話を交わさない日が何日か続いたりするのも当たり前なのに、
その一言になにか違和感というか、
不信感をすぐに覚えた。

血縁関係があるのに、
私はこいつを日ごろから赤の他人だと思っている。
実家にいた頃から随分と、見た目に加え、
性格もまるで異なると言われてきたものの、
ずっと優等生育ちでのぼってきたこいつは、
今やただの引きこもりだ。
たまに夜、散歩かなんかするみたいで、
玄関先で物音がするが、
最低限の家事は任せているので特に文句などを言う必要もない。
しかし、
時折部屋から彼女のパニックになった悲鳴や鳴き声、
上手くいかなかった彼女自身の現実と私を照らし合わせ、
私に八つ当たりしたり、
罵声を浴びせる様子はどうしても受けつけたくなかったし、
いまだ彼女の部屋や私たちの共有スペースに所狭しと乱雑する、
私が理解するには程遠い物理学書や医学書などの、
数学的な書物の山を思うと、
この家への帰途で浮かない気分になる。
彼女― 私の実の姉は、
ジーパンにTシャツという格好で、
私たちの部屋をはさむリビングのテーブルに腰かけていた。

疑心暗鬼の表情をしていたんだと思う。
姉のマリは首をかしげ、
普通にしていればそこそこな顔立ちなのに、
ぽかんとしながら、まばたきをしてこっちを見つめる。


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