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剣―TURUGI―

276竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2011/12/30(金) 11:15:00 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 藤崎とサソリが戦っているのを、遠くのビルの屋上から双眼鏡で眺める一人の人物がいる。
 髪は短めの白髪で、ハットを被り、スーツを着ている、見た目三十代後半の男だ。
 普通に見れば一般的な男性だが、彼が両手を置き、杖のようにしている一本の刀が『一般的』を潰していた。
 彼も『十二星徒(じゅうにせいと)』の一人。やぎ座の八木という男だ。
 そして不自然な点がもう一つあった。
 藤崎とサソリが戦っているところは雨が降りしきっている。だが、八木のいるところは雨どころか、雨粒の一つも落ちてこない。実に綺麗な夕焼けが見えるだけだ。
「……どうやら、惑っているようですな」
 八木は戦況を見ながら、一人で呟いた。
「私の剣(つるぎ)は、空間を作り出す。貴女にとって、とても不利な空間を作らせていただきましたよ、藤崎さん」
 八木が言うに、今の藤崎とサソリがいるところは、八木の剣(つるぎ)が作り出したこの世に存在しない空間らしい。
 それもそうだ。
 何処の世界に夕方の駅前だというのに、人が一人もいないなんていう駅があるか。
 雨が降り、水が地面に溜まり、湿気が多く火が灯せない無人の駅前。そういう空間を八木は作り出したのだ。
「……これで、天子側の一人は脱落ですね。まったくサソリも、私の力を使わないで勝ってほしいものですが……」

「いいんじゃねェの?仲良さそうで」

 ふと、八木の後ろから声がかけられる。
 そこにいたのは巨大な刀を背に担いだ男、ザンザだ。
 彼の鋭い目つきが、八木を睨んでいるからか、より鋭く感じられる。
「……馬鹿なッ!貴方は今天界にいるはず……!」
「その天界にいる上司から、命令くらったのよ」
 八木の隣にカテリーナが降り立つ。
 そう。エリザが人間界の助っ人として送り込んだのは、ザンザとカテリーナだ。
 ザンザは背中の刀をゆっくりと引き抜きながら、笑みを浮かべている。
「……さァ、覚悟はできるよなァ……?」
「……!」
 ザンザがそのまま刀を八木に向かって振り下ろす。
 剣(つるぎ)を持っている以外は、普通の男である八木は、咄嗟にかわすことも出来ず、刀が迫るのを待つしかなかった。
「うわあああああああああああっ!?」
 しかし、響いたのは切り裂く音ではなく、鈍い打撃音だった。
 ザンザの巨大な刀を利用した広い幅で、八木の頭を叩きつけたのだ。
 八木はそのままぐしゃ、と崩れ落ち、ぴくぴくと僅かに痙攣していた。
 ザンザは八木の首からネックレスを奪い取る。
「これがやぎ座の『守護の証』か」

 一方、藤崎とサソリの戦況にも変化が起きていた。
 雨が止み、地面に溜まっていた水が一瞬にして消えたのだ。
「「ッ!?」」
 そこで、事実を知るサソリだけが辺りを見回し、慌てだす。
(……八木!?あのオッサン、やられやがったッ!?」
「……ふぅん」
 サソリはハッとして振り返る。
 そこには満面の笑みの藤崎がいた。
 ここでお馬鹿なアイドル藤崎恋音は、何か勘違いをした。
 今までのは全て幻覚だ、という平和な勘違いだ。
 振ってた雨は幻覚で。水が溜まっていた地面も幻覚で。相手が出していた水の刃も幻覚で。濡れている服は、まあどうでもいいや。そんな平和な勘違いをして、藤崎は一気に距離を詰める。
 サソリが右腕を突き出し、水の刃を出そうとしたが、
「遅いよッ!!」
 藤崎が下から上に弾き上げるように、強く右腕を弾いた。
 上に腕を上げられ無防備になるサソリの顔に藤崎の刀の峰が直撃する。
 そのまま仰向けに倒れるサソリを見て、藤崎は力強く叫んだ。
「RE-ON!'s Victory!」


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