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係争の異能力者(アビリター)

280ライナー:2012/01/15(日) 17:00:27 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net

 37、一難去ってまた一難

 熱也は、土煙の残る地面に颯爽と着地する。
「おい、辻ー! 大丈夫かー!」
 霧雲のように掛かった土煙に、当てずっぽうに声を上げた。
 すると、その土煙からは影が映し出され、啓助が姿を現す。
「大丈夫なわけねーだろ! コッチは体張って攻撃してんだ、死ぬかと思ったぜ……」
 辺りはゆっくりと土煙が消え、俯せになって倒れた白闇と黒明が現れる。
「クッ……!! 私達が」
「ま、負けるなんて……!」
 双子は、掠れた声を出しながら、息ピッタリで地面に拳を叩き付けていた。
「お前らが何をしているのかは知らねえが、人を傷付けてまですることなら、俺は止める」
 啓助は剣の刀身を鞘に収めながら言う。
「右に同じや」
 啓助に続くように熱也も言った。
「……こうなったら」
「ボス本人に委ねるしか無いね」
 双子の言葉を最後に、双子は土煙に紛れて姿を隠す。そして、土煙が晴れると同時に、その姿は消えていた。
「!?」
 二人は拍子抜けしたように辺りを見回す。しかし、ドーム内には啓助と熱也しか存在していなかった。
 すると、今度は景色が歪み始め、ある時間を境に景色が真っ黒に染まった。黒い景色は暫くして色味を帯び、旅館前の大通りに戻っている。
「戻った……のか」
「いや、ワイにとっては完全にワープ状態なんやけど……」
 それもそのはず、熱也は啓助と共に行動していた訳では無く、別の場所に存在していたのだから。
 にしても、ワープ前とは完全に何か違うものを感じた。

 ―――人が居ない。

 もうすぐ昼時だというのに、ファミレスや食品専門店が多い大通りには人っ子一人存在していないのだ。これはどういう事なのか。啓助には、まだ〈キルブラック〉が関係しているとしか思えなかった。
「ねー、約束のアイス買ってよー。チョコバニラミックスがいいよー」
 麻衣が後ろから啓助の服の袖を掴み、ユサユサと前後に振る。麻衣が無事だったことに気付き、啓助はひとまず安心した。だが、今はチョコバニラミックスのアイスを買っている場合でない。チョコバニラミックスでなくとも、コンビニに行ったところで店員さえも居ないだろう。
「ちょっと待て、今は街の様子がおかしい。……つか、お前右肩大丈夫か?」
 啓助は振り向き麻衣の姿を確かめるが、その右肩は刺し傷と言うほどではないが、擦り傷のように赤く染まっていた。
「だからー、早くアイス……」
 言い掛けて、麻衣の瞳から電源を切ったように光が失われる。そうかと思うと、啓助の服の袖を掴む握力は弱くなり、前のめりに体を倒した。
「お、おい! 大丈夫か!?」
 一見するだけで全く大丈夫とは言えないが、啓助はそう言って麻衣の体を担ぐように持ち上げる。
「ヘッドホン娘やないか!? どないてこんな所に!?」
 話は後だ。啓助は熱也にそう言うと、辺りを忙しなく見回す。
 今の現状は街に人が全く居ない。居るのは啓助、熱也、麻衣の三人だ。すなわち医者さえもいないという事。つまり麻衣の完全な手当は今のところ望めないということだ。擦り傷だけで気絶したとは、到底思えない。
 完全な手当が出来なければ、次に優先順位が来るものは「安静」だ。とにかく麻衣を一番安静な場所に移動させなければならない。
「熱也、悪いがここ周辺を捜索してくれねえか。誰か一人でもいたら心強い」
 恐らく確率的には0に近いだろうが、調べてみなければ分からない。麻衣は旅館の中で安静にさせて、なるべく医療に関係した人物に見て貰えれば最高だ。
 「おう」という返事と同時に、熱也は持ち前の【ファスト】を活かした捜索を始めた。
「参ったな……」
 そう、参った。今、何処で、何が起きているのかサッパリ見当が付かない。いや、啓助自身考えるのが嫌な程困惑状態に陥っているのかもしれなかった。現在分かっているのは、この街から人が消えていると言う事態だ。
「………」
 不穏な空気が啓助の肌を刺激する。
 これから、何か嫌な事が起きる。そんな予感を過ぎらせていた。


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