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係争の異能力者(アビリター)

261ライナー:2011/12/30(金) 17:55:33 HOST:as02-ppp22.osaka.sannet.ne.jp

「お、おい! 何すんだよ、離せ!」
 意外にも力強い麻衣に、啓助は苦戦しながら言う。
「昔々ある所に……」
「そっちの話すじゃねー!! 手を離せ!」
「手が山へ芝刈りに行くと……」
「そっちでもねぇー!! 手がどうやって芝刈りに行くんだよ!?」
 麻衣は啓助の言いたい事が初めから分かっているように見えた。しかし、麻衣自身、自分の聴力が確かであることを証明したいらしい。
 暫らく啓助は引っ張られ続け、ある所で麻衣が足を止めた。
「居たお、バックを持った赤バイク」
 啓助はその言葉をしっかりと耳にして、指の差された方向を見る。
 すると、啓助の目には何事も無かったかのように、赤バイクが信号待ちしている姿が入ってきた。
 犯罪側とはいえ、何故暢気に信号待ちをしているかと言うと、大型車がいくつも列を作って走っていたからだ。それにその大型車は偶然にもガスタンクを背負っている物ばかりだ。これでは飛び出そうにも飛び出せないはずだ。
 チャンス到来と言わんばかりに啓助は、麻衣を走りぬいてバイクに接近する。すると――――
「おーい、そこの赤バイク止まれ〜! 盗んだバック返せー!」
 麻衣がバイクに向かって手を振った。
「(おいッ、馬鹿ッ!)」
 啓助が咄嗟に振り返り、小声で止めようとするが、それはもう遅かった。赤バイクのライダーはその声を察したらしく、車線を変えてUターンする。
 悔し紛れに大きく舌打ちをすると、啓助はそのバイクの後を無謀ながらも追い駆けた。
 様々な通りを右に曲がったり、左に曲がったり、啓助は自分が追われている身だと知りつつもひたすら追い駆ける。
 狭い路地を通り、バイクでは行くことの出来ない塀や屋根の上を跳んで距離を詰めた。
 ユニオンで鍛えたこの体は、バイクと言うハンデをも縮めてくれた。そのことに感謝しつつ、ついにその手がバイクへ触れようとする。
「(もう少し……!)」
 そして、その手が触れようとした瞬間、啓助は手を引っ込めた。

 ―――多車線ある十字路。

「(これが目的か……!)」
 赤いバイクは、交差して見える走行中の自動車の陰になって消えていった。
 この時やっと分かったが、相手のバイクは電磁浮遊を応用した新型のバイク『リニオン』と言うもので、水上でも浅ければ移動できてしまうという優れもの。啓助が到底追い付けるような相手ではなかった。
 そして、ここまで距離が取られては追い付けないだろう、そう察した啓助は追うのを諦め、悔し紛れにアスファルトを蹴り付けた。
「んー? どしたのー?」
 後ろから、麻衣の空気の読めない声が掛かる。
 啓助は、思わずカッとなって後ろを向くが誰も居なかった。
「ツジケはどこに耳が付いてるのらー! うーえー!」
 ポカンとしている啓助に、麻衣の声が届き、何秒か遅れて啓助が首を上げる。
 すると、啓助の見上げる上空には、麻衣が扇をグライダーのように開いて宙を舞っている姿が見えた。
「ッ!? お前……!!」
「アレ? バイクどこ?」
 扇の止め紐に体を括り付けて、麻衣は辺りを見回している。
「(そうだ……!!)」
 その時、啓助の思考回路が電流を帯びるようにフル回転し始めた。
 地はバイクや車が忙しなく走り続け、赤信号が障害物のように立ち塞がっていた。だが、上空ならどうだろうか。ある程度高く飛べば、信号も走行中のバイクや車も関係ない。
「おい、エセ桃太郎! 上から赤バイクを追え! お前の確かな聴力があれば余裕だろ!」
 啓助は言いながら、バイクが走り去った十字路の向こうを指差した。
 麻衣は、やっと自分の聴力を認めてもらって上機嫌なのか、フフンと鼻を鳴らして言った。
「アタシの事は『スーパーマイタン』と呼ぶのら!」
「もう分かったから! 全然、聴力関係無いネーミングだけど分かったから早く行け!」
 啓助の差す指に力が込められる。
「それでは行くのら!」
 上空で上手く扇を仰ぎ、啓助の差す方へと前進する。そして、そのまま啓助の首を両足で掴んだ。
「ゲホッ! 何すんだよエセ桃太郎!」
 啓助は咳き込みながら叫ぶ。
「女の子を1人にしてはいけないのら。それにアタシは『スーパー……」
「もう、いいっての!!」


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