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係争の異能力者(アビリター)

257ライナー:2011/12/24(土) 17:14:52 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net

 頑なに啓助は、心中で勝利を宣言する。
 それは、啓助が投げ遣りになったわけでも、判断が誤ったわけでもない。勝つための策が浮かんだのだ。
「ンナローッ!!」
 大きく声を上げながら、啓助は床を蹴り上げ、風を跳び越えるように躱す。それは接近するごとに回数は増し、跳び越える高さも増していった。
「おおー、随分頑張ったけど、もう躱せないよね〜。{花乱吹(はなふぶき)}!」
 距離はすでに2メートル程に縮まっていた。そして、この状態で相手の攻撃範囲の広い攻撃が来るとなると、躱すことは出来ないだろう。
 素早く回転する扇。前へと踏み込む啓助。
 啓助は剣のリードを利用して、切っ先を向けて―――

 ―――麻衣の扇が傾いた。

「甘いな」
 啓助はそう呟く。
 その一言に、麻衣の動きは大きくぶれた。
「えっ……!」
 床には、氷が張ってあった。
 氷の床に足を滑らせ、それと一緒に傾いた扇は啓助への位置を通り過ぎる。そして、大理石の床に大きく風が吹き付けた。
「ハワワッ!!」
 風による反作用で、麻衣は大きく舞い上がった。
「掛かったなぁっ!」
 啓助の顔に笑みが浮かぶ。これこそが啓助の作戦だったのだ。
 あのような大きめの扇を振るえば、必ず足に体重が掛かる。それなら、そのバランスを氷の床で滑らせ崩せば、相手は攻撃を食い止めることが出来るというわけだ。
 宙に舞い上がった麻衣に向かって、啓助は踏み出す。そして、氷の踏み台を作り出し、それを使って大きく飛び上がった。
「これで終わりだ!」
 啓助が剣に氷を纏わせて、飛び上がりながらそれを振り上げる。まるで大きな氷柱を操るように。
「ッ!」
 と、驚きに声も出ない。しかし、それは啓助のものであった。
 突然、頭を針で刺されるような激痛が走ったのだ。
 歪めるような風は起きていない。しかし、辺りは歪み、暗みを帯びていた。

 限りなく暗い世界。啓助はそんな場所に佇んでいた。
 このような世界は初めてではない。何度かこんな事があった。そして、根拠こそ無いがそれは次第にハッキリとした物になって行く。そんな気がした。
「またか……」
 目で辺りを見回しながら、啓助は呟く。
「いるんだろ!騎士剣とか前に名乗ってた野郎!」
 啓助の言葉に応答するように、暗がりから反響するような声が聞こえた。
「相変わらずのようだな」
「どういう意味だ。いっつも訳の分かんねぇこと言いやがって!」
 啓助の怒りに、声は言った。
「それはお前が気付いていないだけの話。俺は騎士剣、俺は剣と同じ逸材だ」
 相変わらず話がかみ合わない。にしても、相手の言っていることには何か訳がありそうだった。
「まだ気付かないようだな。俺はお前のアビリティ【フリーズ】だ」
 その言葉を耳にした途端、啓助は何も言えなかった。自分を虫食む原因だったのだ。
「お前は……あの人のようには成れない。大人しく俺に呑まれるんだな」
 啓助は言葉を掛けようとする。しかし、その言葉は光に掻き消された。

 目の前に見えるのは、大理石の床、レッドカーペット、そして、倒れるメイド服の少女。
 またもアビリティは暴走していたのだ。
「こんな勝ち、勝ちって言えねぇだろ……」


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