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Purincess*

14ねここ ◆WuiwlRRul.:2011/04/28(木) 19:41:23 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp

     * ゆり *


「ね、ねえ……疑って悪いとは思うんだけどさ、そのお姫様が那月を苦しめてるとかじゃないよね……?」

 リリーちゃんと羽月ちゃんを真剣な表情でじっと見詰め、もしリリーちゃん達が「うん。」という答えを出したらすぐにでも追い出してやろうと思って聞いてみた。すると、暫くの間二人とも無言だったけれど、急にぷくくっ……なんて笑いだして、必死に堪える様子を見せていた。

「あははははは!」

 遂に我慢出来なくなったのか、羽月ちゃんが大きな声で笑い出す。リリーちゃんも、今までの那月への気持ちの悲しい涙ではなく、今は笑い涙を流している。わたしは何が何だか分からなくて、怒鳴ってしまった。

「ちょ、ちょっと! わたしは本気で聞いてるの! そんなに笑うなんて、まるで那月を嫌ってるみたいで酷い! 貴女達も姫の仲間だから、そんな酷く笑ってるの?!」

 また、二人が黙る。これは流石の二人も黙っている。けれど、暫くしたら羽月ちゃんが口を開いた。

「あのさ、あたし達が笑ったのはそんな悪い理由じゃないから落ち着いてよ。あのね、姫様はとっても良い人だよ! で、それを真剣に疑ってるゆりちゃんに笑ってたの。それにさー、疑うなんて、悪いけど酷いのはそっちの方じゃない?」

 羽月ちゃんからトゲのような厳しい言葉をぶつけられる。そんな、酷いのだって分かってる! なんて思っていると、気持ちが抑えられなくなって羽月ちゃんの腕を引っ張って違う部屋に入った。リリーちゃんには待ってて貰うように、手で合図を出して。


     * * *


「あのね! わたしが酷いのは分かってるよ! 疑っちゃ悪いけどってちゃんと言ったでしょ?! 自分で分かってて、悪いって言ってんのにそれをあんなにキツく怒るなんて、貴女の方が全然酷いじゃない!」

 わたしは羽月ちゃん……羽月を指差して怒鳴った。すると、羽月も負けじと言い返す。

「あたしはね、それも怒ってるけど、笑った理由も聞かないで怒鳴ったあんたにイライラしてんの! それにさあ、あんた、那月のこと好きなんでしょ?」

「あっそう! でもあんな真剣なのに態々笑うことないじゃない?! そういう性格なんだろうけど、あたしは明るくて可愛い子ですアピールしててぶりっ子みたい! ていうかぶりっ子でしょ、あんた。それにわたしは那月のことが好きだよ! だから何? そうやって好きな人探るのがあんたの悪趣味かしら?」

「はあ?! あんたの方が全然ぶりっ子じゃない! そしてね!」

 羽月、わたし、羽月の順番で喋り、急にわたしの腕をぐいっと引っ張って顔を近づけてきた。突然のことに吃驚しつつも何を言い出すか待つ。すると、ゆっくりと口を開いた。

「あたしもね、那月が好きなの。キスしたこともあるし、両思いと言っても良いくらいよ? 正直今日の保健室のあんたには妬けたわ。あんなことしてくれるの、あたしにだけだと思ってたもん。だけどさ、ただ妹として可愛がってるだけみたい。残念ね。」

 羽月は驚く事実を述べて部屋を出た。その後、知らずに涙が零れていて、涙の数はどんどん速く、多くなってくる。とりあえず、暫くここに居させてもらうことにした。泣くために……。


   * 那月 *


 姫様からの丁寧な手当てを受け、リリー達がいる部屋に戻ったが、そこにはリリーと羽月しかいなかった。驚いて首を傾げると、羽月が口を開く。

「ゆりは帰っちゃったんじゃない? 那月に伝言頼まれてんだけどさ、「わたしはあんたなんか嫌いだから、もう一緒に登下校しないで! 大嫌い!」だってさー。酷いよね、助けてやったっていうのにー……。」

 これは本当のことなのだろうか……? 疑問を抱えたまま、違う部屋を探すことにしてドアを出ようとすると、ぐいっと羽月に腕を引っ張られ、上目遣いで見詰められる。

「行っちゃやだよ……なつくん。」

 「なつくん」というのは俺の本当のお母さんとお父さんが呼んでいた名前。けれど、1歳でお別れしたから顔は覚えていない。写真さえ、一緒に写らなかったから―――……。それに、いくら仲間の羽月の言葉も今は何だか邪魔に感じる。早く、ゆりに会わなきゃ……! 奴隷として鍛えられた俺の力とは別に、弱々しい羽月の握る力をばっと振り解いてドアを出た。羽月が少し腕を伸ばした気がしたけど、俺には届かない。ゆりに会いたい………!

「あっ………なつ、き……なつきはもお、ゆりのものなの……? ゆりなんか……ゆりなんか、ころしてやるっ……なつきも、あたしのほうをみてくれなきゃ、やだ………!」

 俺の出た部屋の中では、泣き崩れる羽月が呟いていた。それを知らずに、俺は遂にゆりと出会っていた―――……。


     * つづく *


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