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堕天の歌-La canzone ai cieli-

5 ◆REN/KP3zUk:2011/04/23(土) 14:40:50 HOST:i121-116-177-173.s04.a001.ap.plala.or.jp
 小さくため息をついてローザはその場に腰を下ろす。ネーロの同様にローザの横に腰を下ろした。ぼんやりと空を眺めれば思い浮かぶのはサクラーレの子供たちの笑顔だばかりだ。実はこの二人、魔法使いでありながらサクラーレの地で保護され、育てられたのである。それ故に魔法使い側に味方しようとも思わないし、人間の味方をしようとも思わない。永久にサクラーレの民の一員として生き、サクラーレのために力を振い、サクラーレの地で朽ちることを誇りだと思っているのだ。他の魔法使いたちには裏切り者扱いをされてもいるが、別になんとも思わない。自分たちはサクラーレの民だ、とただそれだけを考えていた。
 そんな二人の考えを知ってか、またはただ単に一緒に暮らしてきているのだから当然となっているのか、サクラーレの人々は二人を煙たがったりはしなかった。むしろ暖かく見守り、必要以上にサクラーレの地から外に出したりはしようともしなかった。もちろん今のようにサクラーレの地を守ってもらったりもしているのだが。それでも決して見捨てようとはしないし、必ず近くに先天性型の能力者を配置していつでも助けに行ける状態を作っている。配置される能力者は先天性型の中でも、天空人の血を濃く引くもののことが多く、魔法使い達ともほぼ互角に渡り合ってきた。

 「あー……さっきの叫び声、黒須の坊ちゃんだ。また東郷の嬢ちゃんを怒らせたようだよ」

 自分の肩にとまった小鳥をちょこんと指でつついた後そう言うネーロ。それを聞いたローザは少し首をかしげた後、明るい笑みを浮かべて「あの二人は仲良しさんですから」と言った。なぜ怒らせたという言葉から仲良しにつなげられるのか、ネーロには理解できなかったが普段見ている限り詩織と千秋が仲良しなのは事実なので、フッと笑って頷いておく。戦いが激化していく中、平和なサクラーレの地で生活していると、外の世界でのことがまるで夢のようにも思えてきた。せめてサクラーレの地だけでもこのまま何もないまま進んでいけばいい、二人はそう考える。

 「ねぇ、ネーロ……。なぜ人は争うのですか?」

 ネーロはローザの問いに思わず顔をしかめる。そして小さな声で「私欲のため、守りたい何かがいるから……理由は人によって様々さ」と呟いた。ローザも納得とはいかないものの、小さく頷いて膝を抱える。争いなんて、無駄だ。そう考えても、争いがなくなることはないのだ。小さな規模でも大きな規模でも……。静かに空を見上げればいつの間にか日は暮れかけている。昔は群れを成して飛んでいた鳥達もここ最近は姿を見ることさえない。

 「これから、どうなっちゃうんでしょうね……私達」

 幼き少女の口から、そんな弱音が零れた。ネーロは思う。戦いのない平和な世界へ誘って欲しい、と。

NEXT Story〜始まりの悪夢〜


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