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奏
1
:
エカ
:2011/03/18(金) 14:54:50 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp
小さい頃からたくさんのことを諦めて生きてきた。
周囲から好奇の目に晒され、目立つことを恐れていた。
それでいい。
それでよかったんだ……。
2
:
エカ
:2011/03/18(金) 15:17:25 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp
「ねぇ〜昨日NステにSIKI出てたよね。」
「あぁっ!超かっこよかったぁ〜!!」
前の席で騒がしく昨日の音楽番組について語っているグループをチラリとみて小さくため息をつく。
すでに私が高校に入学してから3日経とうとしていた。
すっかりいくつものグループが出来ており思い思いに朝の一時を過ごしていた。
読んでいた音楽雑誌を鞄にしまい、窓を眺める。
桜は既に散り始め、何ともいえない風情だ。
しかし、私の黄昏は彼女らの声によって崩される。
「SIKIって、keiのソロバンドでしょ?」
「そうそう、Dukeのボーカルのkei…つか、まじヤバいから!」
kei…
その名を朝から聞くなんて……
一気に気分は急降下し、げんなりと嘆いた。
keiは日本を代表するロックバンド“Duke”のボーカル。
バリエーション豊富な妖艶な歌声に哀愁漂うメロディー、そしてkeiの詩によって創作されていく世界…
なんといっても、誰もが魅入るほど美しいkeiの容姿。
それが人気の秘訣だと、人は言う。
すでに誰もが認める地位に上り詰めたDukeは現在はソロ活動中。
結成18年経とうとしているにも関わらず未だに圧倒的な人気を誇る。
しかし、この話題は私にとっては憂鬱だ。
なぜなら…
3
:
エカ
:2011/03/18(金) 15:43:38 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp
「相変わらずスゴいねぇ、花乃のパパは。」
「いつの間に……」
――…そう
keiこと“相沢彗”は私の実の父だ。
そして母親は有名モデルの相沢陽菜乃。
「あぁ〜…あんな美男美女の両親なんて羨ましすぎる。」
「知ってるくせに……私が苦労してきたこと。」
芸能人の両親を持つ私は人知れず様々な苦労をしてきた。
いくら父や母が私のためにプライベートのことに関することを公表していなくても、バレるものはバレる。
現に今までだって何度同級生や先輩にサインをせがまれ、わざとらしくすり寄られたか……
そして何より二人のありもしない噂をゴシップに叩かれる姿をみて何度も傷ついた。
「確かに…花乃が大変だったのはわかってるよ。」
苦笑いをし、私の肩に軽く手を置いた親友、佐々木 椎香
彼女は初等部からの幼なじみでこのクラスでは私の事情を知る唯一の存在。
学年単位なら知ってる人はいるかもしれないが、このクラスでは椎香以外いない。
だから何が何でも隠し通さなきゃならないのだ。目立つことなく、大人しく、地味に……。
しかし…
「わかってくれてるんなら……その右手の紙を仕舞おうか…。」
親友がもたらす苦悩は始まったばかりであった。
4
:
エカ
:2011/03/18(金) 15:50:47 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp
ここで簡単に説明!
初めましてエカと申します♪
今回は芸能人の子供を題材に女子高生の日常を書いてみたいと思いますっ。
*主人公
相沢 花乃(アイザワ カノ)
両親譲りの美少女
無気力で騒がれることを過剰に嫌う。
成績優秀だが運動神経は最悪。
父の影響で10才からギターをやっていたが、今は……?
5
:
エカ
:2011/03/18(金) 16:16:26 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp
私の苦難は新学期そうそう親友の手によってもたらされている……
「えっ!?何のこと…?」
「どうみても、軽音部の入部希望用紙に見えますが?」
お互い一歩も譲らない笑いと気迫……。
ここで負けたらだめだ…っ!
「だって、だって!今3人しかいないし…リードギターは花乃しかいない!」
入学してかれこれ3日間、絶え間なく誘われ続けられている軽音部の勧誘…。
椎香は私と同じ音楽教室に通っていてドラムをやっている。
私は曲を作るとき、そしてソロの時に歌いながらギターを弾いていた父に憧れ、通い始めた。
私達は中学生になると同時に辞め、椎香はいくつかバンドを組んでいた。
私も一緒にやっていたが…
もう今更バンドなんて、する気は無い。
「まだ気にしてんの…あのこと。」
「……椎花には関係無いよ。」
どうせ、楽しめばいいのだと口で言ったって…私は“keiの娘”として見られる。
それは、実力と結果が求められることを意味している。
そんな中でバンドなんて……、音楽を奏でる気になるわけがないのだ。
――ボーかリストの娘なのに歌わないなんだ。
―…あれがkeiの娘?似てるのは容姿だけで、才能まで受け継がなかったかぁ。
ふと私の頭の中で無神経に吐き出された言葉達が駆け巡る。
「とにかく…他探して。」
何か言いかけた椎香を遮るようにチャイムが鳴り、一斉に当たりは静寂へと包まれていった。
6
:
エカ
:2011/03/18(金) 16:57:01 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp
シーンと静まり返っている教室には、必死に古文の解説を続ける先生の声のみ響いていた。
少し茶色が混ざっている肩まで伸ばした黒髪を弄りながら、もう片方の手でノートをとった。
この授業が終われば次は放課後、椎香はまた練習に行くのかなぁと思うと、少し寂しくなった。
最近一緒に帰ることはめっきり減り、違う友人あるいは一人で帰ることが多くなった。
おまけに中等部からヘルプとしてバンドをやってい椎香にはいつの間にかファンがついていた。
確か彼女は背が高く、中性的な顔立ちに明るめな髪色を耳まで短く切った姿はカッコイイと思う。
そして正確に刻まれていくリズム、淡々とどんなテクニックもこなしてしまう姿はそこら辺のバンド少年よりクール。
それ故、今の軽音部はかなり注目されている。
そんな中で私が入部なんかしたら……
無理、絶対無理。
とにかく……提出期限が過ぎるまで何としてでも逃げ切らねば…。
「花乃、何ぼーっとしてんの。」
「えっ!?」
――ガタッ
突然耳元で掛けられたら声に驚き、勢いで席を立ってしまった。
一斉に視線は私に集まり、あまりの恥ずかしさに俯きそのまま静かに腰を下ろした。
「い、いきなり話しかけないでよっ!」
「ごめんごめん。」
謝罪の気持ちなどまったくない笑みにイラッとしながら鞄にペンケースを詰める。
「ねぇ、今日うちら演奏するんだけど見にきてくれない?」
「はぁ…?」
「見にくるだけでいいからっ!お願い、ねっ?」
両手をパンッと合わせ頼み込んでくる姿に思わず警戒心が高まっていく。
「本当に見に行くだけでいいの?」
「うんっ!当たり前じゃん。」
(まぁ聞きにいくだけなら…。)
わかった…と気のない返事と同時に、椎香は私の手を掴み走り出す。
「よしっ、そうと決まったらレッゴー!!」
「ちょ、早いって。」
引きずられながら第2音楽室に向かう姿はあまりにも滑稽で、誰にも気づかれないよう私は顔を緩めた。
7
:
エカ
:2011/03/18(金) 18:46:37 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp
「みんなぁ〜!連れてきたよ!」
「ハァ、…だから早いってば!」
椎香が全力疾走で私を引っ張ってきたおかげて、すっかりダウンしてしまった……。
体力の差を考えろっ!
「…だ、大丈夫ですか?」
その声にふと見上げれば、ふわふわの柔らかそうな髪をした美少女が、私にタオルを差し出してくれた。
「ありがとう…。」
タオルを受け取ると、ふわふわ美少女は「いぇ…」と声を洩らし、さっさと何処かへ行ってしまった。
というか、焦り過ぎてコードに足引っ掛けて転びそうになってるし…
嫌われたかなぁ……。
「あぁ〜気にしないで、あの子かなりの人見知りでねぇ…。」
「でも、お姫様って感じだね。」
「……普段はねぇ。」
意味深な言葉に若干引っかかるが……。
「あの子もメンバー?」
「うん、芝姫きらら。ボーカル担当」
えぇっ!あのおしとやかな美少女がっ!?
「嘘!?…だって椎香がやってるのはロック…「…ごめん、遅れた。」」
お約束のように言葉を重ねるなぁぁあー!!
次から次へと……。
「よっ〜!瑞希。」
「今日は随分早いね…あれ?その子…」
瑞希と呼ばれた人はポニーテールを揺らしながらケースを置いきながら、私に視線を向けた。
「初めてまして、椎香と幼なじみの相沢花乃です。」
「初めまして、ベース担当の沢田瑞希、よろしくね。」
人当たりなよさそうな人だなぁ…。
なんか、直感的にこの人が部長って感じがする。
「椎香から話は聞いてるよ、今日は見学に来てくれたの?」
「うん、一応…他の人は?」
もう部活も始まっていいはずなのに…まだ3人しか集まってないなんて…
「だからー!うちら3人しかいないんだって。」
「そ、…それってまずいんじゃ?」
3人って…廃部になるんじゃないの?
「大丈夫、ちゃんと部活として認められてるから。」
「そうなんだ…。」
沢田さんはいつの間にやらベースを取り出しすでに準備を進めながら説明してくれた。
話を聞く、同好会として活動を認められているが部費はあまりもらえないらしい…。
しっかりしてるなぁ。
この部で確実に頼りになるのは沢田さんをだね…。
「ほら、きららも早く準備して。チューニング終わった?」
「う、うん…。」
「うわっ、びっくりした…。」
芝姫さん、いつ私の背後にいらしたんですか…
着々と準備が進んでいく中進行の確認、軽い打ち合わせをしている姿が妙に楽しそうだった。
まだみんか3日しかたってないのに、なんでこんなにまとまってるんだろう…。
いいなぁ……。
(って、羨ましがってる場合じゃないから…。)
何考えてるんだろ…、私。
「花乃ー、準備出来たからそこの椅子に座って。」
「分かった…。」
さっきまでの騒がしかった音楽室が嘘のような静まり、それぞれ真剣な顔つきになった。
「ワン、ツー、スリッー!」
――…椎香のかけ声とそれにあわせてスティックを叩く音により、全ては始まった。
8
:
エカ
:2011/03/18(金) 19:02:03 HOST:proxyag065.docomo.ne.jp
誤字
聞く→聞くと
みんか、3日→みんな、3日
9
:
エカ
:2011/03/18(金) 19:40:01 HOST:proxyag065.docomo.ne.jp
(この曲、あの有名な……。)
芝姫さんのギターで始まり、しっかりとリズムがとられているドラム、そして沢田さんの正確にリズムキープされつつ変則的なベース……。
ギターはリズムのみだが、自らのボーカルを邪魔せずしっかりと絡んでいる。
何より、芝姫さんの高音域でのビブラートは最高…。
鳥肌が立ってしまった。
演奏された曲は最近話題のあのバンドの曲。
みんなの知っている曲だからこんなにすぐ、一つになったのだろうか。
……いや、違う。
多分これは…、
「どうだった?」
椎香は、スポーツドリンクを一気に飲み干し、ペットボトルを机に置き訊ねた。
沢田さんは穏やかな表情を崩さす私に笑いかけ、芝姫さんは俯きながら上目遣いぢ見つめてくる。
何、この威圧感は……。
「すごかったよ、何より…とても3日であこまで息ピッタリに合わせられるなんて。」
「ふふ…、私たちも初めてセッションした時吃驚したの。」
一度のセッションで手応えを感じるとき確かにはある。
「もうみんな完成してるって感じだね。」
この言葉にピシリと空気は氷り、一斉にに私へと視線が集中する。
「あのさぁ、聞いて分かったと思うけど…うちらには確実にもう一人ギターが必要なんだよね。」
確かにね…。
芝姫さんは歌うのに精一杯って感じだった。
「だから私達、相沢さんに入部してもらいたいの。」
「わ、…わたしからもお願い……。」
なんとも断りづらい状況……。
「でも…私、そんなに上手くないし…。」
それに、またあんな思いをするのはもう嫌…。
「花乃、あたしね…初めてきちんとバンドやりたいって思ったんだよね。」
珍しく神妙な雰囲気を出す椎香に戸惑い、目を伏せた。
椎香は実力はあるものの、入って合わないと思ったらすぐ抜けていた。
そんな彼女がここまで何かを感じ、そして真剣なのは初めてではないだろうか。
「完成するには花乃が必要なんだよ…いずれは自分達のオリジナル曲作りたい」
「だから、私じゃなくても…」
すると沢田さんは何処からかMDを出し、真剣な瞳で私を見る。
「このMDにはね、相沢さんの昔作った曲のデモが入ってるの。」
「はぁ…って、なんですとっ!?」
いや、確かに昔いろんな曲を暇つぶしに作っていたけど…、
椎香…あとで締める。
「これ聞いて私達、相沢さんにギターやってもらいたいと思ったの。」
隣にいた芝姫さんも頷く。
もう…なんなの。
「じゃあ…、明日セッションしてみて……それから考えさせてください。」
言ってしまった……。
10
:
エカ
:2011/03/18(金) 20:13:12 HOST:proxyag065.docomo.ne.jp
「はぁ〜…。」
疲れた…精神的に。
結局あれから、明日のセッションで全てが決まることになった。
この無駄な期待感はなんだろう…
そっとギターをケースから出し、軽く弦を弾いた。
バンドは組んでいなくても、毎日のように触れてはいろんな曲を弾いていた。
ギターを弾くのは嫌いじゃない、むしろ好きだ。
父さんの膝に座りながら、よくいろんな曲を弾いてもらったっけ。
歌を一緒に口ずさんでくれて、優しい父さんが好きだった。
けれど、ステージではガラリと変わってメンバーと激しい音を奏で、ファンと共に一体感を作り出していく。
そんな父さんが格好良くて、憧れて…。
私もいつか、絶対父さんみたいになりたいって思っていた。
求めれば求めるほど音の世界は広がり、終わりが見えない。
それが心地良くて、…
きっと様々な曲と合わせて一つの音を奏でられたら…どんなに楽しいだろうか。
「もう〜わかんないっ!」
……父さんは、どう思うんだろ。
こんな私を…。
11
:
夢
:2011/07/30(土) 19:06:29 HOST:proxyag034.docomo.ne.jp
すごくおもしろかったです♪
続きが気になりますが…もういませんか?
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