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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜

83霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/01/07(土) 18:59:03 HOST:i114-183-46-33.s04.a001.ap.plala.or.jp
終章 嗤う悪魔

 よたよたと、湊が一つの教室に足を踏み入れる。中では蓮が窓際の机の一つに座ってぼんやりと空を眺めていた。窓から注ぐ、優しい光に照らされていて……その光景に思わず湊は息を飲む。綺麗だ、思わずそう考えてしまった自分に頬を引っ張った。相手は男だ正気に戻れ、なんて呟いているとうちに蓮が湊に顔だけを向けた。何処かぼんやりとした瞳は湊を捉えて動かない。やがて湊の制服にべったりとついている、血を見てほんの少しだけ驚いたような顔をする。首をかしげて、自分の制服を確認して湊は顔を顰めた。
 静かに湊の方へと身体を向ける蓮は、しばらく何かを考えるような動作を見せる。そしてしばらくの沈黙の後に「まぁ、楓も死んだんだな。抱きしめでもしたのか? まぁどうでもいいけど」なんていう風に言って笑った。その言い方にムッとして蓮を睨みつける湊。どうでもいい、その言葉に腹が立って一気に蓮の詰め寄って、胸倉を掴む。蓮は驚く素振りも見せずに小さく笑う。

 「悪いな。生憎、人が死にすぎてて感覚が麻痺してんだよ。不思議と悲しくもねぇし、なんとも思わないんだ。薄情な奴だろ?」

 湊に掴まれたまま蓮は笑う。何処か儚くて、今にも壊れてしまいそうな弱々しい笑み。それを見て思わず顔を逸らした。胸倉を掴んでいたその手は、力が抜けたようで……ダランと垂れた。どうしていいか分からない。今、何をするのが正解なのか、何をするのが間違いなのか……全く検討がつかなかった。誰がこんなことをしているのか、何のために、そんな考えがグルグルと頭をめぐる。闇が? 第三者が? 光を潰すため? それとも湊を殺すため……? 浮かんでは消える言葉に湊は黙って近くにあった机を蹴る。
 ふと蓮の表情が消えた。深く息を吐いて、立ち上がる。少し乱暴に湊の頭を撫でて、様子を伺っているようだった。訳が分からないというような表情をして、蓮を見あげる。それを見て蓮は言葉を紡ぐ。

 「そっちの生徒会を殺す前にこっちの主戦力はやられたぜ? 宣戦布告したまではいいが月華は“アイツ”に殺されたし、刹も死にかけた所に紅零が留め刺すし……紅零は俺がとっ捕まえて寝てもらってるけどな。まったく、駒は大切にしろってんだ」

 腕を組んで蓮が言う。何を言っているのか訳が分からないというような表情をして、ただただ蓮を見つめる湊と、表情の消えた顔に再び笑みを浮かべる蓮。その光景は何処か異質で……。そっと窓に手を置いて外を眺め始める蓮を見て、湊は寂しそうだと思う。感覚が麻痺してるだの、悲しくないだの、そう言ってるくせに本当は悲しいんじゃないだろうか? そう考えて湊は苦笑いを浮べる。自分がそんな憶測をしたところで何も変わらないのだから。

 「さて、約束だしヒントをやろうか。物語を変えるためのヒントを」
 「そうだ!!」

 突然、湊が声を上げた。ビクッと肩を揺らして、戸惑ったような表情をする蓮に向かって湊は、笑った。明るいとはいえない引きつった笑み。訳が分からないというように首をかしげて湊を見つめる蓮は何処か不安そうに見えた。信用してくれてもいいのになぁ、なんて考えながら湊はポケットから小さなナイフを取り出した。蓮の目の前でナイフをチラつかせて見ると、心底呆れたようなため息と表情が帰ってくる。
 深く息を吐いて湊は頷いた。成功するかは分からないが、何もやらないよりはマシだ。自分の中でそう結論付ける。手首にナイフを近づけると蓮は相変わらず呆れたような表情のまま腕を組んでいた。もしかして、自殺するとでも思われているんじゃないだろうか、なんて考えて湊は笑う。一度ナイフを手首から離すと、蓮は黙って首をかしげた。どうした? とでも問いかけてくるような表情。

 「蓮は僕の能力を知っているでしょう? 僕の能力で結末をひっくり返してしまえばいいんですよ。バッドエンドをハッピーエンドに……って具合にね」
 「無理だな。鍵が揃っていない今、俺たちは受け入れることしか出来ない」

_________________________
終章に見えな終章の開始((


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