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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜

71霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/11/21(月) 22:58:25 HOST:i121-115-42-103.s04.a001.ap.plala.or.jp
 それを合図として、真っ白な光線が放たれる。悲鳴にも似た声を上げながらも優希はどうにかそれを打ち消す。刹の口元に浮かぶ歪んだ笑みを見て、ギリッと歯軋りをして、右手を振り上げた。歪む空間と不規則な形をした欠片が刹に向かって飛ぶ。飛び交う破片は容赦なく刹を切りつけて……。挙句の果てには攻撃を放った張本人である優希まで切りつけている。攻撃を仕掛けた本人が血を流して顔をしかめているのは少々滑稽な光景であった。仕舞いには二人揃ってフラフラ。
 刹を攻撃していたはずなのになぜ自分まで、そう考えて優希は深くため息をつく。再び風斬り音。ぽたぽたと血を垂らしながら連続して刹は刀を振るう。振るわれる刀は金属の光とはまた違った怪しい光が尾を引いていき……。まるで血を望み、誘うかのようにその光が揺らいで、辺りに溶け込んで。気合を入れるためか否か優希は短く息を吐き、ただただまっすぐと刹を睨みつける。沈黙。涼しげに嗤う刹と、何処か悲しげに、それでも鋭く刹を睨みつける優希。
 妙な緊張感と、快感。なぜか張り詰めたその空気が心地よくて、優希は首をかしげた。自分はついに可笑しくなってしまったのだろうか、と。
 そんな事お構いなしに、二人の間を金の光線が引き裂く。思わず目を閉じてしまうほどに眩い光。一瞬たじろいだ後、刹は「蓮! 余計なことはするな」なんて声を荒げて言う。物陰から出てきた蓮は気だるげに「へいへい」と返事を返して、欠伸を一つ。なんとも緊張感に欠ける存在であったが、その腕の中にはつい先ほどまで床に転がっていた湊がいて、優希は思わず息を飲む。

 「んじゃ、俺はこの障害物を撤去して帰りますよっと」

 そう言って、軽々と湊を持ち上げて蓮は歩き出す。一体なんだったんだと呟く刹の表情は、明らかに不愉快そうなものに変化していた。せっかく面白くなってきたのに邪魔しやがって、とでも言うかのように。対して優希は湊が連れて行かれたことに焦りを感じていた。目の前で起こったことなのに、何もすることが出来なかった、と唇をかんで……。きつく握った拳は小刻みに震えていた。
 再び横一線。鈍い光が目の前を過ぎる。思わず仰け反る優希に向けて刹は冷たく「余計なこと考えてると殺しちゃうよ?」と言い放つ。まずは目の前の敵か、そう考えてため息をつけば、黙って拳銃を刹に向けた。当たるとは微塵も思っていないが、威嚇ぐらいにはなるだろうと考えての行動である。しかし刹は楽しげに笑って刀を構えた。腕や横っ腹から流れる血は無視して、ただただ目の前にいる優希を殺すために。

 「一つ、聞いていいか?」

 恐る恐る優希が口を開く。お預けを食らって少々不服そうにしながらも刹は「一つだけね」と言って言葉を促す。早く切りかかりたいと言う衝動を押さえ込んでいるかのようにしきりに、早くしろと言う刹に優希は思わず笑みを零した。刀とあふれ出る殺気さえなければ可愛いやつなのに、そんな風に考えて優希は笑う。

 「お前は何で光を嫌う?」

 優希の問いに刹は首をかしげる。何分かりきったことを聞いているのだろうかとでも言いたげな表情で、ジッと優希を見つめる。そしてはっきりとした声で「お姉様が光を嫌うから。後は単純に湊が嫌い。それに味方する奴も。だから僕としては湊を殺せれば満足かもね」と言った。それを聞いて半ば呆れたような表情をしながらも「なぜ湊が嫌いなんだ?」と優希は問いかける。そうすれば刹は「一つだけって言ったじゃん」と笑うのだった。


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