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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜

59霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/08/21(日) 21:28:42 HOST:i121-114-184-49.s04.a001.ap.plala.or.jp
 張り裂けんばかりの歓声。ついに始まった体育祭を喜ぶ声、拒否する声……。湊は薄い笑みを浮かべて生徒達を見る。闇も光もこうなると大差ないものだ、そんなことを考えて声を漏らして笑う。優希が気持ち悪いものを見るかのような目で見てきたのを無視して生徒会メンバーに声を掛けた。全員が全員笑ってそれに答える。それは明るい楽しげな光景。
 紅零はそんな光景冷ややかな目で見つめた後、周りの生徒会メンバーに声を掛ける。光の生徒会の明るい笑顔に対して、闇の生徒会メンバーが浮かべたのは暗い歪んだ笑み。光に照らされることで出来る影のように暗くて冷ややかなもの。

 「じゃあ、基本ルールの説明をするぞ。チームは光一般チーム、光生徒会チーム、闇一般チーム、闇生徒会チームだ。能力の使用については自由だ。ただし相手の命を奪うようなことになったら失格。これは毎年の事だから分かっているな? 最終的にポイントが高いチームの優勝だから特に一般チームは頑張れよ」

 ルールー説明をしていくのは妙に良いガタイの体育教師。どうせ毎年変わらないんだからルール説明なんてせずにさっさと始めろよとぼやく生徒をよそに教師は淡々とルール説明を進めていく。退屈そうにする生徒と、真剣に聞く生徒、その違いは単純に元から学園にいる生徒か、どこかから新しく来た生徒かだけである。能力の使用は自由と聞いて怯えたような表情で顔を見合わせるのも新しく来た生徒。そんな事もう慣れっこな他の生徒たちは談笑を始めていた。無論生徒会メンバーも同じである。この学園の人間は安全基準が狂っているのだろうか、そんな風に新しく来た生徒たちは首をかしげた。
 ルール説明を終えた体育教師は満足げに頷いて本部席に戻っていく。すかさずにアナウンスで一番最初の競技の説明が入る。それを聞いた刹は本を置いて席を立つ。湊もメンバーの応援を受けながら席を立つ。横目で立ち上がった刹を見て少々嫌そうな顔をする。大して刹はと言えば湊が立ったことに気づきながらも何も言わずさっさと待機場所へと向かった。始めの競技は短距離走だ。もっとも安全な競技で、もっとも地味な競技だと保護者達の間ではちょっとした噂になっていたりするが、やる側としては危険すぎるのでご遠慮したい競技の一つとなっている。と言うか生徒達の共通認識は死にはしないが全競技等しく危険、と言うものだった。

 「刹、さん。お互い頑張りましょうね!」

 極めて明るい笑みを浮かべながら湊が刹に声を掛けた。刹は心底不愉快そうに振り向いた後「随分余裕ですね。まぁいいですけど。負けませんから」と冷たく声で吐き捨てるかのようにそう言う。やっぱりかなんていう風に呟いて湊はため息をつく。そんなのお構いなしに刹はさっさと歩いて行ってしまう。湊が待機場所にたどり着く頃には審判の教師と談笑を繰り広げていた。自然とその周りには闇の生徒が、少し離れた位置に光の生徒が固まっている。小さく頷いた後「ま、こんなもんですよね」と呟くのは湊だった。そんな湊の腰の辺りを叩いたのはアズラエル。明るい笑顔で「頑張りましょうなの」とだけ言って初等部の輪に戻っていった。
 しばらく様子を眺めてクスリと湊は笑う。光が刹を中心とした闇から離れているのは怖がっているからだと思ったが実際はそんな事はないようだった。真剣に勝つためにどんなタイミングで能力を使えばいいのかだとか、流れ弾を味方に当てないためにはだとかそんなことを話し合っているだけ。その話し合いが終わったら湊の周りに集まるもの、闇の回りだろうが関係なしに楽しげに走り回って遊ぶもの、笑顔で闇の数名に話しかけるものと色々な生徒がいた。そして多くは闇を恐れることなく好き勝手に待ち時間をすごしたり、闇の生徒に話しかけたりちょっかいを出したりしていた。刹はそれを見て不愉快そうな表情をしたが、他の闇の生徒も話しかけられるがままに話したり、ちょっかいを出されたら微笑ましい程度でやり返したりと案外平和的な様子。何だ自分が考えていたほどに自体は悪化していないんじゃないか、そう考えてほっと胸を撫で下ろした。


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