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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜

58霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/08/20(土) 01:39:26 HOST:i121-114-184-49.s04.a001.ap.plala.or.jp
 そんなピリピリした空気を和らげるように、明るい一般生徒達の声が聞こえてくる。次々と現れては割り振られた席へと座っていく。そんな一般生徒を眺め、刹が僅かに顔をしかめて、視線を別の位置へと移動させる。桜梨はそんな刹の頭を軽く撫でて、辺りを見渡す。刹が少々不満げに見あげてくるがそこは無視だ。相手にして長引くと体力の無駄になるしそんなことを考えて、懐かしい行事の前の雰囲気を楽しむ。それとは対照的に蓮はずっと無表情で、地面を見つめていた。その顔はどこか青白く、不健康なもの。しかし全員が全員行事のほうへと興味が行っている訳で誰も蓮のことを気に留めたりはしなかった。
 一般生徒の席を見て桜梨が小さな声で「俺もあっちに座る予定だったんだよなぁ」と呟いた。実は生き返った上に色々な生徒会のどたばたに巻き込まれた桜梨は、いつの間にか闇高等部生徒会会長推薦情報処理に押し込まれていたのである。桜梨からしてみれば傍迷惑な話だが、月華が桜梨が少しでも蓮を見張りやすいようにと考えて行ったことと知り、大人しく生徒会入りの話を受けることにした。実際、桜梨から見れば蓮は見張ってないと何をやらかす分からない、幼い子供のようなものだった。過保護だな自分、そんな風に考えて桜梨は一人苦笑いを浮かべる。
 生徒達が楽しげに談笑する中、一人だけ異質な雰囲気を纏った女が現れた。地面につきそうな長さの三つ編みにされた金髪。どこかぼんやりとした右が紫色、左がの薄い青の瞳に、黒縁の眼鏡。服装は真夏の暑い中にもかかわらず胸元に紫のリボンのついた黒の長い上着に、薄紫のグラデーションのかかったワンピースを着ていた。手に持っているのは分厚い本と妙に大きな鍵で、異質を倍増させていた。……そんな彼女はこの聖鈴学園の理事長である。生徒でも名前を知っているものはいないと言われるのだから胡散臭さもあるのだが。

 「面倒……」

 本部席にたどり着いた彼女はそう呟いて席に座る。その様子を眺めていた月華は「相変わらずの格好だよねぇ」なんていう風に呟いて蓮に口をふさがれていた。蓮の動作も少し遅かったような気もするが、そんな風に桜梨は考えて呆れたような表情を浮かべる。刹はと言えばのんびりと本を読んでいるし、紅零は刹の読んでいる本を横から覗き込んで納得したように何度か頷いている。悠斗は欠伸をしながら一番日光の当たらない位置に陣取ってぼんやりと考え事をしている様子。どうやらこのメンバー誰一人として“体育祭”と言う行事に微塵も興味を示していないようだ。
 対照的に風雅のいる光生徒会はやる気満々と言った感じである。風雅は準備体操を念入りに行っているし、優希は優希で軽い準備を行っている。湊と羽音はその二人につられるかのように準備運動を始めていた。憐、涼の二人はストレッチをしていた。楓だけは日陰でのんびりとしているがそれは仕方がないことなのであろう。基本的に風雅と初等部の二人につられているような感じではあるのだが。ちなみに優希の場合はやるのならば負けたくないなんて言っている。

 「馬鹿みたいですね」

 小さくそう呟いたのは刹だった。流れる体育祭開始のアナウンスと、理事長からの長ったらしい言葉、張り切る奴ら、全てが刹にとってくだらないもののように見えた。紅零に今日だけは余計なことをするなと釘を刺されているため、大人しくしているだけで、それがなければ既に数人を殴り飛ばしていただろう。そう考えて刹は鼻で笑った。何を分かりきったことをとでも言うかのような感じだ。それを見て僅かに首をかしげたのは桜梨だ。良く分からないままぽんぽんと刹の頭を撫でてやる。うーっと声をあげながら刹を見て明るく笑ってやると、いかにもバツが悪そうに顔を逸らされた。一度自分が死んだときのことを引きずっているのだろう、そう考えて桜梨は一人頷くことにする。


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