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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜

44霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/07/11(月) 21:46:02 HOST:i121-114-188-23.s04.a001.ap.plala.or.jp
番外 悪夢の日 紺の欠片 (語り部:霧月蓮)

 俺、霧月 蓮には双子の片割れがいた。なぜ過去形なのかと尋ねられれば、その片割れは死んでしまったから、と答えるしかないだろう。……正しく言うと殺してしまったに限りなく近いのだが。その片割れの名前は霧月 桜梨。数分の違いで同じ日に生まれながらも俺の姉となることになった、俺の大事な片割れ。俺の双子だと言うには少々出来すぎた子で、よく劣等感を感じたのを今でも鮮明に思い出すことが出来た。そのくせ、桜梨は負けず嫌いで、何かと俺に勝負を仕掛けてきた。能力勝負や、朝食の早食い、どっちがもてるのか……そんなくだらないことを比べあって、大げさなぐらいに悔しがったり、喜んだりして……。
 そんな彼女、桜梨の能力は、“剥奪能力”。ありとあらゆるものを奪い取る能力だ。一時期俺はその能力のおかげで自分の能力をうまいことコントロールしていたことがある。いや俺がやったことじゃないのだからコントロールしてもらっていた、が正しいのだろうか? まぁそんな事はどうでもいい。問題は自分で自分の能力の弱さを知らず、能力を制御できないくせに無謀にも勝手な動きをしたことなのだ。俺がそんなことをしなければ桜梨は死ななかった。そう、俺があの時素直に桜梨の言うことを聞いて、動いていれば……。

                        *
 その日は満月だった。雲一つ無い晴天で、俺や桜梨、楓、紅零、刹、湊、優希をはじめとしたメンバーで寮を抜け出して星を眺めていんだ。流れ星を見るたびに声を上げて、笑って。星座を探して指差しては星座の本を持ってきていた優希に違う、って言われたり。その頃は光、闇なんて区別は無かった気がする。湊だろうが優希だろうが、今“光”として俺達と対立しているようなやつらとも、気が合えば遊んでいた。特に湊とは古い付き合いで、気づいた頃には一緒にいて当然みたいなそんな感じの中になっていた。一種の家族みたいなものだ、と俺は考えている。
 とにかく、ある出来事が起こるまで俺達は飛びっきり仲が良かった。もっとも俺はそのときから反抗的な態度をとることが多かったのだが。それでも遊びを壊そうなんて無粋な真似はしなかったし、なんだかんだ言って俺も楽しんでいた。そんなときに、だ。桜梨がフッと周りを見渡して「変な気配がするな」なんていう風に呟いた。優希もそれには気づいていたみたいで、小さく頷いていた。どうせ動物かなんかなんだろう、そう考えた俺はなんでもないって笑って、刹と二人で見に行ってくるなんて言ってみんなから離れた。桜梨が勝手な行動をしないで動物だとは限らないのだからまとまって動け、何事にも慎重に行動しろ、って言うのを聞かないで、刹の手をさっさと引いて歩いた。
 気配をたどり、たどり着いた寮の廊下。そこでみたのは無数の肉片だった。寮の壁は真っ赤に染まって、気分が悪くなるようなむっとした空気の中に鉄臭い血の臭いが充満していたんだ。訳が分からなくなって、それでも怯える刹を抱きしめながら、奥へと進む。奥へと進むほど壁にこびりつく血は新しいものへと変化していって、転がっているのも肉片ではなくて“動かない人間”が多くなっていた。その時、後ろから急に足音が聞こえて、慌てて振り返れば心配したというような表情をした紅零が立っていた。震えた声で「わ、私の能力なら役に立つかもしれないでしょ?」って言って、俺の服の裾をつかんだ。

 「ははは、特殊科なんていうから恐れてたけどさ、雑魚ばっかだよなぁ? つまんねぇ」

 そのときに聞いた下劣な笑い声を俺はまだ忘れていない。そのときの俺は感情のコントロールが妙に下手で、一度火がつくと抑えられなくなってしまって……。気づけば紅零と刹に口を押さえられていた。今は声を出したら殺される、って紅零は能力を使って俺に伝えてくれた。ふいに目の前には高等部ぐらいの男子生徒と女子生徒のグループが姿を現すのが見えた。隠れようにも場所が無くて、気づけば俺ら三人、凄い速さで走り始めていた。三人だと勝てないかもしれない、そう思って当初トップクラスの力を誇っていた桜梨、湊、楓に早く合流しようと、ただただ走った。


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