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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜

23霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/06/07(火) 21:36:32 HOST:i118-21-90-39.s04.a001.ap.plala.or.jp
 フッと校舎に入ったところで蓮は足を止めた。遠くから聞こえてくる悲鳴、罵声、嘆き。時計を見ればちょうど十九時を回ったところ。なるほど光狩りの時間かと小さく頷いて、また足を進める。光狩りというのは闇が一日に一度行う光を“消す”作業のことである。日によって時間は変わるがそう言えば今日は十九時からだったなと蓮は連絡班からの伝言を思い出して、頬を掻いた。蓮はこれでも実質闇のトップに立つ五人……闇高等部生徒会の副会長である。ここで行動を起さないのも内で敵を増やす原因になるのだろうか、そう考えて気が乗らないながら、コートのポケットから銀のナイフを取り出す。
 目の前を横切ったのは、黒い翼を持った銀髪の少年。あいつで良いか、そう考えてナイフを少年に向けて投げつける。少年ははっとしたように振り返って、ナイフを片手でつかむ。その制服は闇を示す漆黒のもの。涙目になりながらも「酷いですねー副バ会長ぉー僕ですよぉー悠斗(ユウト)ですよぉ」手で掴んだナイフを床へと放り投げ、僅かに頬を膨らませながら言う少年。フッと少年の姿が赤茶の髪を一本で束ね、気だるげな緋色の瞳をもつ小さな子供に変化する。彼の名前は小早川 悠斗(コバヤカワ ユウト)、身長百三十四センチメートルとかなり小柄だが一応は高等部生徒会書記に任命された高校生である。

 「なんだ……変化していたなら分かりやすくしろ。見たことない奴だから光だと思っただろうが」

 全く顔色を変えずに蓮はそういう。どうせ刺さったところで死なないんだろうとでも言いたげな表情で悠斗を睨みつける。悠斗のほうも悠斗でニコニコと笑って中指を立てて蓮を挑発。そんな安っぽい挑発には乗らなかったものの、フードの奥ではすっかり表情をゆがめている蓮。……どうやらこの二人は犬猿の中らしい。
 闇は基本的に内部での争いは禁止されている。単純に闇全体での敵は光であり、力を向けるべきは光に対してだと実質的リーダー、高等部生徒会長の月乃が示したためである。そのおかげもあってか闇の内部での打ち合いは少なかった。全くない、とはいえ無いが少なくても光の最下層に比べればうんと少なかった。もっとも不満を持つものは月乃を初めとする生徒会メンバーに歯向かったりもする。しかし多くの場合それは一瞬で鎮圧されてしまい、見せしめと称されて嬲り殺されていく。恐怖政治でしかないようにも思えるがコレも効果あり……。
 しかし蓮と悠斗は例外であった。顔を合わせるたびに喧嘩、同じ光を追ってぶつかっては喧嘩……生徒会の仕事の最中でも喧嘩、もはや月乃公認の喧嘩仲間へと化している。さらに言ってしまえばこの二人の場合は普通の能力者や魔法使い、一般人とは身体のつくりが違うので簡単に死ぬことはない。それも月乃に勝手にやっていろと言われる要因の一つだった。

 「しっかし最近は過激ですねぇー。このままだと“全面戦争”が起きてしまいそうですぅー」

 にっこりと、言ってる言葉にはそぐわない笑みを蓮へとむける悠斗。蓮は深くため息をついて「高度予知能力を持つお前が言うと洒落にならんから止めておけ。つか喋り方ウゼェよ」なんて言うように軽く言葉を返した。先ほど自分が言った学園が戦火に飲まれるという言葉と悠斗の言葉が重なれば完全に顔を顰めた。蓮と悠斗の言葉が近いものだったときの多くは予想を超えることが多い。高度の予知をもつ悠斗とありとあらゆる精霊、生物から情報を得られる蓮がいうことなのだ、ほぼ間違いはないと言ってもいいだろう。
 
 「まぁ、戦火に飲まれるだろうさ。そう遠くないうちに、“あの日”より醜い戦火に」

 小さな、それでもやけに聞こえる声で蓮は言った。悠斗は久しぶりに意見が一致したというように満面の笑みを浮かべて手を叩いた。それを見て蓮は小さく舌打ちをして顔を逸らした。悠斗と意見があっても嬉しくなんかないというように。それと同時に蓮は思う。紅零や、刹をはじめとする“あの日”からの仲間だけはどんな手を使っても、どれだけ自分の手を使っても守ると……。それは闇に染まった、一人の少年の覚悟……。

NEXT Story〜第三章 聖鈴学園〜

一部言葉が足りないところがありましたので修正。後々見直していくとおかしいところが沢山ありますね……。


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