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4
:
季兎
:2011/02/24(木) 01:04:15 HOST:p26073-ipngn601marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp
窓際の一番後ろの席で、彼女は外を眺めながら憂鬱そうに何十回目かのため息をついた。
人形のような端正な顔を気難しげに歪めて機嫌の悪そうな表情をしている彼女の周りには、なぜか人っ子一人すらいない。
教室自体には生徒たちがそれぞれの席や思い思いの場所で雑談をしたり悪ふざけをしたり何かの作業をしたりととても賑やかではあるが、その彼女の周りだけは誰もいない。というより、近づけるような雰囲気ではなかった。
ただ、一人を除いては。
「悠里?」
「……」
「……全く、いい加減機嫌を直したらどうだ?」
「……だって」
外を眺めたまま此方には視線を合わせずただぽつりとそれだけ云う彼女に、どうしたものかと悠斗は呆れたように息を吐いた。
「何だ? 何が気に入らないんだ」
「だって……私、この世界に来る前はこんな事になるなんて聞いてなかったもの」
「……」
「よりにもよって……こんな面倒くさい所に通わなくちゃならないなんて」
小さな子供が拗ねているような口調でそう云いながら、ますます眉間の皺を濃くした。彼女は人が沢山いる場所が嫌いなのだ。
なので池袋に居る間の住まいは都心から少し離れた静かな住宅街にある小さなマンションを見つけてそこでひっそりと暮らそうと思っていたのだが――
仕事上池袋には暫く滞在する事になるし、その間家に籠もりっきりではさすがに近所の人や町の人達に怪しまれる。彼はそれを危惧して仕方なく急遽適当に近場の高校に入学してそこに通う事にした。
学校側に入学を決めさせる際少々不正な方法を使ってしまったが、それも此処で仕事をしていくためだと彼は全ての事を割りきった。そうして、彼らはこの学校に転入する形になり、それからまだ1週間も経つか経たないかなのだが―――それだけでも、彼女は既に限界を迎えているようだった。
この学校は、どちらかというと治安は良い方だが完全に秩序が保たれているというわけでもなかった。クラスの生徒も喋り声が五月蠅い人が多く、まるで子供みたいに馬鹿騒ぎする生徒が殆どで。
それを統治する立場であるはずの教師も大半が放任主義、だからこの学校は毎日と云っていいほど騒がしかった。
だから、悠里はこの学校が嫌いで嫌いで仕方なかった。第一印象から既に毛嫌いしていたようだが、日が進むにつれて嫌悪感はどんどん増していく一方だ。
今も、休み時間のこの騒がしい空間に身を置いているだけで物凄く苛々しているようで、彼女はしかめっ面でずっと窓の外を見ていた。まるで早く解放されたいと願うかのように。……というより、実際願っているんだと思うが。
「百歩譲って学校に通うのだけならまだよかったけど、環境が悪すぎるわ。こんな五月蠅い場所に何十日も通わないといけないなんて、とても耐えられない」
「あんまり大きな声でそういう事云うなよ、誰かに聞こえるぞ。……とにかく、今はこれも仕事の内として割り切るしかない。僕だって我慢してるんだから悠里も少しは我慢しろよ」
「……でも、」
悠斗の宥めるような言葉に、尚も悠里は気難しげな表情を崩す事は無い。
それを見かねて更に言葉を紡ごうと口を開くが、それは突然の横からの言葉によって遮られた。
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