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ストレンジ

3ドウミ・モンド:2011/01/14(金) 17:59:37 HOST:ksechttp146.sec.nifty.com
「何のことだよ」
少年が痛みに少し目を潤ませて、その、赤色の瞳で女を睨み返した。女はその態度が気に入らなかったようだ。鼻をつまんでいた手で少年の首をつかむと、信じられない力で持ち上げた。
「ここの花や草はねぇ、全て私の姉さんが苦労して種を手に入れて、そして私が育てたものなのよ。あんたみたいなお馬鹿が踏みつけちゃいけないわけ。おわかり?」
「ああ、すごく」
少年は首をつかまれているはずなのに、少しも苦しそうなそぶりを見せなかった。それどころか、見下した視線を女に向け続けている。
それが更に女を怒らせたらしい。女は冷たい微笑を浮かべると、ぎりぎりと少年を握っている手の力を強め始めた。
「・・・・・・くっ」
少し苦しそうな顔をする少年。
「謝りなさい。三つ数えてあげるわ。・・・・・1・・・・・」
少年がにやりと笑うのを、老人は見逃さなかった。
女は少年の三倍くらいの背丈。そしておそらくは魔女。少年が人間であれば勝ち目はない。だが、普通の人間だったら魔女を挑発するようなことはしない。
では何か。
「・・・・・2・・・・・・」
少年は、女の、首をつかんでいるほうの手を片手でつかんだ。
「・・・・・ギャアアアアアアアアアアア!」
魔女が恐ろしい悲鳴をあげ、少年を離そうと腕を振り回すが、少年のほうが離れようとしない。。その弾みで日傘を取り落とした。
女の手からは煙が上がっていた。少年の触ったところから出たようだ。
「熱い!は、離せ・・・この・・・!」
女が平手打ちを繰り出すべく構えた。少年はその瞬間を見逃さず女の手から離れる。女の平手打ちはむなしく宙を舞った。
「さてと、一応聞くけど、やさしく殺して欲しい?それともその逆?」
女はきっとにらみつけた。
「この程度の程度の魔法が使えるからって・・・・・・・・いい気になるんじゃないよ!この悪がきぃぃぃ!」
女が落ちていた日傘を持ってくるくる回すと、風が吹き出した。ただの風じゃない、ねっとりとしたつめたい風だ。老人の衣の袖が、パタパタと揺れる。
「さぁ、おしまいだよ。あんたはここの肥料になるんだ」
女は高らかに笑った。どうやら怒りの沸点をとうに超え、妙なところまで行ってしまったらしい。
「へぇ、やるんだ・・・」
少年は仁王立ちのまま微笑した。女はそれを見て、きっと口を結ぶ。
「なめるんじゃないよ。あたしはルクトゥーア三姉妹の末女、カスタネーダだよ!」
女がそう怒鳴りつけたとき、少年は素早く右手の人差し指を女に向け、小さな火球をうった。火球はものすごい速さで女に飛んでいく。
地を揺るがすような大爆発が起こった。
耳を劈くような音と、真っ赤な火柱が上がる。
「・・・やりすぎだのう。これ、ぼうや、やめなさいな。この女人だって生きているんだ」
かなり大きめの声で言ったが、少年は耳を貸さない。火柱は尚も上がり続けていた。
「いたしかたあるまい・・・。ほれ、ぼうや、君にこのお金をあげよう。少しだが、足しになるじゃろうて」
少年が少しだけこちらを見た。だが、火柱はとまらない。
「ふむむ・・・なんだったら今日泊まる宿も紹介してやるぞ。『上下山亭』というところじゃ。わしの名前を挙げれば、ただで泊まらせてくれるじゃろ」
いつの間にか少年は老人の目の前に立っていた。子供らしい、無邪気な笑顔を嘘っぽく浮かべて、老人の手にある何枚かの銀貨を強引に掴み取る。
「ありがとう、おじいちゃん。それで、あんたの名前は?」
老人はうんこらせと立ち上がると、白くにごった青い瞳で少年をまじまじと見た。
みかけは十いくつだろう。だが、それにしてはすさまじい魔力を持っている。
「・・・で?あんたの名前は?」
「おお、そうじゃった、そうじゃった。わしの名前はバーキスじゃよ」
少年はまたも嘘っぽい笑いを浮かべ、「ありがと」というと足早に去っていった。
火柱は消え、バーキスはゆっくりときからはなれる。


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