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○。やっぱりさ、運命には逆らえないんだよ ○。

25 ◆jZgVcLWus2:2011/12/28(水) 21:33:56 HOST:i114-181-39-43.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



in子供部屋

 「はッくしゅっ……ズルッ」
 「大丈夫?」
 あぁ、馬鹿は風邪ひかないって本当なのかもしれない。
 あの一回以来秋はくしゃみも咳も全くない。それに比べてあたしは…
 「んー…平気。」
 人の心配しといて自分の事を疎かになるとは情けなさすぎる。
 「そう? 有彩って意外と体弱いんだよね。」
 苦笑しながら秋はそんな事を言う。
 「そこまでじゃない。休み明けで身体が鈍ってただけだし。」
 確かにこの時期は毎年風邪をひくけど、それはお正月という生活リズムが崩れる行事があるからで…
 「そっか。というか鼻かみなよ。」
 秋がティッシュを差し出しながら言う。あたしはそれを取って鼻をかむ。
 「ありがと。…この部屋寒い。」
 少し身震いしながら呟く。そういえば今年は正月も明けたというのにカーペットも無ければヒーターも無い。
 確かにエアコンの暖房は点いているけども寒い。
 「じゃあ、下行こう? ここよりはあったかいよ。こたつもあるし。」
 「うん、そうしようか。」
 秋の意見に賛成してあたし達は下へ向かった。

in居間

 ドアを開けると温かな風があたし達を包みこんだ。廊下がひんやりと冷たく寒かったのもあって居間がとても温かく感じられた。
 「有彩、宿題やろうと思うんだけど…。」
 「うん? それで?」
 「分からないところ、教えて欲しいんだ。」
 あたしはにっこりと微笑む。
 「そっか。分かった、全部答え教えればいいんだね?」
 「…それ、何か酷くない?」
 「ううん、全然酷くないよ。」
 秋が不満そうな表情をして言う。それに対しあたしは微笑んだまま返す。
 「有彩って…変なところで笑顔になるよね。」
 「そう? 普通に優しいお姉さんのつもりなんだけど?」
 「いや、優しいお姉さんだったら一つ一つ教えてくれるものでしょ。」
 分かってないなーという様子で秋がペラペラと話しだす。こうなると15分は平気で喋ってる。
 「全部答え教えたんじゃ意味無いんだよ。分かってくれた?」
 「あーはいはい…分かったから。というか教えてもらう側の人が15分も延々と説教じみたこと言わないでよ。」
 呆れたようにあたしがそう言うと秋は溜息をついた。
 「15分も話してるのに分かってくれないんだね…。」
 いきなり涙目になると秋は言った。この泣き虫があ!!と怒鳴りたいところだが、まぁここは抑えることにする。
 「分かってる。だからさ、早くこたつ入ろうよ。また洟が垂れてきたんだよね。」
 「ごめん…。こたつにも入らずに寒かったよね。現に俺も寒いし。」
 あたしと秋はこたつに入る。近くにあったティッシュを取り鼻をかむ。
 「さ、何処を教えればいいの?」 
 こうしてあたしと秋の勉強会(宿題編)が始まったのである。



続く――

26 ◆jZgVcLWus2:2012/01/01(日) 23:10:10 HOST:softbank219183155041.bbtec.net
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



in子供部屋

 「はッくしゅっ……ズルッ」
 「大丈夫?」
 家に帰ると有彩はくしゃみをたくさんした。やっぱり俺のせいで風邪をひいたんだ。
 「んー…平気。」
 有彩の返事はちょっと頼りない感じだった。
 「そう? 有彩って意外と体弱いんだよね。」
 「そこまでじゃない。休み明けで身体が鈍ってただけだし。」
 明らかに言い訳にしか聞こえない。でも、毎年この時期だからそれもあるのかもしれないと思った。
 「そっか。というか鼻かみなよ。」
 ティッシュを差し出すと有彩はそれを取って鼻をかんだ。
 「ありがと。…この部屋寒い。」
 寒そうにしている有彩は少し震えているようだった。確かに寒い。
 「じゃあ、下行こう? ここよりはあったかいよ。こたつもあるし。」
 「うん、そうしようか。」
 俺の意見に有彩はすぐ賛成して下に行くことになった。

in居間

 ドアが開くと温かな風が俺達を包みこんだ。廊下がひんやりと冷たく寒かったのもあって居間がとても温かく感じられた。
 「有彩、宿題やろうと思うんだけど…。」
 「うん? それで?」
 「分からないところ、教えて欲しいんだ。」
 有彩と一緒に宿題をするなんていつ振りだろう? そんなことを思っているとふいに有彩はにっこりと笑った。
 「そっか。分かった、全部答え教えればいいんだね?」
 その言葉に少しイラッとする。全部教えるということは全部俺が分からないということになる。
 「…それ、何か酷くない?」
 「ううん、全然酷くないよ。」
 未だ笑みを浮かべたままの有彩に向かって俺は言う。
 「有彩って…変なところで笑顔になるよね。」
 「そう? 普通に優しいお姉さんのつもりなんだけど?」
 すると有彩はわざとらしい口調で言う。
 「いや、優しいお姉さんだったら一つ一つ教えてくれるものでしょ。全部答え教えたんじゃ意味無いんだよ。分かってくれた?」
 一生懸命話したつもりだったが、有彩は全然聞いていてくれなかったようだった。
 「あーはいはい…分かったから。というか教えてもらう側の人が15分も延々と説教じみたこと言わないでよ。」
 俺は溜息をついてしまう。
 「15分も話してるのに分かってくれないんだね…。」
 有彩には分かってもらえないのだと思うと急に悲しくなった。
 「分かってる。だからさ、早くこたつ入ろうよ。また洟が垂れてきたんだよね。」
 有彩にいわれてはっとする。そういえば有彩は風邪気味だったのだ。なのに15分も立ったまま話を聞いていてくれたんだ。
 「ごめん…。こたつにも入らずに寒かったよね。現に俺も寒いし。」
 俺は謝りありさとこたつに入る。有彩が鼻をかんだ。
 「さ、何処を教えればいいの?」 
 こうして俺と有彩との勉強会(宿題編)は始まった。



続く――

27 ◆jZgVcLWus2:2012/01/05(木) 20:01:48 HOST:i114-185-54-207.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



 …あたし達、姉弟なんだよね。ほんと疑いたくなる。
 顔も性格も全く似てない。いや、それ以上に…同じ中3でなぜここまで学力に差が出来るんだ?!
 「あー…だから此処はこうだって。ほんと理数系+英語できないんだねぇ?」
 あたしは笑みを顔に張り付けたまま秋の宿題の面倒を見ている。
 そう、宿題を見るだけ。なのに…っ!
 「ねぇ秋、なんで此処に中1の教科書を広げなきゃいけないのかなぁ?」
 「しょ、しょうがな良いじゃん…分かんないんだから。」
 秋は、中学に入ってからの勉強内容が頭に残ってない。
 それはもう確信に近かった。秋の馬鹿さ加減がそれを認めざるを得なくさせるから。
 「…あと、質問。何で数学やってる時に国語と社会開く?」
 秋が国語と社会が好きで得意なのは知っている。
 でも、なんで今それに触れる必要があろうか? 秋の大っ嫌いな数学をやっている時に。
 「好きなものも一緒にやった方が効率的かと思って。」
 などとわけ分からんことをぬかす。もう、救いようがない…
 「要するに、飽きたんでしょ。はっきり言いなさよ。」
 溜息をつきながら秋を見る。
 「うん。でも、付き合って貰っといて"飽きた"って言うのはちょっと…」
 おずおずとした様子で言う。そういう所が嫌い。
 なんではっきりしゃっきり出来ないのか?
 もっと自分に自信を持てばいいのにと何度も思ってしまう。
 「まぁいいわ。今のままで、高校いけずに困るのは秋だから。」
 こればかりはあたしには何にも出来ない。
 高校に合格するかどうかは秋次第。
 あたしはただ受かるかどうかも分からない秋に合わせて高校受けるだけ。
 秋には出来る限り勉強教えるけど、やる気がないならそこでおしまい。
 「……有彩は俺と一緒の高校行きたい?」
 秋があたしの様子を窺いながら聞いて来る。
 「そうじゃなかったら同じ高校なんて受けないけど?」
 あたしはそう言って立ち上がる。
 「有彩?」
 「なんか疲れたから寝る。頭痛いし。」
 「え…大丈夫なの?」 
 全く、秋は心配性だ。まぁ、それが良いとこでもあるんだろうけど。
 「あーあ、大丈夫じゃないかも。誰かさんのせいで無駄に頭使ったし。」
 「ご、ごめん。」
 「別に秋のせいなんて言って無いじゃん。」
 素直に謝れる秋が羨ましい。でも、冗談通じないのは…微妙。
 「とにかく寝るから。お母さん帰ってきたら寝てるって言っといて。」
 「うん。分かった。」
 「あ、余計なことは言うんじゃないからね?」 
 秋はコクリと頷いた。あたしはそのまま部屋に戻ってベッドに横になった。
 今思うと、今日1日が本当に長く感じられた。



続く――

28 ◆jZgVcLWus2:2012/01/07(土) 20:05:26 HOST:i58-93-118-220.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



 「あー…だから此処はこうだって。ほんと理数系+英語できないんだねぇ?」
 有彩が怖い。それは俺の本能の叫びだった。にっこりと笑ったまま、宿題を教えてくれている有彩。
 さっきからずっとこの顔。もう、怒ってるんだか呆れてるんだか…分からない。
 「ねぇ秋、なんで此処に中1の教科書を広げなきゃいけないのかなぁ?」
 もう、分からないんだからしょうがないとしか言いようがない。
 「しょ、しょうがな良いじゃん…分かんないんだから。」
 数学なんて嫌だ。どうして算数だけじゃいけないんだろう? 算数だったら分かるのに。
 「…あと、質問。何で数学やってる時に国語と社会開く?」
 数学に飽きると他の教科がやりたくなる。多分誰だってそうだ。これは俺だけじゃない!!
 でも、そんな事有彩に向かって言えるわけもなく…咄嗟に思いついた言い訳を言う。
 「好きなものも一緒にやった方が効率的かと思って。」
 「要するに、飽きたんでしょ。はっきり言いなさよ。」
 有彩が呆れたように溜息をついた。口下手な俺に呆れたのか、それとも馬鹿な俺に呆れたのか。…多分その両方だ。
 「うん。でも、付き合って貰っといて"飽きた"って言うのはちょっと…」
 これは本心。しかし、はっきりとは言えない。俺は臆病者。
 「まぁいいわ。今のままで、高校いけずに困るのは秋だから。」
 やっぱり、自分のことは自分でやらなきゃいけない。いくら有彩でも俺が高校に受かるようにするのは無理だ。
 俺がもう少しやる気を出せれば有彩にだって勉強を教えるくらいのことは出来る。
 「……有彩は俺と一緒の高校行きたい?」
 「そうじゃなかったら同じ高校なんて受けないけど?」
 その言葉が嬉しかった。もう少し頑張ってみようと思った。有彩ばかりではなく自分の力で。
 有彩が立ち上がったので声を掛ける。
 「有彩?」
 「なんか疲れたから寝る。頭痛いし。」
 「え…大丈夫なの?」 
 頭が痛いと聞いて咄嗟に出た言葉。いつも大丈夫かと聞いてしまうけれど、やはり心配性だとか思われているのだろうか?
 「あーあ、大丈夫じゃないかも。誰かさんのせいで無駄に頭使ったし。」
 「ご、ごめん。」
 「別に秋のせいなんて言って無いじゃん。とにかく寝るから。お母さん帰ってきたら寝てるって言っといて。」
 今の場合、誰かさんて言われたら俺以外に当てはまる人なんかいないじゃないか…。
 「うん。分かった。」
 「あ、余計なことは言うんじゃないからね?」 
 一応頷いておく。でも、有彩はどうした?と聞かれたら答えてしまう気がする。
 有彩が居間を出ていくのを見てから残りの数学の宿題にとりかかった。
 「有彩、自分の宿題もちゃんとやってたんだ。」
 さっきまで全然気付かなかった。自分の事でいっぱいいっぱいだった。だけど、有彩は違う。
 俺は、2年と数カ月分、有彩と違う。その分だけ有彩が先に行ってしまった。
 俺が有彩に追い付くには、有彩よりも早くかつスピードを落とさずに行かなければならない。
 それはきっと考えてるよりも何十倍も何百倍も大変で辛いんだ。
 今まで、俺は大変なことは後回しにしてきた。あとで辛くなると分かっていても…。
 今日は特別な日。有彩の気持ちを聞いた、大切な日。自分の気持ちを伝えた、記念日。
 今日からは変わろう。今ままでと違う俺になる。もう逃げない。正面から立ち向かう。
 もう、自分で自分を臆病者だと言わない為に、思わない為に。



続く――

29 ◆jZgVcLWus2:2012/01/22(日) 20:08:26 HOST:i114-185-55-174.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



in子供部屋

 気付いたらもう朝だった。まさか本当にお母さんが来ないとは…ちょっと計算外だった。
 秋の事だからどうせ余計なこと言って秋以上に心配症のお母さんが来ると思っていたのだが…。
 まぁ、いいか。ゆっくり眠れたし。
 「秋…相変わらずだなぁ。」
 こんな寒いというのに布団から手足が飛び出てる。一体どう寝たらこうなるのか…?
 そんな事を考えながら布団の中に手足を入れてやる。普通だったら目を覚ましても良さげだが、秋はこんなんじゃ絶対目を覚まさない。
 洗面所へ行き身支度をする。
 「有彩ー、秋を起こして来い。」
 朝から大きな声出さなくても…もう少ししたらそっち行くのになぁ。
 お父さんは気紛れだから仕方ないかと思いつつ子供部屋へと向かう。
 「秋ー朝だよ、起きな。」
 言いながら秋を揺さぶる。でも、起きる気配はない…。
 「しょうがない、今日もお目覚めの一発いきますか。」
 息を吸って勢い良く――

 ゴンッ

 「…っ」
 「おはよ、秋。」
 秋は額をおさえながら寝ぼけ眼であたしを見る。
 「おはよ…有彩。」
 秋の声の調子が沈んでる気がする。気のせいかもしれないが聞いてみた。
 「何か不満でも?」
 「別に。」
 何故か秋はそう言って布団に潜ってしまった。何がいけなかったのか、あたしには分からない。
 「…秋?」
 「何?」
 返事はすぐに返ってくる。でもこれは明らかに拗ねてる。一か八か言ってみるか。
 「秋、おはようのキスはないの?」
 返事がない。図星か…多分秋が不機嫌なのは昨日のあれがあったのにいつもと変わらず頭突きで起こされたからだろう。
 「…あるよ。」
 その言葉を聞いたと思うと同時に秋の顔が目の前にあった。
 「秋、怒ってる?」
 唇が触れ合う。それはほんの少しの時間だった。
 「怒ってない、今はね。でも、明日からはもうあんな起こし方はしないで欲しいな。」
 「それは構わないけど、起きれるの?」
 少しの沈黙があった。
 「有彩が苦しくなるまでしてくれたら絶対起きれるよ。」
 秋が笑った。冗談で言ったのか、それとも本気で言ったのか、笑いで分からなくなってしまった。
 「…あのさ、それってこっちも苦しくない?」
 「まぁ…その辺は上手くやってよ。お姉ちゃんなんだからさ。」
 秋は簡単に言うけど、そんなのどうすればいいのか分からない。
 キスだって、生まれてから秋としかした事ない。親を除けば。
 こんな時ばっかりお姉ちゃんなんだからって片付けるのはずるいんじゃないかな?
 「有彩?」
 「じゃあ、練習させて…?」



続く――


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