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短いお話の集い
15
:
雷都
◆U5wL/uVL5k
:2010/11/22(月) 18:24:51 HOST:p5169-ipbfp05niho.hiroshima.ocn.ne.jp
5, 【人それぞれの好き】 (※BL)
あの子はきっと、知らない。
知らないからこそ出来るんだと思った。
――僕の前で微笑むなんて。
僕は、微笑む相手を見て驚くした出来なかった。
人の微笑みを間近で見たのは初めてだった。
――駄目だな、早く逃げて。
言葉にならない思いを必死に告げる。
僕に近づいたら駄目だと、僕の前で微笑まないでと。
あの子は気づかない。
平気で僕の前で微笑むんだ。
――早く逃げて、僕が可笑しくなる前に。
僕は可笑しいんだ。
あの子が微笑んでいる。
止まらない、止められない。
「早く逃げて……」
やっと出た言葉にあの子はキョトンとする。
「どうして逃げるの?」
良いから、早く。
早く何処かに行ってよ。
僕の目の前にもう現れないでよ。
――好きなんだ、男の子なのに。
「ねえ、どうして?」
「……僕が好きだから」
「…………?」
突然言った僕の言葉に首を傾げるあの子。
「好きって、何が……」
そう言いかけて、あの子は僕の唇に自分の唇を当てた。
「あぁ、こう言う好き?」
ニコッと笑ってそう言う。
――どうして?
「な、何で……」
「簡単だよ、俺もずっと大好きだから」
嘘だと思ったけど、あの子の目は本当だった。
嘘の目ではなかった。
「……僕も、ずっと好き」
――人それぞれの好き。
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