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鳥籠の中の雪兎は
70
:
雪音
◆mzHXeB1fFY
:2011/03/24(木) 19:30:07 HOST:119-231-145-157f1.shg1.eonet.ne.jp
【遊女に恋】#3*end ※間接的にGL注意/舞台が遊郭なので苦手な方は注意
それから、俺はその遊郭に行かなくなった。
小鳥遊の顔を思い浮かべるだけで全ての景色が美しく見える、遊郭への道にも足を運ばなくなった。
愛してる、愛してる、愛してる。ただただ1人で言葉になりきれない声で愛をずっと呟いている。口の中がなんだか塩っぽい。そうか、涙が口の中へ伝っていったのか。小鳥遊に殴られてからちゃんと物事を考えたのはそれが初めてだった。
ずっと吐き気がする。何度か吐いた。小鳥遊が愛しすぎて、その愛情をぶつける所がなくて、俺の体内で爆発したんだ。
もう小鳥遊に会うつもりはない。
でも、会わなければいけない気がした。
小鳥遊の傍に行かなければいけない気がした。
フラフラと水分も栄養分もない体とは裏腹に、何故かむしょうに小鳥遊の元へ行きたがる心。
今行かなければ、今愛さなければ、今一緒に逃げなければ。
俺は小鳥遊のいる、慣れた遊郭に約一ヶ月振りほどに体を向かわせた。
――――
籠を使うのも忘れて、果てしなく遠い道のりを走っていった。
ようやく辿りついたその遊郭は、今日も変わらず毒々しくも煌びやかな場所――の、はずだった。
地獄絵図。
それが最もふさわしい言葉。
飛び散った大量の血、全壊したかつては美しかった建物、ごろんと転がる死体、誰のか分からない片腕、誰のか分からない片足。来るたびに聞こえていた女の甲高い嬉しそうな声はもう聞こえない。聞こえるのは苦しそうな俺の耳をつく沢山の悲鳴だけ。
あの煌びやかで華やかな遊郭が、全て血の赤に塗り替えられている。 この赤には見覚えがある。この赤は、
「……旦那」
小鳥遊の瞳の色だ。
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