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鳥籠の中の雪兎は
69
:
雪音
◆mzHXeB1fFY
:2011/03/23(水) 23:04:50 HOST:119-230-104-204f1.shg1.eonet.ne.jp
【遊女に恋】※間接的にGL注意/舞台が遊郭なので苦手な方は注意 #2
「俺と一緒に遊郭から逃げてくれないか」
それは、本当に唐突な一言。
いつも通り小鳥遊を指名して、いつも通り小鳥遊が嬉しそうに俺の元へ来た所で何の前ぶれもなく言った。
小鳥遊は予想通り、目を見開いて瞬きも忘れてる。
そして幾分か時間が過ぎた後、少し震える唇をゆっくり動かした。
「だ、旦那……わっちは……」
大丈夫、絶対に一緒にきてくれる。
俺の中には自信、いや確信があった。小鳥遊は俺に惚れてる筈。惚れてるんだ。確かにあの時聞いたのだから。
小鳥遊の愛らしい口から零れる言葉は分かっている。
「ついていく」であると。
「旦那、わっちは……」
「ついていけやせん」
落ちた。
自分の中で、何かが音を立てて落ちたのが聞こえた。
俺の顔は期待で満ち溢れてた時のままの表情で固まってしまっている。
その引きつった阿保みたいな表情のまま、恐る恐る尋ねる。
「なん、で……?」
小鳥遊は辛そうに目を伏せる。
俺が小鳥遊、と一声追い詰めるように言うと、小鳥遊はゆっくり目線を上げた。
「旦那の気持ちは嬉しいでありんすぇ。 でありんすが、わっちには此処から離れらりんせん理由がありんす」
その言葉は俺の体を貫いた。
俺より、こんな、薄汚れた、遊郭が、?
その気持ちはいつのまにか口からも出ていたようで、小鳥遊は今度はすこしキツい視線を俺に送る。
「こなたの際なんで言いんす。……わっちは女人の身でありながら、1人の遊女に惚れてしまいんした」
「誰に?」
俺は言葉のちゃんと飲み込む前にほぼ反射的に聞き返した。
小鳥遊の言った言葉の意味は、女が女に恋をした、という事なのに。
「蝶蘭でありんす」
『旦那と蝶蘭は似てるでありんすねぇ。そんな優しい所に惹かれたのかもしれんせん』
ああ。
そうかそうかそうかそうか。
『惹かれた』は、俺じゃなくて蝶蘭だったのか。
「なんで……」
「彼女は、わっちの痛みも醜さも全て受け入れてくれりんす。だからでありんしょうか……」
それで今まで茫然とただ目の前の状況を静かに受け入れていた俺にカッと火がついた。
そんな蝶蘭なんて薄汚いただの遊女より何度も小鳥遊と会っている俺の方が小鳥遊をずっと知っているというのに!
「何で! その蝶蘭とかいう遊女はこないだ仲良くなっただけなんだろう!」
「でありんすが……」
「俺の方がずっと小鳥遊を知っている! 愛している! 幸せにできる!」
「旦那…………」
俺の口はまだ止まらない。
ここまで愛する小鳥遊に対して怒りをぶつけた事はないだろう。
小鳥遊は哀れんだ目で俺を見ている。
「大体そんなどこの男とやったかも分からない薄汚い遊女なんて――――
パンッと乾いた音がした。
今まで何を言っても何をしても優しく許してくれた小鳥遊が俺を殴ったのだ。
「――――申し訳ありんせん。何があっても蝶蘭の事は悪くいわないでくださんし」
怒りがこもった右手とは裏腹に、表情は悲しげだった。今までで見た小鳥遊の中で最も悲しそうな表情で、最も激しい表情だった。
(本当に、蝶蘭を愛しているんだ――――)
「……申し訳、ありんせん……蝶蘭を誰よりも愛しているでありんす故」
やり場のない小鳥遊への愛情があまりにあまり、吐き気がした。
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