[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
メール
| |
鳥籠の中の雪兎は
6
:
雪音
◆mzHXeB1fFY
:2010/10/17(日) 02:45:50 HOST:119-231-166-186f1.shg1.eonet.ne.jp
[遊女の恋] /GL注意/舞台は遊郭となりますので苦手な方は注意
「また来て頂戴ね、旦那!」
自分の甘ったるい、いかにも猫を被った声に吐き気を覚えた。
顔だけは作り慣れた完璧は笑顔だが、群青色の瞳だけは氷のような冷たさを持っていた。その瞳で馬鹿みたいに鼻の下を伸ばして帰っていく男を睨むように見送る。
この声、笑顔、仕草、もう何千何万回とやってきただろうか。嘘のモノだったはずなのに、作りすぎて本当のモノにならないか怖くて、女は血の色の口紅が塗りたくられた唇を噛み締めた。
「あんさんも、今終わりんしたか」
ふいに、声が聞こえた。低くて響きがある女性の声だ。
男に声をかけられる事は慣れているが、女に声をかけられるのは久方振りなので、一瞬空耳だろうと思った。だが、その思考が働く前に反射的に振り返った目線の先にいるのは、確かに女性だった。端麗な顔立ちで独特の雰囲気を持つ女性である。
自身の体を商売道具とするこの遊郭では、男は客でしかないし、女は売り物でしかない。だとすれば、目の前に現れた女性も遊女。群青色の瞳の女と同じなのだろう。
「あんたもかい?」
数秒後、先程男にかけていたような甘い声とは間逆の、低くて冷たい声で言った。その問い返した質問には、さっき自身にされた質問への肯定の意味も含まれている。此処、遊郭では、今終わった? などの質問は日常茶飯事で、もう挨拶代わりのようなものである。
女性は女に聞き返されると緩やかに、艶のある黒髪にささるかんざしをシャリンと鈴のような音を鳴らしながら頷いた。
「ええ、さっきので今日の最終でありんすぇ。 あんさんもではないでありんすか?」
「ああ、そうだね」
「さっきの男はしつこくて困りんした。男は嫌になりんすぇ。わっちは女と喋っている方がよっぽど楽しいでありんす。 ――でありんすから、暇ならば少々わっちとのお喋りに付き合ってくれんせんかぇ?」
思わず、目を見開いた。なんて変な女だろう。
男ならともかく、女にまで媚を売る必要はないのに。こんな事をするくらいなら、寝るなりして体力の回復をはかった方がマシだ。他の遊女だって疲れている時に他の遊女とお喋りをしようなんて言う者はいない。
と、女は思ったが、わざわざしてくれた申し出を断る理由もないので、一応了解をする事にした。
「ああ、まあ、いいよ」
小さく女が言った瞬間に女性は、ぱぁっと見て分かるように顔を嬉しそうに微笑ませた。
その笑顔は、女や他の遊女たちが男に見せるような作り笑いではなく、純粋な子供のような笑みだった。
変な女だが、悪い気はしない。
女は自分の中で楽しい、という感情がすごく久し振りに芽生えている事に気がつかなかった。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板