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鳥籠の中の雪兎は

46雪音 ◆mzHXeB1fFY:2010/12/07(火) 19:26:12 HOST:180-146-48-217f1.shg1.eonet.ne.jp
  【恋だなんて言わないで(崩したくないの)】 #2*end

 俺は、ソイツの手首を強引に掴んだ。そして、俺も同じように立ち上がる。

「なぁ、なんで俺がそういう事言おうとすると避けるんだ? 知ってんだろ?」
「…………」
「俺はお前の事好――――」
「やめて!」

 またもや、遮られる。
 掴んでいる手首から伝わる体温が冷たくて、寂しい。
 その寂しさと同じような色を映している瞳が、俺をとらえた。振り返った顔は真っ赤に染め上げられているが、悲しげだ。

「あ、あたし、アンタはただの友達だし、そういうの言ったらこのままの関係じゃいられなくなるじゃん」

 ただの友達、このままの関係。
 ソイツの言葉が俺の脳内でもう一度リピートされた。その声の残響は俺の胸を締め付ける。

「でも、好きだ」

 今度は遮られなかった。
 ソイツはその言葉を聞くと、急に真っ赤だった顔は冷めていき、今度は軽蔑している色の瞳を見せた。

「あのさ、人の話聞いてた? やめてっつったじゃん」
「は、誰がお前の意見なんて聞くかよ、馬鹿野郎」
「アンタ、あたしの事好きなんか嫌いなんかどっちなんだよ……」

 結局また口喧嘩になる。だが、告白してもまだこういう風に言いあえて良かったと、少し安心する。

「なんで付き合ってくれないの?」
「なんで友達じゃ駄目なの?」
「「…………」」

 学校の時計は秒針がないので、その分何の音も無い空間となる。
 その2人きりの狭い空間で、俺はソイツの手を何気なく繋いでみた。ソイツは驚くが、諦めたかのように抵抗は見せなかった。

「冗談って事は……「本気」
「やめようよ「嫌だ」

 全ての言葉を俺が遮ったので、もう、と頬を膨らませた。そんな所もリスみたいで可愛い。
 本気で困っているようだが、残念ながら此処だけは引けない。今でも、抱きしめたくなる衝動を抑えているだけでも大変な俺。

「…………ねぇ、」
「うん」
「好き、ならさ、私の事考えてよ。その、そう簡単に告白しないで」
「これで抑えるのが、もう精一杯なんだよ」

 ソイツと同じように俺の顔も赤くなってくる。繋いでる手の体温から、それが読みとられないか不安。
 でも、そんな不安とは裏腹に、さらに深く指を絡ませた。
 教室の窓から差し込む夕日が、ソイツの顔を照らすので、もっと赤く見えてくる。

「おい」
「え?」

 首をこっちの方向を向けた所へ、顔を近づけて行く。
 唇と唇の間の距離が縮まっていく。

「え、な、ちょ……やめ……」

 触れる直前で、ソイツの頬をつねった。
 むにゅ、と白い頬が伸びる。ソイツは、何が起こったのかよく分からないのか、アホ顔をしている。

「…………は?」
「今、キスされると思った? 馬鹿じゃねーの、自意識過剰」

 この言葉をきっかけに、また、口喧嘩が繰り広げられていく。
 それはまるで恋人同士のようだと知らないままで。


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