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廃墟に咲く花

3 ◆Hh/9IKsAlU:2010/10/11(月) 14:32:42 HOST:softbank219182178139.bbtec.net




逢えない時間がもっともっと貴方のことを好きにさせた





「――うそ…っ、嘘に決まってるじゃない!」
「嘘じゃない。夏原は転校するんだよ」

そう言った理恵のひんやりと冷たい手がゆっくりと沙織の頬に触れる。今もまだ、信じられないという顔をしたまま沙織は目を開いて立ち尽くしている。どうして、どうしてと沙織の頭の中でぐるぐると回り続けている。
翔太が転校するなんて、おかしい
翔太はこれからもずっとあたしの傍にいてくれる
翔太がいる、当たり前だった未来がどんどん崩れて崩壊していく。普通に翔太が隣にて、いつもみたくふざけあって、当たり前のようにぬくもりを感じて。
そう思っていたはずの未来がガラスの破片のように散らばり、目頭が急に熱くなる。

「…理恵、翔太は今どこにいるの…?」
「多分、いつもの場所。…裏庭の木の―」

理恵の言葉を最後まで聞かずに沙織は部屋を飛び出した。
走って、走って走って。これが夢だったいいのにと何度も思いながら肩まである短い髪を揺らして走る。廊下を突き進んで、靴に履き替えて。
翔太を追いかけて毎日のように通ったこの廊下が、この道が、今日は何故か長く長く思える。
走馬灯のように楽しかった日常が脳内を駆け巡る。いつの間にか目から溢れ出した涙がこぼれて頬を濡らす。それでも沙織は走り続けた。



「…しょう…た」

裏庭に生えてる一番大きな木にもたれている翔太の姿が見えて沙織は少し口元を緩めた。
翔太は立ち上がって沙織の傍に来る。沙織はゆっくりゆっくりと迫ってくる翔太の足音が寂しくもとても愛しく感じた。そして無意識のうちに涙をぽろぽろと零す。

「沙織…」
「しょう…た、翔太!何で転校するの?何でいなくなっちゃうの?何で……んで」
「…泣くなよ」
「泣いてなんかないっ!」
「泣いてるじゃん。…ったく」

そっと翔太の手が沙織の頬に触れる。そして沙織の頬に伝う涙を拭った。
それが精一杯だったかのように、沙織の目から涙が溢れんばかりに零れだす。

「卒業式には、戻ってくる予定だから」
「…長いじゃん。…あたし達まだ高1だよ?あと2年もある…」
「そん位我慢しろよ沙織。…約束するから」

翔太はそう言うと沙織の唇に優しく唇を重ねて、「迎えに行く」と囁いた。





「沙織!どこ行くのっ?これから先生たちに挨拶…」
「あーっ、理恵から言っといて!お世話になりましたって」
「礼儀ってもんがあるでしょ沙織っ!」

理恵の声がどんどん後ろで小さくなっていく。
挨拶なんて後で行けばいい。それよりも今目指すべきものは校門で待っててくれてるはずの彼に会いに行くこと。

翔太のいない2年はかなり長くて、それでいて切ない幸せで溢れいた。
逢いたくて会いたくて堪らなかったけど、きっとこんな風に思えたのは一度こうやって離れてみたからで。もし普通に2年を過ごしていたらこんなにも大切な気持ちに気づかずにいたかもしれない。
それでも今は、会いたい。
翔太に触れたい。
翔太のぬくもりを感じたい。
今までの分抱き合って、心を、胸を、翔太でいっぱいにしてほしい。

校門には花束を手にした愛しい人が見える。
口元が動いている。周りのがやがやしたうるささの中で、その口元の動きははっきり見えた。
沙織は再び走り出して、愛しさが全身からにじみ出るような笑みで翔太に駆け寄る。


「―――翔太っ!」




○貴方のぬくもり○
(ようやく感じられた貴方のぬくもりは、ちょっと冷たかった)
(その冷たさは外で待ってた時間の長さと、あたしが流した涙の量)



***
二次で書いた小説をところどころ変えて一次にした小説


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