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無題という名の短編集

29美しき汚物:2011/06/18(土) 21:39:53 HOST:252.128.70.222.broad.xw.sh.dynamic.163data.com.cn
※食事の前後に閲覧する事をお勧めしません。この忠告を無視して見てしまった方は自己責任と言う事でお願いします。
 暴力、嘔吐、汚物注意。
 

 
 彼女はこの世界に存在する全人類を愛していた。
 そして彼女は何よりも傲慢であった。

 彼女が人を愛するのはあくまで自分が如何に慈悲深く、優しく美しく気高い人間なのかを周りに知らしめる為にと言うだけの演技である。
 実際、彼女は「愛」と言う物に対して非常に貪欲で有った。
 彼女が人を分け隔てなく愛するのはただ自分が愛されたいが為。愛されてこそ自分はこの世界に存在する事を許される様な気がするのだ。

 だからこそ、彼女は自分を愛さない者に対して容赦はしなかった。
 自分を愛さない人間を見付ければ当然の様に暴力を振るい、殴り、足蹴にし、罵り、痛め付け、嬲り、侮辱し、陵辱した。
 その度に彼女は言う。
 「私は貴方達の事を対等に、分け隔てなく愛していると言うのに何故貴方は私の事を愛してくれないのでしょう。理不尽では無いですか。私は折角生きる価値の無いゴミクズの様な貴方達を愛してやっていると言うのに。」

 そう、彼女にとって自分以外の人間は「ゴミクズ」で一蹴出来る存在でしか無いのだ。
 だからこそ彼女は誰に対しても対等で、残酷で、慈悲深い。


 彼はこの世界に存在する全人類を「汚物」と称し、嫌った。
 
 彼にとって人間と言う存在は道端に落ちている犬の糞と同等にしか過ぎなかった。 
 真っ黒で、腐臭を発し、視界の中に入れるのも、同じ空間で息をするのも嫌で嫌で堪らなかった。
 人と目を合わせるだけでも胸の内にどうしようも無い嫌悪感が沸き、腐臭を漂わせながら人が自分の傍に近寄ってくる度に吐き気を催した。

 また、それは彼自身に対しても同じだった。
 彼は自分の姿が鏡やガラス等に映される度に他の人間と同じ様にどうしようも無く嫌悪し、そして無性に泣きたい気持になった。
 だからこそ、彼は自分を人間だと思えない程の醜い容姿にしてしまおうと自らを痛め付けた。
 わざと頭から熱湯を被り、顔の半分を覆えるほどの大きな火傷を作り、カッターで口の端を切り刻み、鼻の皮膚を削り、素手で左の眼球を抉り出した。

 するとどうだろう、自分のその醜い顔を見て不思議と愛しいと言う感情が胸の内に湧き上がった。
 それ以来彼は、世界中の全人類が自分と同じ位に無様な姿になれば良いのに、と願う様になった。
 そうすれば自分はやっと、他人を愛する事が許されるのだ。


―――――――――――――――

続きます。


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