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無題という名の短編集
18
:
*
:2011/02/03(木) 16:15:54 HOST:222.70.128.206
明るい話が書きたかったのに…(・3・)あるぇー?
――――――――――
私には一人妹が居た。
私の家は所謂大家族、と言う奴で私を含めて5人の男兄弟と先程話した末の妹が一人居る。
そんな大人数でありながらも我が家は訳有って片親で、常に忙しい父親の変わりに長男である私がこの兄弟達の世話をしてやり仕切る役でも有った。
妹は未だ小さく初めて我が家に産まれて来た女の子と言う事も有ってか他の兄弟達は大層彼女を可愛がった。勿論私も例外及ばずで有る。
そんなある日の事だ。
私以外の男兄弟全員が家を空けなければならない用事が出来てしまった。
次男はバンド仲間の家に泊まりに、三男は部活の野外合宿、四男はクラスメイトの家に勉強会(泊まり)に、五男はそんな四男に誘われ彼も一緒に泊まりに行った。
結果家には私と末妹だけが残されてしまった。
先程も言ったとおり私は末妹の事を酷く可愛がっていた。けれども其れは他の家族につられる様に、で有って実際に彼女自身が一人っきりに可愛がってやっていた訳では無い。
其の為最初の内こそはどの様に接してやれば、と戸惑っていた私で有ったが私が思っていたよりも末妹はそれ程手間の掛かる子供では無かった。
物覚えが良く、あまり我侭を言わない。時には自分から家事を手伝いたい、と私に言って来た事も有った。元よりも大人しく内向的な性格だとは思っていたが此処まで手間が掛からないとは自分でも正直驚きだった。
其の為その日一日は男兄弟達が騒がしい日に比べて寂しい気持ちは有る物の幾分か快適に思えた。
だが其の日の夕方。
急に末妹が「腹が痛い」と言って寝込んでしまったのだ。
決して吐きたい訳でもトイレに行きたい訳でも食べ過ぎた訳でも無いらしく、病院に連れて行こうかとオロオロしていたが流石に自分と彼女以外の家族が居ない間にが家を空ける訳にはいかない。
其の為私は非情ながらも苦しそうに腹を抑えて仰向けの状態で寝る彼女の傍で家の中だけで出来る限りの対処法を取ってやった。
暫くして痛みが治まって来たのか、未だ顔を顰めては居る物の先程の様な呻き声は聞こえない。そんな末妹の気を少しでも楽にしてやる為に、と私は彼女の腹を軽く擦ってやろうとする。
其の時である。
「…おか、さん…。」
「!」
「苦しい、苦しいよぉ。おかあさん。助けて…。」
末妹は腹の痛みを耐える様な声色でぐずりながらも懸命にそう言う。
私は其の瞬間、苦しそうにする妹を心配することも忘れ思考をある一点に集中させた。
(ああ。)
(其処で目の前に居る私、では無く母親を求めるのか。)
世話をしてやっている私でも無く、私達の為に働く父親でもなく。
まともに関わった記憶さえも無い、私達を置いて別の男の元へと言ったあの最低な女を求めるのか。
其れを知った瞬間、私の中に嫉妬とも怒りとも劣情とも取れぬ複雑な感情が湧き上がった。
*
一時間ほど経って漸く腹の痛みが収まったのか末妹は安らかな表情で眠りに就いている。
そんな妹の表情を見て、私は少し泣いてしまった。
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