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無題という名の短編集

17惨め。:2011/02/02(水) 10:46:28 HOST:222.70.129.131
自分が惨めで惨めで仕方ない男の子の話。

―――――――

 俺は自分の両親が嫌いだ。
 別に俺に対して暴力を振るったり、きつく当たって来たりする訳でも無い。寧ろそんな単純な理由だったらどれ程良かっただろうか。
 親は逆に俺を愛し過ぎている。だからこそ私はそんな両親が嫌いで嫌いで堪らないんだ。

 物心ついた頃から我が家は貧乏だった。
 父親は病弱でとても仕事が出来る様な体の持ち主では無かった為常に床に伏せっていた。
 母親はそんな父親の代わりに働いた。自分の時間を磨り減らしてまで俺と父の為に一生懸命働いた。結果、母は身体を壊した。

 さぁ、両親がそんな状態になってしまったら一家心中か俺が働くしか道は残されていない。
 当然の如く俺は後者を選んだ。

 其れからの俺の生活は最悪だった。昼間はみすぼらしい格好を装って『靴磨き』として働き夜は街角で身売り同然の様な事をして知らない男や女に向かって股を開く。
 働く自分を自覚する度に俺はとても惨めな気分になった。
 今の俺がこんな状態になってしまったのは全て両親の所為だ、あいつ等さえ居なければ。
 目を閉じて無体な行為に耐えながら何度そう考えた事か、何度脳内で父と母を自らの手で絞め殺す想像をした事か!!!! 
 想像だけでは無い、本当に殺しを実行しようとした事だって幾度かは有った。けれども出来なかった。

 其れは父と母が俺を「愛して」いるからだ。
 この選択を取ったのはあくまで両親ではなく「俺」なのだ。自分が死にたくないが為に。
 何時だって両親はボロボロになって帰って来る俺を見るなり自分達が苦しい思いをした様な顔をするんだ。
 父は力の無い細い腕で俺をきつく抱き締めて、母は泣きながら俺に頭を下げて「ゴメンね、ゴメンね。」と謝罪をしてくる。

 ゴメンね、こんな事をアナタにさせる位ならば私達が死んだ方がマシなのに。ゴメンね、ゴメンね、ゴメンね。

 母の其の言葉を聞く度に俺は何故か胸が締め付けられる様な思いがして、急に両親がいとおしい気持ちにかられるのだ。
 だから俺はそんな母親に対して「俺が頑張れば良いだけだから。」としか返せなくなる。

 止めろ止めろ止めろ!!!!嗚呼、俺はなんて惨めな人間なんだろうか!!!
 
 外では父と母を殺す想像をしていざこんな両親を目の前にすれば「愛しい」だなんて。
 だからこそ、嫌いだった。この親が。
 両親が謝る度に俺は自分がどれだけ惨めな人間なのか自覚する羽目になる。

 けれども、嫌いだけど、両親と同じ位に自分も彼等を愛していた。

 だからこそ俺はまた惨めな気分になって、自分で自分を虐げる。
 決して死にたい訳でも無いのに首に紐を巻き其れを死なない程度に限界ギリギリまで締め上げる。
 
 脳内で両親を殺し、家に帰る度に其の両親の「愛」によって自分が惨めだと自覚し、自分が惨めだと自覚した事によってまた自分を虐げる。

 其れが俺の日課となっていた。


 嗚呼、なんて悲しき連鎖なのだろうか!!!!!


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