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皆で怖い話書こ〜(≧∇≦)

85L.T.:2010/10/09(土) 08:30:02 HOST:i121-112-30-105.s10.a034.ap.plala.or.jp
 それから、小魚の跳ねもぱったりと止んでしまった。魚が移動したのだろうか。やはり、場所を変えた方がいいのだろうか。それを問わずとも、虫たちは何かを唱え続けている。
 時計を見ると、九時半だった。今更どこかに移動したってどうなるものでもないだろう、と匠は思うのだった。
 いや、いっそのこと、そろそろ帰ってしまおうか。そんな考えさえ浮上してきた。しかし、この釣りをしている時間というのは、ほんとうに早く過ぎ去っていくものだなあ、と思う。
 よし、今日はもう帰ろう、と匠は心に決めた。あの錦橋姉妹にもまた会えるだろう。なんだか、すぐに親密になれそうな日が来るような気がしたのだった。またいろいろ話したい。
 匠は自分の来た道を振り返った。すっかり暗くなってしまったから、どこが道であるのかよく分からない。懐中電灯を取り出し、電源を入れた。自分の来た道は黒い中で白く映えた。
 そこに右脚を伸ばすと、じんわりとした冷たさが足を伝ってきた。水が染み込んできたのだ。それに、足がすっぽりと砂の中に埋もれていた。匠は、チッ、と舌打ちをして、その足を砂の中から抜こうとした。異変に気づいたのは、その直後だった。
 車の音が無かった。虫たちのざわめきが増幅されているだけだった。刈り上げたこめかみを、冷汗がつぅと伝った。明かりがあるのみだ。そもそも、こんなところまで水がしみ出しているはずがないのだ。第一、河の水量が……そう思って振り返る。
 増水していた。信じられないほどに、水位が高くなっていた。そんな馬鹿な。さっきまで糸を垂れていた時は、足元までは無かったはずなのに――今は、自分の足元を覆い尽くしてしまっている。左足にも、ひんやりとした嫌な感触が来た。
 匠は左足に力をこめ、砂に埋まった右足を抜こうとした。だがどうにもならなかった。むしろどんどん引きずり込まれるように埋まっていった。右足は動かしていないはずなのに。虫たちの声に圧倒されて声も出せなかった。
 いや、声が出ない原因はそれだけではなかった。匠は母から、この河で流れが速くなって溺れて死んだ三歳の子どもがいたのよ、と聞かされていたのだった。流れが速くなる、というのは……まさか、という考えが頭をよぎった。
 しかし一体、何が起きているんだ? 匠は恐怖のあまり全身を震わせながらも、思考だけは冷静だった。その思考が彼を後方に向かせた。懐中電灯と共に。
 水の中から顔が現れた。引き笑いをしながら、見開かれた眼をてらてらと輝かせ、腐って膨張した頬を引きつられて。薄い眉毛が、特徴的な顔だった。そのむくんだ青白い手が、しっかりと右足を掴んでいた。
 もう終わりだ、と思った。そして匠は思わず、顔を正面に戻した。
 長い髪の間から、白眼が覗いていた。


†††


 その河が立ち入り禁止区域になったのは、それから一週間あとのことであった。一人の大学生がその河に行くと言ったきり、行方不明になり、とうとう発見されなかったのである。
さらにその十年前にも、地元在住の姉妹が溺死したという事件があったのである。錦橋花子(当時三歳)は、いつもと同じように河川敷で遊んでいたところ、急な雨で起こった急流に飲み込まれてしまった。さらにそれを助けようとした姉の橋子(当時五歳)も流されてしまったのである。二人の遺体は今に至るまで発見されず、捜索も打ち切りとなった。

 匠の行方は、誰も知らない。
が、地元の住人曰く「夕方になると立ち入り禁止区域の方で若者たちの声が聞こえる」云々。




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