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二次元school

236雪音 ◆mzHXeB1fFY:2010/01/19(火) 19:47:55 HOST:119-231-171-71.eonet.ne.jp
第50話「割り込んできて」

    ―――考えてみれば。
そうだ、私って、ナゴが好きな事…人にあまり言った事がない気がする。
だって、ナゴが好きって言う女の子、前の学校でも今の椿園学校でもいないし。前の学校では生理的に無理という噂まで立っていたのに。
あまりにも危険な匂いがしなかったから、人に言って協力してもらった事ないんだ。
 ……ただ、あの優くんのようなのほほん美少女には言えないが。さっきも結局事実は何一つ言わなかった。

 そんな事を考えながら、学校の通学路の砂利道を歩いていた時、前方に黒い影が見えた。




「……ナゴ」


 数秒もしない間にその名前が出てきた。 そうだ、あれはナゴだ!
 足が心なしか早くなる。そして、加速、加速。気付けば私の足は大好きな人に向かって走り出していた。

 近づいていくうちに、あの影はナゴだという確信が比例するように強いものへと変わる。
 憂鬱な学校が終わったという事を知らせてくれる夕焼けが、空をキャンパスにするように赤とオレンジを一つの色へ替えるようにと、ぐちゃぐちゃに混ざっていた。そんな光が、ナゴの広い背中に当たる。
 
 ……ああ、綺麗。 カッコイイじゃない。綺麗。


 私とナゴの距離は縮んでいき、もう手を伸ばせば届きそうな距離に。






「ナ――…………「きゃあっ!」

 
 ナゴに手を伸ばそうとしたまさにその瞬間。
 
 私の左半身に衝撃がはしり、そのまま私はふっ飛ばされた。




「さ、桜子!? …………と、萌ちゃん!?」


 愛しのナゴは、この衝撃音に気付き、私の存在にも気付いて、私が飛ばされた方に駆け寄ってきた。
 

 ……はぁ!? 萌!?


 ナゴが最後に発した名前に過剰に反応し、私の近くにある物体に目を向けた。

 
 それは、綺麗なウェーブを描いた栗色の髪を持つ、華奢な体の少女…………まぎれもなく萌ちゃんだ。
 萌ちゃんはゆっくり体を起こすと、「いたた……」と呟きながら、白い足の膝にできたばかりの擦り傷を押さえて立ち上がった。



「あっ! 桜子ちゃん! 大丈夫!?」


 萌ちゃんは、近くに倒れこんでいる私に気付くと、すぐさま手を差し伸べてきた。
私はそれに礼を言いながら手を素直に置くと、それはかなりの握力でつぶされかける。……またこのパターンか。

 見た目には全くそんな様子が感じ取れない仕草で、萌ちゃんは私を支えながら起こしてくれた。
 ……腹部を支えてくれた時、目に見えないようなパンチ食らわされたけど。



「め、萌ちゃん……どうした?」



 ナゴはもちろんの事ながら、そんな事に気付かずに萌ちゃんに声をかけた。
 ……私の方に一瞬目線はむけられたが、すぐにそれは逸らされた。……この野郎。




「えっとね、萌、お兄ちゃんと一緒に帰ろうと思って走ってきたの〜。でもね、萌が走ったせいで桜子ちゃんとぶつかっちゃった……ごめんね、桜子ちゃん?」


 萌ちゃんは、私に浅く頭を下げた。
 ……う、こんな子が、本当にあの本性の持ち主なのか。

 いや、そうだ。だって、普通にお互いが走っただけでは、あんなに派手に飛ばないはずだ。
恐らく、わざとかなり強くつっこんだのだろう。 ……自分の身も犠牲にして。恐るべし、萌。





「だから、ね? お兄ちゃん。萌と一緒に帰ろぉ?」
「ああ、いいよ」



 ナゴの返答がくるなり、萌ちゃんはその細い腕をナゴの腕に絡ませて、体を委ねた。
 ナゴは照れてはいるものの、まんざらでもなさそうだ。 
……なんだ――――! この初々しいカップルみたいなのは!!
ナゴがこの猫かぶりにとられちゃう………!





「わっ、私も一緒に帰る!」



 それを斬り裂くように、私が2人の間に割り込んだ。
 お前の好きにさせるかぁぁああ!!


 萌ちゃんは、私を一瞬思いっきり睨んだ。そりゃあもう、般若の如く。
でも、すぐに甘い表情に戻して、「いいよぉ」と言ってきた。
 

 そして私達は、そのまま道を歩き始めた。






 …………あれ、何かデジャヴじゃないか? コレ。


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