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418 ◆Gv599Z9CwU:2010/09/06(月) 16:23:34 HOST:61-26-251-166.rev.home.ne.jp


【優声】







「ねえ、マスター」
「ん? どうしたんだい、リリー」
 触り心地のいいふわふわのテディベアを抱きしめ、金の巻き毛を揺らしたリリーはてくてくと彼の元へと歩いていく。その間マスターと呼ばれた男は、青白く光るパソコンのディスプレイとにらめっこしていた。カタカタとキーボードを打つ手、真剣そのものの顔、すべてリリーが見てきた彼の姿だ。
 そして、春風のような穏やかな声。
 すんなりと身体を抜けていくその声が、リリーはとても好きだった。
「マスター、今……忙しい?」
「うーん? でもすぐ終わらせないといけないことでもないし、リリーと話す時間くらいはあるよ」
「本当? そしたら絵本っ、絵本読んでっ」
「リリーはその絵本好きだなあ」
 テディベアとの間に挟んでいた古ぼけた絵本を取りだし、リリーは定位置である男の膝の上にちょこんと座る。踏みそうになる巻き毛は男がそっと掬ってくれる。それがわかっているからリリーは安心して定位置に居座ることができるのだ。
「じゃあ――」
 やさしく紡がれた音に目を閉じて、リリーは心地よさにうっとりと酔いしれる。
 この音は、自分の世界を壊さない。
 壊さずに、新しい音を加えてくれる。煩わしさのない、とてもたおやかな。
 身体があたたかくなることの意味を知らず、少女は与えられるものを享受するのだった。


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