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396 ◆Gv599Z9CwU:2010/05/16(日) 11:44:40 HOST:119-175-176-176.rev.home.ne.jp


【命の最期は、君の接吻を】






「この命が尽きるときは、君の口付けで」


 少女の頬を、骨ばった男の手がゆっくりと撫でていく。なにかが切れてしまったかのようにひたすら泣き続ける少女は、その言葉にも必死に首を振るだけだ。強く握りしめている両手が震え、大きなサファイアの瞳からは大粒の涙がたえず流れている。
 その涙を指で掬い取って、男は申し訳なさそうに眼を伏せた。
 ――命の灯火は、その間にも削られていく。


「僕の命は、もうほとんど残っていない。だから……消えてしまうときは、君の口付けで旅立ちたいんだ」


 どこまでもやさしい声が、少女へと降り注ぐ。それでも彼女は泣くことをやめない。ただひたすら、そのときが来ることを嘆いている。
 神を恨みこそすれ、そして天が与えた運命を呪った。
 なぜ彼が昇天しなければならないのか。なぜ他の人ではいけなかったのか。


「ほら、泣いている顔は君に似合わないよ。……きっとこれは、神様からの思し召しだと思う。僕はこの世からいなくなってしまうけれど、君のことをいつまでも見守っているから……だから、笑っていて?」


 この世の人とは思えないほどきれいに微笑んで、男はゆっくりと眼を閉じた。
 先ほどよりも火傷をしてしまうほど熱い涙が頬を伝う。
 もう動くことも、話すこともない彼を目の前に、少女の涙はシーツに染みをつくっていく。ぽたぽたと零れ落ちるそれらは、どこにしまわれていたのかと思えるほどにあふれてくる。


「嘘だって……ずっと、ずっと一緒にいようって……約束、したのに……」


 穏やかな笑みをたたえる彼に少女は縋りつく。
 そして、まだあたたかさの残る唇にそっと口付けた。少女の涙が彼の頬へ流れ落ちる。
 窓からの陽を浴びて、それはきらりと光った。



*******
死ネタは絶対書かないと言っていた過去の自分を殴りに行きたい。←
この設定がぱっと思いつき、感情のままに書きなぐってしまった作品。

彼らはこの後、天国で再会を果たします。「ずっと一緒」という約束を、きちんと果たすのです。


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