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.。.:*・゚☆虹空☆.。.:*・゚
377
:
海
◆Gv599Z9CwU
:2010/04/22(木) 16:37:14 HOST:61-24-234-103.rev.home.ne.jp
【少女の涙はなにを誘う】
窓から差しこんだ朝日が顔にあたって、サレナは煩わしそうに寝返りをうつ。するとかけられていた薄い毛布が、ぱさりと床へ落ちた。先ほどまであったぬくもりがなくなったのを感じ取って、サレナは仕方なしに上半身を起こし、まだほのかにあたたかさの残っている毛布を拾い上げてベットへと畳んで置いた。
いいタイミングとばかりに、部屋のドアがノックされる。「どうぞ」と一言そう言えば、数人の侍女が足音立てずに部屋へ入ってき、てきぱきと自らの仕事をまっとうし始める。彼女らの後から入ってきた女官が、厳しい眼をサレナに送った。その視線の意味がわかって、サレナは苦笑いを浮かべながらその場に立つ。
そんな彼女の様子にため息をついた女官は、近くの侍女になにかを言いつける。そして言いつけられた侍女が動いたのとほぼ同じ瞬間に女官は部屋を出て行く。
女官が出て行ってから、サレナは盛大にため息を吐く。
「動かないでくださいませ。お召し物が変えられません……」
下のほうから聞こえた気弱な声に、サレナは小さく苦笑する。そして言われたとおり、動かずにじっと立っていた。
部屋の隅に置かれたゴシック調のクローゼットから、まだ十と少しくらいの侍女が一着のドレスを手に抱えて持ってくる。その後ろからはサレナと同い年だと思われる侍女が、首飾りや耳飾りの入った小箱を抱えて歩いてくる。
三人係りで着つけられていくのをエメラルドグリーンの双眸で見つめ、サレナはぼんやりと昔に思いを馳せた。
(お父さんとお母さんがいたときは……もっと自由な生活だったんだけどなぁ……。自分で一日の予定を決めて……本当、楽しかった……)
じんわりと目頭が熱くなっていくのがわかって、サレナは侍女に気づかれないよう瞳を伏せ、あふれてきそうな涙を必死で堪えた。
父と母が亡くなったと聞かされたのは、約一ヶ月前のことだった。
あの日は食料確保のために父と母がそろって海へと出かけて行くのを見送って、「必ず帰ってくるからね」と言われた言葉に大きく頷き、元気よく手を振った。けれど夕方になっても両親は帰ってこなくて。
そして家に来た近所のおじさんに告げられた言葉は、深く心に突き刺さった。
『君の両親の船が波にさらわれて水没した……今、ふたりの遺体は街の外れに……』
信じたく、なかった。
嘘だと、言ってほしかった。
もうあの笑顔が見られることはないだなんて、やさしくかけてくれる声が二度と聞けないだなんて。
現実を、見たくなかった。
やさしい声で「ただいま」と言って、お父さんが抱き上げて笑ってくれて、お母さんが台所で料理をしながら微笑んでいて。
――そんな生活は、二度と戻ってこない。
そして孤児になった自分を引き取ってくれたのは、母の親友であるリアルールの家だった。けれどリアルールも後を追うように旅立ってしまって、また自分は孤独なんだと涙を流した。
その涙を拭き取ってくれたのが、リアルールの嫡子でアーリア帝国の皇太子、グラディスだったのだ。
彼は快く城へ引き入れてくれて、専用の部屋と女官までつけてくれて、毎日の食事にも娯楽にも不自由をしないよう配慮してくれている。
ただ両親が親友だったというだけでこんなにも裕福な暮らしをさせてもらえることが申し訳なくて、同時に対価が必要なのではないかと思ってしまう。おそらく彼はそんなこと思ってもいないのだろうけど、ただ住まわせてもらうにはあまりにも酷だった。
「終わりました。やはりお美しいですわ……淡い色がよくお似合いです」
「ありがとう」
侍女たちはお世辞じゃなくそう言ってくれる。
街の教会の鐘が鳴り響く。朝食の時間を告げる鐘だ。
「今日も皇太子殿下がお待ちです」
どこか嬉しそうに話す侍女の声を聞いて、サレナは長い回廊を歩いていくのだった。
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