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.。.:*・゚☆虹空☆.。.:*・゚
299
:
海
:2010/02/28(日) 09:27:00 HOST:61-26-250-103.rev.home.ne.jp
【ト音記号とヘ音記号 ―高いものと低いものと―】
「この小節からト音記号に変えたほうがいいのかなぁ……」
ぶつぶつとつぶやきながら、ひとりの少女が五線譜を前に悩みこんでいた。机に置かれた一枚の五線譜。それになにかを書き込もうとしているのだろうが、右手に握られたシャーペンが動く気配は一向にない。しまいには俗に言うペン回しというものを始める始末である。
彼女の右手を優雅に回るペンはとまらない。先ほどから休むことなく回り続けている。落とすことがないところを見ると、どうやら回すことに慣れているらしい。暇なときはいつも回しているのだろう。
がちゃりと扉が開き、ひとりの少年が入ってきた。それに彼女も気づいたらしいが、特になんの関心も持たず微動だにしない。
「……あれ? まだやってなかったの?」
「……思いつかないの、いちいち刺激しないで」
背後からかけられた声にも彼女は振り向くことなく返事をする。見据えているのはやはり五線譜で、どこか睨んでいるようにも見える。
そんな彼女をちらりと見やり、しばらくその場に立ち尽くしていた少年だったが、小さくため息をつくと少女の隣へ無遠慮に座った。そこには少女の鞄が置かれていたが、彼は邪魔なものだと思ったのだろう、掴んで無造作に端へと追いやる。
もちろんそれに彼女は激昂し、彼を睨む。力が相当こもっているらしく、シャーペンを握っている右手は白かった。けれどそんな彼女の睨みは痛くないのだというように、彼はさらりと受け流す。その態度が彼女の怒りを煽っていることを知ってのことなのだろうか。
「なにしに来たの? 私を馬鹿にしに来たの?」
「ここは僕の教室だよ。僕がどこでなにをしてようが君には関係ないよね」
「立ち去ってほしいんだけど。私、今ものすごく必死なの」
「見れてばわかるよ。だから手伝ってあげようとしているんだけど。僕が手伝ってくれるなんて、きっと全校生徒の憧れの的だよ?」
「頼んでない」
長机にどかっと足を乗せ、背もたれに体を預ける彼を一瞥し、彼女は何事もなかったかのように再び五線譜へと目を通し始める。
五線譜にはいくつかの小節に音符が書き込まれていて、作曲の途中だということが見て取れた。その音符も最後の三小節目で切れており、彼女がそこで悩んでいるということがわかる。
「それで、悩んでたのはその変わり目のこと?」
「……そうだけど」
「幻想的にしたいならト音記号に変えるべきだね、音が流れるような構成にすれば、もっと幻想的な情景が思い浮かびやすい。逆にヘ音記号にした場合、暗黒なイメージが付きやすい。力強くしたい場合もヘ音記号のほうがインパクトがあるよ」
「……さすが、優等生と言うべきところだね。性格に問題ありだけど」
「いちいちうるさいね、君は。教えてあげたんだから感謝してもらいたいな」
「だから頼んでないって」
この俺様主義の優等生はなんなのか。
誰に問いかけたって、返ってくる答えは決まっている。
天才音楽少年でしょ? と。
「……まあ、君が弾くものならなんでもいいんだけど」
ぽそりとつぶやいた声は、静けさの残る教室へ消えていく。
西日が教室へ入り込んでいる。部活終了のチャイムが鳴る。
―――鼓動が、どきんと大きく脈打つ。
「……なら、下手でも最後まで聴いてくれるの?」
恥ずかしさで語尾が震える。顔が赤いのは夕日のせいだと、自分に言い聞かせる。
「もちろんだよ。結果がどうであれ、ね」
少し微笑みながら彼は言った。
それを直視することができず、彼女は手元のペンを走らせたのだった。
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