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.。.:*・゚☆虹空☆.。.:*・゚

274:2010/01/22(金) 15:55:21 HOST:61-26-250-103.rev.home.ne.jp


【煌めきの奏鳴曲(ソナタ)】






 ピアノソナタ第五番。
 目を瞑っていると聴き慣れた音符がするりと耳へ入ってくる。これは幼い頃からずっと聴いている、いわば子守唄のようなものだ。普段、仕事で家にいない両親の代わりに、近所に住む三つ上のお兄さんがよく顔を出しに来てくれていた。
 その彼がいつも弾いていたのが、このピアノソナタだ。
 自分にはピアノというものの奥深さはわからないが、彼から紡がれる音符たちはどれも澄んでいて、音符が空に舞い上がるときにきらきらと太陽の光をうけて輝いているように見えた。そう言ったら、「音は弾き手の気持ちや思いが音符に乗せられて聴き手に伝わるから、いつどんなときでも気を抜けない」と幸せそうに笑っていた。
 ピアノが好きなのかと問いかければ、いつもひとつ返事で答えが返ってくる。そのときの彼の表情は普段から想像できないほどの笑みで、それを見た自分が頬を赤く染めあげるのを、きっと彼は知らない。


 聴き慣れたピアノソナタ。それは同時に、自分が彼とどのくらいの時間を共にしているかがわかる。
 出会ってから十年が経った。自分は十五歳、彼は十八歳。
 八歳の頃からピアノソナタを弾いていたと言うと、誰しもが驚くと言っていた。無理もないと思う。彼はその頃からピアノセンスに長けていて、将来は有望なピアニストになるだろうと、周囲から期待されていたからだ。そして彼はそんな期待に応え、着実に実力をあげている。
 けれど普段は周囲から遠巻きにされる雰囲気で、どこか近寄りがたいというか話しかけずらいというか……そのためか、彼が誰かと帰っている様子は見たことがない。帰ったら真っ先にピアノの音色が響いてくるし、家にある中型のピアノで曲を弾いてくれたりもした。
 彼はいまだに自分のことを世話してくれている。相変わらず両親は仕事で忙しく家に帰ってくることがほとんどない。そんな家庭なのに自分が横道に反れていないのは、きっと彼のおかげだろうとふと思った。



◇◇



 自分は十七歳、彼は二十歳。彼が成人式を迎える日だ。
 彼は地元の音楽大学へ進学し、さっそくその才能を開花させていると風の噂で聞いた。それを真っ先に伝えてみたら、ふいっとそっぽを向かれ、「……いちいち報告はいらない」と言われた。それが照れ隠しだと知ったのは、彼の妹経由だ。


「これからもピアノソナタ、聴ける?」
「いくらでも弾く。……あれは、一種の思い出の曲だし」


 そう幸せそうに微笑みながら歩いていくふたつの影が、夕焼けに照らされたアスファルトの上を長く飾っていた。



******
文章だけで頑張ろうかと思ったが最後の方で挫折したorz


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