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メルヘンに囁いて、
4
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2013/01/04(金) 19:45:02
沙月と別れて、自分の教室に入っていった。
「おはようございまーす」
元気のない適当なあいさつに、後ろをついてきた先生が一言。
「ちょっと煌くん、遅刻したくせに何そのあいさつ」
「愛情込もってて良いあいさつじゃないですか」
「どこがよ!」
「全体的に?」
ぷっ、と笑い出す先生と他の生徒たち。
「煌くんおもしろいねー、クラスの人気者の座奪っちゃう?」
「誰からですか」
「あたしから!」
「……先生ってクラスの人気者なんですか?」
またもや笑い出す生徒。
キリがなくなったから席に着いた。
席は良い感じに――――
一番前だ。
教卓の真ん前。
最悪。
「先生、席替えしません?」
素晴らしい提案だ。
「えー? 早すぎない? ……って煌くん、席が気に入らないだけでしょ」
「……いや、そんなわけじゃ」
「何その最初の間は」
「なんでもないですよ、仕方ないなあ」
「むー、偉そうにするなー」
先生の喋り方とか、なんとなく……本当になんとなく、沙月に似てるような気がする。
だからこんな風に積極的に話しちゃうのかもしれない。
「先生」
静まった教室の中、俺はもう一度口を開いた。
「名前なんですか?」
ここでその質問かよ、という最もなブーイング(ではないかもしれない)がいくつか出てきた。
みんな俺に対して偉そうだな、とかふざけたこと思ってみる。
「もう、さっき煌くんがいないあいだに自己紹介したのにー」
「そうなんすか、じゃあいいです」
「えっ」
「嘘です、もう一回してください」
やっぱり沙月に似てるな。
「あたしは一組の担任、淡井鈴!」
「年齢は?」
「う……二十四です!」
「おお、若手教師っすね」
「手出しちゃだめだよっ」
「出すわけないけどね」
俺の餓鬼くさい質問にも戸惑いながら答えてふざけて返してくれる先生。
この人が担任でよかったって思った。
「んじゃ、淡井先生」
「あっ、淡井呼び慣れてないから……よかったら鈴先生、とかがいいな!」
俺、沙月以外の女の人名前で呼びたくないんだけど。
まあ、名字のがごちゃごちゃになって呼びにくいから名前のほうがいいんだけどね。
とにかく、鈴先生なんて沙月が聞いたら絶対怒るよな。
「……じゃあ、これを機に淡井呼びに慣れましょうよ」
「えっ」
「淡井せんせ、よろしくね」
このとき、淡井先生の顔が一瞬曇ったような気がした。
……気のせいかな。
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