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メルヘンに囁いて、

1ねここ ◆WuiwlRRul.:2013/01/04(金) 14:51:20






どうもお久し振りのねここです・ω・´
えーと……
あれです、またもや煌くんシリーズ。



メルヘン少女と煌くんの物語。




もし暇があったら見ていってください←

2ねここ ◆WuiwlRRul.:2013/01/04(金) 14:51:51







   ( メルヘンな囁きに、 )







「沙月、先行ってるよ」

「待ってよ煌くん!」

「あ、やべ……携帯忘れてた」

「煌くんは馬鹿だなあ」

「沙月に言われたくねー」





「「行ってきまーす」」





 これが俺と沙月の日常茶飯事。





     ×





「沙月、今何時?」





 矢野煌、高校一年男子。
 ちなみに俺のこと。




「んーとね、七時五十分かな」





 この子は矢野沙月、高校一年女子。
 俺の双子の姉。




「ふーん……ってちょっと待って、登校時間八時までなのにギリギリじゃね?」

「そうだねえ……時間間違ったって言えばよくない?」

「……沙月のそういうとこ、憧れるよ」

「え、ほんとー?」

「ほんとほんと」




 今日は待ちに待った(そこまで待ってもない)入学式。
 高校生活初の登校なのに、こんな遅刻ギリギリ登校でいいのかよ。





 ――ちなみに沙月とは血は繋がってない。




 俺の母さんと父さんが離婚して――同じような時期に沙月の母さんと父さんも離婚したんだ。
 そして俺の父さんと沙月の母さんが再婚して、今この状況なわけ。




 俺と沙月が出会ったのはお互いがまだ小学一年生だった頃。
 母さんと父さんは幼稚園卒業後俺たちを連れて引っ越したから、再婚の話を知ってる人間は矢野家以外に一人もいない。





「ねえ煌くん」

「ん?」

「同じクラスだといいね」

「……多分双子を同じクラスにはしないと思うけど」

「煌くんは沙月と同じクラスになりたくないのー?」

「なりたいよ、なりたいなりたい」





 見ての通り、沙月はブラコンで俺はシスコンだ(認めたくないけど)。

3ねここ ◆WuiwlRRul.:2013/01/04(金) 15:13:42








 予定通り遅刻して登校した俺たち。
 学校に着く頃にはもう八時十分になっていた。




 遅刻指導の先生が校門の前に立っていて、思いっきり溜息を吐かれる。





「君たち一年だよね? もう、高校生活最初っから遅刻?」

「すみませーん、時間間違っちゃってー」




 そしてさらに予定通り時間を間違ったと誤魔化す沙月。
 その誤魔化しはかなりやる気がなくて下手で、何より棒読みで。




「嘘はいいから、早く行きなさい」




 もっと怒られるかなって思ってたから、見逃してくれた先生が優しく見えた。
 先生に感情持つことなんてないけど、この先生はちょっとは良い人なんだろうな。





「なんかあの先生嫌!」





 沙月は気に入らなかったみたいだけど。





 昇降口に書いてあるクラス発表の紙を見て、真っ先に沙月がブーイング。





「あー! 煌くんと同じクラスじゃない……」

「だから当たり前だって……って、一番離れてるじゃん」





 一学年は一組から六組まであって、俺は一組で沙月は六組。
 廊下の端と端だから一番離れている。




「やーだー! せめて二組がよかった」

「まあまあ、頑張ろうよ」

「……煌くんがそういうなら」

「うん、休み時間そっち行くし、帰りも一緒じゃん?」





 そう。



 俺たちはなぜか小学校の頃から二人で登校が絶対なんだ。
 思春期でちょっと恥ずかしいと思い始める中学生のときもそうだった。
 ましてやカップルなんじゃないかと思われるであろう高校生になっても、それは変わらない。




 ここに恥じを感じないのはおかしいかもしれないけど、
 それが俺と沙月の当たり前だから。




「ねえねえ、あの先生こっち来るよ」

「あ、本当だ」




 沙月に言われて気づいたけど、遅刻指導の先生が昇降口に戻ってきた。
 目が合って、なんとなくお辞儀をする。




「君たち、まだ教室行ってなかったの?」

「クラス発表の紙見てただけですーだ」




 沙月とこの先生は何気に良いコンビなのかもしれない。




「先生、何組の担任ですか?」

「あたしは一組! ……ってあれ、君煌くん?」

「そう、ですけど……」

「一組に一人だけ遅刻者がいると思ったら……煌くんだったのね」

「あー、すみません」

「もう、入学式なのになかなか来ないから心配してたわよ」





 なかなか良い先生、かもしれない。
 だがしかし。




「ちょっとー! 沙月の煌くんに近づかないでくださーい」

「煌くんのお姉さん、よね? 一学年?」

「……自分のクラスの子は覚えといて違うクラスの子は覚えないんですかー」

「ごめんごめん、冗談よ。六組でしょ?」

「……そうですけど」




 沙月はやっぱり先生が好きじゃないみたい。

4ねここ ◆WuiwlRRul.:2013/01/04(金) 19:45:02








 沙月と別れて、自分の教室に入っていった。





「おはようございまーす」





 元気のない適当なあいさつに、後ろをついてきた先生が一言。





「ちょっと煌くん、遅刻したくせに何そのあいさつ」

「愛情込もってて良いあいさつじゃないですか」

「どこがよ!」

「全体的に?」




 ぷっ、と笑い出す先生と他の生徒たち。




「煌くんおもしろいねー、クラスの人気者の座奪っちゃう?」

「誰からですか」

「あたしから!」

「……先生ってクラスの人気者なんですか?」





 またもや笑い出す生徒。




 キリがなくなったから席に着いた。
 席は良い感じに――――







 一番前だ。




 教卓の真ん前。
 最悪。







「先生、席替えしません?」





 素晴らしい提案だ。





「えー? 早すぎない? ……って煌くん、席が気に入らないだけでしょ」

「……いや、そんなわけじゃ」

「何その最初の間は」

「なんでもないですよ、仕方ないなあ」

「むー、偉そうにするなー」





 先生の喋り方とか、なんとなく……本当になんとなく、沙月に似てるような気がする。
 だからこんな風に積極的に話しちゃうのかもしれない。




「先生」




 静まった教室の中、俺はもう一度口を開いた。





「名前なんですか?」





 ここでその質問かよ、という最もなブーイング(ではないかもしれない)がいくつか出てきた。
 みんな俺に対して偉そうだな、とかふざけたこと思ってみる。




「もう、さっき煌くんがいないあいだに自己紹介したのにー」

「そうなんすか、じゃあいいです」

「えっ」

「嘘です、もう一回してください」




 やっぱり沙月に似てるな。




「あたしは一組の担任、淡井鈴!」

「年齢は?」

「う……二十四です!」

「おお、若手教師っすね」

「手出しちゃだめだよっ」

「出すわけないけどね」





 俺の餓鬼くさい質問にも戸惑いながら答えてふざけて返してくれる先生。
 この人が担任でよかったって思った。




「んじゃ、淡井先生」

「あっ、淡井呼び慣れてないから……よかったら鈴先生、とかがいいな!」




 俺、沙月以外の女の人名前で呼びたくないんだけど。
 まあ、名字のがごちゃごちゃになって呼びにくいから名前のほうがいいんだけどね。



 とにかく、鈴先生なんて沙月が聞いたら絶対怒るよな。




「……じゃあ、これを機に淡井呼びに慣れましょうよ」

「えっ」

「淡井せんせ、よろしくね」





 

 このとき、淡井先生の顔が一瞬曇ったような気がした。






 ……気のせいかな。

5ねここ ◆WuiwlRRul.:2013/01/04(金) 20:04:27







「それじゃあ、入学式が始まるので廊下に並んでくださーい!」




 淡井先生がみんなに指示を出した。
 なんだ、別に八時に集合しなくても良かったんじゃないか。
 今の時間は八時五十分で、入学式開始は九時の予定だし。




「なあ、お前煌くん?」

「煌くん? え? ……そりゃまあ煌だけど」




 並んでいたら、突然男子に声をかけられた。



「俺、沢田大輝っていうんだけど……よよよかったら友達になっていただけますでしょうか」

「……何でそんな緊張してんのか分かんないけどいいよ」

「よっしゃ! だってさ、煌くんあれじゃん! おもしろいじゃん!

「は? 俺が?」

「うん! 鈴ちゃんとの絡みウケるし!」

「鈴ちゃん……」




 
 一瞬誰だって思った。
 鈴ちゃんって淡井先生のことか。




「そういえば煌くん、何で鈴ちゃんのこと名前呼びしないのー?」




 何かみんなに煌くんって呼ばれると、みんな沙月に見えてくる。
 沢田もなんとなく喋り方沙月と似てるし。
 俺の感覚が変なだけかもしんないけど。





「んー、名前呼びしたら大切な子がヤキモチ妬いちゃうから」




 騒ぎ出す沢田。
 前の人進んでますよ。




 並び終えて次は体育館へ向かっている模様。
 沢田は話が気になったのか、後ろを向きながら歩きだした。




「大切な子って彼女?!」





 きた、この質問。



 大切な子ワードを出すと必ず質問される。
 あと、俺と沙月が一緒に登下校したり休み時間話してるのを見て付き合ってるのかとかよく聞かれるな。
 まあ元々血は繋がってないから、顔は似てないし。





「俺彼女いないけど、いたとしても彼女以上に大切かもね」





 笑ってそう言ってから、これ以上深く聞き出されたくなくて沢田に前を向かせた。

6ねここ ◆WuiwlRRul.:2013/01/05(土) 10:13:26







 入学式が終わって、帰りのHRも終わった。
 あっというまに思えたのはきっと寝てたからだろう。




「もう、煌くん入学式中もずっと寝てるんだもん……びっくりしたよ」

「そりゃどうも」




 放課後に帰ろうとすると、むっとした顔で淡井先生が言ってきた。
 放課後の俺は基本せっかちで、早く沙月のところに行きたくて仕方なくなるから不機嫌。




「あれ、煌くん不機嫌ー?」

「沙月が待ってるんで」

「あ、そっかあ! じゃあ、やっぱりダメかな」

「何がですか?」

「あのね、今日配らなかった教科書職員室に持っていくんだけど……手伝ってもらいたくて」




 教卓を見れば、教科書がどっさり置かれていた。
 これ、なんで今日配らないものまで教室に持ってきたんだろ。





「…………あ、じゃあ沙月に許可とってきますよ」





 長い長い間を得て、俺はやっと考えた。
 まあそれくらいならって思ったし。




「本当?! ありがとう!」

「まあ沙月が拒否ったら無理ですけどね」




 そう言って、俺は六組へ向かった。





「沙月ー」

「もうっ、煌くんおそいっ」

「ごめんごめん、でさ……淡井先生が教科書運ぶの手伝ってほしいらしいんだけど」

「淡井……って今日の朝の?」

「ああ、うん」

「……煌くんは手伝いたいの?」

「俺は沙月が嫌って言うなら手伝わないけど」





 沙月が不満そうな顔を浮かべて顔をそむけた。




「ふーんだ、沙月あの先生嫌いだもん。手伝ってあげてなんて優しいこと言わないもん」






 こんな沙月でも可愛いと思ってしまう俺は馬鹿なのかな。





「……じゃあ、帰ろっか」

「えっ」

「ん?」

「……いいよ、手伝ってあげてよ」

「え、いいの?」

「……うん、沙月ここで待ってる」





 正直驚いた。
 沙月がこんなに素直に手伝ってあげてって言うことなんてめずらしいから。




「ありがと沙月」

「……早く戻ってきてね」




 沙月は優しく笑っているつもりだろうけど、
 俺から見れば今にも泣きそうな顔をしていて――






 見ていて辛くなった俺は、ぐいっと沙月の腕を引っ張った。





「え、ちょっと煌くん?」

「沙月も一緒においでよ」

「……うん!」





 やっと沙月が笑顔を見せてくれたのに安心して、俺は腕を放した。





「あれ? 沙月ちゃんも一緒?」

「先生に煌くん渡したら絶対手出すもん」




 ぎゅーっと俺の腕に抱きつく沙月。
 可愛いな、とか思う俺は馬鹿だ。




「あたしが生徒に手出すわけないじゃない」

「じゃあ何でわざわざ煌くんに任せたんですかー?」

「女の子じゃ重たいし、煌くんが一番話しやすいじゃない」

「……教師が話しやすい生徒とかそーいうの決めるの良くないと思いますけど」




 淡井先生と沙月の口喧嘩が始まった。
 どちらかというと、沙月が敵意剥き出しなだけだけど。




「ふふ、だって煌くんは特別じゃない」

「なんすかそれ」




 淡井先生の意味深な言葉に思わず問いかけてしまうと、
 淡井先生は俺の言葉を無視して話をつづけた。




「それに遅刻した罰もあるしね」





 それを言われたら俺は何も言えなくなるんだけど。




 まあ、どうでもいいか。
 沙月が笑ってくれただけで俺は十分だよ。

7ねここ ◆WuiwlRRul.:2013/01/05(土) 10:24:27








「んじゃ、さよなら」

「手伝ってくれてありがと、気をつけてね!」




 職員室まで教科書を運び終えて、やっと帰れるようになった。
 昇降口まで歩いていると、沙月はずっと俯いたまま元気がなくて。




「沙月、どうしたの?」

「……煌くん、淡井先生の噂って聞いたことある?」

「淡井先生の噂?」




 不安そうな、沙月の目。
 沙月のこんな表情は滅多になくて、俺はその淡井先生の噂を聞くことにした。




「淡井先生ね、この学校の先輩たちにあんまり評判よくないらしくて……」

「先輩たちに?」

「うん、一学年のうちはまだ大丈夫なんだけど……二学年からはもうみんな嫌ってるの」

「……何で?」




 果たしてこれは聞いて正解なのだろうか。




「男子生徒に手出すんだって」

「は……? 淡井先生が?」

「うん、でも手出す生徒は毎年一人だけなんだって。それで……」





 沙月は泣きそうな顔で俺に言った。





「もしかしたら煌くんがターゲットになっちゃったかもしれなくて」






 たしかに俺、淡井先生とは仲良いかもしれないけど……
 でも仲良いやつにわざわざ手出すか?
 淡井先生のことだから、手出されたい男子生徒もいるだろうし……てか何で俺?





「それって決定なの?」

「わかんない、けど……毎年淡井先生は配らない教科書も教室に用意しておいて、気に入った生徒に運ばせるらしいよ」




 うわ、だいたい決定してるようなもんじゃん。




 本当なのかなって疑いそうにもなったけど……
 滅多に見せない沙月のこの表情を見る限り、本当なんだと思う。




「沙月ありがと、不安な思いさせてごめんな」

「ううん、でも煌くんなら多分大丈夫だよね」

「うん、俺沙月以外の女興味ないから」

「えへ、沙月も煌くん以外の男子興味なーい」





 とにかく。






 俺たちはお互いを愛し合ってます。

8ねここ ◆WuiwlRRul.:2013/01/05(土) 17:18:32








「「行ってきまーす」」




 次の日、高校生活二日目。
 俺と沙月は今日もまた、元気良く家を飛び出した。




 ……もちろん遅刻ギリギリの時間で。





「なあ沙月、今日も遅刻したんじゃそろそろ先生に怒られるよ」

「いいよ、沙月のクラスの先生男の先生ですっごく優しいし」

「……その人何歳?」

「うーんとねー、二十四歳でイケメンだよ!」




 うわ、淡井先生と同い年じゃん。




「……イケメンなんだ」

「あれ? もしかして煌くん嫉妬?」




 調子にのる沙月。




「そうだよ悪いか」




 素直にそう言うと、沙月は顔を真っ赤にして言った。




「沙月だって淡井先生に嫉妬したんだからね!」

「んじゃおあいこってことで、そのイケメン教師に惚れるなよー」

「煌くんも、淡井先生の誘惑に負けないでね!」




 そう言い合って、急いで学校に向かった。




     ×





「もう、今日も遅刻じゃない」





 今日は昨日みたいに特別な日じゃないから、八時半までに登校すれば遅刻扱いはしないらしい。
 だけど俺たちが校門に着いたのは八時四十分。




 なぜ十分遅れるのかは俺も沙月も理解不能だ。




 遅刻指導は週交代みたいで、
 今週は淡井先生がずっと担当のようだ。



 また呆れたような溜息を吐かれる。





「もう諦めてください」




 俺の一言に、淡井先生はむっと表情をゆがめた。




「諦めるはずないじゃない」

「遅れるのは仕方ないじゃないですか」




 俺のちょっと不機嫌な抗議に、淡井先生は負けじと言い返してきた。




「ていうか、何でいつも十分遅れるの?」




 その質問に言葉を詰まらせてみると、
 沙月がキッと淡井先生を睨んで言う。




「沙月が煌くんに待ってもらってるだけですー、早く通してくださいよ」

「ちょっと待ちなさい」




 無理矢理通ろうとした沙月を止めて、淡井先生が真剣な顔で言った。




「沙月ちゃんに巻き込まれて煌くんが遅刻してるなら、二人は別々に登校してみたら?」




 は?




 俺も沙月も、こいつありえねーとか思いながら固まった。




「先生にそんな指図される覚えないんですけど」




 俺がそう言うと、淡井先生は俺たちをじっと見て言う。




「あたしもね、二人が楽しそうに登校する姿を見れるのは嬉しいけど……遅刻する生徒を指導するのが今のあたしの役目なの」




 それらしいこと言って教師ぶりやがって。
 昨日より、淡井先生の印象が悪くなったかもしれない。





「……じゃあ」




 沙月も真剣な顔で話し始めた。




「明日沙月と煌くん二人で登校して……遅刻しなかったら淡井先生はうるさく沙月たちのことに口出さないでください」




 周りから見たら何でそんなに二人で登校するのって感じだけど。
 でも、俺たちからしたらそんな軽いものじゃないんだ。




 絶対絶対守りたいくらい、お互いが大切だから。





「仕方ないわね……わかった、明日遅刻したら二人での登校は控えなさいね?」





 何でそんな変なところで厳しいのかわからないけど。
 これが俺と沙月を引き離す淡井先生の作戦だとしたら納得はいく。




「沙月、大丈夫なの? あんな約束して」




 昇降口に向かいながら、小声で会話する。




「うーん……わかんない! けど頑張るよ」




 そう言って笑う沙月の表情は、どこか真剣さが残っていた。







 絶対遅刻できないな。

9ねここ ◆WuiwlRRul.:2013/01/05(土) 17:49:55







「おはようございまーす」




 何このデジャウ感。
 何この昨日と微妙に違う空気。




「おっはよー煌くううううううん!!!」




 沢田が飛びついてきた。
 まあ、見事に避けて沢田が壁に顔面をぶつける。




「あ、ごめん沢田気づかなかった(棒読み)」

「煌くんひどい!! 気づいてたよね?!」




 あはは、と教室に和んだ空気がうまれた。





 教卓の真ん前の席につくと、隣の席の女子が後ろの女子と話していた。




「ねえ、六組の先生の話知ってるー?」

「あー、超かっこいいよね!」

「うんうん! 性格も良いし、すっごい親身になって相談も乗ってくれるしー」

「ノリも良いし、イケメンだし!」




 やっぱり人気なのか。
 ちょっと溜息をつくと、後ろの席だったらしい沢田がペシペシとシャーペンで俺を叩いて振り向かせてきた。



「なあ、煌くんもしかして六組の先生気になってんの?」

「え、いや、まあ」

「俺よりモテるやつがいるなんて許さない的な?」

「違えよ、大切な子がいるって言ったじゃん?」

「あ、ああ」

「その子六組なんだよね」





 ていうか沢田の中での俺は
 「俺よりモテるやつなんているわけない」って考えなのか。




「ほへええええ、てか煌くんその子のこと好きなんじゃないの?」

「…………さあね」

「そんな間あけて悩んだ結果わからないの?! じゃあ好きってことじゃん!」

「……好きになっちゃいけないし」




 ぼそっとちいさくつぶやいて、俺はこの話は終わりと言わんばかりに前を向いた。
 ちょうどよく淡井先生が入ってきて、HRを始める。




「はい、じゃあきりーつ! 礼」




 HRはあまり良く聞いていなくて、
 六組の教師のことばかり気になっていた。




 結構俺、嫉妬深いかも。




     ×




 六時間目はHRだった。
 委員会とか係とかを決めるらしい。




「じゃあはじめに、学級委員やりたい人ー!」



 しーん。



 騒がしいテンションの淡井先生とは裏腹に、顔をそらす生徒たち。




「もうっ、誰もいないなら推薦で決めちゃうよ!」

「それでいいと思いまーすっ!」



 なぜか元気の良い沢田。




 嫌な予感しかしなかった。


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