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Cyber Evolution

1大佐:2009/12/04(金) 00:33:25
サイバー・ドラゴンを愛する私が、昨今のサイバー流&機械族プッシュに狂乱した挙げ句についに小説形態でSSまで書き出すに至ったというわけだ。
先に言っておく…この作品、私は本気だ…!
※カキコミはsageでお願いします

21ドッグファイト:2009/12/04(金) 00:39:39
ごう、と唸りをあげて、銀と緑のカラーリングが空を切った。
支援型超時空戦闘機・ジェイドナイトだ。その編隊がまさにいま、フォーメーションを解いて自由制空戦闘―ドッグファイト―を繰り広げはじめたのだ。
『まずいよ、ショウ!向こうさんにケツにつかれた!』
『くっそ、振り切れケント!』
ケントと呼ばれた青年の駆るジェイドナイトの後方には赤を貴重とした超時空戦闘機―ロードブリティッシュ―がぴったりとついていた。ショウと呼ばれた青年のほうは、これまたロードブリティッシュ相手に追いかけ合いをしている。
『ジェイドナイトは戦闘用の開発じゃないってのに!』
ケントはスロットルを急激に落とし、機体を急減速させる。後方から追うロードブリティッシュの脇をすり抜けるように、緑の塊が流れていった。
シザー運動と呼ばれる、戦闘機乗りの高等テクニックである。後方についた相手のそのまた後方へとつくための大技で、危険を伴うが、成功すれば追跡機からは目標が消えたように見えるほどだ。
『さすがケント、うまい!』
ショウは感嘆の声をあげる。ケントの操縦技術は、ショウのそれを上回っていた。ショウにとりケントは親友であり、彼の戦闘機にかける情熱の度を越した部分を誰より良くわかっていることもあって、彼のほうが実力が上であることを自然に受け止めていた。
その時、ケント機を追っていたロードブリティッシュのパイロットが不敵に笑みを漏らした。目の前の目標がシザー運動で自分の後方に逃れたのを、見逃してはいなかった。
その男もまたスロットルを急激に落とし、急減速と共にシザー運動を行い、慢心の見えるケント機の後方に再びついた。
『…シザー返し!?』
ケントは驚愕する。しかし、次の瞬間には、《戦闘不能》のアラートが機内に鳴り響いた。赤外線によるシミュレート・ミサイルの命中判定が下されたのだ。奴に撃たれた。これは実機を用いた模擬戦闘なのだった。
『くそ…ショウ、あとは頼む…!』
速やかに模擬戦闘エリアから離脱するケント機、その脇を、先ほどのロードブリティッシュが赤いラインを空に引きながら追い抜いていった。
ケントがショウ機を返り見た時には、ショウ機は相手2機によるシミュレート・ミサイルの一斉射で、本来なら粉々に爆散しているところであった。


ジェイドナイト2機とロードブリティッシュ2機は、模擬戦闘の終了を管制塔に告げてから、赤の機体は悠々と、緑の機体は寒々しく基地へ帰投した。

3ぽしーとん:2009/12/04(金) 11:02:56
エースコンバットww

4その男、ライバル:2009/12/04(金) 23:12:19
『そんなんでお前たち、いつになったら実戦配備に就くってんだ?』
ふん、と鼻を鳴らし、デブリーフィングルームに入ってきた男。ケントのシザー運動をシザー返しでいともたやすく破った彼であった。その一言目から、彼の性格が伺い知れるというものである。
『余計なお世話だよ』
ケントは膨れ面で、彼と目を合わそうとしない。
『ヤマサキ、お前はいいモノ持ってるのに、自分の実力を過信している節がある。そこだけ―』
『ケントは余計なお世話だって言ってるだろ、ホーネスト』
ショウが横から口を挟む。
ショウとしても、彼、ホーネスト・ラグナシアに今日の模擬戦闘の黒星をつけられたわけで、いい印象は持っていない。
そもそも、このホーネストに対しもとよりいい印象など抱いてはいなかったが。
ちなみに、ヤマサキとはケントのファミリーネームである。
『…お前、誰だっけか?』
ホーネストはウェーブのかかった金髪をかきあげて、雑魚を見るような目でショウを見やる。その仕草を見て、ショウは頭に血が登るのを感じた。
『ショウ・サイバだ、しっかり覚えとけ!』
『サイバ?…ああ、あの《サイバネティックス・プログラム》を提唱して国に潰された、ジンゾウ・サイバ博士の息子ってのはお前か』
軍に入隊したとは聞いてたけどな、とホーネストが言い足すが早いか、顔を赤くしたショウがホーネストの胸ぐらを掴んだ。さすがのケントも慌てた表情を隠せない。
しかし、ケントの心配も杞憂に終わった。胸ぐらを掴まれたホーネストは顔色一つ変えずに、自分に伸びたショウの腕を籠手返しでひねり上げる。ショウの呻き声が漏れた。
『…お前は熱くなりやすいな。冷静な判断が出来ないくせに、戦闘機なんざ乗ってると、早死にするぜ?』
ホーネストは嫌味を言い放つと、空いている片手でショウの頬を殴りつけた。ショウは床に倒れる。
『それから、気安くファーストネームを呼び捨てにしてくれるなよな、サイバ君?』
見下すように『正当防衛、って知ってるよな?』と吐き捨てると、ホーネストはひらりとデブリーフィングルームから立ち去った。
何も、言い返せなかった。ショウは悔しさに顔を歪ませて、床の染みを睨み続けていた。

5:2009/12/05(土) 15:46:21
ガラスの恨言が聞こえてくるような新作ktkr
まさかのドッグファイトw
サイバ博士のサイバネティックス・プログラムってかっこいいな

とりあえず継続は力


ホーネストはきっとデレる

6名無しさん:2009/12/05(土) 18:38:11
「おいコラハゲー、私の話はどうしたんだよー」

7作者:2009/12/05(土) 18:55:33
えっ…? ええと、ほら、やっぱり人生聞き分けが大事っていうか…アッ、ちょっ、待ちなさい!ワンキルは…ワンキルはよしな※&@℃◆‰¶‡Ωーっ!?


……――ブツッ――……

8ユッキュン@仕事・・・:2009/12/08(火) 15:39:03
更新終了の死亡フラグ!?

9:2009/12/08(火) 16:44:38
別の小説を書いているのかも知れない

10氷帝Fうす:2009/12/09(水) 23:42:05
さすが大佐戦闘シーンの描写が熱い

11:2009/12/09(水) 23:50:31
「その男、ライバル」のサブタイに今更気づいた俺様。
つまりホーネストだよなミスリードじゃないよな!?(

どうやらホーネスト活躍しそうで安心した

12ネクスト・アース:2009/12/17(木) 13:39:14
惑星ネクスト、正確にはネクスト・アース。それが、ショウたちが暮らす星の名前である。
いまは、人類の半分が地球‐ジ・アース‐を後にしネクストに到達した惑星間移住から100年目を目前に控えた、新星歴98年であった。
地球西暦2087年、地球上の人口は85億を数え、もはや人類は地上の許容量を超えてしまった。
そこで、人類はその半数を地球に残し、宇宙へと旅立った。外宇宙に、大気がある可能性の高い天体を観測し、そこへと向かった。それが、後のネクストであった。


しかし、ネクストへの旅は長かった。大出力亜空間物質転送装置を用いた時空間相転移を使っても、ネクストへの到着には15年を要した。もはや、ジ・アースとネクストとの間では、行き来はおろか情報の送受信すら不可能になり、二つの星は別のものとなったのだ。


旅の途上が平穏無事だったとも言えない。
ジ・アースへのホームシックにかかる者もあったし、時空間相転移による宇宙のしわ寄せ(あるいは空間震)による磁気嵐に見舞われたこともあった。
そうしたトラブルの中でも極めつけは、人類初の外宇宙生命との戦いである。バクテリアン帝国を名乗る巨大戦艦群の猛攻を受け、一時は船団は壊滅に追い込まれた。その後、人類は超時空戦闘機による激しい戦いの末に帝国を撃退、危険を承知の超長距離時空間相転移で難を脱したのである。


ネクストにたどり着いてからも、その大気を調整するのに、また航行時間と同等の時間を費やすこととなる。つまりネクストにおける新星歴とは、船団の出発から30年のタイムラグを経てのことなのだ。


現在は、ネクストの衛星軌道上には6000を超える人工衛星が配置され、それらが網目状にコネクトし人工電離層を形成、地上の大気をジ・アースに近いものに調整している。
また、衛星軌道の最外周にはサテライト・キャノンが3台配備され、外宇宙からの侵略に備えている。
ジ・アースが自然を重んじていたのに対し、ネクストでは実利を追求した社会形成が行われているのだ。

13作者:2009/12/17(木) 13:46:43
マクロスって言うなww

14ageるさ:2009/12/17(木) 20:45:15
マクロスがわからない俺はぼくらのをイメージするのであった

「遊戯王」っていう枠組から外れた世界観を持ってるみたいやねw地球だし><
ネクストへの到着に15年ってのは、片道でそんくらいかかるってことなのかね?移動中に幼稚園児が成人してまうがな!w
それとも、40億の人口とその生活に必要なその他諸々を移動させ切るのに掛った年月なんだろうか。
そして最低でも100年で(元)地球人が生活できる環境を築き上げてしまうとは、この辺は近未来的「亜空間物質転送装置」の成せる業!?

危険なとこに移民しちゃったね(´・ω・)

15名無しさん:2009/12/18(金) 02:37:29
ショウで転移とか言われたらダンバインが浮かぶっきゃないな

16作者:2009/12/18(金) 08:16:57
ザマさんじゃありませんww

17とことんツイてない日:2010/01/07(木) 11:36:47
自宅へと帰る途上、ショウは仏頂面のままだった。隣を歩くケントは『俺はもう気にしてないから。ショウもいつまでも気にしてるなよ』と大人な態度を見せ、それが同じ18歳であるからこそ、今度は自分のガキっぽさに仏頂面を隠せずにいたのだ。
『…くそっ!』
ショウは、自分の足元に転がっていた空き缶を踏んで回転をかけると、それを爪先で器用に宙に浮かせた。そして軽くていい音で宙の空き缶を蹴飛ばした。こういう、生活に直接役立たないことばかりは得意なのだ。
空き缶は弧を描いて飛んでいく。夕陽に染まる河の土手を反れて、川面にほど近いところまで。
『あっ、あああ危なあああい!』
ふいに空き缶の描く軌跡を視線で追っていたケントが叫んだ。つられてショウもケントの視線を追うと、川面近くには一人の人影が見えた。なんとショウの蹴った空き缶は、その人物めがけて真っ直ぐ飛んでいく。
声に気付いたのか、人影が振り向く。青みがかったように見える長い黒髪…女性だった。それも、まだ若い、ショウたちよりも少し年下だろうかというほどの。
もう空き缶は彼女の眼前に迫っている。ショウの世界がスローモーションになって、瞬間、彼女の髪が赤く燃えるような色に変わったように見えた。きっと西日に照らされたのだ。そして恐るべき反応速度で彼女は眼前の空き缶に手を伸ばし―――
『あうっ』
―――そしてスコンと小気味よい音がした。彼女の額に見事命中した空き缶は虚しくカラカラと地面をはねている。ショウは後悔の念やその他もろもろで、さっと顔が青くなるのを感じた。

18:2010/01/07(木) 20:26:37
加速の予感

ksk

ksk

19:2010/01/07(木) 20:38:12
フレイムヘイz

戦闘要員なのか否か……それが問題だ……!
ドジっ娘ぽくなったのは力が衰えているだけとか

ksk

20大佐:2010/01/07(木) 21:11:31
ageやがった、ageやがったなあああ!?
下のほうでひっそり更新を続けたいと思っていたのにいいいぃ!(;`皿´)

21ユックン:2010/01/07(木) 22:34:55
所詮掲示板だからな。
age sageなんかは よくミスルし 強要はできないだろうな。

おにゃのこだね。

22:2010/01/07(木) 22:36:18
故意でサーセンw

23ギャルゲじゃないよ:2010/01/08(金) 13:41:54
『だっ、大丈夫!?ごめん、俺の不注意で…!』
ショウが慌てて少女に駆け寄った。幸い、額が少し赤くなっているだけで、その少女に大した怪我はない。…痛そうではあるが。
『だ…だいじょぶです。すみません』
彼女の年の頃は、ショウたちより2つか3つ下といったところだろうか。顔立ちの整った綺麗な娘で、少し涙ぐんだ瞳が小動物のようだった。そんな彼女は、小さなおでこを押さえながら、逆にショウに頭を下げる。
『いや、そんな、悪いのは百パー俺なわけで、謝らないでよ頼むから、ほら、ね?』
そんな仕草が可愛らしくて、ショウはしどろもどろと慌てるだけ。ケントは少し離れたところで、二人を生暖かい目で見守っていた。

24ユッキュン@仕事・・・:2010/01/08(金) 15:39:03
ふむ、更新順調だね。
ヒロイン登場 名前はまだ空かさないんだな。
ショウとか年齢ってまだ空かされてないよな?隠すことで読者視点に近づけてるのかな?
ああ もちろん置かされてたらごめん。

あと俺個人としての話しだから気を悪くせずに読んでくれると嬉しいが
『ケントは少し離れたところで、二人を生暖かい目で見守っていた。』
このフレーズが引っかかるな。
そこには 俺には及び付かない考えがあるのかも知れないから 展開次第だけども。
生暖かい目ってあまり肯定表現じゃないからな。
ケントの彼女欲しいコールなんだろうか?

と、感想をのべてみた。
更新楽しみにしてる奴彼からの催促としてでも受け取ってくれ。
こういう感想が嫌なら教えてくれ。
ではでは、次回の更新を楽しみにしてる。

25ユッキュン@仕事・・・:2010/01/08(金) 15:39:37
さげ損ねた・・・。
ごめんなさい。

26:2010/01/08(金) 16:05:24
>皇帝表現じゃない
へー。

ピンクフィールドを呆れ顔で眺めてるようなニュアンスなのかしら
ksk

27:2010/01/11(月) 00:06:42
ケントのイメージが定まらナーイ

28大佐:2010/01/11(月) 14:38:21
必要なら脚注としてキャラクター紹介書くぜ

29親友:2010/01/29(金) 21:07:32
『あの…本当に、だいじょぶですから…っ』
言って、彼女は即座に背を向けて走り出す。怖がらせたつもりはないんだけどな、と、ショウはただ見送ることしかできなかった。怪我をさせたわけでもないこともあり、あまり余計な世話を焼くこともできない。
『…名前、聞き忘れたな…』
『別に怪我させたわけでもないのに、名前を聞いておく理由って?』
ショウが一言呟くと、後ろのケントが聞き返した。
『べ、別に。ただ、まあ、キレーなコだったなーと思ってさ』
『確かにね。今時珍しい純なコだったな。なるほど、ショウはああいうコが好みなわけか』
ショウがはぐらかすように言うと、ケントはニヤリと笑ってそうのたまった。するとショウはすぐに慌てて取り繕うものだから、またケントは普通の温かい目よりどこか含みのある、生暖かい目でそんなショウを見守るのだ。
それが二人の、日常。気付いた時には親友で、これから訓練生を卒業して、それぞれ新星統合軍や私設軍事会社に配属されても、おそらく変わることのない友情のあらわれであった……。

30名無しさん:2010/01/30(土) 23:27:44
ケント×ショウ……。いえショウ×ケントでしょうか。きっとケントの誘い受けに違いありません。

31大佐:2010/01/30(土) 23:57:46
なるほど、ゲイまたはオカマキャラは必須だったな。ありがとう

32:2010/02/26(金) 16:35:23
「ライバル」や「親友」みたいな重要な単語を序盤で使うのは
終盤で対比させたタイトルを使うための伏線だと予想

33名無しさん:2010/02/27(土) 16:52:29
つづけーっ

34家族:2010/03/02(火) 03:57:16
『ただいまー』
ショウは自宅へと帰ってきた。センサーがドアの前に立った人物をショウと確認すると、古い自動ドアが開く。
その瞬間、暗かった家の中にぱっと明かりが満ちた。これは別に自動ではない。ショウの唯一の『家族』が、ショウの帰宅を感知し彼のために照明を点けたのだ。

《お帰りなさい、ショウ》

『ああ、ただいま…零式(ゼロ)』
男性とも女性ともとれない、機械音声がスピーカーからショウに語りかけた。ショウは当然のようにそれに返答する。
サイバ博士が開発した人工知能『零式』、それがこの声の主である。母を亡くし、新星統合局からの弾圧を受けて父・ジンゾウもまた蒸発…そんな悲劇の主人公じみた家庭環境にあるショウにとってこの零式のみが、唯一家族と呼べる存在だった。
物心のついたころにはショウのそばに必ずいた零式は、その実体こそ持たないものの、彼にとっては親代わりのような、また兄弟や親友のような存在なのである。
《心拍数、血圧、脳内分泌物から、現在ショウは高揚状態にあると判断します。何かありましたか?》
『いや、別に。帰りにちょっと、ね』
言いながらショウは帰りに空き缶をぶつけてしまった少女のことを思い出す。かわいかったよなぁ…
《ショウは現在、異性のことを考えていると思われます》
『なっ…バカ、そんなんじゃねえよゼロ!』
零式に見事に言い当てられ、ショウは慌てて取り繕うように言い放つ。
《ショウは、異性のことを思考する際に、鼻の下を1.08ミリ伸ばし口元を緩ませる癖があります》
こうしたデータベースも二人の長い付き合いで培われたもの。ゼロにはかなわないな、とショウは頭をかいた。
『男の子は女の子のこと考えたら、みんなこうなるんだよ』
《私には、性別に関する身体的及び精神的な差別化の具体例や知識的なデータベースは存在しますが、感覚的な面での『性別』を理解する機能が欠けていますので》
ゼロは非常に優秀なAIだ。これが旧型のサーバーで機能しているとは思えないほど。すでにショウとの会話の中に、人間でいう感情に近いものを持っているようにも思われる。だからこそショウにとっての家族たりうるのだ。
『ところでさ、ゼロ』
《なんでしょう?》
『俺は…』
ショウは話を変え、そこで一旦語を切った。
『俺は、女の子のことを考えてる時、鼻の下伸びてたのか…ッ!?』

35名無しさん:2010/03/02(火) 04:13:13
ショウの癖ワラタwwww

家族的ロボ(ロボじゃないけど)は好きなのでテンションあがるなぁ。
物語が戦闘の方向に進んでも、彼女(勝手に呼称)には平和の象徴であってほしいものだ

36作者:2010/03/02(火) 15:18:52
こめあり(≧∇≦)

そろそろ話動かしますよー。ゼロは今後の展開にかなり食い込んでくるぜ。

37名無しさん:2010/03/02(火) 21:50:19
ここまでが第一話、ということだろうか(
大佐に限って、ストーリーに関わらないキャラを登場させるはずもないとわかりつつもゼロの無事を祈るます

38《あのヤロー》:2010/03/09(火) 02:31:35
―数ヶ月後―

《本日は辞令交付の内定者発表日ですが、自信のほどはどうですか、ショウ?》
その休日、ゼロがそう会話を切り出した。
ショウの通う新星統合軍直轄のネクスト士官学校…15歳以上であれば入学に年齢制限はなく、1年間の基礎学習の後は実践的訓練を積み重ねる。そして毎年の3月に新卒者の採用内定が出るのだ。それが、今日である。
新卒者とは言っても、基礎学習行程を終えていれば誰でも内定者となる可能性はある。実践訓練の様子やデータは常に新星統合軍や民間軍事企業によってチェックされており、優秀さを認められた者はスカウトにヘッドハンティングされるというわけである。
ショウとケントは基礎学習行程を終えてから2年目の18歳、早い者ならこれくらいで内定をとるというデータが出ている。
『去年はかすりもしなかったけど、今年こそはきっとなんとかなるさ。ケントや《あのヤロー》には残念ながら及ばないけど、俺の実力だってそこそこなんだぜ?』
ショウはゼロに対し、そう語を返した。きっとあの二人は内定をとるだろうと考えながら。
《…《あのヤロー》の発音に嫌悪感の含有が確認できましたが、差し支えなければどなたのことかお教え頂けますか?》
『…ホーネスト・ラグナシア』
ショウは仏頂面で答える。ゼロはそれを聞くと、いかつい旧式サーバーをヒュウウンと低い音で鳴らす。データベースの演算だろう。
《…ホーネスト・ラグナシア、19歳・男性。イギリス系白色人種。父方はジ・アースから続く世襲議員で、母方は音楽家の家系…典型的なエリートですね。昨年には新星統合軍からの内定を得たものの辞退、本人は実力重視の民間軍事企業への入隊を希望している模様ですね》
『聞いてるだけで胸が悪くなってくるからよしてくれよ…』
あのヤローにだけは遅れをとるものか。何としても今年こそは内定をとらねばならない。親友であるケントはほぼ内定者入り確定であることもあり、自分一人だけ取りこぼすわけにはいかなかった。

39名無しさん:2010/03/09(火) 19:15:13
ペロッ……これは週一更新……!
今月に入って、だんだんと情景が見えてきた気がする><
書き方からすると、特定の試験なんかは行われないんだね。狭き門なのか案外採用枠多いのか検討つかんっ

そしてゼロのサーバーはデータが詳しすぎて何気に怖い(
市役所(?)鯖へのアクセス権でも持ってんのかしら

40ゼロの独り言:2010/03/10(水) 05:11:16
―ネクスト士官学校の新卒者採用内定のからくりとその裏事情―

まず国家を持たないネクスト・アースを議会と二分化して統制している新星統合軍の直轄であるネクスト士官学校に卒業や士官試験などは存在しない。
試験に相当するのは入学後一年間に渡ってかなりハードなスケジュールと内容で学生に詰め込まれる基礎学習行程そのものとなる。士官は一兵卒とは違い、その肉体ではなく技術や頭脳で彼らの上に立つ存在であるからだ。
事実、この基礎学習行程の一年間だけで音を上げる学生は多い。金のある家の坊ちゃまばかりが士官になれるのではないのだ。実利を求めるネクストにおいて、軍というものは実力重視の世界なのである。

明確な試験などがなく新卒採用内定者の人数が年度ごとにまちまちなのにも理由がある。
優秀な人材をいち早く現役の場に引き入れたい、というのが軍部の狙いである。ただし世間では、その年度に退役・殉職した軍人の人数に比例して新卒者採用枠が決定されているなどと言われており、『ところてん方式の軍人生産所』などとも揶揄されている実情があるが。
だが惑星間移住開始から一世紀を迎えようとしている現在、民族間の内紛や、惑星間移住の最中に人類を襲ったバクテリアン帝国の巨大戦艦群なども鳴りを潜めており、実質上新星統合軍は治安維持活動や被災地などへの派遣部隊としてのみ機能している。いわゆるお飾り状態であり、その就役率は年々減少の一路。わざわざ士官学校を出るより商社にでも殉職したほうがまだ待遇が良いというのが実状だ。
しかしその中でも、昨今は民間軍事企業からのスカウトが登龍門であるらしく、士官学校の一部実力派しかヘッドハンティングされないそうした一流企業を学生たちの大半は狙っていると言っても過言ではない。
近頃ではそうした業界に参入する企業も増加傾向にあり、中でも《A・O・J》や《ジェネクス》コーポレーションといったあたりは最大手であり、新星統合政府により規定された範囲内で武装やマシンの自己開発を行っている。
ショウの父であり私のOSの開発者であるジンゾウ・サイバ博士もそうした企業を発足した人物であった。しかし彼はその研究内容である《サイバネティック・プログラム》について道徳面で弾圧され失脚。現在では自社製兵器の開発工場も封鎖されており、残ったのはその息子であるショウへの世間の冷たい視線のみである。
ショウが士官を目指すのは、そんな世間を見返すためだと以前語った。

41作者の独り言:2010/03/10(水) 05:14:34
書き込みしてから誤字に気付くと萎えるぜ…!

42人事:2010/03/26(金) 01:52:08
電子音が鳴り、テレビやゼロの出力モニターとして機能している壁の液晶パネルに『CALLING』の文字が浮かんだ。ケント・ヤマサキと名がある。《ヤマサキ様から電話ですね》
『ゼロ、つないで』
ショウが言うと、ピッと音がして液晶パネルにケントの喜色満面の顔が映る。
『ショウ!内定取ったよ!俺は新星統合軍航空宇宙科、超時空戦闘機母艦《軍茶利》所属の戦闘機部隊だ!』
ケントは興奮ぎみだった。彼はずっと蒼空を駆ける超時空戦闘機に憧れていた。すでに戦闘機オタクの域の彼にとっては、この上ない人事であったことだろう。
ショウもまた、複雑な心待ちはありながらも、親友の朗報を共に喜んだ。こうした気持ちを共有できる、気の置けない友というものは、きっとかけがえのない存在であるとショウは感じる。父親が蒸発してからショウにはそういった友人はいなかったし、世間の風も手伝ってショウの友人になるものなどいなかったのだ。
『おめでとう、ケント…!本当におめでとう!』
だがケントだけは、そんなショウに気さくに声をかけてくれた唯一の人間であり、今でこそ無二の親友だった。
《ショウ、メールです。新星統合軍人事部から、ですよ》
『来たかっ!?開けてくれゼロ!』
電話中にまた電子音が鳴り、パネルの端にメール着信のアイコンが浮かぶ。ショウに言われメールを開くと、パネルのケントは別のソリッドヴィジョンに姿を移した。空いたパネルに新星統合軍のロゴと本文が浮かぶ。
『…ショウ・サイバ三年次訓練生…新星統合軍航空宇宙科、第七管区超時空戦闘機母艦《金華描》…ハンガースタッフへの配属を任命する…ッ!』
確認に確認を重ねるように、ショウはパネルの文字を辿る。顔色が段々とバラ色に染まっていく。
『やったな、ショウ!』
ソリッドヴィジョンのケントがガッツポーズを取る。ショウは我がことを疑うように、笑顔のまましばし凍りついていたが、やがて立体映像のケントと抱き合うように喜色を露わにした。
《ショウ、おめでとう。私も『喜ぶ』という自発性プログラムが適用された模様です》
ゼロは普段より1オクターブ高い声色(とはいえ性別も何もない電子音声である)で言うと、旧式のサーバーをヒュウウンと鳴らしてみせた。
『ゼロ、ケント、ありが―――』

瞬間だった。鋭い音と光、そして振動がその場を襲った。

43破壊:2010/05/13(木) 01:15:14
『な…っ、なんだ!?』
あまりのことに、ショウが声を上げた。ケントとの電話も途切れ、立体映像が消失する。
《外部からの衝撃により屋根が破砕した模様です。詳細は不明。緊急事態を宣言し、ショウには早急な退避を勧告します》
言うと、ゼロは屋内に緊急アラームを鳴り響かせた。火災も併発しているらしく、スプリンクラーが作動して水が噴出する。
『ゼロ…ッ、ゼロはどうするんだ!?』
退避と聞いたショウは、謎の衝撃でヒビの入った液晶に叫ぶ。ゼロに外部へ脱出する足はない。
《私なら大丈夫です。こちらのサーバーは焼けても問題ありません》
『こちらのって、それはゼロのメインサーバーだろ!?焼けたらブラック・ボックスしか残らない!』
ゼロの旧式のサーバーが低く唸る。伝えたくとも伝えられないことがある時にいらだっているような、そんな音。
《ショウ。…早く退避を》
『ゼロ…!』
瞬間、再びの衝撃。破砕した屋根の穴から、巨大な鉄の塊が突き抜けた。
足だった。脚部だった。オレンジ色のラインが鮮やかな、AOJの人型機・ガラドホルグ。見上げるほどの巨体が、ショウの家に着地したのだ。
『AOJが、どうして!』
よく見れば民間軍事企業AOJのエンブレムはない。他社とのライセンス契約で量産されたモデルだった。
《テロであると思われます。ショウ、早く退避を―――》
ゼロがそう言った時だった。量産型ガラドホルグは再び足を振り上げると、踏みつけるような蹴りを下に放った。その鋼鉄の脚部は、ゼロのサーバーを、ショウの目の前で粉々に粉砕した。
凄まじい衝撃を間近で受けて、ショウは床を激しく転がる。
『ゼロぉッ!?』
ゼロのメインサーバーは完全に破壊された。家のアラームやスプリンクラーといった、ゼロが管理していた全ての機能が停止する。
ガラドホルグの足元に散る火花と漏電した電流が立てるパチパチという音が、ゼロの、最後の言葉に聞こえた。


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