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蠱者(マジモン)

1キャプテン:2023/05/10(水) 20:57:25
工場夜景、爆発し倒壊する煙突…タンク…建物。
その合間を…『少年』が走る、腹部から血を流した『少女』を背負って。
暗所の鉄パイプに足を挟まれ、2人とも転倒する。そして追いつかれる。人の姿をした怪物達…虫のような黒い単色の目…鳴き声の歯ぎしり音。

「…嫌だ…やめてくれ!?」「ゴゲット!!」
少年を呼ぶ中年の男性。『細長いノコギリ』が怪物に絡まり…一瞬で体を切断する。

「ウシロおじちゃん?サッキを助けてくれ!!」
「お前達…その目?!」
助けられ呼ばれた少年少女の目は…あの怪物達と同じ『単色の目』になっていた。

「サッキを…助けてくれおじちゃん!!」
「…先ずは自分で助けて見せな。」
一枚のチラシを渡される…サーカス団、第一工場にて公演中…名前は『標本図鑑』。
「…ああもうやってやる!!成るように成りやがれ!!」

2ノートン:2023/05/13(土) 21:45:10
人の姿をした怪物を、「ウシロおじちゃん」と呼ばれた男が食い止めていた。
「早く行け!!」

ゴゲットは走る。ただひたすら走った。
目的地が徐々に見えてくる。夜の暗闇の中、チカチカと光るライトを飾り付け、赤と白のストライプが特徴的なテントがあった。サーカス団「昆虫標本」である。

「サーカス団!?こんな所、本当に俺たちを助けてくれるのかよ!!」

昆虫標本に飛び込むゴゲット。
「誰か…誰かいるか!!助けてくれ…妹が危ないんだ!!!」

3キャプテン:2023/06/01(木) 18:18:07
逃げて?!

微かに聞こえる声。老若男女全員が、一斉に『単色の目』をテントに入ってきた兄妹に向け襲いかかる。…

数刻後…サーカス団員達がテント前に立つ。
「早く…観客達を避難させるぞ。」
団員達が急いで入る。

「…ハァックァッハァ…」「フウウウゥゥゥ…」
グチャ…バキッ…バチャンッ…。
血まみれで単色目のゴゲットとサッキ…『照明器具』に押し潰された『人の形をした化け物達』…その屍の山の上に二人は立つ。…団員達が一斉に身構える。しかし…兄妹の目がスーッと元に戻り、気絶し倒れた。

「訳がわからん…何が何やらだ。」

4ノートン:2023/06/13(火) 20:52:49
ボソボソ…と話し声が聞こえる。
ハッとゴゲットは目を覚ます。
「ここは!?」

ピエロの格好をした奇妙な男が、ゴゲットに近付いてきた。
「ようこそ、昆虫標本へ。僕の名はピッキータ。このサーカス団の団長を務めている。君の名は?」
「俺はゴゲット…サッキ…サッキはどこだ!?」

焦るゴゲットに、ピッキータは優しく指差す。
「あそこだ」

近くのベッド。静かに眠るサッキの姿があった。

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6キャプテン:2023/07/14(金) 21:00:24
「さて…話してもらおうか。」
「(今は信じるしか。)マジモンに襲われた。それで俺も妹も虫に寄生されてマジモンに…。」
「だが二人は理性も自我もある…怪しいなぁ。」
「ウシロおじちゃんに言われてここに…。」

ザクッ!?
突如ナイフがゴゲットをかすめ、壁に刺さる。

「(投げたナイフに反応できてない…工場側のスパイでは無い…か。)ウシロ…あのオッサン。すまないがよそ者をかくまって団員を危険には晒せない。悪いけど傷は大丈夫そうだから、妹さんが起きたら出てってくれ。」
バタンッ。
ピッキータはそう言い、外へ行ってしまった。…

…標本サーカス、コンテナハウス街外。
「戦える団員達を蟲で誘き出し、その隙に俺がサーカス内の兄妹を確保…それが工場からのミッション。見ててくれよ先輩、俺の晴れ舞台!!!」
若い細目の男性が明るく元気に宣言した。

7ノートン:2023/07/16(日) 22:17:39
ゴゲットは壁をドンッ!!と思い切り叩いた。
「クソっ!!出てけったって…どうすりゃいいんだよ俺たち…」

その時、扉がバァン!!と開く。
「お前か?今壁殴ったクソ野郎は。の部屋が揺れた…ここは壁が薄いんだ。調子に乗るな!!」

何と現れたのはクマの着ぐるみだった。
「(何だコイツ…サーカス団員か?)あぁ…済まない」
「お前、ウワサの怪しい兄妹か?」
「怪しいって…(あんたも十分怪しいが)」
「マジモンなんだろ?お前」
「えっ?」

ゴゲットは衝撃を受ける。クマの着ぐるみは、背中のジッパーをジーッと開ける。しかし、中身は空っぽだった。
「オイラの名前はプラチナゴリラ。オイラもマジモンだ」

8キャプテン:2023/07/25(火) 18:08:52
「飴ちゃんいるかい?」
ゴゲットが首を横に振る。
「見張り…あの団長さんに言われて?(ギリッ)」
「警護と言ってくれ。まぁマジモンの俺達と違って、団員のほとんどは人間…ああ言うしかなかったんだ団長は。」
睨むゴゲットにプラチナゴリラが溜息をついた。
「団員を失いたく無いのさ…『家族』だから。」

『家族』…ゴゲットが眠るサッキを横目に見る。
「ズルいや…わかった。妹が起きたら出て?!」

ドゴンッ!!!
トラックが外のコンテナハウス郡に突っ込む。荷台には、みっしりとマジモン達が詰め込まれ、ギリギリッギリギリッ…と歯軋りを響かせていた。

9ノートン:2023/08/10(木) 19:28:47
「何の音だ!?」
プラチナゴリラが立ち上がる。
状況を確認したい気持ちと、監視の役目。どちらを優先するべきか迷っていた。
「うーむ、うーむ…オイラは考えるのが苦手なんだ…」
「…見に行ったらいいじゃん」
「…あークソ!!仕方ない!!」

プラチナゴリラは背中のジッパーを開ける。中身は…何と空っぽだった。
「空!?どうなってるんだお前!!」
「いいからオイラの中に入れ!」

ゴゲット無理矢理着ぐるみの中に入れ、プラチナゴリラは音のあった方向へ走り出した。
「これなら監視と状況確認が同時に出来る!オイラ頭良い!」

10キャプテン:2023/08/20(日) 10:49:39
虫が…虫が私の体から…。

…「お兄ちゃん?!」
サッキが目覚め叫び、ベッドから勢いよく上半身を起こす。ズドンッと頭が誰かの頭と打つかった。
「こりゃ笑いだアトちゃん。」
「アト姉ちゃん大丈夫?」
「痛っ…モドリちゃん、心配ありがとね。サガル、貴方はここで朽ち果てなさい。ごめんなさいサッキさん、団長に見ているように言われて。」
若い男性と女性、そして女の子が1人。
サッキがため息を吐くとハッとし、3人に言う。
「おにい…兄は!?」
「無事よ。今は別の所にいる…わ…」ザクッ…ポタッポタッ…。

『黄色く光る鞭のような物体』が…アトの胸部から突き出し、うねり、血を撒き散らしていた…。

11ノートン:2023/10/07(土) 10:36:39
「団長!?」
プラチナゴリラが現場に到着。そこには1人、団長ピッキータが立っていた。周りには、マジモンの死体が散乱していた。

「これあんたが1人でやったのか!?」
ゴゲットがプラチナゴリラから無理やり顔を見せる。

「そうだ。まったく…おいゴリラ、お前なぜここにいる?見張の指示はどうした?」
「キャーーー!!!」

3人は振り返る。遠くから聞こえる叫び声。
「まさか…今の声、サッキか!?」

12キャプテン:2023/10/26(木) 14:42:46
ゴゲットが走る…が、目の前に。
「全く…虫は疲れる。」
地面が盛り上がり『ムカデが束になり蠢く人型』が起き上り中年男性特有の疲れた濁声で喋る。
「撃て!!」「待て…奴は?!」
駆けつけた団員達が銃を撃つ。だが瞬間、団員達の体に弾痕が空き、血が滴り倒れる。

「オロシは『遠心力』で銃弾の軌道を変える!」
「ピッキータか…そろそろ『ブラックライフに戻る』気になったか?『標本ども』を差し出せ。」
「ふざけるな!『治験者』なんて!」
「で…非感染者の味方か?無駄だよ『同胞』。」
「お前らがしている事よりよっぽどマシだ!」
「諦めろ、俺たちは…『害虫』なんだよ。」
「…嫌だね。」

オロシがため息と指をゴゲットに向ける。
「はぁ…ならその兄妹だけでいいぞ?それで団員達の安全は『今から』保証してやる。」

13ノートン:2024/02/27(火) 00:42:31
「プラチナゴリラ、コードBだ」
「…あいよ」
プラチナゴリラはゴゲットを無理やり引っ張って走り出す。程なくして、サーカステントから爆音で音楽が鳴り響いた。

「おっと、行かせねぇよ?オロシ。お前達の奇襲にも、俺たちは対処出来る」

゛コードB゛とは、ピッキータが作った待避マニュアルの一つである。想定外の奇襲があった時、すみやかに団員がサーカス団から逃げ出すための退路を確保していた。

「チッ…面倒な事を!」
「教えろ。何故あの兄弟にこだわる?」

14キャプテン:2024/03/10(日) 22:56:37
「いや〜マジモンの先輩としていろいろ教えてやるべきだと思ったんだよ〜!!…覚悟できてるな?」
ピッキータの目前で、オロシの全身のムカデが加速する。…

…ゴゲットとプラチナゴリラがサッキの部屋に入ると…『団員服姿の4人』が血溜まりに倒れている。その真ん中でサッキが体を震わせ、座り込んでいる。
「サッキ?!」
ゴゲットがサッキに駆け寄る。
「…?!離れろゴゲット!!」
…刺せ…
サッキがナイフを突き出す。咄嗟に叫んだプラチナゴリラがゴゲットを突き飛ばし…腹にナイフが刺さる。
「お兄さん逃げて?!死体の一つは…」
…団員服姿の1人がゴゲットの背後で起き上がる。

15ノートン:2024/03/15(金) 22:29:44
ゴゲットは咄嗟に後ろを振り向く。細身の男がナイフ片手に襲いかかってきた。
「この距離…普通の人間の反射神経なら避けられんぞ!!」
「くそ…やられる!?」

ガキンッッッ!!!

!?

ゴゲットも、細身の男も、何が起きたのか理解出来ていなかった。プラチナゴリラのみ、即座に言葉を発した。
「感覚で使いこなせゴゲット!!その力はお前のものだ!!」

ゴゲットの体は黒い浮遊物で覆われていた。その浮遊物は、ナイフを止めていた。

16キャプテン:2024/04/08(月) 19:07:21
…眠れ…
サッキが倒れ、眠る。『光る触角』がサッキの首筋から離れるのが見える。
「さぁ自己紹介だ。僕はシマイ、君とは親友になれるといいなって思ってる。さぁゴゲット君、僕らの仲間になってくれるよね?」
ゴゲットが唖然とし…そして怒りの形相になる。

「お前、この状況で…何でそんなセリフが出るんだよ!!!」

団員の死体…サッキに刺されたプラチナゴリラ…横たわるサッキ…そして最後にシマイという男を睨む。
「仕方ない。ゴゲット君、君とは絶交だ!!」

17ノートン:2024/04/14(日) 21:27:31
プラチナゴリラが振り絞った言葉。“感覚で使いこなせ”
意味が分からなかった。しかし、迷っている暇は無い。やるしかない。

ゴゲットはイメージした。目の前の敵をぶちのめす。黒い何かでぶちのめす…黒い…。

次第に、ゴゲットの両腕が黒い塊に覆われていく。
ボクサーが手に付けるグローブ、のイメージであった。

「失せろ、このクズ野郎!!」
ゴゲットが殴りかかる。シマイはひらりと避け、背中から黄色く光る触覚をゴゲットにくっ付けた。

「“動くな“。はぁ…全くバカ過ぎる。相手の能力も分からずに突っ込んで来るなよ」

18キャプテン:2024/04/25(木) 22:56:04
シマイがサッキの服をずらす。脇腹に傷痕があり、ゴゲットに見せる。
「コレなんです?」
「やめろ」
「コレは悪い事だろ?」
「仕方がなかったんだ」
「お前、実の妹に…」
「それ以上言うな!!」
「傷口から〇〇を…」
ザクリッ…

ゴゲットの腕が勝手に動いた。黒い塊が伸びてシマイの喉を貫いた。…だがシマイは笑っている。
「グヘッ…ハハハッ…オレ…の『一触即発』…を」

シマイの虫の能力は、『触角に触れた対象1人に一つの命令を出す』。肉体は命令を聞いても、虫には別で命令が必要だった。

「シマイ、黙れ…喋るな…口を塞げ」

19ノートン:2024/04/27(土) 21:17:39
「感覚で使いこなせってこういう事かよ、プラチナゴリラ」
ゴゲットはそのままシマイの顔面を殴る。地面に叩き付けられるシマイ。
勝利を確信したゴゲットだが直後、ある違和感が襲う。
「おかしい…何故俺は動けている!?」

シマイは、喉を貫かれた瞬間に一触即発の対象をゴゲットの虫へ移動させていた。
ゴゲットの虫はシマイの喉の傷を埋め、止血をした。
「とりあえず止血は可能か。だが、いい能力じゃないか、ゴゲット。小さな、マイクロサイズの虫を無数に操る能力か。俺の一触即発は1体しか操れないが、アリが隊列による集団行動をするように、一匹を操れば誘因物質により他の虫も追尾してくる。面白いな」
「何言ってる!?」
「分かりやすく言ってやる。この能力は俺のものだ!」

20キャプテン:2024/04/30(火) 21:15:02
「一触即発…虫よ集い…散れ。」
小さな黒が、シマイの拳に集い、蠢き…ゴゲットの腹に当たる。黒い虫達が弾け飛ぶ。ゴゲットの腹が軽くえぐれ、倒れる。
「凄い威力だな。まぁマジモンの体なら、それぐらいの傷、時間で回復するよ。さて…もう一発。」
また、黒く蠢く拳をゴゲットの腹に突き出す。

や…め…て…。

「?!」
ゴゲットの腹にバレーボール程のダンゴムシが現れ、クッションの様に凹み、シマイの拳を止める。
「や…め…て。」
サッキがうなされている。

21ノートン:2024/05/03(金) 21:25:57
「なんだこのダンゴムシは…!?ゴゲットでは無い…まさか!?」
倒れたまま、両手で何かを操る仕草を取るサッキ。ゴゲットを守りたい。その一心で発現したばかりの能力であった。
だが、肝心のダンゴムシは丸まったままピクリとも動かなかった。

「まだ使いこなしていないようだな。下手に暴れられても困る。妹の方は、両腕両足の骨を折り、再度眠らせるか」
シマイはサッキに近付く。その油断をサッキは狙っていた。

「残念ね…確かにこのダンゴムシの事はよく分からない…でも、これくらいの事は出来るわ!!」
ダンゴムシが突然ビクッと動く。ギュルギュルと回転し始め、激しい勢いでシマイに激突した。

22キャプテン:2024/05/06(月) 21:00:40
グニャリッ…ポンッポンッポンッ…ゴロンッ。
ダンゴムシは凹んで落ち、ちょっと跳ねて転がり止まった。
「…弱いねぇこれ(…この虫、ヤバいな。)」

ブチリッ…プラチナゴリラがシマイの触手を引きちぎった。腹の傷に包帯を巻いている。
…シマイが顔をしかめ、触手を生やし伸ばす。長々と触手が部屋中を埋め尽くし、動きを封じる。

「ゲホッ…(喉の傷が限界か)また会いましょう皆さん!!」
その声とともにシマイは部屋から消えた。

23ノートン:2024/05/12(日) 21:07:51
地獄のような夜が明ける。
早朝から、ピッキータは団員に標本図鑑の解体指示を出していた。

「ピッキータ、何してる!?」
慌てたゴゲットがピッキータの元に走ってきた。

「建物を解体してるんだ。元々このサーカスの建物は移動式のケージでね…次の街へ移動するのさ。昨日の襲撃もあったし、ここに留まるのは危険だと判断したんだ」
「なるほどね。じゃあ俺たちも連れて行ってくれよ」
「ダメだ。お前たちはここに置いていく」

24キャプテン:2024/05/20(月) 22:01:57
「何で?!」
「…重症軽症数十人…死者…3人、死体の損壊が酷く、誰かもわからない。」
サッキが昨夜、世話してくれた3人の団員のことを思い出す。
「…ごめんなさい。」
「謝るな!!…死んだアイツらを…侮辱するな。昨夜も言っただろ?団員を…家族を守るので手一杯なんだ。」「で…このガキどもは死なせる気かよ。」

濁声のおじさん、ウシロだ。
驚いたピッキータの肩を大きく叩く。
「断ったら、コイツらを殺すのと同義だぜ。」

25ノートン:2024/05/25(土) 21:37:07
「…あんたのお人好しには頭が下がるよ。仕方ねぇな。ゴゲット!解体作業を手伝え!付いてくるなら仕事しろ!それが条件だ。それと…」

ピッキータはサッキを指差す。
「お前は医務室だ。体を治すことを考えろ」
「よっしゃー!!」

ウシロはゴゲットの肩を叩く。
「頑張れよ」
「ありがとうございます、ウシロさん。あなたはどうする?ここに残るの?」

26キャプテン:2024/05/29(水) 16:29:53
ウシロが眉をひそめる。
「それなんだがピッキータ…『団員の遺体』をこっちで調べたい。持ち出しても構わないか?」

…その晩…医務室。
「急患です」「状態は」「バイタルチェックを」
騒々しさにサッキが目覚め、区切りカーテンを開く。そして咄嗟に口を手で覆う。
「そんな…どうしてですか?!」

ゴゲットが…タンカーで運ばれてきた。

「助けてサッキ…ブラック労働だ!全身が痛い!」
『診断結果…重労働による過労・筋肉痛』
「お兄さん…お元気そうで何よりです(皮肉な笑顔)」

27ノートン:2024/06/02(日) 20:53:38
標本図鑑に住むようになってから1ヶ月が過ぎる。
サッキは完全に回復。ゴゲットも肉体労働をしながら、標本図鑑に馴染みつつあった。

2人は、労働と同時進行で2つの訓練が進んでいた。
一つ目は、能力の訓練。自身の能力を理解し、使いこなす訓練だった。
「俺は“集蟲力”と名付ける。サッキは“虫達磨(むしだるま)”で良かったか?」
「そうですね、それでいいです」
「そうだな。問題は…」

2つ目の訓練。それは、サーカス団員としてパフォーマンスを覚えることだった。
「空中ブランコでも覚えるか?」
ピッキータの唐突な提案に、2人は苦戦していた。

28キャプテン:2024/06/07(金) 21:34:33
…第二工場、標本図鑑遠征組
「どうして、あなたが?」
倒れる団員たちの中、少女は人影にそう言い残し、自身も倒れた。

…朝、第一工場
「電報です。」
「お疲れ様…?!」

『 タスケテ ダイニ コウジョウ 』

ピッキータが読んだ電報の紙を強く握り、振えながらデコへと強く当てる。…そして急いでバイクに跨る…しかし。
「団長…どこへ行く気だ?」
背後からその肩をゴゲットが掴む。
「…買い物だ。」
「図鑑メンバーに何かあったんだな?」
「察しが良すぎて気に食わんガキだ。」
「俺たちも一緒に…」
「お前らが行ったら…助けに行って被害者になって、また誰かが助けに行って被害者になって…を繰り返して被害者が無限増殖するのはゴメンだ。」

29ノートン:2024/06/13(木) 08:24:49
ピッキータはゴゲットを振り払い、そのまま突っ走って行った。
「団長め、俺はまだお荷物かよ」
そう言うと、裏からバイクを持って来てエンジンをかけた。
「ちょっと、お兄さん!?」
「サッキ、行くか?」
「行きます、あなた1人に行かせたらどうなるか…」

ドカドカとプラチナゴリラが近寄ってくる。
「おーい2人とも!空中ブランコの練習はどうするだ!?」
「今日は欠席だ!すまん!」

ゴゲットはそのままピッキータの後を追い、飛び出してしまった。

30キャプテン:2024/06/17(月) 22:09:01
…2つのバイクが水飛沫をあげ、浅い水路を走る。そして遠くに見え始める。

第二工場、発電所ダム

ギリギリギリギリギリギリッ!!
たくさんのマジモンたちが歯軋りをさせ、水路からダムへ行列をつくっていた。…水路の脇の物影に隠れて、2台のバイクが止まる。ピッキータが嫌な顔をする。
「酷い虫の音だ。耳を塞ぎたくなる。」
二人乗りのゴゲットとサッキ、光景を目の当たりにする。
「あのダムか。」
「はい、電報の発信元はあそこです。」

…発電所ダム
その上に立つ人影が口を開く。
「あの兄妹、来るだろうか。」

31ノートン:2024/06/20(木) 08:22:45
裏手の道や細道を通りながら、マジモンにバレないように慎重に進むゴゲット達。ダムの入口へと辿り着く。
「鍵がかかっているか…なるべく静かにドアを開けたい。ゴゲット、行けるか?」
「もちろん。修行の成果をみせてやる!」

集蟲力、発動。小さな虫が蠢き、ドアの鍵口の隙間に侵入した。
「少し時間をくれ。色々試してみる」

数分後、ドアがガチャっと開く。
「やった!」
「よくやった。それでは入る。慎重にな」

32キャプテン:2024/06/24(月) 14:27:18
そして…扉が開かれた。

「久しぶりだね。」

中央にガタイの良い短髪の女性。ゴゲットが身構える…だがピッキータとサッキは動けなくなる。何より2人の頬を涙が伝う。
「どうしたんだ2人とも、何が…?」
ピッキータがよろよろと駆け寄る。
「アト…生きてたのか?」
サッキはアトにサーカスで看病してもらった事を思い出していた。目の前で、襲撃してきたシマイに殺された団員である事も。

「団長…すまない。ぶち抜け『蠅叩』!!」
アトの目が単色に染まる。掌から何かが放たれ、ピッキータの膝を撃ち抜いた。
「クッ…アト…虫を…何でだ。俺達は家族だろ?」
膝を抱えながらピッキータが言う。アトが両掌を兄妹に向けた。
「…ゴゲット、サッキ。私と一緒に来てもらう。」

33ノートン:2024/06/30(日) 21:47:16
「あの電報はフェイクか?」
「そうだ」
「…何故俺たちを狙う?」
「付いて来れば、全てを話そう」
「…嫌だと言ったら?」
アトは再び、ピッキータに狙いを定める。
「団長が死ぬ。それでも良いのか?」

ゴゲットは会話の最中、静かに、敵にバレないようにマイクロサイズの虫を地面に張り巡らしていた。
「アト、あんた俺の能力知らないだろ?」
「は?」
次の瞬間、大量の虫がワッ!!と地面から吹き出し、アトの両手両足を縄のように締め上げた。

34キャプテン:2024/07/05(金) 19:34:15
サッキがピッキータを引きずり、別室へ運ぶ。
撃たれた足を服の切れ端で強く結ぶ。
「アトが…虫にされた…クッ」
「ここで待っていてください。」

縛られたアト…彼女はゴゲットに訴えた。
「人は必ずマジモンを滅ぼす…私たち諸共。」
「それでブラックライフに?」
「なってわかった。共存なんて…。」
「…お互い、マジモンになってまだ日が浅い…答えを出すには早くないかな?」
「早い?もう遅いんだよ。」
アトがそう言い、握っていたボルトが圧力で破裂した。アトの片手が血塗れになり、ゴゲットの虫の縄が千切れた。

35ノートン:2024/07/31(水) 21:14:48
「ピッキータとは繋がりがあったみたいだが…。悪いが俺はあんたに情は無い。最後の忠告だ。考え直せ」
「断る」
「やるしかない…か」

2人は再び戦闘態勢に入る。ゴゲットは、ピッキータから学んだ事を思い出していた。
「能力者同士の戦いは情報戦から始まる。相手の能力をいち早く理解し、反撃に転じる。いいかゴゲット…見極めろ、敵の能力を。一挙手一投足を見逃すな!」

「ボルトを握り潰し、さっきは俺の膝を…まさかこいつ、筋力を操るのか!?」


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