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規制中の怖い話スレ

898毒男 ◆B.DOLL/gBI:2018/12/29(土) 22:33:50
昔の暦の二十四日は月が出ない。
それなのにこの夜、福井の城の鳩の門の枡形(門から門まで石垣に囲まれた四角い広場)に月が映るという。
枡形の広場の土の上に月が映るという。
見た者は死ぬという言い伝えがある。
そもそも、四月二十四日とはどういう日なのか?
単刀直入に言うと、北の庄の城で『柴田勝家』という殿様が切腹した日だ。
城は炎に包まれ、家来達も腹を切り、或いは敵に討たれて死んでいった日だ。
天正十五年四月二十四日の日だった。
攻めたのは彼の有名な『豊臣秀吉』(当時はまだ『羽柴秀吉』だったが)。
農民から身を起こした彼に勝家は負けた。
どんなに無念だっただろう。死んでも死に切れなかっただろう。
くる年もくる年も四月二十四日が来て、亡霊は墓から起き上がった。
青白い灯が一つ一つ増えていき、フッと消えた時に動き出す。

福井生まれの福井育ちで如何してこの日にうっかり出歩いたのだろう…。
どの家も戸を閉め切って息を殺していると言うのに…。
お婆さんは悔やんだ。
お婆さんはガタガタと震えながら、提灯の火をフッと消した。
このまま逃げても辺りに横丁は無い。逃げ出せば首なし行列に追われる…。
ならば、後ろを向いて、見ないように、見られないようにやり過ごす他仕方が無い。
お婆さんは道に背を向け、よその家の軒下にかがみ込んで確りと目を瞑った。
足音は次第に近づいてゆき、やがて後ろを通り過ぎていく。
静かに人の歩く音、馬の歩く音、鎧がかすれる音が鳴ってゆく。
息の詰まるような長い時間だった。

ようやく、しんとした。
お婆さんは暗闇を這うようにして、家に帰った。
そして、帰ったなり布団を被って寝てしまった。




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