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避難所用SS投下スレ11冊目

182ウルトラ5番目の使い魔 29話 (6/13) ◆213pT8BiCc:2015/07/13(月) 18:25:58 ID:KxOFlp2.
「あいつ、これまで俺たちを油断させていたんだな。畜生、許さねえ!」
 村人たちは激昂し、吸血鬼アレキサンドルをやっつけろと口々に息巻いた。
 しかし、相手は吸血鬼である。村中の男が総出で退治をおこなうことになり、女性たちはその間、村で一番の高台にある村長の屋敷に避難しておくことになった。
 もちろん、アリスもそこにいて、山刀を持って出かけていく父親を見送っていた。
「お父さん、行っちゃいやだよ。吸血鬼って、なんでアレキサンドルさんをやっつけに行くの? どうして」
「アリス、いい子だから村長さんの家でおとなしく待っていておくれ。アレキサンドルは、人間に化けて血を吸いに来た怪物だったんだ。必ずお父さんたちが退治してきてやるから、少しの辛抱だよ」
 そう言い残し、アリスの父親は村人たちと出かけていった。
 村人たちは手に手に武器を持ち、すきやクワを持った者から槍や弓矢を携えた者までいた。村中の男集、二百人近い人数がたったひとりの男を狩るために向かったのである。これだけの人数がいれば、たとえ相手が吸血鬼でも負けはしないと誰もが思っていたはずだ。
 だが、これが吸血鬼の張った罠だということに、村人たちは気づいていなかった。
 それから数時間後、大挙してアレキサンドルの家を襲った村人たちは、女たちの待つ村長の屋敷へと戻ってきた。全員が屍人鬼に変えられて。
「お、お父さん……」
「あ、あなた、どうしちゃったの……」
 夫や父、恋人の帰りを待っていた女たちは、彼らの変わり果てた姿を見て愕然とするしかなかった。
 罠……すなわち、アレキサンドルの家を取り囲んだ男たちは、火を放ってアレキサンドルの家を彼の母親の老婆ごと焼くことには成功した。しかし、そこに四方からこれまで森で行方不明になっていた男たちや、使者として出されて帰ってこなかった男たちが屍人鬼になって襲い掛かってきて、ふいを打たれた村人たちはことごとく血を吸われ、血を吸われた人間もまた屍人鬼になって村人を襲い、男たちは全滅したのであった。
 そして、屍人鬼と化した男たちに村長の屋敷は包囲され、女たちも逃げる間もなく捕らえられた。使者の若者がひとりだけ村に逃げ帰れて、アレキサンドルのことを報告できたことも、吸血鬼が村人を一網打尽にするために仕掛けた罠だったのだ。
 村の男たちは全員が屍人鬼にされ、女たちは捕らえられた。しかも、それだけでは終わらなかった。捕まった女たちも、アリスのような少女から比較的若い娘だけを残して、あとは屍人鬼に変えられてしまったのである。
「あなた、あなたやめて! やめて!」
「お父さんやめて! お母さん! お母さん! いやぁぁーっ!」
 目の前で屍人鬼になった父が母の血を吸い、屍人鬼に変えていく様を見せ付けられたアリスや少女たちは気が狂わんばかりに泣き叫ぶしかできなかった。
 地獄のような時間が過ぎ、サビエラ村の住人は六十人ばかりの女性を残して屍人鬼へと変えられてしまった。そして、吸血鬼はついに村人たちの前にその正体を現したのである。


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