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私の知らない妻・外伝【原稿】

1名無しさん:2018/10/18(木) 07:59:08


 ある意味で私の人生を狂わせるきっかけとなった北九州への単身赴任は、予定通り半年ほど経った8月末に終わった。
 また家族4人水入らず。
 平凡だが幸せな日常に戻った。

 私は妻と共に心療内科に通っている。
 事件終結からほぼ一年経った今に至ってもだ。
 それだけ妻の受けた精神的ダメージは大きい。
 しばらくしてからも妻は何回も熱を出して寝込んでいた。
 座薬で熱を下げなくてはならないほどの高熱にうなされたこともあったりしたほどだ。

 もちろん私は妻を許している。
 妻のやったことは許されることではない。
 それは本人も自覚している。
 そして自分をずっと責めている。
 精神が不安定になるほど。
 逆に言えば、それだけあの事件が頭に残っているということだ。
 妻の記憶からそれらがすっかり無くなった時、やっと典子は呪縛から解き放たれる。
 そう考えて、妻の心のケアを第一にした。

 家庭ではあの一件は全部無かったことになっている。
 子供たちは何も知らない。
 だから夫婦の間で話題に出ることもない。
 妻が隠し持っていた淫乱な下着やバイブの類いは黙って捨てた。
 妻はそのことに何も言わなかった。
 心療内科の先生は女医で、レイプ被害者の治療経験もあるらしい。
 妻の場合とは直接結びつかないのかも知れないが、信頼感を持つことが出来た。
 事件のことは隠さず話した。

 過去に向き合って夫婦で話し合うという方法もあるらしいが、一切そのことに触れずに新しい関係を一歩一歩築いていくという方策もあるらしい。
 私はそちらの治療方針を選んだ。
 逃げたのかも知れない。
 だが、いまさら傷口を広げて蒸し返すような真似をしたくない。
 正直に言えば怖かった。
 私の知らない妻の姿は、これ以上知りたくない。
 未来にだけフォーカスしたい。
 夫婦のこれからにだけ。

 先生からはとにかく治療には時間がかかると言われた。
 日にち薬という言葉も教わった。
 平穏な生活を積み上げていくことによってのみ、忌まわしい過去は薄れ、やがて消え去って行くとのことだ。
 肝心なのは彼らの干渉を許さないことだ。
 精神が健康を取り戻す前に、フラッシュバックしてしまう可能性がある。
 そう先生が指摘するまでもなく、私にとっても最も神経を使う部分だった。

 特殊AV制作会社と名乗る連中は資金も豊富で、表も裏も社会に強いパイプをもっているらしい。
 ただ私は、社長と呼ばれた長髪の男の言葉を信じる気でいる。
 スマートな組織だと言っていた。
 あれだけの非人道的なことを平気でやる連中の言葉を鵜呑みにするのも変だと思うが、自分は福岡クレイホテルでトップ同士の手打ちをしたつもりだ。


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