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自作ロワ外伝-テロリストと戦ってみました-

1テストしたらば名無しさん:2009/08/13(木) 14:45:26 ID:jkTwpMO20
昔妄想スレで出てたネタを更に細かく妄想するスレ

学校に侵入してきたテロリストと戦うというシチュで
SSをリレーしていきます

自作キャラを生徒側とテロリスト側に分けて60人vs60人の
チーム戦を行います(キャラは使いまわしでもok)

どちらかが全滅したらゲーム終了です

664あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:42:24 ID:7oHJZWik0
桜には、休息が必要だ。とはいえ、生き延びなければ、
ここから生還しなければ、その休息も無意味になる。
だから、無理をしてでも前を、上を向かなければならない。
聞いていないかも知れない、と思いつつ、凛華は事務的に報告する。

「嵐崎さんの首輪は回収したわ」

桜の瞳がわずかに揺れた。
自分の言葉に桜が反応した、という事実に、
凛華はかすかな希望を見出す。

「……ベランダの様子は下からも見えたわ。
 嵐崎さん、力ずくで首輪を外そうとしていた。爆発の原因は多分それね。
 蝶野先生は何も言っていなかったけれど、この首輪、
 無理に外そうとすれば爆発する仕組みになっているのだと思う」
「……あ……」

桜がか細い声を出した。普段とは別人のような、弱々しい声だった。
桜はゆっくりと顔を上げ、虚ろな視線を凛華に向ける。
唇が震えた。何か伝えたいことがあるのだろうか。凛華は待つ。
乾いた唇がゆっくりと開く。しかし、そこから漏れるのは空気のみ。
桜は凛華から視線を外し、また、宙に視線を彷徨わせる。

665あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:43:06 ID:7oHJZWik0
 ――仕方ないわ。今は私が希望を作るしかない……。

そう自分に言い聞かせ、凛華は先ほどの続きを話す。

「……強引に外そうとすれば、爆発する。
 それってつまり、首輪を外すには所定の手順が必要ってことよね。
 逆に言うと、その手順が分かれば私たちの首輪も外せる……。
 宗一が……あ、穂積君のことだけど、分かるわよね?
 穂積君は機械に詳しいの。自分でゲーム機を修理したりしてたわ。
 だから、穂積君と合流すれば、首輪もどうにか出来ると思うの」

桜が再びこちらを見た。良かった、私は希望を生み出せた。
強張っていた自分の表情が穏やかになっていくのが分かる。
胸に灯った希望を桜にも伝えたくて、凛華はそっと微笑んだ。

「もう大丈夫よ、有栖川さん」

桜は唇をわななかせ、頭をかすかに横に振った。
凛華には分からない。何を訴えたいのだろう。何を否定したいのだろう。
桜は何故、こんなにも辛そうな、悲しそうな顔をするのだろう。

彼女は言葉を発する代わりに涙を一筋、静かに流した。

666あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:43:41 ID:7oHJZWik0
【B-4 住宅内/一日目・黎明】

【女子二番:有栖川桜〈ありすがわ・さくら〉】
【1:あたし(達) 2:お前(ら) 3:お前(ら)、名字、下の名前呼び捨て(ら)】
[状態]:右腕を負傷(外傷、静脈損傷、骨に軽いヒビ:止血処置のみ)、
    全身に打ち身・擦り傷(軽度)、ショック、精神的疲労(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、オイルカッター、オイル注入用のスポイト
[思考・状況]
基本思考:どうしよう…あたし…
0:蘭子を殺したことは墓まで持って行かなきゃ…
1:鹿狩瀬に謝りたい…
2:どんな顔で鹿狩瀬に会えばいいんだ…
3:多聞、春日、神楽(警戒対象)にも、あたしは…?
[備考欄]
※激痛のため、右腕の自由が利きません。
※骨にひびが入っているため、腕が腫れています。
※超能力で発熱させるには、対象に直接触れる必要があります。


【女子十六番:不動院凛華(ふどういん・りんか)】
【1:私(達) 2:あなた(達)、名字+さんor君 3:皆、名字+さんor君(達)】
[状態]:健康、グロ耐性(強)
[装備]:軍用クロスボウ
[道具]:基本支給品、骨洞芙蘭のカツラ
    嵐崎・キャラハン・蘭子の首輪(破損、爆発済み)
    クロスボウ専用の矢(10/12)
[思考・状況]
基本思考:一人でも多くのクラスメイトと共に生還する。
0:有栖川桜をしばらく休ませる。
1:桜が落ち着いたら二人でB-6の診療所に向かう。
2:嵐崎・キャラハン・蘭子の首輪を調べる。
3:宗一がいれば、首輪の構造も分かるのに…
4:隣家の二階の電気、消した方が良さそうね…
5:八十島さん…トイレにしては長いわね。
[備考欄]
※有栖川桜に超能力があることは知りません。
※蘭子の首輪の爆発は、無理に外そうとしたことが原因だと考えています。
※クロスボウは、威嚇(自衛)の目的で所持しています。
※幼馴染の穂積宗一のことは下の名前で呼びます。

667あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:44:15 ID:7oHJZWik0
[共通備考]
※隣の住宅の二階の一室にUSBフォルダが放置されています。
 また、その部屋の明かりは点けっぱなしになっています。
 ただし、部屋の扉は施錠されており、
 家具によってバリケードが築かれているので、
 ベランダからでないと侵入は困難です。


【支給品紹介】

●オイルカッター

任意の形状にガラスをカットするための工具。オイルを注入して使う。
大きさはボールペンサイズ、金属製で重みがある。
作中で蘭子が「刃なんてついてないじゃない」と言っていたが、
実際には回転式の小さな刃(数ミリ程度)がついている。

ガラスは表面に傷を付けると、わずかな衝撃で簡単に割れる。
その性質を利用した工具だが、無論、シンプルな形状のほうがカットしやすい。


●骨洞芙蘭のカツラ

女子高生テロリスト・骨洞芙蘭が通学時に着用しているカツラ。
髪型は、黒髪ボブカット。髪質は、癖のないストレート。
特殊な効果や仕掛け等があるか否かは不明です。



          □ ■ □

668あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:44:46 ID:7oHJZWik0
自分の立てる足音が、やけに大きく感じられる。
闇夜に響く柔らかな靴音が不安を掻き立て、孤独をあおる。
走っても走っても、その音を振り払うことは出来ない。
走れば走るほど、その音は自分を追い詰める。
それでも走らずにはいられない。理屈ではない。怖いのだ。

ガラス戸を突き破ってベランダに転げ出た蘭子の頭が吹き飛ぶのを見た。
首輪が突然爆発したのだ。誰も、スイッチなど押していないのに。
それどころか、蘭子はずっと、蝶野の命令に従っていたのに。

何故だろう。何が起きたのだろう。怖くて怖くて仕方がない。
ある日突然何の理由もなく爆発するような制御不能の危険物が
自分の首に巻きついている。嫌だ。怖い。誰か助けて!
そう叫びたいが、それは言えない。助けてくれる人すら怖い。

どうして凛華は平気でいられるんだろう。
どうして凛華はあんなグロテスクな死体の近くに行けるんだろう。
顔色ひとつ変えず、当たり前のように行動出来るなんて。
もしかして凛華は人の死に、無残な死に慣れているのだろうか。
もしかして凛華は既に人を殺しているのだろうか。
あんなに冷静でいられるなんて、凛華には殺人鬼の素質が――

 ――違う! なんてこと考えるの。しっかりしろ、私の頭!
 凛華は私を助けてくれたのに。殺人鬼のはずなんて、ない……。

頭では、そう思える。けれども恐怖が心を覆う。
首輪が怖い。凛華が怖い。蝶野先生が分からない。
先生は大人で物知りで正しい人だと思っていたのに、どうして!

明かりの消えた見知らぬ町を秋乃はひとり、疾走する。
とにかく遠くに行きたかった。何もかもすべてを捨て去りたかった。
息が苦しい。肺が冷たい。それでも秋乃は走り続ける。
身体の痛みがこの恐怖を塗り潰してくれることを期待して。

669あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:45:29 ID:7oHJZWik0
【B-5 住宅街/一日目・黎明】

【女子十九番:八十島秋乃〈やそじま・あきの〉】
【1:私(達) 2:下の名前呼び捨て(達) 3:皆(皆)】
[状態]:恐怖、不安、混乱、精神的疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本思考:殺し合いの撃破。
0:蘭子の首輪が突然爆発したことを誰かに伝えたい。
1:この恐怖を誰かに分かってほしい。
2:不動院凛華に対する恐怖。
3:蝶野先生…どうして…
4:ここから逃げたい…
[備考欄]
※麗山への復讐を蝶野がしたいと考えています。

670 ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:49:34 ID:7oHJZWik0
投下は以上で終了です。
大変遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

原作小説はホラー系の文芸賞に投稿された作品なので、
今回のSSはホラーものを少しだけ意識して書きました。
次回はまた違った毛色の作品にしたいと思っています。

671 ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:50:08 ID:7oHJZWik0
三木清葉、上原鞠愛、砂野夕璃菜で予約します。

672テストしたらば名無しさん:2010/12/08(水) 21:18:19 ID:I3oi94agO
投下乙です。
遂に…ようやく女子が死んだ…
神楽達もこれで報われるだろう…

凛華…穂積死んでるんだよ…
放送聞いた時に、凛華とついでに周斗もどうなってしまうのか…

あきのーんっ!
落ち着け漫画脳!
あっちには不良とお団子がーっ!



そして桜…(´・ω・`)
気の毒にな…
鹿狩瀬も死んでるし…
あーあ…

673テストしたらば名無しさん:2010/12/08(水) 21:54:52 ID:lYpGAcPo0
投下乙!
マーダーは退場したけれど、残された面子の精神状態が凄く危うい……
天草と水原が同じ風紀委員の嵐崎の死をどう捉えるのかも気になりますな。

674 ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:12:03 ID:yROZOFZo0
予約パートのSSを投下します。

675Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:12:41 ID:yROZOFZo0
本が好き。人と接するよりもずっと、僕は本を読むのが好き。
でも、「人が本を読むのは、自分の知らないことを知りたいからだよね」
って言われたときは、「え?」って思った。知らなかったんだ。
そういう解釈の方が、一般的で普遍的なんだってことを。

僕が読書を好むのは、そこに自分がいるからなんだ。

幼い頃からずっと、僕には違和感があった。疎外感があった。
その原因の根底にあるのは、僕自身のセクシャリティなんだと思う。

僕は、生物学的には、両性具有ってことになっている。
僕の体は男性と女性、両方の機能を備えているから。
でも、容姿自体は女の子っぽい。黙っていれば、まず女子だと思われる。
そのくせ、頭の中は男子っぽい。僕は女の子に興味があるんだ。

自分は“みんな”と違う、“普通”じゃない、どこかおかしい――
幼い頃から、僕にはそんな自覚があった。そして、誰かと仲良くなれば、
相手もいずれ僕のそういう部分に気付くんだってことを学んだんだ。

だから僕は、人とのかかわりを避けている。
女の子に対する興味はあるけど、付き合いたいとは思わない。
だって怖いもん。僕の『おかしな部分』を知られるのが。
好きになった子が、仲良くなった子が、“普通”じゃない僕の姿を知って、
嫌な顔をしたり、去っていったりするのが。
そんなことを恐れながら人と付き合うのは疲れる。僕はひとりの方が楽なんだ。

676Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:13:20 ID:yROZOFZo0
本を読んでいると、孤独感が紛れて安心する。
大衆小説、ラノベ、純文学、ノンフィクション、学術書――みんな好き。
だって、そこには僕がいるから。僕の心が書かれているから。
僕の思い、僕の感情、僕の悩み、僕の孤独、それらはとてもありふれたもので、
昔からずっと、様々な国の人が抱えていたものなんだって実感出来るから。

だから、僕は本が大好き。大人になったら、本を書きたい。
恋人は要らない、子孫も要らない、“普通の幸せ”は望まない、
その代わり、自分の書いた本を後の世に残したい。

それが僕、三木清葉(みき・きよは/男子十九番)の夢だった。

…………
……

G−2エリア/モーテル客室内、午前1時――

しん、という音が聞こえるほど、辺りは静まり返っている。
つい数時間前にクラスメイトふたりが無残な死を遂げたばかりだなんて、
そして今はこの島で殺し合いが行なわれているなんて、嘘のようだ。

馴染みのないモーテルの内装が、ますますそう錯覚させる。
自分は今、ひとりで見知らぬ土地を訪れているだけで、
自宅に戻ればまた、いつもどおりの学校生活が始まるのではないか。
最強堂も安佐蔵も、何事もなかったようにそこにいるのではないか。
そんな空想をつい、信じてしまいそうになる。

けれども首に嵌った異物が彼に、清葉に現実を思い出させる。
最強堂を殺した爆薬入りのあの首輪が、自分の首を圧迫しているのが分かる。
空気の玉が詰まっているような違和感を喉の奥に感じるのは、
物理的な刺激のせいか、それとも恐怖による緊張のためか。

677Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:13:55 ID:yROZOFZo0
明かりの消えた客室で、清葉は執筆に没頭する。
壊すことの出来ない現実に背を向け、自らの世界を創造する。
彼は、小説を書いていた。基本支給品の筆記具で。客室備え付けのメモ用紙に。

優勝出来るとは思わない。心身ともにヘタレだと自認しているから。
生還出来るとは思わない。誰かと協力し合えるほど器用ではないから。

だから自分はここで死ぬ。清葉はそんな運命を受け入れていた。
とはいえ、何もせず黙ってそのときを待っていられるほど無気力ではない。
そもそも、そこまで自分を安く見積もっているわけでもない。
“普通”ではない自分の中にも普遍性が存在することを、彼は読書を通じて学んだ。

大人になったら本を、後世に残る作品を書きたいと思っていた。
その夢はもう叶わない。そんな時間は、自分にはないから。
それでも最期の瞬間まで夢に、好きなものに寄り添っていたかった。
ゆえに、清葉は自分自身ではなく作品をこの世に遺すことを選んだ。

そうして、執筆開始から一時間が経った。
どうにもならない現実と、現実逃避ツールの一切を排した密閉空間。
逃げ場は自分の中にしかない。けれども自分の中になら、思う存分逃げ込める。
それは物書きにとって理想的な環境で、執筆は思いのほかはかどった。
しかし、一点だけ問題があり――

678Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:14:30 ID:yROZOFZo0
 ――ううぅ……、なんかムラムラしてきた。

彼が執筆していたのは、エロ小説だった。

 ――ううっ、なんでこんな内容になっちゃったんだろう……。
 僕は私小説を書きたかったのに。私小説を書いていたはずなのに。
 クラスのみんなの思い出を、小説として遺したかっただけなのに……。
 なんでこんな、えっちな妄想が一人歩きしちゃってるんだろう……。

そう、彼の脳内と作中では、クラスの女子が痴態を繰り広げていた。
日頃のガン見……もとい、細やかな観察が幸いし、その筆致は冴え渡る一方。
ちなみに男子は登場しない。男優さんには感情移入出来ないクチだから。

結果として、清葉の作品は、百合とレズの宝庫となった。
どこを見ても女子、女体だらけというのがお得感満載で素晴らしい。
素晴らしすぎて妄想が加速してそれを追うのに夢中になって、
手を動かすのが面倒になってきた。というか、手を動かすエネルギーは
執筆よりも快感を得るために使いたい、という域にまで達している。

 ――少しくらい、いいよね。誰も見てないんだし……。

筆記具をテーブルに置く音が、やけに大きく感じられた。

          □ ■ □

679Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:15:13 ID:yROZOFZo0
「あはははは、碧衣ちゃんのために害虫駆除! 今日の私は絶好調!」

突き抜けるような笑い声がコックピット内の空気を震わせる。
砂野夕璃菜(さの・ゆりな/女子十番)は韋駄天の操縦席で
楽しげに笑い、ツインテールの長い髪を揺らす。

……さっきはびっくりした。
韋駄天のカメラを壊し、転倒させる者が現れるなんて。
泣き虫のサフィロ・シャリーノ(女子十一番)がそんな真似をするなんて。
思わず措置入院レベルの発作を起こしそうになった。

 ――うん。でも私、頑張った。精神力で発作を抑え込んだもんねー。
 基地外バレなんてしたら、また碧衣ちゃんのそばから離されちゃうもん。
 私、碧衣ちゃんを守らなきゃ。碧衣ちゃんのためにいいことしなきゃ。
 いいこと。いいこと。明るく楽しく人間ゴッコ。ニコニコ笑顔で害虫駆除。

ぐふふふふ。夕璃菜はくぐもった笑い声を漏らす。

もう大丈夫。笑顔を取り戻した今なら分かる。
サフィロは己の意思で韋駄天に戦いを挑んできた。
あの動き。彼女は身を守りたいのではない。韋駄天を破壊したいのだ。
ならば、追ってくるだろう。徒歩で。生身の肉体で。
移動速度に圧倒的な差があるにもかかわらず、この機械を。

それは、サフィロの体力が消耗していくことを意味していた。
疲労が蓄積すれば、運動能力が低下する。判断力だって、鈍る。
そうなれば、先程のような身のこなしも難しくなるだろう。
たとえサフィロが強力な武器を手にしたとしても、
使いこなせなければ意味がないのだ。

680Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:15:50 ID:yROZOFZo0
「きしししし! こっこまでおーいでー、早く早くぅ!」

F−2〜3エリアへと向かう機体の中で、夕璃菜は閉鎖病棟を思い出す。
やたらと蚊の多い場所だった。蚊の羽音が鬱陶しくて仕方なかった。
しかしあるとき発見した。蚊は血を吸うとその重みで動きが鈍る。
だから夕璃菜は己自身の血を吸わせた。確実に叩き潰すために。
てのひらに広がった赤い血と虫けらの死骸を眺めながら、優越感に浸るために。

人間様の血で腹を満たそうとする身の程知らずな虫けらに
極上のディナーを笑顔で振舞ってやるのは、未来の勝者の余裕ゆえだ。
生きる糧を存分に与えて満足させたところを、一撃で潰す。たまらない。

またあの快感を味わいたい。あの爽快感を満喫したい。
害虫駆除。害虫駆除。その言葉を夕璃菜は何度も胸の中で転がした。
お気に入りの飴玉を大切に味わう子供のように。

          □ ■ □

681Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:16:34 ID:yROZOFZo0
バスルームでことを済ませようと思ったのは、その痕跡を残したくなかったから。

もし、自分の死体の近くに使用済みのティッシュが落ちていたら。
そしてそのティッシュが鑑識に回され、DNA鑑定なんてされた日には。
死体のすぐそばには、直筆の自作エロ小説まであるというのに――
その想像力は、清葉を賢者に転職させた。ただし、ほんの数十秒間だけ。

脱衣所で衣服を脱ぎ捨てると、おのずと意識が首輪に向く。
身体を洗うときですら、首輪を外すことは許されない。
それは、自分が人間扱いされていないことを意味していた。
自分の所有権が自分にないことを意味していた。
そのことを意識した途端、清葉は賢者に戻れなくなった。

被虐的な悦びが全身の神経をざわめかせ、いてもたってもいられなくする。
彼の性欲は暴走し、この首輪を自分につけさせたのが
50代のキモいおっさんだという事実を徹底的に破壊し始めた。
まず、脳裏で蝶野が性転換した。そして25歳ほど若返った。
名前も変わった。蝶子先生。28歳の女教師。当然、整形済みだ。

 ――ああ、僕は蝶子先生にお仕置きされちゃうんだ……。
 蝶子先生が麓山さんたちにえっちなイジメを受けてるのを見――

キィ、と背後で音がした。金属のこすれ合うような音。
音は、脱衣所と寝室を区切る薄いドアの向こうから聞こえた。
なんだろう。清葉はバスルームに向かう足を止め、耳を澄ませた。
ギィ、と軋むような音がした。さっきよりもずっと大きな音だ。
一体何の音なのか、今度ははっきりと分かった。清葉の血が凍りつく。

 ――ああ、誰か来た。ドアの鍵が開いてたんだ……。
 どうしよう、僕、気付かなかった。ちゃんと確認してなかった……。
 殺されるんだ、僕……。まだ小説が完成してもいないのに……。
 あんなエロ小説だけど、僕の人生が沢山詰まってるのに……。

682Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:17:07 ID:yROZOFZo0
侵入者の足音が聞こえてくる。
体重と筋力を感じさせない歩き方。そして少し疲れているような。
ベッドのスプリングが軋むのが分かる。足音の主が倒れ込んだようだ。
ふぅ、と侵入者が溜め息をついた。憂鬱と安堵がない混ぜになったような。
わずかに漏れた声と息遣いから、相手が女子の誰かだと気付く。

薄い扉一枚隔てた場所に、無防備な格好の女の子がいる。
どうせ死ぬんだ、少しくらい楽しんだっていいじゃないか。
嫌われたって関係ない、どうせお互いすぐに死ぬんだ。
そんな黒い考えが脳裏でむくりと身を起こす。けれども清葉は動けない。
今の自分は全裸だ。こんな姿を見られるのは恥ずかしい。
なんで全裸なの、と疑問に思われるなんて嫌だ、耐えられない。

衣服を身に着けたい。しかし身体を動かせば、物音を立てれば気付かれる。
清葉には、硬直したまま息を殺して自身の心音を数えることしか出来ない。
どれほどの時が流れただろう。ドアの向こうで女子生徒が動いた。
ゆっくりと身を起こし、ベッドから降りる。そして、足音が数回。

 ――あれ? 立ち止まったまま動かなくなった……?

何をしているんだろう。その疑問に答えるように、ぱらり、と紙の音がした。
女子生徒が紙を触っている。乾いた音を立てる薄手の紙を、何枚も何枚も。
そこに何が記されているのか、清葉は既に知っている。
そこに記された詳細を、清葉は誰よりも知っている。

 ――読まれてるんだ……、僕の書いたエロ小説が……。
 僕のエロ妄想が、クラスの女子に、見られてるんだ……。

その瞬間、恐怖に抑え込まれていた性欲が本格的に活動を再開した。

          □ ■ □

683Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:17:53 ID:yROZOFZo0
「さぁーて。どこに隠れたのかなー?」

F−2エリアの森林に、夕璃菜は韋駄天で分け入った。
この辺りに人がいるのは知っている。しかし、見通しが悪すぎる。
韋駄天の暗視装置をもってしても、遮蔽物が多すぎて手に負えない。

「サーモグラフィ映像みたいなのが出てくるモードはないのかなー?
 物陰に隠れてても体温で見つけ出せるやつ。えっと……、これかな?」

それらしいボタンを押すと、視界の上にレーダーのような映像が現れた。
お目当てのサーマルビジョンモードではないが、これはこれで興味を惹かれる。
映像は半透明で、視界を完全に遮断するわけではない。
見ると、F−2エリアに三つ、F−3エリアに三つの光点が確認出来た。
F−2エリアの内ひとつは、韋駄天の現在地を思わせる特殊な記号と重なっている。

「これって……」

夕璃菜は自身の喉元にそっと指を近づけた。

684Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:18:35 ID:yROZOFZo0
 ――もしかして、首輪の場所を示してるの?

付近のエリアを確認すると、G−2にも二つの光点が見える。

「イヒヒヒヒ! こっちに向かって、だぁい正解。
 一気に7匹も駆除するチャーンス!
 よーし、碧衣ちゃんのために頑張るぞー!」

夕璃菜は悪魔じみた声で笑いながら該当エリアの施設を確認する。
楽勝楽勝、今日の私は絶好調。そう呟こうとしたその瞬間――

 ――え……、G−2エリアのここ、モーテルの中!?

血の気が引く。もしも、ここにいるのが碧衣ちゃんだったら。
碧衣ちゃんは、誰かとふたりきりで、密室内にいるってことになる!

碧衣ちゃんが危ない。殺されそうになっているかも知れない。
乱暴されそうになっているかも知れない。助けを求めているかも知れない。
監禁されているかも知れない。騙されているかも知れない。
一刻も早く助け出さなきゃ。碧衣ちゃんは私が守るんだ。絶対絶対守るんだ。
大好きな碧衣ちゃんにだけは、『あんな思い』はさせたくない――

夕璃菜は進行方向を急遽G−2エリアへと変更した。

          □ ■ □

685Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:19:30 ID:yROZOFZo0
上原鞠愛(うえはら・まりあ/女子三番)のトラウマ読書体験。
それは、母親の著書をうっかり読んでしまったことに尽きる。

鞠愛の母は小説家で、純文学作品を細々と発表している。
母のことは好きではない。気難しくて、ヒステリックで気分屋で。
だからそんな母の著作にも、鞠愛は興味を抱かなかった。

なのに何故、手を出してしまったのか。
それはもう、中二病を患ったから、としか言いようがなかった。
忘れもしない中学二年生の夏、鞠愛は母への反逆を企てた。
母の著作の悪口を、もっともらしい言い回しと丁寧な言葉で書き連ね、
夏休みの宿題の読書感想文として提出してやろうと考えたのだった。

しかし、読み終わる前に後悔した。
見開き二ページ、改行なしで埋め尽くされた文字、文字、文字文字文字文字。
主人公は苦悩していた。己の内面や生、そして性について独白しながら。
生きるのが辛い、その一言で済むようなことを、言葉を尽くして延々と語る。
まるで自傷行為のように、辛辣な自己ツッコミを繰り返しながら。

衝撃を受けた。お母さんの中に、こんな考え方が存在していたなんて。
お母さんが、こんなネガティブな文章を世間に垂れ流していたなんて。
親の裸や排泄現場を直視してしまったかのような気持ちの悪さが胸に残る。
それに、世の中にはわざわざお金を払ってまでして、
こういうものを読む人がいる、という事実もショッキングだった。

感想文は書けなかった。作品について語ろうとすれば、そう、
たとえそれが悪口の類いでも、自分の秘密を暴露してしまうような気がして。
心の奥に秘めておきたいこと、他人には決して知られたくないこと、
それらを白日の下に晒してしまうような気がして。

しかし今は違う。援交が、変態M男が、鞠愛に衝撃を克服させた。
世の中には、排泄物を『黄金』『聖水』などと呼び、有難がっている輩がいる。
理解も共感も出来ない価値観だが、彼らにとってはそれが真実なのだろう。
似たようなものだ、母の小説も、その読者も。そう思うと、気が楽になった。

686Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:20:03 ID:yROZOFZo0
……そんな上原鞠愛の前に、新たな衝撃作が現れた。

「僕だって、こんな下品な小説は書きたくなかったんだ……」

清葉は力なく揺れる視線をリノリウムの床に彷徨わせる。
脱ぎ捨てた服の上で身を屈め、細い腕で胸元や腰の辺りを覆い隠しながら。
清葉の声は震えていた。鞠愛の顔など見ようともしない。怯えているのだろうか。
いや、違う。吐息に混じった熱いものを、鞠愛は既に察知していた。
しかし、気付かないフリをした。そこに触れるのはまだ早い。
駄犬を眺めるような心持ちで白い裸体を見下ろしながら、鞠愛は清葉に確認する。

「そう……、つまり、蝶野に無理矢理書かされたというわけなのね?」
「最後まで書き上げたら、特別に命を助けてやるって言われて……。
 ごめんね、上原さん……こんなの読ませちゃって……」
「確かに、蝶野が考えそうなことだわ。教え子をモーテルに監禁して、
 自分の要望通りのエロ小説を書かせるなんて……」
「上原さん……、ありがとう、分かってくれて……」

そんな嘘でこの私が騙されるとでも思っているのかしら。
自分の目つきが冷ややかになっていくのが分かる。
清葉が嘘をついていることは明白だった。パーツごとの表情がまるで違う。
縋るような目をしていながら、口元には悪意や歓喜がにじんでいる。
隠し切れない内面の歪みが油断した拍子に漏れ出てしまった、というところか。
しかし、そこにはまだ触れない。触れるのは、外堀を埋めてからだ。

687Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:20:42 ID:yROZOFZo0
「感謝の気持ちがあるのなら、私の質問に答えてくれるかしら?」
「えっ……?」

清葉は顔を上げ、こちらを見た。予想外の反応に戸惑っているのだろうか。
新たな嘘に相手が逃げ込んでしまう前に、鞠愛は彼を誘導する。

「おまえはこんな下品でいやらしい話なんて書きたくなかったのよね?」
「あ、当たり前だよ! みんなにも失礼だもん、こんな内容!」
「そう。そんな風に思いながら執筆するのは、さぞかし辛かったでしょうね」
「う、うん……、うん!」
「脅迫されて、心にもないことを無理矢理書かされて。酷い話だわ」
「ありがとう。ここに入って来たのが上原さんで良かった……」

清葉の油断を、慢心を、そして被虐願望を、鞠愛は決して見逃さなかった。
いたわるように静かにそっと、清葉の方へと手を伸ばす。
そして、股間の辺りを覆い隠す細く白い腕に優しく触れ、
次の瞬間、おもむろにその手をひねり上げた。

「あうぅ! やぁッ、放して!」
「あら、おかしいわね?」
「やぁっ、見ないで……、見ちゃヤダぁ!」
「おまえのコレ、どうしてこんなことになっているのかしら?」
「違うもん! なんにもなってないもん!」

この期に及んで嘘にすがる清葉の姿が滑稽でならない。
見ているだけで、凶暴な悪戯心が胸の中に充満していく。

688Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:21:32 ID:yROZOFZo0
「そう……、私の目がおかしいと言いたいのね?
 なら、今からふたりで外に出て、おまえのコレを誰かに見てもらうわ」
「やぁ、そんな変態みたいなこと、僕……」
「……さっき、この近くで桐野きららに会ったの。
 彼女におまえのコレを見せたら、どんな顔をするかしらね?」
「そんなのやだ……、僕、恥ずかしい……」

清葉の声は消え入りそうだったが、現在問題になっている箇所は
まったく恥ずかしがってなどいなかった。

「仕方ないでしょ? だって、私とおまえの言い分がまったく逆なんだもの。
 どちらの言い分が正しいか、第三者の意見を聞いて判断するしかないわ」
「意地悪、言わないで……」
「意地悪だなんて、人聞きが悪いわ。私はただ、納得したいだけなの」
「そんなこと言われても、僕……」

「おまえは蝶野に脅迫されて、書きたくもないエロ小説を書いたのよね?
 女子のみんなに失礼だと思いながら。私に対してだってそう、
 下品でいやらしい妄想を読ませて申し訳ないと思っているのよね?」
「うぅ……、うん……」
「なら、どうしておまえのコレはこんな状態になっているのかしら?
 おかしいじゃない。きちんと説明してほしいわ」
「説明なんて無理だよ……勝手になっちゃうんだもん……」

689Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:22:25 ID:yROZOFZo0
「あら、この状態がおかしいってことは認めるのね?」
「ううぅ……」
「良かったわ。私の目がおかしいわけでもなければ、
 おまえにとってはこれが普通、ってわけでもなくて……。
 人に見てもらうなんてさっきは言ったけれど、失礼だったかも、って、
 私も気になっていたの。内心では」
「え……?」
「だって、おまえのコレは、いつもこういう状態なのかも知れないでしょ?
 おまえにとってはこういう、いやらしくてはしたない状態が“普通”だから、
 『なんにもなってない』なんて怒り出したのかも知れないじゃない」
「僕……そんな変態じゃないもん……」

清葉は熱に浮かされたような瞳で視線を宙に彷徨わせている。
鞠愛は足を片方だけ上げた。大きなリボンのついた黒いハイヒールに包まれた足。
踏んでやろうと思ったのだ。嘘をついた証拠を。清葉が嫌がって抵抗すれば、
「嫌なことをされるのが好きだから、こんなになってるんじゃないのかしら?」と
なじってやろうと思いながら。

そのとき、ピシリ、と壁が鳴った。気のせいかと思ったらまた、ピシリ。
鞠愛は一旦足を下ろし、視線をぐるりと廻らせて周囲の様子をうかがった。
目に見える異変はない。けれども家鳴りのような異音は頻度を増す一方。
どうやら、モーテル全体が小さく軋んでいるようだ。

「……地震かしら?」
「あ……」

清葉の瞳が焦点を結ぶ。中性的なその顔が、純然たる恐怖に凍りつく。
壁の向こうから轟音が聞こえる。大地が、木々が、大気が震えているのが分かる。
しかし地震ではない。人工的な、機械的な音が、そこに混濁しているから。

「上原さん、この音って……分校で聞いた……」
「まさか……、神楽雅光!?」

          □ ■ □

690Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:23:03 ID:yROZOFZo0
木々の向こうに、明かりの消えたモーテルが見える。
建物はおろか看板すらも夜の闇に呑まれていて、
施設自体が既に死んでいるかのように見える。
だが、まだ死んではいない。死すべき者どもを匿っているのだ。

今すぐミサイルで粉砕したい。今すぐマシンガンで蜂の巣にしたい。
人間の形をしたクソ虫が、今この瞬間にも目の前の建物内で
碧衣ちゃんに危害を加えているのかと思っただけで、
地球ごと叩き壊したくなるような激しい怒りに脳が四散しそうになる。

しかし、激情の赴くままに攻撃をおこなえば、従妹を巻き添えにしかねない。
もしも碧衣ちゃんが、倒壊した建物の下敷きになってしまったら。
もしも碧衣ちゃんに、流れ弾が当たってしまったら。
脳裏をかすめる不吉なビジョンが、夕璃菜の指を鈍らせる。

眼下にモーテルの屋根が近付く。
宿泊棟は平屋建てで細長く、屋根の傾斜はゆるやかだ。

中の様子を知りたい。人の場所だけでいいから。夕璃菜は屋根を睨みつける。
韋駄天は軍事兵器だ、サーマルビジョン機能だって搭載しているだろう。
このような状況に単独で対処することくらい、想定済みだろうから。
だから、目の前のキーを操作すれば、内部の様子を把握出来る――

691Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:23:39 ID:yROZOFZo0
けれども夕璃菜は手を伸ばさない。もしも自分の押したキーが、
サーマルビジョン起動用のものではなかったとしら。
韋駄天が動かなくなるかも知れない。隠し武器が起動して、
目の前の建物を焼き尽くしてしまうかも知れない。
碧衣ちゃんを傷つけるリスクは、絶対に回避しなければ。
今日の自分はツイている。それは確かだ。でも、今は運には頼れない。

「私が守るんだ。碧衣ちゃんは、私が絶対に……」

夕璃菜は韋駄天を操作して、モーテルの屋根にアームをかける。
そのまま上向きに動かすと、バリバリと音を立てて屋根が剥がれ始めた。
まるでお菓子の紙箱のように、まるでおもちゃの家のように。
舞い上がる木屑と土埃が、離島の闇夜に白さを添える。

やがて、屋根はすべて剥ぎ取られ、ドールハウスのような光景が現れた。
何枚もの板で仕切られた箱の中を見回すと、人影が二つ、目に留まる。
黒と白。黒いドレスをまとった少女と、白い素肌をさらした少年。

碧衣ちゃんじゃない。夕璃菜は安堵のあまり、笑った。

692Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:24:15 ID:yROZOFZo0
「なぁんだ。お人形さんかぁ。あー、びっくりした!」

胸の中がむずむずする。お人形さんで遊びたい。
手足をもいだり、首を外してすげ替えたり、どこまで足が開くか試したり。
お人形さんは何をしても泣いたりしないし、何度でも遊べるから大好き。
でも、この男の子のお人形さんはちょっと変だから、遊ぶ前に修正しなきゃ。
綺麗なお人形さんに『こういうモノ』が付いてるなんて、おかしすぎるから。
股間の汚物は、ちゃんともぎ取らなきゃね。うふ。きゅふふふふ。

 ――でも、遊ぶのは後。

穏やかだった自分の目元に力がみなぎっていくのが分かる。
碧衣ちゃんを保護するまで、遊びはみんなガマンガマン!
夕璃菜はマシンガンと一体になったアームを黒いドレスの少女に向けた。

          □ ■ □

693Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:25:23 ID:yROZOFZo0
自分の全機能が停止するまで、あとどれくらいかかるのだろう。
痛みを感じる間もなく死ねるのだろうか。恐怖で身体が竦んでいるのに。
ほんの一秒が、過ぎ去ることのない永劫の時のように感じられるのに。

最期の瞬間に苦しまずに済むことだけが、望みだった。
でも、その望みは叶いそうにない。
既に、精神的苦痛を感じてしまっているのだから。
幾つもの銃口を前に立ち尽くすことしか出来ない鞠愛の視界の隅で、
出し抜けに、何かが動いた。

「やめろ神楽! 女子を殺すな!」

清葉の叫び声がして、白く小さな固形物が
放物線を描きながらコックピットの方に飛んでいった。
全裸の彼が、手の届く場所にあるものをとっさに投げたのだ、
恐らくは、洗面台に置いてあった固形石鹸か何かだろう。

そんなことをしても無駄なのに。本当に、どうしようもない馬鹿なのね。
笑いたかった。抵抗の手段もおかしければ、「女子を殺すな」なんて文句も変。
いくら頑張っても、隠し切れない変態臭がにじみ出てるじゃない。馬鹿ね。
なのに笑えない、罵れない、胸の奥底から這い登る敗北感がまとわりつく。
今の自分は、この変態にすら劣っている。そんなことでいいのだろうか。

694Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:25:57 ID:yROZOFZo0
 ――私にだって、戦車に石を投げる勇気くらいあるわ!

韋駄天のアームが少しだけ動く。清葉に狙いを変更すべく。
鞠愛は床を蹴った。動き出したアームの横に回り込み、鞭を振り上げる。
金属の豪腕にラバーが巻きつく。異物を振り払おうと韋駄天が動く。
鞠愛はグリップを両手で握る。両足が床から浮き上がる。
アームにぶら下がる格好になった鞠愛を、韋駄天が壁に叩きつける。

 ――腕力が強ければ主導権を握れる、ってわけじゃないのよ、神楽。

その勢いを利用して、膝のクッションを利用して、ジャンプするように壁を蹴る。
鞠愛はグリップを握ったまま、宙に舞い上がり円を描く。
アームの周囲を回転し、半ばしがみつく格好で金属の腕に着地する。
この場所なら、いくら韋駄天といえど攻撃は出来ないだろう。
鞭はしっかりと巻きついていて、グリップはまるでレバーハンドルのようだ。
鞠愛はアームにまたがった。無敵の戦車が襲ってくるのなら、
その力を利用するだけのことだ。自身の優勝のために。

「神楽、聞きなさい!」

鞠愛は首を動かし、コックピットがあるはずの場所を見上げた。
自分には、交渉材料がある。たとえば、板倉竜斗の存在。
蝶野と共謀関係にある神楽は、板倉について何か知っているだろうか。
知っているのなら、蝶野と渡り合う上で有利になるような情報を
聞き出せるかも知れない。知らないのなら、それはそれで構わない。
彼は何も知らない、という事実もまた、貴重な情報だ。

だから、板倉について探りを入れてみよう。
そう思い、口を開こうとしたとき――

695Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:26:27 ID:yROZOFZo0
「あぁッ!」

唐突にアームが傾いた。滑り落ちないよう、鞠愛は太ももに力を込める。
韋駄天は乱暴に腕を動かし、邪魔者を振るい落とそうとする。
鞠愛はグリップを握り締め、歯を食いしばって揺れに耐えた。
太ももの筋肉が引きつるように痛い。素肌がじっとりと汗ばんでいく。

 ――神楽……、ふざけた真似を!

揺れはやがて収まったが、鞠愛は口を開かなかった。
恐怖に屈したわけではない。腹の中では、怒りの炎が燃えている。
神楽を殺してやりたいと思った。しかし、今はまだその時ではない。
殺すのは、韋駄天の利用価値がなくなってから。邪魔者を駆逐してからだ。

鞠愛は考えを巡らせる。
自分と口を利こうとしない神楽を、どのようにして従わせるか。
装甲に覆われた無敵の神楽雅光の、心の隙をどう引き出すか。

696Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:27:01 ID:yROZOFZo0
【G-2 モーテル付近/一日目・黎明】

【女子三番:上原鞠愛】
【1:私(たち) 2:おまえ(たち) 3:彼・彼女(ら)】
 [状態]:健康、韋駄天の左アームに騎乗中
 [装備]:鋲付きの一本鞭(ラバー製)、黒のゴスロリ服
 [道具]:なし
 [思考・状況]
  基本思考:ゲームに優勝する。
  0:韋駄天を利用して参加者を駆逐。
  1:韋駄天に利用価値がなくなれば、神楽雅光を殺す。
  2:桐野きららに対する違和感と苛立ち。
  3:板倉竜斗に対する疑問。何故彼がここに?
 [備考欄]
  ※桐野きららがレプリカントであることを知りません。
  ※基本支給品一式とデイパックを紛失しました(G-2のモーテル跡に放置)
  ※韋駄天の左アームに鞭を巻きつけ、騎乗しています。


【女子十番:砂野夕璃菜】
[状態]:健康、高騰感
[装備]:グランドレプリカント"凡庸人型戦車"『韋駄天』GR-02
    ライトマシンガンアーム(160/200)
    レフトマシンガンアーム(200/200)
    対空地ミサイルランチャー(5/6)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
 基本思考:砂野碧衣の安全の為に彼女以外は誰であろうと見つけ次第全員殺害する
 0:人が居そうな場所へ向かう(次の目的地はF-2〜F-3辺り)
 1:碧衣ちゃんは全力で保護!
 2:サーモグラフィみたいな画面、どうやって出すのかな?
 3:このお人形さん、どうしよっかなー?
[備考欄]
※マニュアルを読んでないので操作に慣れてません
※ヘッドセットをつけてないので韋駄天の音声出力用スピーカーは機能しません
※コックピットが完全に封鎖してあるのでハッチを開けないと外から中の人が分かりません
※ホバー機動により通常の参加者より多くの距離を移動できます
※右側のカメラが壊れました。視界は確保されてますが右側に死角ができてます。
※上原鞠愛が左アームに鞭を巻きつけ、騎乗しています。
 韋駄天の動作には何ら支障はありません。

[共通備考]
※G-2のモーテルの屋根がすべて剥がされました。倒壊の危険があります。



          □ ■ □

697Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:27:37 ID:yROZOFZo0
靴底が、未舗装の坂道を絶え間なく蹴る。
安全を確保した鞠愛の姿が、スタートの合図となったのか、
良かった、そう思った途端、清葉は全力で駆け出していた。
かろうじて靴こそ確保したものの、その身はいまだ全裸のまま。
デイパックも支給品も筆記具も、命よりも大切な生原稿すらも、
倒壊寸前のモーテルに置いてきてしまった。

自分は何処に行きたいのか。それ以前に、何をしたいのか。
それすらも分からないまま、清葉はただ、韋駄天との距離を開くべく走る。

湿り気を帯びた夜の空気が、むき出しの素肌にまとわりつく。
嵐の前の空気のような破滅的な高揚感が、全身の神経をざわめかせる。

ああ。僕は今、全裸で外にいるんだ。誰かに見られたらどうしよう。
裸なのに、首輪なんて付けて。動き易いように、靴はしっかり履いていて。
まるで、逃げる準備をきちんと整えた上で露出しに行くみたいじゃないか。
どう見ても、変質者だよ。誰かに見られたら、なんて言い訳すればいいんだ。
折角、今まで我慢してきたのに。気になる子がいても話しかけたりしないで
“みんな”と違う自分、“普通”じゃない自分を知られないように
ひとりで大人しく生きていたのに、全部無駄になっちゃうじゃないか!

 ――無駄になれば、いいじゃないか。

もうひとりの自分が、心の片隅でせせら笑う。

 ――そんなものを必死で守ってきた結果が、これなんだ。
 変態バレして蔑まれる方が、ずっと楽に生きられるさ。

その思いを肯定するように、そして追い討ちをかけるように、
脳裏に焼きついた鞠愛の冷笑がいっそう鮮やかに高画質になる。

698Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:28:16 ID:yROZOFZo0
自分に向けられた、侮蔑の目。嬉しかった。
恥ずべきものとして切り捨て、葬り去ろうとした自分自身を彼女は直視してくれた。
彼女の意識下に入ることで、自分が否定した自分自身はその存在を認知された。
それに、あの表情。彼女は蔑んでこそいたものの、嫌悪してなどいなかった。
むしろ、相手を辱めることを楽しんですらいるようだった。

……清葉は出会う前からずっと、上原鞠愛を知っていた。
彼女の母親・美結子の作品を愛読していたのだ。
作家・上原美結子に娘がいることは、著書を読めば察しがついた。
娘の名はネットで知った。一家が同市内に住んでいることも、同様にネットで。

上原美結子の著作の中に、出産を題材にした短編がある。
ごく普通の現代女性が、ありふれた熱愛の末に出産するという内容。
恋人とは相思相愛、彼は出産に協力的で、子供の誕生を心から喜ぶ。

しかしそれは、静かな絶望を描いた作品だった。
母親との間に確執を抱え、母親を憎みながら生きてきた主人公は、
この世に生まれ出たばかりの無垢な我が子に涙する。
この子もいずれ私を憎むようになるのだろう、と。

両親に望まれ、愛と祝福の中で生を享けた者であっても、
己自身や己を存在せしめるものを否定することからは逃れられない。
主人公の、そして作者の静かな絶望は、変わり者の清葉を勇気付けた。
ゆえに、三木清葉にとって、上原鞠愛は特別だった。
娘・鞠愛の存在なしに、件の作品が生まれることはなかっただろう。
変わり者の清葉を勇気付けたのは、鞠愛の存在そのものだった。

699Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:28:58 ID:yROZOFZo0
だからこそ、嬉しかった。鞠愛に見られて。鞠愛に蔑まれて。
嗜虐行為に依存している鞠愛に少しでも楽しんでもらえて。
そう、依存。彼女はまるで逃げ込むように、嗜虐行為を楽しんでいた。
清葉のエロ小説を読んだとき、彼女には他に言うべきことがあったはずなのに。
彼女の母親の名前と職業、彼女が学校では決して語ろうとしなかったことを、
作中に明記していたのに。彼女は何も言わなかった。

 ――僕は、上原さんの逃げ場になれたのかな。
 それとも、その逆でしかなかったのかな……。よく分かんない。

韋駄天の駆動音に追い立てられ、清葉はただ走り続ける。
死ぬ前に、上原鞠愛のことを、彼女と接することで生じた自分自身の心の揺れを、
どこかに書き遺しておきたかった。その思いを認識した瞬間、清葉は気付く。
ああそうか、だから僕は走っているんだ。だから、まだ、死ねないんだ。
しかし今の自分には、執筆に専念出来る場所はおろか、筆記用具すらないときた。

 ――蝶子先生……小説が書きたいです……。

蝶子先生(28歳/女教師/脳内在住)は眼鏡の位置を指で整えながら答えた。

『諦めたらそこで黒歴史化決定ですよ?』

700Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:29:29 ID:yROZOFZo0
【G-3 坂道/一日目・黎明】

【男子十九番:三木清葉】
【1:僕(たち) 2:苗字+君orさん(たち) 3:みんな】
 [状態]:健康、全裸+靴
 [装備]:裸体
 [道具]:なし
 [思考・状況]
  基本思考:蝶子先生…小説が書きたいです…
  0:韋駄天から逃げる。
  1:誰かに見られたらどうしよう…(ハァハァ
  2:筆記用具と執筆場所を確保する。
  3:上原さんに踏まれたい…(ハァハァ
 [備考欄]
  ※支給品一式とデイパックを紛失しました(G-2のモーテル跡に放置)

701 ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:34:00 ID:yROZOFZo0
SSの投下は以上です。
タイトルはディープパープルのアルバム名から拝借しました。



次の予約ですが、

霧島無色、国分寺多聞、渡世朝秋、問芒操、八十島秋乃

上記5名で予約します。
投下は来年になるかもしれません。

702 ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 10:42:21 ID:yROZOFZo0
前回投下したSS「あたしが殺した」の不動院凛華の状態表を以下のように修正します。
修正箇所はクロスボウの矢の本数に関する箇所です。



【女子十六番:不動院凛華(ふどういん・りんか)】
【1:私(達) 2:あなた(達)、名字+さんor君 3:皆、名字+さんor君(達)】
[状態]:健康、グロ耐性(強)
[装備]:軍用クロスボウ
[道具]:基本支給品、骨洞芙蘭のカツラ
    嵐崎・キャラハン・蘭子の首輪(破損、爆発済み)
    クロスボウ専用の矢(10or11/12)
[思考・状況]
基本思考:一人でも多くのクラスメイトと共に生還する。
0:有栖川桜をしばらく休ませる。
1:桜が落ち着いたら二人でB-6の診療所に向かう。
2:嵐崎・キャラハン・蘭子の首輪を調べる。
3:宗一がいれば、首輪の構造も分かるのに…
4:隣家の二階の電気、消した方が良さそうね…
5:八十島さん…トイレにしては長いわね。
[備考欄]
※有栖川桜に超能力があることは知りません。
※蘭子の首輪の爆発は、無理に外そうとしたことが原因だと考えています。
※クロスボウは、威嚇(自衛)の目的で所持しています。
※幼馴染の穂積宗一のことは下の名前で呼びます。
※有栖川桜の腕に刺さっていたクロスボウの矢を所持しているか否かは
 後続の書き手の方にお任せします。

703 ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 11:12:15 ID:yROZOFZo0
ああ、読み直してみたらミスが多いな…
複数形にしちゃいけない箇所を複数形にしてたり。
wiki収録版ではそういうミスを直しています。
そちらを読んでいただければ幸いです。

ttp://www39.atwiki.jp/jisakurowa2nd/pages/112.html

704 ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 19:01:25 ID:yROZOFZo0
申し訳ありません。
予約内容を以下のように変更いたします。

桐原千里、仁木天、高森乙子(フラグメント.N)、水原維澄、刃庭魯依、帝泉瑞乃

上記6人で予約します。

705全生存者入場!!:2010/12/16(木) 17:50:03 ID:.M8WR.7o0
リョナ厨殺しは生きていた!! 非情なる首輪を外し愛玩人形が甦った!!!
レプリカント!! 桐野きららだァ――――!!!

人造人間はすでに両親が開発している!!
プログラムマネージャー仁木天だァ――――!!!

組み付かれしだい魅了しまくってやる!!
無力な一般人代表 天草紗耶香だァッ!!!

素手の殴り合いなら俺の感覚操作がものを言う!!
素手に見えるか 改造人間 霧島無色!!!

真のヤンデレを知らしめたい!! お団子サイボーグ 問芒操だァ!!!

柔道は3階級制覇だがケンカなら全階級オレのものだ!!
近所の不良 国分寺多聞だ!!!

グロ耐性は完璧だ!! 長距離ランナー 不動院凛華!!!!

全アニメ作品の次回予告は私の中にある!!
現実逃避の神様が来たッ 八十島秋乃!!!

蝶野には絶対に敗けん!!
潔癖症の狂気見せたる 風紀委員 水原維澄だ!!!

バーリ・トゥード(なんでもあり)ならこいつが怖い!!
下剤所持のピュア・ウォッチャー 桐野ラキだ!!!

京終財閥から最強美少女が上陸だ!! 自重ゼロ 京終春日!!!

706全生存者入場!!:2010/12/16(木) 17:50:43 ID:.M8WR.7o0
ルールの無い復讐がしたいからジョーカー(道化)になったのだ!!
最後の復讐を見せてやる!! 板倉竜斗!!!

人間電磁調理器とはよく言ったもの!!
マーダーの首輪が今 実戦でバクハツする!! サイキッカー 有栖川桜だ―――!!!

本校生徒会長こそが地上最強の代名詞だ!!
まさかこの女がきてくれるとはッッ 高森乙子!!!

闘いたいから拡声器使用ッ キャリア一切不問!!!!
未来のプロボクサー 琴浦周斗だ!!!

私の武術は世界最強ではない対人戦で最強なのだ!!
御存知京終ファミリー 中川いさ!!!

謎の鎌は今や足に刺さってる!! オレを驚かせた奴はいないのか!!
藤ヶ原二臣だ!!!

デヴゥゥゥゥゥいッ説明不要!! 1m60!!! 160kg!!!
月元夢子だ!!!

言葉は実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦言葉責め!!
草食男子から静間菅人の登場だ!!!

夕璃菜はボクのもの 邪魔するやつは思いきり騙し思いきり殺すだけ!!
奉仕マーダー黒百合従姉妹 砂野碧衣

教祖を守りに日本へきたッ!!
シシリアンマフィアの暗殺者 サフィロ・シャリーノ!!!

美容に更なる磨きをかけ ”ギャルマーダー”三住明梨朱が帰ってきたァ!!!

707全生存者入場!!:2010/12/16(木) 17:51:25 ID:.M8WR.7o0
今の自分に気力はないッッ!! 花火職人 戸崎繭!!!

桐原重工の頭脳が今ベールを脱ぐ!! 本社から 桐原千里社長だ!!!

碧衣ちゃんの前でなら私はいつでも全盛期だ!!
真性基地外 砂野夕璃菜 巨大ロボで登場だ!!!

教師の仕事はどーしたッ 下僕の魂 未だ消えずッ!!
主催も奉仕も思いのまま!! 蝶野杜夫だ!!!

特に理由はないッ 着ぐるみが心地良いのは当たりまえ!!
素顔はないしょだ!!! 演劇部所属!
ジョナサン大山がきてくれた―――!!!

援交で磨いた調教テク!!
ゴシックロリータ・アイアンメイデン 上原鞠愛だ!!!

調教だったらこの人を外せない!! 超A級寄生師 フラグメント.Nだ!!!

超一流女子高生の超一流の教師イジメだ!! 生で拝んでひれ伏しやがれッ
主催蝶野の奉仕対象!! 麓山留夏!!!

遠隔狙撃はこの男が完成させた!!
マーダー男子の切り札!! 渡世朝秋だ!!!

若き裸体が走ってきたッ
どこでイッていたンだッ マゾヒストッッ
俺達は君を待っていたッッッ三木清葉の登場だ――――――――ッ

708全生存者入場!!:2010/12/16(木) 17:52:08 ID:.M8WR.7o0
加えて蝶野脱落に備え超豪華なテロリストを9名御用意致しました!

吸血鬼 ネイサン・ホーマー!!
改造人間 骨洞芙蘭!!
カルトの教祖!黒嵜暁羽!

……ッッ  どーやらあと6名は到着が遅れている様ですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ

709テストしたらば名無しさん:2010/12/16(木) 18:23:49 ID:tGOKvj8kO
投下乙乙。
いやぁ、砂野は強いですね

…いや、チートすぎて笑う。

そしてふた○りは自重しろ。



全選手入場とかwww
てか六人早く来いwww

710テストしたらば名無しさん:2010/12/18(土) 18:55:44 ID:m7qx2I0A0
パロロワ毒吐き別館の交流雑談スレのロワ語り
(※注:毒を吐くのではなく、普通に前向きに語る企画です)

12月20日(月)0:00〜23:59まで、本ロワ・自作2です。
このスレには書けないような方向の感想を書いていきましょう。

711テストしたらば名無しさん:2010/12/18(土) 19:11:21 ID:SIeK.KIQO
え、マジでうちなの?w

多分レス4つとかで終わると思うけど…orz

712テストしたらば名無しさん:2010/12/18(土) 19:36:24 ID:m7qx2I0A0
マジでうちです。
しかも自分、巻き込まれ規制で書き込めません…orz
代理投稿を頼むか、リモホ指定で規制解除してもらうよう頼んでみるか…

まあでも、把握不要っていうのは圧倒的に強みですよね。
SSの本数も少ないからすぐ読み終わる、即日書き手になれるっていう。

ああでも、SSの本数が少ないって、強みなんだろうか…
寒さが身にしみる…細かいことは気にしないようにしよう…

713テストしたらば名無しさん:2010/12/21(火) 01:53:58 ID:t3FUuDbQ0
終了〜。
思ったより盛り上がった気がするな。
これからも頑張ろー。

714テストしたらば名無しさん:2010/12/21(火) 11:05:51 ID:ClNW6zno0
ああ、自分が寝てから盛り上がってた…orz
そういえばこのロワって、優勝してもその時点で主催側が全滅していたら
首輪を外せないし帰還も出来ないんだな。
たとえ生きていても、今度はテロリストとして働かされることになりかねないという…

715テストしたらば名無しさん:2010/12/21(火) 23:22:34 ID:72BHWve2O
そこで誰かの介入ですよ。
…いや、流石にもう限界か?

716テストしたらば名無しさん:2010/12/22(水) 01:48:17 ID:S94qJwt.0
いるっちゃいるな。介入してきそうな奴

717テストしたらば名無しさん:2010/12/22(水) 08:59:33 ID:VRb/rK5g0
這い寄る混沌のことか。
主催の誰かに化けてるんじゃないかと思っていたが…

あ、蝶野先生は却下、全力で却下。
這い寄ってきそうだしカオスでもあるけど、全力で却下。
ホーマーにしましょう、ホーマーにね。ええ。

718テストしたらば名無しさん:2010/12/23(木) 04:02:27 ID:MhARxwUw0
飛躍しすぎ。モチツケ

719テストしたらば名無しさん:2010/12/24(金) 23:38:46 ID:fzCIpDTwO
おまwww今日のwiki来た人数やべぇwww90越えたwww

720テストしたらば名無しさん:2010/12/25(土) 10:30:43 ID:mLk0tioY0
カウンターが壊れてたのかな…今見たら昨日は9アクセスだった。
でも新規SSが追加された日は90越えたりしますよね。

721テストしたらば名無しさん:2011/01/07(金) 21:56:41 ID:okQSNbBc0
さぁーて、来週の自作ロワ2ndは?

八十島秋乃です。
すっかり年が明けてしまいました。
刃物を持った無職の少年が近隣エリアを徘徊しているそうです。
「俺が無職に見えるのか?」などと言い、職務質問しようとしたライオン頭を殺害。
ここはとてもひどい無人島ですね。

さて現在の予約は…

「◆.CzKQna1OU氏 藤ヶ原二臣、麓山留夏」
「◆dXhnNxERuo氏 琴浦周斗、砂野碧衣、マイケル」
「◆Y47IPLbgaw氏 桐野ラキ、ジョナサン大山、月元夢子」
「◆CUPf/QTby2氏 仁木天、桐原千里、高森乙子、水原維澄、
 刃庭魯依、帝泉瑞乃、フラグメント.N」

…の4本です。
来週もまた見てくださいね!
んがぐぐ…

722テストしたらば名無しさん:2011/01/10(月) 20:42:19 ID:mmu/lez6O
>>721
お疲れ様あきのん!
けどそのあきのん、今撹乱して走り回ってるけどね…

723 ◆ASQQNYexes:2011/03/06(日) 16:12:43 ID:ipakWOgY0
霧島無色、渡世朝秋で予約します

724テストしたらば名無しさん:2011/03/06(日) 20:59:40 ID:36mAA7qAO
ニート予約来た!
楽しみにしてます〜

725 ◆ASQQNYexes:2011/03/13(日) 20:16:59 ID:rpHEAHII0
八十島秋乃を追加予約します

726テストしたらば名無しさん:2011/03/14(月) 02:01:09 ID:bJD2iKn6O
あきのん逃げてええええええええ

727 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:19:25 ID:sqI/rgKs0
霧島無色、渡世朝秋、八十島秋乃
投下します

728利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:20:15 ID:sqI/rgKs0
 その刹那、霧島無色は動きを止めた。
 一瞬だけ、どこかで誰かが道路工事を始めたのかと錯覚した。
 遠くで響いた連射音が、アスファルトを破砕する音のように聞こえたからだった。

 しかしすぐに勘違いだと気付く。
 ここは無人島、いるのは2年D組の生徒のみ、そして今は殺し合いのさなか。
 こんなときに誰が道路工事などするものか。
 そもそも自分がいるのは森の中、音がした場所も恐らくは森。
 この音は、違う。地面を砕いているのではない。
 あの夜、人間としての自分が死んだ夜、自分を撃ち抜いたあの音を思い出すが、まったく違う。
 耳慣れない音、そして殺し合いの場で鳴り響いた音、ということは――

(銃火器を支給された奴がいる、というわけか……)

 考えてみれば、当然の話だった。
 自分への個別支給品は日用品で、鹿狩瀬荻矢が所持していたのはサバイバルナイフ。
 ならばより殺傷力の高いものを支給された生徒がいたとしても、まったく不思議ではない。

729利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:21:34 ID:sqI/rgKs0
 無色は思案を巡らせる。
 接近戦ならば、誰にも負けないつもりだった。
 自分には、感覚操作能力がある。
 ありもしない激痛を相手に与え、自分自身の苦痛を完全に消去できる特殊能力が。
 たとえ相手が武術の達人であっても一方的に屠殺できるほどの特殊能力が。
 だが、もしも遠方からの銃撃によって致命傷を受けてしまったら。
 あのときのように、自分が撃たれたことも理解できないまま殺されてしまったら。
 そもそもこの島には、安佐蔵恭二郎をミンチにした巨大殺人機械が徘徊しているのだ。
 いかに自分が超越的な能力を有していても、発揮できなければ意味がない。

(囮と盾が必要になる、ということか……)

 無色はその手段について、冷静に冷淡に吟味する。
 自身の腕と能力のみを信じる彼は、他人を利用することに抵抗があった。
 卑怯な真似をしたくない、などと思っているわけではない。
 自分しか信じていないだけ、いや、自分の強さを信じていたいだけだ。

730利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:22:17 ID:sqI/rgKs0
 それに――改造人間となる前の彼は、心身ともに健全な少年だった。
 当時から人付き合いは苦手だったが、それは慎ましさの裏返しでもあった。
 他人に対する破壊衝動を心の奥底に抱えてはいたものの、ボクシングでしかそれを発散しない、
合意の上でしかおこなわない、という良識と自制心を持ち合わせていた。
 ある日突然殺されて違法改造を施され、あれほど好きだったボクシングの公式試合に
二度と出場できなくなったとき、彼の感情は完全に死んだ。夢と共に心を失くした。
それでも彼の価値観や矜持が完全に損なわれたわけではなかった。
 しかし改造人間としてのアイデンティティが彼の美質を蹂躙する。

(感覚操作によって、人の心や行動を自在に操るにはどうすればいいか)

 その方法を見つけ出すのだ。無法地帯となったこの島で、クラスメイトを実験台にして。
 いくら強くなっても、いくら特殊な力を得ても、素手では銃を持った相手に勝てない。だが――
 無色は自分の口元が薄く冷たく歪んでいることを自覚する。

 彼は隣接エリアにあたるB−6の診療所を目指す。
 恐らくは負傷者が逃げ込んでくるであろう場所。
 怪我人、すなわち痛覚からの解放を望む者が目指すであろう場所。
 非情なる改造人間、霧島無色の足をそこに向かわせたのは、
初日深夜に死亡した中井沢尽の発射した自衛用サブマシンガンの音だった。

               ◇

731利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:22:57 ID:sqI/rgKs0
 渡世朝秋の目的地はA−3エリアだった。
 島南西部の住宅街を迂回する形で森の中を進み、展望台を目指す。
 夜の森は不安を煽り、恐怖をかき立てる。見知らぬ地となれば、尚更だ。
 迷い込んだ者はやがて恐慌状態に陥り、一刻も早くここから抜け出したいと思うだろう。
 だからこそ彼は森を往く。人目を避けるため、そして、この森を自然の要塞として利用するために。

 その道程で遭遇した鹿狩瀬荻矢の死体は、違和感に満ちていた。
 荻矢は感情が昂ぶると痛みを感じなくなるという特異体質の持ち主だった。
 だが、事切れた彼の顔は苦悶に歪み切っている。
 かといって、感情が昂ぶることなく殺されたのかといえば、そういうわけでもなさそうだった。
 光漏れを警戒し、デイパックで覆ったランタンでざっと確認した限りでは、外傷は三つ。
 太腿と腹部の刺し傷と、顔面の打撲痕。死因は、太腿の大動脈損傷による失血だろう。

 つまり、鹿狩瀬荻矢は殺される前に顔面を殴られているのである。
 激昂しやすい性格の彼が、果たして冷静でいられただろうか。考えられない。
 にもかかわらず、感情が昂ぶると痛覚を失うはずの彼の死に顔は、苦悶に歪んでいる。
 それだけではない。彼の体には、抵抗した形跡がまるでなかった。
 手には汚れも傷もなく、衣服の損傷は刺し傷によるもののみ。
 つまり、抵抗はおろか、身を庇おうとすらしていなかった、ということになる。
 キレやすく、喧嘩慣れしているはずの彼にしては、あまりにも不自然と言わざるを得ない。
 死体が死の状況を語る――鹿狩瀬荻矢は、一方的な加害行為によって殺された。

732利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:23:43 ID:sqI/rgKs0
 だが、一体誰が? 朝秋は犯人像を推測する。
 殺害者は男子生徒だろう。女子の中にも武術の達人や暴力狂がいることは知っているが、
相手の顔面を殴りつける、という手段を彼女たちが採るとは考えにくい。
 それに、この痣。迷いがなく、重量のあるパンチを繰り出せる者にしか成し得ない。

 重量のあるパンチ。真っ先に思い浮かぶのが、琴浦周斗だった。
 プロボクサー入りが決定している彼のパンチには、破壊力があるに違いない。
 しかし、彼ではないだろう。周斗なら、先ほど拡声器で叫んでいた。
 それに彼には裏表がなく、無抵抗の相手に対する暴力は嫌っているように見受けられた。

 では、国分寺多聞はどうか。喧嘩の強さ、という点では加害者候補に挙げられる。
 しかし周斗と同様に、能力的には可能だが人格的には不可能と判断せざるを得ない。
 多聞はその外見に反してマイペースかつ慎重で、自分から喧嘩を吹っかけることはない。
 もし、異常な状況下であることを理由にこの二人の変心を疑うのならば、そのような疑心こそが、
状況の異常性に流されている証なのだと言わざるを得ない、と朝秋は思う。
 もっとも、上から目線でそう思えるのは、犯人に心当たりがあるからだが。

733利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:24:22 ID:sqI/rgKs0
 彼が殺害者と目した人物、それは霧島無色だった。
 学校内では大人しく、クラスメイトとほとんど口を利くことのない無色の裏の顔。
 ヤンキー狩りと称して夜の街に繰り出す彼の存在は、不良グループの間では有名だった。
 周斗と同じジムに通っていたが不正行為を働いて公式試合の出場資格を剥奪された、とも
厄介ごとに首を突っ込んで射殺されたはず、とも伝え聞くが、真偽の定かでない過去の経歴などよりも、
実際に彼の襲撃を受けた不良たちの証言のほうが今の朝秋には興味深い。

 曰く、顔を殴られただけなのに、有り得ないレベルの激痛が全身に走った。
 曰く、実験と称し、物理法則では説明のつかない手段で耐え難い苦痛を与えてきた。
 曰く、いくら相手を殴っても、まるで痛みなど感じないかのように平然としていた。

 負け犬の遠吠えにしては芸がない、と当時は思ったものだった。
 だが、今は違う。彼らの証言を事実であると仮定すれば、目の前の違和感に筋が通る。
 すなわち、痛みを感じないはずの鹿狩瀬荻矢の顔が苦悶に歪んでいる理由――

(どんなイカサマを働いているのかは知らんがね、一つ目のキーワードは『痛み』ってとこかねぇ?)

734利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:25:06 ID:sqI/rgKs0
 朝秋はPSO-1スコープを覗き込み、その倍率を調整する。
 木々の向こう、B−6エリア方面に見慣れた後ろ姿が見える。
 小柄で細身の同級生。予想通りの人物が、こちらに背を向け歩いている。

(やはり、俺の睨んだとおりか……)

 冷笑が込み上げる。しかしすぐに表情を引き締め、無色の後頭部に照準を合わせた。
 今ならば、確実に殺せる。だが、彼は撃たなかった。

 自身が優勝するために、霧島無色を生かしておく。それが朝秋の判断だった。
 無色はゲームに乗っており、肉弾戦に関しては圧倒的な強さを誇る。
 野放しにしておけば、死者を量産してくれるだろう。
 一方、自分に支給された弾丸は30発。全員を殺し尽すには数が足りない。
 予備の武器を手に入れるという選択肢もあるが、自分が殺し合いに乗っていることや
自分自身の存在を徹底的に秘匿した方が、ことを有利に運べるはずだ。
 ならば、接近戦に特化した“予備の武器”は、手元に置かない方がいい。
 潜伏の邪魔になる危険物は別の誰かに持たせ、好き勝手に暴れさせておく方がいい。

735利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:25:53 ID:sqI/rgKs0
 朝秋にとって無色は予備弾薬、文字通り鉄砲玉だった。
 人減らしに貢献させ、利用価値がなくなれば、間合いを詰められる前に始末する。
 それだけではない。優勝を狙う以上、韋駄天に勝たねばならない。
 勝算は、ある。だが、身体能力が高く、尚且つ好戦的な人物の存在が不可欠だった。

 朝秋に支給された光学照準器PSO-1は、現行モデルではなく初期型だった。
 PSO-1の初期型は、赤外線投光器検知用フィルターを内蔵している。
 つまり、敵の赤外線暗視装置を発見できるのである。
 それは韋駄天のサーマルビジョンモードを無効化できることを意味していた。
 たとえコックピットが防弾仕様になっているのだとしても、索敵機能をすべて破壊してしまえば、
韋駄天の命中精度は大幅に落ちる。あとは“予備の武器”の立ち回り次第だ。

(ゲームに乗った者同士、せいぜい協力し合おうじゃないか。なぁ、霧島クン?)

 もっとも、最後に笑うのは俺一人だがね。
 胸中でそう付け加えながら、闇の中、朝秋は枯れ枝を踏み鳴らした。

736利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:26:42 ID:sqI/rgKs0
【C-6 森林/一日目・黎明】

【男子二十番:渡世朝秋】
【1:俺(達) 2:相手の容姿(おっさん、茶髪、チビなど)、お前(ら) 3:あいつ(ら)】
[状態]:冷静、健康
[装備]:ドラグノフ狙撃銃+PSO-1スコープ(9/10)
[道具]:ライフル用予備弾薬(20/20)、基本支給品×1
[思考・状況]
基本思考:狙撃を駆使して優勝を狙う
0:狙撃ポイントの確保のため展望台へ向かう。
1:霧島無色を鉄砲玉として利用する。
2:琴浦は追わない。
[備考欄]
※狙撃の有効範囲は1エリア分の端から端辺りまでです。対象がエリアの真中に居れば隣のエリアからでも狙撃できます。



               ◇

737利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:27:22 ID:sqI/rgKs0
 アニメキャラの明るい声が自分の現状を叙述する。
 脳内で放映される次回予告の繰り返しに、八十島秋乃の胸は痛む。
 涙が溢れそうだった。脳内在住のアニメキャラにひどく申し訳ないことをしているようで。
 自分の過去や現在や未来を彼らに語らせてしまうことが、途方もなく重い罪に感じられた。

(どうして、どうしてこんなことに……)

 疑問に答える者はいない。考えようとすれば、悲しみに押し潰されそうになる。
 何故こんなに悲しくなるのかは分からない。ただ逃げているだけなのに。
 怖いから、全力で逃げる、そんな当たり前のことをしているだけなのに。
 だから秋乃は走り続ける。もし立ち止まってしまえば、蝶野に対する恨み言を
ぶちまけずにはいられなくなると心のどこかで気付いているから。
 路地の向こうに人影が見えた。細身の男子生徒が行く手に立っているのが分かる。

(あれは、霧島無色……)

 温かな安堵が胸に込み上げ、秋乃の視界が涙で滲む。
 良かった、助かった。無色は大人しいから、殺し合いに乗ったりなんかしない。それに、
周斗と同じボクシングジムに通っていたっていうし、いざというときは頼りになるはず。
 張りつめていた糸が切れるように、秋乃はその場にへたり込んだ。
 もう、走る必要はない。もう、逃げる必要もない。もう大丈夫、どうにかなる。
 秋乃は激しく息づきながら、自分のほうに近付いてくるクラスメイトの男子を見上げた。
 闇に溶け込むような彼の表情は、秋乃にはよく分からない。

738利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:28:23 ID:sqI/rgKs0
「八十島か……」
「あぁ、良かった、無色……、助けて……お願い……」
「……助けるように、見えるのか?」
「何言ってるの……、こんなときに、冗談、言わないで……」
「いや、俺は冗談なんか言わないさ」

 一歩、また一歩、こちらに歩み寄る無色の口元が冷ややかに笑っているのが見える。
 あぁ、知らなかった、無色って、こんな風に笑う人だったんだ――
 自分の胸の奥底が凍りついていくのを、秋乃はまるで他人事のように認識していた。

 気付いたのだ。無色はゲームに乗っている。だが、そんな相手に捕まってしまったのは、
自分を助けてくれた不動院凛華を信じられずに逃げ出したことへの罰のように思えてならない。
 だからこそ、あんなに悲しかったのだろう。脳内次回予告に申し訳なさを感じたのだろう。
 凛華が怖い、しかし凛華を裏切ったのは本当は自分の方なのだと心のどこかで気付いていたから。

739利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:29:01 ID:sqI/rgKs0
 凛華は今、どうしているだろう。桜は今、どうしているだろう。
 きっと、誰も生きて家には戻れない、と秋乃は無色を見上げて思った。
 殺し合いに乗ろうと乗るまいと、蝶野先生の計画に飲み込まれてしまったことに変わりはないのだから。
 そしていくら強くても、たとえ凛華のように強くても、飲み込まれた者が足を引っ張る。
 冷ややかに自分を見下ろす殺人者に、秋乃は諦めの言葉を告げた。

「……殺し合いなんかに乗ったって、生き残れないわ」
「俺は生き残るさ」
「でも、蘭子の首輪は爆発した……だから、無色の首輪だって……」
「話が見えないな。俺が生き残れないことと嵐崎の首輪の爆発に、何の関係がある?」
「蘭子、殺し合いに乗って、桜を襲ってた。そしたらいきなり首輪が爆発したの!」
「桜……? 有栖川か……」

 気のせいだろうか。無色の表情が一瞬だけ変わったように思えた。
 仲間と共にいるときのような、年相応の無警戒な顔を見せた。
 なんだ、無色もこんな普通っぽい顔をするんだ。でも、どうしてこんなときに?
 秋乃が疑問に思ったときには既に、無色の表情は元の冷ややかなものに戻っていた。
 いや、ただ戻ったのではない。その冷酷さは先程までとは比べ物にならないほど
冷たく鋭く研ぎ澄まされ、残忍な光をたたえていたのだった。

740利用する者される者 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:29:56 ID:sqI/rgKs0
【B-6 診療所付近/一日目・黎明】

【男子十五番:霧島無色】
【1:俺(達) 2:苗字呼び捨て、お前(ら) 3:あの男・女】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、サバイバルナイフ、不明支給品×1(日用品)
[思考・状況]
 基本思考:人間の強さを超えてやる
 0:クラスメイトを使って装置の実験をする
 1:有栖川が本物のサイキッカーかどうか確認したい
 2:まさか、有栖川が嵐崎の首輪を爆破した?
[備考欄]
※霧島無色の能力で現在判明しているのは「触った相手と自分自身の感覚の操作」
 ですが実験中なのでゲームを進めると新たな使い道を思いつくかもしれません。


【女子十九番:八十島秋乃〈やそじま・あきの〉】
【1:私(達) 2:下の名前呼び捨て(達) 3:皆(皆)】
[状態]:恐怖、不安、混乱、精神的疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本思考:殺し合いの撃破。
0:どうしよう…もうダメなのかな…
1:蘭子の首輪が突然爆発した…怖くて仕方がない…
2:不動院凛華に対する恐怖と罪悪感。
3:蝶野先生…どうして…
4:ここから逃げたい…
[備考欄]
※麗山への復讐を蝶野がしたがっているのではないかと考えています。

741 ◆ASQQNYexes:2011/03/14(月) 11:32:09 ID:sqI/rgKs0
投下は以上です

SSの題名はFFTの同名チャプタータイトルから拝借しました
次回の予約は考え中です

742テストしたらば名無しさん:2011/03/14(月) 20:22:28 ID:bJD2iKn6O
投下乙!

わぁ、診療所周辺、次ヤバそうだ…
多聞さんと操も来る訳だし、大波乱がくるな!
wktkwktkwktk


つーか初めて聞いた渡瀬の口調。
そして霧島△。

743 ◆CUPf/QTby2:2011/03/15(火) 17:37:59 ID:peKdhzL.0
投下乙です!
実質的には霧島&渡世マーダーコンビ結成、ですね。
貴重なマーダー男子が潰し合わずに済んで良かった…


ところで、拙作『そして殺人者は野に放たれる』内の
板倉の首輪に関する制限を2時間から6時間に変更、
wikiに収録されているSSを修正いたしました。

変更の理由といたしましては、2時間に一人という条件では書き手的に厳しすぎること。
制限が厳しすぎて動かしにくいキャラになっていると判断したためです。
『ミストレス・マリア』『消せない炎』の記述ならびに状態表も後日修正いたします。

また、予約パートの投下が遅れており、申し訳ございません。
今月中に投下できるよう、頑張っていきたいと思います。


>>726
すでに全力で逃げてる…

744 ◆ASQQNYexes:2011/04/10(日) 21:40:56 ID:a9wMrzQc0
国分寺多聞、問芒操で予約します

745テストしたらば名無しさん:2011/04/14(木) 01:17:24 ID:1Pj/bAn60
おお、この慌ただしい時期に予約とは凄い

746テストしたらば名無しさん:2011/04/15(金) 01:01:11 ID:iAHOgiuEO
予約乙

多聞と操来たか
楽しみ

747 ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:25:00 ID:HPubPL/s0
国分寺多聞、問芒操を投下します

748心のかたち人のかたち ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:26:07 ID:HPubPL/s0
 多聞クンの肩越しに、低次元女の笑顔が見える。
 奇形じみた顔かたちの低次元女が、操の多聞クンに媚びてるのが見える。
 低次元女って気持ち悪い。目が異様に大きくて、しかも離れすぎていて。
 そのうえ、口にする言葉は「信じれば夢は叶う」「心を強く持てば、絶対に負けない」
 「生きてるって、それだけで素晴らしいこと」「みんなで幸せになろうよ」……

 無神経だよね、こういう前向きな言葉って。
 無邪気な顔で、笑いながら、胸を張ってそんなことを言うなんて。イラッとする。

 いくら夢見ても、いくら信じても、操の体はもう元には戻らない。
 操が生まれ持っていた人間としての全身のパーツは、この世の何処にも存在しないから。
 心なんていう、どんな形をしてるのかすら分からないモノを強く持てっていう考え方も、電波臭がしてイラっとくる。
 そういう見えないモノを強くなんかしなくても、操は強化サイボーグなんだ、普通にしてれば負けないし。
 そんな操が多聞クンやクラスのみんなを殺しても、この低次元女は微笑むんだ。
 全身に埋め込まれた機械に生かされているだけなのに、「生きてるって素晴らしい」って笑うんだ。
 何が素晴らしいんだろう。操には全然分からないよ。
 なのに、置いてきぼりにされた操の前で、「みんなで幸せになろうよ」なんて言い出して。
 そんなこと言われても、操は“そっち側”には行けないのに。
 幸せになる“みんな”の中に操は入ってないんだな、ってただ思うだけなのに。

 操は人間じゃないから、多聞クンを殺そうとしたから、“みんな”の幸せを邪魔するから、
 幸せになれる“みんな”の中に入っていないこと自体は、なんとも思わないけどね。
 ただ、心身ともに奇形じみた低次元女なんかが多聞クンに微笑みかけるのが許せない。
 安物の飴玉を万能薬のように賛美する、そのスタンスが許せない。
 そんな低次元の存在が多聞クンの視界に入るなんて許せない。
 多聞クンの思考に入り込むなんて許せない。多聞クンの時間を使わせるなんて許せない。

749心のかたち人のかたち ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:26:41 ID:HPubPL/s0
 操の脳内劇場で解体ショーが始まった。
 多聞クンを誘惑した低次元女の腹を裂き、子宮と外性器を抉り取る。
 取り出したブツは、低次元女を嫁と呼ぶ豚さんたちが劣悪遺伝子の排泄に使うんだ。
 脳の不自由な豚さんは「本物そっくりの使い心地ッス、ブヒブヒ」って喜んでる。
 良かったね、切り取られた人体の一部なんてただの生ゴミなのに、誰かの役に立って。
 幸せになる“みんな”の中に入れないはずの豚さんまで、幸せにすることが出来て。
 なのに低次元女は泣いてるんだ。なんでなのかな。一体何が不満なのかな。
 操は低次元女の願いを叶えて、そして足りないところを補ってあげたのに。
 今度は低次元乳房を切り落とす。ゴム鞠みたいにまんまるの、形も大きさも不自然なおっぱい。
 それを別の豚さんにあげる。“みんな”の中に入れない人間未満がまた数匹、幸せそうにブヒッと笑う。
 幸せがいっぱい。なのに低次元女の仲間たちが操を狂人扱いする。
 操は全人類をヤク漬けにした。ダウン系ドラッグのもたらす多幸感に包まれて人は皆、夢の中。
 争う気力なんて誰にもない。みんなが幸せを実感できる理想の世界、お花畑in脳内。
 誰も彼もが廃人だけど、でもいいよね、生きてるってそれだけでとても素敵なことらしいし。
 なのに低次元女は怒るんだ。許せないよね。せっかく操が願いを叶えてあげたのに。
 低次元女って「私はみんなを受け入れます」みたいなスタンスのくせに有り得ないくらい高望みしててイラッとくる。
 そんな低次元女なんかに多聞クンの脳が汚染されないように、操が守ってあげるんだ。
 操はこの低次元女の解体ショーの一部始終をケータイ小説として書き起こすことに決めた。
 メールで多聞クンに送るために。多聞クンの脳を守るために――

750心のかたち人のかたち ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:27:25 ID:HPubPL/s0
「――問芒、お前も読むか?」

 不意に聞こえた多聞クンの声が、操の思考をぶった切る。
 目の前には多聞クンの顔。ここは診療所の待合室、椅子に腰を下ろした多聞クンが操の方を振り返り、漫画雑誌を差し出していた。
 多聞クンってさ、悪ぶってるけど純粋だよね。だって操のことを信じ切ってるんだもん。
 操は低次元女が大嫌いなのに、低次元女の載ってる雑誌を差し出したりして。
 それってさ、じっくり読んでいいってことだよね。解体ショーのネタを探していいってことだよね。

 それだけで、低次元女のウザさが気にならなくなった。
 所詮は低次元女。三次元から爪弾きにされた豚さんたちは「二次元の嫁」なんて呼んでるみたいだけど(笑)、
『彼女』は多聞クンの視線も言葉も愛情も何一つとして認識できない虫けら以下の存在なんだ。
 でも、だけど、低次元女の存在を許せるようになった途端に、心細さが甦る。
 さっきまでは思ってた。低次元女の解体ショーをケータイ小説化するんだ、メールで多聞クンに送るんだ、って。
 だけど、それってこの殺し合いから無事に帰還することが前提なんだよね。
 忘れてた。今の操には、ケータイなんてなかったんだ。
 当たり前だと思っていたものを失くし続ける操に向かって、多聞クンが屈託なく笑った。

751心のかたち人のかたち ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:28:09 ID:HPubPL/s0
「この号、発売前に回収になって、ほとんど出回ってなかったんだぜ。
 驚いたな、まさかこんな場所でお目にかかれるなんてな」
「むぅ。これって男のコ向けの雑誌じゃん」
「漫画を読むのに男も女も関係ねえって。読んでみろよ、気晴らしにはなるだろ」

 片手で差し出された漫画雑誌を操は両手で受け取った。
 思い出したんだ。そういえば多聞クンって学校でよく漫画を読んでたな、って。
 多聞クンの好きなもの、その魅力を知りたいと思った。
 多聞クンが夢中になるもの、その楽しさを知りたいと思った。
 低次元女のウザさとか、解体ショーのネタ探しとか、そういうものは気にならない。
 ただ、多聞クンの好きなものに近付けば、もっとうまく人間らしさを保てるようになると思ったんだ。

 多聞クンの横に腰掛ける。多聞クンは立ち上がり、窓の向こうに視線を向ける。
 灯りの消えた待合室は暗い。光と呼べるものは、窓から差し込む月明かりだけ。
 コマをひとつひとつ追ってみて初めて、ああ、多聞クンはこんなに暗い場所で漫画を読んでいたんだと気付く。
 操の視力は機械で強化されているから、これくらいの暗さ、なんてことはないんだけど。
 多聞クンの目には、かなりの負担だったに違いない。なのに平然と振舞って。
 視界の片隅で多聞クンがデイパックの中を確認してるのが分かる。
 多聞クンは何も言わない。操の読書を邪魔しないよう気を使ってくれてるのかな。
 でも無言だと逆に気になるんだよね。言いたくないものが入ってたんじゃないかな、って。
 ほんの一瞬、多聞クンが息を呑んだのを、機械化された聴覚がしっかり捉えているだけに。

752心のかたち人のかたち ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:29:15 ID:HPubPL/s0
「……なぁ、問芒。俺、ちょっくら診察室のほうを見てくるわ」
「じゃあ操も一緒に行く。多聞クンひとりじゃ危ないし」
「や、お前はここで休んでろ。軽く様子を見てくるだけだからさ」

 多聞クンの低い声と、診察室のドアの軋む音が重なった。
 ……ホント、多聞クンって嘘をつくのが下手だね。
 何気ない風を装っているけど、多聞クンの声色はさっきまでと全然違うんだ。
 緊張している感じがする。警戒している感じがする。
 操に何か、隠しておきたいことがあるのかな。声が全然笑ってないよ。
 診察室のドアが閉まり、多聞クンの足音が遠ざかるのを確認してから、操はそっと立ち上がった。

 隠し事。支給品に関すること。診察室に関係のあること、或いは単独行動が必要になること。
 操や他の誰かに危害を加えるようなこと、じゃないんだろうな。むしろ逆、なんだと思う。
 多聞クンはただ、操が人間じゃないってことを知らないだけで――
 そんなことを考えながら見るともなしに窓の外を眺め、次の瞬間、血の気が引いた。

「無色、クン……」

 肉眼でならきっと、遠くに誰かがいるということくらいしか分からない。
 でも人間のものではないこの目には、そこにいるのが誰なのか、はっきりと見えるんだ。
 診療所に背を向けて立つ無色クンと、彼のほうに駆け寄っていく秋乃サン。
 そっか、そうだったんだ。遠くで動くふたつの人影。多聞クンはこれを見たんだ。
 それで、誰かがここに来たときのために、診療所内の薬や設備を確認しに行ったんだね。
 そういえば、多聞クンが息を呑んだのは、デイパックの中を確認してしばらく経ってからだったっけ。
 やっぱり多聞クンって悪ぶってるけど純粋なんだね。操とは、違うんだ。

753心のかたち人のかたち ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:29:51 ID:HPubPL/s0
 漫画雑誌をそっと椅子に置き、診察室のドアを開ける。
 懐中電灯の光を頼りに戸棚の中を眺めていた多聞クンが振り返り、操を見る。
 ばつの悪そうな、自尊心を少し傷つけられたような、そんな表情。
 操は歓迎されていない。それは予想の範囲内だったけど。

「おい、問芒。お前、何があったんだ?」

 多聞クンは不可解なものを見るような、それでいてどこか気遣わしげな顔をした。
 やめて。そんな目で操を見ないで。操は変じゃない、大丈夫なんだから。
 一歩ずつ、着実に、操は多聞クンと距離を詰める。

「別に。ただ……、多聞クンってさ、彼女とかいるのかなって。気になったんだ」
「お前、急に何言い出すんだよ。いねぇって、彼女なんて」
「ホントかな……」
「嘘ついてどうすんだよ。この格好を見りゃ分かるだろ、女とか怖がって近寄ってこねぇって」
「じゃあ、さ。操が多聞クンの彼女になってもいいよね」

 返事も聞かず、操は多聞クンに飛び掛った。
 多聞クンの手から懐中電灯が転げ落ち、縦横無尽にスピンする。
 淡い光がぐるぐる回りながら壁を、天井を照らし出す。
 まるで部屋そのものが回転しているかのようだった。
 あっという間の出来事だった。操は多聞クンを押し倒していた。
 床に倒れた多聞クンに操は馬乗りになっていて、その両手を押さえつけていた。

754心のかたち人のかたち ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:30:33 ID:HPubPL/s0
「おい、お前……」
「だって操は多聞クンの彼女だもん」
「あのなぁ。お前、こんなことしてる場合じゃねぇだろ」
「じゃあ何するの? そんな風に反抗してるの、きっとキミだけだよ」
「いや、お前もいるだろ。いいから放せ。手荒な真似はしたくねぇんだ。それにヤベェだろ、こういうのは。ガキができたら――」
「どうだっていいよ。どうせ生きて帰れないんだから」

 馬鹿だな。何言ってるんだろう。
 多聞クンは操が守るよ、だから大丈夫って、そう言いたいはずなのに。
 操はぎゅっと目を閉じた。多聞クンの顔を見たくない。
 多聞クンの言葉を聞くのも嫌で、自分の唇で口を塞いだ。
 でも、これからどうしよう。誰かとこういうことをしたことなんてない。
 それ以前に、操は改造人間なんだ。心臓以外のすべての臓器が機械に置き換わっている。
 操には生殖機能なんてないのかもしれない。こういうことをすること自体、無理なのかもしれない。
 でも、やめられない。やめられないんだ。だって無色クンを見てしまったから。
 もし多聞クンが無色クンの姿を認め、その本性に気付いたら、きっと危険な目に遭うだろう。
 多聞クンは操が守る、だから大丈夫、そう言いたいけどやっぱり無理だ。
 だって操は無色クンの正体を知っているから。

 無色クンは改造人間。操はそれを知っている。
 でも多分、無色クンは操がお仲間だってことを知らないと思うけどね。
 どうして操は知ってるのか。だって同じ人に改造されたから。操のほうが先に改造されたから。
 操から得た結果を元に、無色クンの仕様は決定した。具体的な内容は知らないけどね。
 ただ、これだけは言える。操の弱点や欠陥は、無色クンには存在しない。
 だから多聞クンを行かせたくない。無色クンに気付いてほしくないんだ。

 懐中電灯の転がる音は、もう聞こえなくなっていた。

755心のかたち人のかたち ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:32:09 ID:HPubPL/s0
【B-6 診療所(診察室)/一日目・黎明】
【男子八番:国分寺多聞】
【1:俺(ら) 2:お前(ら) 3:あいつ(ら)、○○(名字呼び捨て)】
[状態]:健康、蝶野に対しての怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品(確認済み)
[思考・状況]
基本思考: 蝶野杜夫を殴る為に行動する
0:…抵抗しないとマズいよな。
1:戦闘はなるべくしたくない。
2:…診療所に人が来たときのために備えねば…



【女子十三番:問芒操】
【1:操(達) 2:君(達) 3:皆、○○クン(下の名前)】
[状態]:健康
[装備]:アイスピック(ニーソの下に隠したまま)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本思考: 国分寺多聞とともに行く。
0:一応改造された体だけど、大丈夫かな。
1:診療所だったら薬あるかもしれないしね〜♪
2:…多聞クン、嘘付くの下手すぎ。

756 ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:32:57 ID:HPubPL/s0
投下は以上です
SSタイトルはエヴァンゲリオンから拝借しました

757 ◆ASQQNYexes:2011/07/07(木) 14:37:33 ID:HPubPL/s0
三住明梨朱で予約します



あと問芒操の状態表(>>755)を以下のように修正します

【女子十三番:問芒操】
【1:操(達) 2:君(達) 3:皆、○○クン(下の名前)】
[状態]:健康
[装備]:アイスピック(ニーソの下に隠したまま)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本思考: 国分寺多聞とともに行く。
0:一応改造された体だけど、大丈夫かな。
1:多聞クンを無色クンに会わせたくない。
2:診療所にはやっぱ薬あるみたいだけど…

758テストしたらば名無しさん:2011/07/07(木) 20:48:17 ID:4iyb6VQQO
投下乙!



たwwwもwwwんwww常識人なのね…てか、冷静すぎwww

そしてヤンデレの操かわいいです。
でもニート来てるよ。二人とも逃げて。ヤった後に。

759テストしたらば名無しさん:2011/07/16(土) 01:07:15 ID:VsEk72iY0
これで全員登場した?

760テストしたらば名無しさん:2011/07/16(土) 08:47:45 ID:8jqcT1Ho0
安西先生、生徒は23話の時点で全員登場してます…

でもテロリスト側はマイケルが予約されたまま未登場の状態。
◆dXhnNxERuoさんはどこへ…

761 ◆/Tcg.9yFe.:2016/06/22(水) 11:40:15 ID:kbnP.63Q0
京終春日、戸崎繭、サフィロ・シャリーノ、骨洞芙蘭で予約

762 ◆/Tcg.9yFe.:2016/06/22(水) 16:54:12 ID:kbnP.63Q0
中川いさ を追加で予約

763 ◆/Tcg.9yFe.:2016/06/24(金) 08:46:45 ID:La497qRY0
黒㟢暁羽、二階堂永遠、板倉咲弓(故人)を予約に追加


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