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修正作品&試験投下スレ

1ルシファー@掲示板管理人 ◆8hviTNCQt.:2007/06/11(月) 01:23:42 ID:WrdARUbI
本スレ節約の為、修正した作品はこちらに投下して下さい。
また本投下する前に作品の内容や展開に不安がある時の試験投下の利用もどうぞ。

2LIVE A LIVE ◆Zp1p5F0JNw:2007/06/12(火) 08:14:57 ID:dP5IPDrc
本スレの続き投下させてもらいます

3LIVE A LIVE ◆Zp1p5F0JNw:2007/06/12(火) 08:15:32 ID:dP5IPDrc
「やめて…ディアス…こんな事…オペラさんも…」
「レナ…!隠れていろと…!」

目に涙を溜めて訴えるレナ。
ディアスが一瞬、オペラから注意を逸らす。

その隙を、オペラは逃さなかった。


仰向け状態のまま、ディアスの股間に一発蹴りを入れる。
思わぬ反撃受けたディアスはその激痛に顔を歪ませた。
その間にオペラは素早く起きあがり、レナに向かって走る。
場の状況を理解できないままのレナを後ろから拘束して、剣を彼女の頬に突きつけた。

「動かないで。ちょっとでも動いたら、レナを殺すわよ」

「オ、オペラさん…」
「オペラ…貴様ァ…!」

レナは恐怖に満ちた顔で、ディアスは怒りを浮かべた表情でオペラを見る。

「そこまで堕ちたか…!そうまでして生き延びたいか!」
「武器を置いて両手を上げて。今すぐに」

睨みながらもオペラの言う事に従うディアス。

「言う通りにしたぞ。レナを離せ」
「それはまだできないわ」
「ぐっ…」

ディアスは爆発しそうな怒りを懸命に抑えながらオペラを睨む。
オペラはその視線をつまらなさそうに受け止めた。
その場に静寂が訪れる。

「…ど…うして…」

静寂を破ったのは未だオペラに拘束されたままのレナだった。

「どうして…人殺しなんてするんですか…こんな事しないで…みんなで帰りましょうよ…」
「それは無理なのよ。生き残れるのは一人なんだから」
「でも…私達だけじゃなくて、ここにはエルネストさんだっているのに…」
「…だからよ」
「え…?」

オペラのその言葉に、レナとディアスは疑問の表情を浮かべる。

4LIVE A LIVE ◆Zp1p5F0JNw:2007/06/12(火) 08:16:23 ID:dP5IPDrc
「私はエルに死んで欲しくないわ。エルにはどんな事があっても生き延びて欲しい。
だから私は決めたのよ。エルをここから脱出させる為に、他の人達には死んでもらうって。
エルは人を殺せるような人じゃないから…私が殺すしかないのよ」
「そんな…オペラさんがそんな事して、みんなを殺して生き残ったって、エルネストさんが喜ぶわけないじゃないですか!」
「分かってるわよ!エルがそんな事望んでないのも…悲しむのも…でもいいのよ!
それでも、私はエルに生き残って欲しいの!生きていてほしいのよ!」

タカが外れたようにオペラは捲し立てる。その目には涙が浮かんでいた。
好きな人に死んで欲しくない…だからオペラは自身を含めた他の61人に死んでもらう選択をした。
でも…そんなの間違ってる。レナがそう言おうとした時、再びオペラが口を開く。

「ディアス…貴方はそう思わないの?貴方はレナを大切に思ってるんでしょ?
どんな事をしてでも、他の人を殺してでも、生きていて欲しいと思わないの?」

「思わん」

ディアスの答えは即答だった。

「お前は何も分かっていない……残された者の孤独を…つらさを…悲しみを……それが死よりも苦しいという事に」


ディアスは幼い頃、両親と妹を殺された。自分以外の家族が死に、自分だけが助かってしまった。
その後に待っていたのは、まさに地獄のような日々。

「俺は知っている…その苦しみを…」

自分だけが生き延びてしまったという罪悪感と孤独。殺した者への憎悪。失った家族への悲しみ。
長い間、ディアスはこの苦しみに耐えてきた。


「俺はあの苦しみを、レナに背負わせたくない。だからレナ一人を生き残らせようなどと考えない。
レナを大切に思っているからこそ…俺はこの殺し合いから、他の仲間と生きて脱出する道を選ぶ。例えそれがどんなに厳しい道でも、必ずな」



ディアスは静かに…だがその目に強い意志と覚悟を宿らせて言った。
そこまで聞いたオペラは、
「そうね…私には分からないわ。残された人の苦しみは」
ディアスと同じ位、その目に強い意志を込めて
「だから私は、どんなに苦しくても生きていて欲しいと思ってしまう」
ディアスと同じ位、強い覚悟を感じさせて

「私は、エルを生き残らせる!貴方に勝つ!」


レナの拘束を解いて彼女を突き飛ばし、オペラはそのまま剣を振り上げてディアスに襲いかかる。

「馬鹿が…っ!」

ディアスは、それを難なく避けて。
地面に捨てた短刀を拾い直して。
もう一度向かってきたオペラに向き直って。


ディアスの持った短刀が、オペラの胸を貫いた。

5LIVE A LIVE ◆Zp1p5F0JNw:2007/06/12(火) 08:16:57 ID:dP5IPDrc


オペラは仰向けのまま夕焼け空を見上げた。全身の力が抜けていく。
その横でレナが懸命に回復の紋章術を唱えていた。
「やめなさい…もう助かる見込みは無いわ…」
「しゃ、喋らないで下さい」
「万が一、一命を取り留めたとしても、私はまた貴方達を殺しにかかるわよ…」
「そんな事…」
「いいからやめなさい…こんな所で、紋章術を無駄遣いする事はないわ」

レナが涙を浮かべながら見つめてくる。
「泣くんじゃないわよ…殺人鬼が減るのよ、喜ぶもんでしょ?」
「…仲間が死んじゃって…喜ぶわけないじゃないですかぁ…」
この期に及んでまだ私を仲間と呼ぶのね。仕方ない子、と感じながらも嬉しく思う。

「ディアス…」
レナの隣に立ち、自分を見下ろしているディアスに声をかけた。
「何だ」
「レナや仲間と…生きて脱出するって言ったわよね…」
「言った」
「エルの事も…頼めるかしら?」
「努力はする」

ぶっきらぼうな返事だったが、先程と同じく強い意志が感じられた。
その事に少しだけ安心する。
未練は多い。この手でエルネストを助けられなかったのだから。
だが自分が死ぬ以上、もうエルネストの事は彼らに託すしか無かった。

罪の無い者を殺した自分は、恐らく地獄へ行く。
エルネストはきっと地獄に行くような罪は犯さない。
だからエルネストに会う事は、もう二度と無いだろう。
それでも、彼が生き抜いてくれれば自分は救われる。そう思った。


オペラの三つの目が、ゆっくりと閉じられる。



エル…結局、私は貴方に追いつけなかったわ。

貴方を追いかけて星から星へ。挙げ句宇宙の存亡をかけた戦いにまで。

やっと追いつけそうだと思ったら、またこんな事に巻き込まれて。

貴方の事だから、最後までこんな状況には抗って見せるんでしょうね。

すぐに殺し合いからの脱出を諦めてしまった私は、貴方のそういう強さにも追いつけなかった。

でもいいの。

私はそんな貴方が好きだったのだから。

だから、お願い。

最後まで生き抜いて。

最後までその強さを見せて――



―――最後まで、私が愛したエルのままでいて―――




【I-07/夕方】
【ディアス・フラック】[MP残量:90%]
[状態:疲労]
[装備:護身刀“竜穿”@SO3]
[道具:クォッドスキャナー@SO3、????←本人確認済み、荷物一式]
[行動方針:ゲームに乗った参加者の始末、ゲームからの脱出]
[思考1:レナを最優先に保護]
[思考2:仲間を探しレナを託す]

【レナ・ランフォード】[MP残量:90%]
[状態:極度の精神的疲労、深い悲しみ]
[装備:無し]
[道具:????×2←本人確認済み、荷物一式]
[行動方針:仲間と一緒に生きて脱出]
[思考1:オペラを弔う]
[思考2:仲間と合流したい]

[現在位置:I-07、診療所前]


【オペラ・ベクトラ@SO2 死亡】

【残り42人】

※オペラの荷物は彼女の死体のそばに落ちています。

6名無しのスフィア社社員:2007/06/12(火) 17:04:22 ID:g9k4DUcs
新作乙です。

7使い捨て:2007/06/13(水) 10:58:45 ID:HXHuxQ/s
「ん・・・あれは?」
レザード、エイミ、ブレアの3人はある建物を発見した。
地図をひろげてみるとどうやら観音堂という場所らしい。
三人は村に向かう途中だったが、レザードはもしレナスがいるのならそれに越したことはないので、
確認のために中に入ってみることにした。
「村に向かうんじゃないのかい?」
エイミは不機嫌そうに言う。
「レナスがもしかしたらいるかもしれないだろう。殺し合いはもう始まっている。お前もさっきの放送を聞いただろう。」
エイミはさっきの放送を聞いてから物凄く機嫌が悪かった。
また自分の仲間でエインフェリアを守れず死なせてしまったからだ。
知り合いであるロウファが殺されてしまったことに驚きも隠せない。
ロウファも闘うことは苦手ではないはずなのに。
かというレザードも少し急いでいた。
あのフレイが殺されてしまったのだから。
フレイは神々の中で2番目に偉い存在なのでレザードもまさかフレイがこんなに早く死ぬとは思っていなかった。
(フレイを倒すだけの実力者がいる。あのレナスが簡単に殺られるとは思わんが急がなくては。)
「わかったよ。最初にあの建物に入ろう。」
エイミはそういいながらバッグからパンを取り出す。
もうお昼だからお腹が空いていてもおかしくなかったし、空腹のせいで動けませんでしたなんていいわけは通用しないからだ。
パンを食べながらレザードの後をついていくエイミ、さらにどうにかして二人を殺そうとするブレア。
観音堂を少し覗いてみることにした。

◇◇◇

8使い捨て:2007/06/13(水) 10:59:30 ID:HXHuxQ/s
「また誰か近づいてきますね。今度こそ一撃で仕留めてみせます。」
シンは部屋の隅で扉が開くのをまっていた。
荷物はさっきのブラムスに全て奪われてしまったもとい渡してしまったので、荷物をなんとしても手に入れなければならない。

ギィ、ギィィィィ
小屋の扉が、音を立ててゆっくりと開こうとしています!


今です!

私は必殺の一撃を持って小屋へと入ってくる人物へと飛び掛り……飛び掛り………飛び掛り…………


私は気がつけばまた土下座をしていたのです。
な、何を言っているのか分からないと思いますが
私も何をされたのか分かりません。
頭がどうにかなってしまいそうです。
あれは圧倒的な威圧感だとか、超スピードだとかいったチャチなものzy……げふんげふん、

9使い捨て:2007/06/13(水) 11:01:11 ID:HXHuxQ/s
「おい、おまえ私に殺されたいのか。」
レザードは、見下すようにシンを見る。
「!、魔物じゃないか。」
エイミはパンを喉に詰まらせてむせながら喋った。
「だけど、人語は話せるようね。」
続いてブレアが喋る。
「おい、おまえまさかこの私に攻撃を仕掛けようとか考えていなかっただろうな。」
「いえ、滅相も・・・。」
「ゲホゲホ、なんか飲み物ないかい?」
そうエイミがいうとブレアがバックから瓶を差し出した。
「飲み物よ。」
「悪いね。」
そういうとエイミは一気に飲み物を飲み干した。
「荷物をよこせ。」
レザードが手を差し出す。
そういうとシンは、ヅラをつけて浣腸をもった大柄な男の事話した。
「貴様、ふさげているのか?それとも私を小馬鹿にしているのか?」
「いえいえ、そんなことは・・・。」
信じえてもらえないのも仕方がない。
その男の格好は明らかに異常だったのだから。
「つまりおまえはそいつに荷物を奪われたというわけか。まったくどいつもこいつも・・・・。」
レザードは呆れながら喋った、そして
「そうだお前、銀色の髪に浅葱色の鎧を身に纏った女性を見なかったか?」
「いえ見ていませんが・・・・。」
「そうか、ふぅ。」
レザードはブレアが急に後ろに走っていくの気配を感じた。
「?、なんだ?おい、何ボーっと・・・・、!。」
レザードはサッとエイミから離れた。
「グルル・・・・・。」
エイミの肌が腐ったような色に徐々に変色し、眼が異常な光を放っていた。
「おまえ、グ−ルパウダーか・・・?さっきの女、まさか。」
レザードはさっき会話の途中で、エイミがブレアから飲み物を貰うやり取りを聞いていた。
「まったく、下手に他人を信用するからこうなるのだ。」
「こ、これは穏やかではありませんねぇ・・・・。」
シンは、恐怖のあまりこっそりエイミの後ろから抜けだすと、思いっきり力の限りはばたいた。
しかし、恐怖のあまり逃げ出したのが悪かったのか、グール化したエイミはレザードではなく
逃げ出したシンを標的にものすごい高さまでジャンプし、シンの上に乗っかった。
シンの傷ついた体では長時間はばたくことも逃げ切ることもできなかった。
エイミは狂ったように(というか実際狂ってるというか)槍をグサグサ突き出し、内臓がでてもひたすら刺し続けた。
「ぎゃあああああ!!」
シンは断末魔の叫び声をあげ痛みにもがき苦しんでいる。

レザードはその様子を眺めながら
「・・・・・あれを試す良い機会か。」
レザードはそういうとバッグの中から本を取り出した。
「ククク、私は意外とヒキがいいようだ。まぁ、武器無しであの女に槍を渡す程愚かではないが。」

10使い捨て:2007/06/13(水) 11:02:06 ID:HXHuxQ/s
 

 天の風琴が


 奏で流れ落ちるその旋律


 凄惨にして蒼古なる雷.


エイミがシンを攻撃するのに夢中だったので、詠唱時間は余裕たっぷりだった。
エイミとシンの上空に何匹かの大きな電龍が姿を現した。
龍はまるで意思を持ってるかのように二人を食いつぶした。


◇◇◇

「あの、女は流石に逃げたようだな。」
そういうとレザードはエイミの死体から槍をひっぺがし、エイミのバッグを貰った。
「竜人も意外と脆く役にたたないものだ。これでは使い捨てだ。」
レザードはエイミとシンの死体を残しレナスを探すことにした。
「あぁ・・・・、愛しのレナスヴァルキュリア。すぐに迎えにいきますよ。」

◇◇◇

「はぁはぁ、ここまで逃げれば大丈夫ね。」
「一番理想的な形は、相打ちで3人全員死ぬことだけどやっぱり生き残ったのはあの男かしらね?」
ブレアは逃げながら巨大な電龍が数匹空を翔けるのをみたいた。
あの男はかなりの力を持った人間だったのを直感で感じ取っていた。
「まぁいいわ。あの男は次にあったとき私が始末をつけるもの。」

「あの男の顔が苦悶の表情に歪ませるのを想像すると痺れるわね・・・・・。」

「アハハハハハハハハハハハ!」

ブレアはそういうと狂ったように笑った。

11使い捨て:2007/06/13(水) 11:03:16 ID:HXHuxQ/s
C−07/午後】

【IMITATIVEブレア】MP残量:100%
初期支給品:パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔100/100〕@SO3、万能包丁@SO2
状態:正常
装備:パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔100/100〕@SO3
道具:万能包丁@SO2・荷物一式
行動方針:参加者にできる限り苦痛を与える。優勝はどうでもいい
思考1:どこか行くとこ決める
思考2:もしまた会ったら、レザードには出来る限りの苦痛を与えて殺す


【C−06/午後】

【レザード・ヴァレス】[MP残量:85%]
[状態]:正常
[装備]:天使の唇@VP、大いなる教書@VP2
[道具]:神槍パラダイム@RS、アップルグミ@TOP×4、エルヴンボウ@TOP、????(0〜1個。あるとしたら本人未確認)、支給品一式
[基本方針]:ヴァルキュリアと共に生き残る。
[思考1]:愛しのヴァルキュリアと再会し、二人で一緒に生還できる方法を考える。
[思考2]:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない。
[思考3]:ブレアを警戒。ブレアともしまた会ったら主催や殺し合いについての情報を聞き出す。
[備考]:※ブレアがマーダーだとは気付いていますが、ジョーカーだとまでは気付いていません。

【エイミ 死亡】
【シン 死亡】


【残り43人】


*近くにいた人は、ブルーティッシュボルトに気づいたかもしれません。
*二人の行き先は次の人に任せます。

12<エクスキューショナーが発動しました>:<エクスキューショナーが発動しました>
<エクスキューショナーが発動しました>

13 ◆yHjSlOJmms:2007/08/24(金) 06:28:24 ID:BgfcJG1E
修正版追い詰められし者の牙を投下します↓

14追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:30:07 ID:BgfcJG1E
「なめんなよ!死ぬ前にこのジェストーナ様の力、とくと目に焼き付けておけ!」
と威勢よく飛び出してはみたものの、やっぱりガブリエル超恐え〜。
もうなんつーの? 身に纏うオーラからして格の違いを感じさせやがる。
だがしかし、男ジェストーナ、一度腹を括ったからには背中は見せねぇ。
こうなりゃ最初からクライマックスだぜ。
この俺様の鋼鉄をも引き裂くこの爪でミンチにしてやらぁー。
ザシュッ!
鋭い刃物で切り裂く音が聞こえた。
だが手応えが無い。確認するとガブリエルは傷一つついてない。
ありゃ?切れたのは服だけですか?
「この程度か?やはり魔物は魔物と言う事か…」
ひどく冷めた目で俺を睨むガブリエル。
「いけない離れて!」
そう叫んでこちらに駆け寄るセリーヌが助けた少女A(俺命名)
肝心のセリーヌは目をつぶって精神を集中なさってるご様子。
相変わらずの早口で詠唱してる。
その足元に無人君がのんきに手を振ってやがる。
やっぱり君は役に立たなかったね。
とか突っ込んでる場合じゃねぇ。
少女Aの援護もセリーヌの呪文もすぐに来そうにない。
つまり俺が、目の前の恐怖から逃れるには、俺自身でどうにかするしかないわけだ。
こうなりゃ奥の手だ。
地獄の業火と恐れられたこの火炎で。
「食らえ!」
放った火球でガブリエルが火だるまに………ならねぇ!?
せいぜいガードに使った左腕の袖を焦がし、軽い火傷を負わした程度。
おいおい? 冗談だろ!? もうあれだよ? 俺のバトルフェイズは終わりだよ?
「多少芸はできる様だな? 他には何ができるんだ?」
だから終わりだっての。
「もう品切れか…。なら死ね!」
そう叫ぶやいなや手をかざすガブリエル。
その刹那。ガブリエルを中心にリング状の力場が広がった。
なにこれ? 痛っ! 超痛い!
その力場に吹き飛ばされる俺「くぅっ!」「ああっ!」と他二名。
無人君だけはしゃがんでその力場をやり過ごしてやがった。あの野郎っ!
しかしこれでわかった。
俺達には万が一にも勝ち目がねぇ。
だから、この二人には悪いがこのまま死んだ振りをしてやり過ごしさせてもらうぜ。
隙を見てとんずらだ。
卑怯者と罵りたければ罵りな。だがこれが、このジェストーナ様の処世術よ!

と、誰に聞かせてるのかわからない言い訳じみたことを考えながら、ジェストーナはそれこそ死ぬ気になって死んだ振りを始めた。

15追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:31:27 ID:BgfcJG1E
肢閃刀を地面に突き刺し杖代わりに立ち上がるアリーシャ。
ちらりと左右を見る。
左には、先程魔法で自分の危機を救ってくれた、奇抜な服を着た女性が頭を押さえながら立ち上がっている。
(よかった。無事みたいね)
右には、果敢にも男に飛び掛かった一見凶悪な魔物が、身動き一つしないで倒れている。
(まさか? やられてしまったの?)
ふと、死ぬ間際に見た光景が脳裏をよぎる。
オーディンの放った攻撃から、その身を呈し自分を守った深緑を思わせるような色した長髪、少し捻くれたハーフエルフの青年の後姿。
(また、私は誰かに守られてしまった。オーディンと戦った時もルーファスがその身を盾にして私をかばってくれた。
私が弱いから。傷つけたくないからと、泣き言を言っているから、私を守ろうとした人はみんな死んでしまう…)
「ふん、脆弱な。たかが魔物風情が出てくるからこうなるのだ」
燃えるような髪の色をした男が魔物に向かって吐き捨てた。
キッとその男を睨むアリーシャ。
(この人はオーディンと同じだ。強大な力を持ちながら、自分より弱い者達を虐げる事にその力を使う。
この人はこの島で生かしておいてはいけない人だ。今ここで止めないと、もっと多くの人を殺してしまう。
傷つきたくないとか、傷つけたくないとか言っている場合じゃない!)
刀を構え、バックからボーガンを取り出すと矢を装填した。
「詠唱時間は私が何とかします。貴方は魔法に集中してください!」
左にいる女性にそう告げる。女性は少し驚いたような表情を見せたが力強く頷きすぐさま詠唱を始めた。
それを見てアリーシャはボーガンの照準をガブリエルの頭に向け、矢を放った。
シュッと鋭い風切り音と共に射出された矢だったが、ガブリエルは少し首を反らしただけで回避した。
矢は背後の建物の壁に突き刺さった。

16追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:32:39 ID:BgfcJG1E
「やあぁぁぁっ!」
すかさず刀の間合いに飛び込むアリーシャ。
戦う事を嫌う彼女だったが、旅の中でそんな事も言って入られない。
不向きながらも自分の能力が活かせる戦い方を習得していた。
小柄な彼女は、持ち前の機敏さを活かした戦い方をする。
一撃は軽いがとにかく手数を入れる。
間髪いれずに攻撃し、その隙に重戦士による一撃か、術師による強力な魔法を見舞ってもらう。
今回も自然とその様な戦闘スタイルとなった。
刀を袈裟懸けに振り下ろす。
その太刀筋を見切りバックステップにてそれをかわすガブリエル。
すかさずアリーシャ目掛けて蹴りを放つ。
が、アリーシャはその蹴りを、体を捻り紙一重でかわしながら刺突を右の肩口に見舞った。
さして深い一撃ではなかったが、その肩口から出た血が肢閃刀を伝った。
「ちぃっ!」
大きく飛び退き間合いを離したガブリエルは、左手をかざしディバインウェーブを放とうとした。
「させないっ!」
身を低くし、地を這うように飛び掛かりガブリエルの足目掛けて刀を横薙ぎに払う。
アリーシャは今までのやり取りの中でフットワークならこの男に勝っていると確信していた。
ここで更に足に傷をつければより有利に戦えると思い、無理な体勢ながら足を狙った。
それにこの低さなら、この男の放つ力場もかわせると踏んだ。
ガブリエルはディバインウェーブを中断し、跳躍するとその攻撃をかわした。
足元にはうつ伏せ状態のアリーシャがいる。
その頭目掛けて足を振り下ろす。
アリーシャは転がり攻撃をかわし、立ち上がりざまに刀を振り上げた。
踏みつけようとしたところをかわされ隙が生じたガブリエルは、回避行動がとれず右腿に傷を負った。
そのまま返す刀を上段に構え、左足で踏み込むと共に振り下ろし追撃を加える。
この一撃は身を反らされ空を切った。
アリーシャはそのままその反動を利用し、体を回転させ右薙ぎに刀を大きく振り切る。
一撃目の振り下ろしは布石で本命はニ撃目であった。
だがガブリエルも十賢者の頂点に君臨する人物である。
場数もそれなりに踏んできている。
彼女の攻撃を先読みし、その横薙ぎを屈んで避けた。
続けざまに大振りの動作で開いた体に掌打を打ち込む。
「もらった!」
普通の相手なら当たっていただろうし、肋骨の数本はへし折る一撃だったが、かわされていた。
アリーシャはニ撃目をかわされるや否や、振りきった時に柄から離した左手で光子を2連射し、
ガブリエルの魔法によって作られた瓦礫に打ち込み転移した。
ガブリエルの掌打はアリーシャの肋骨の代わりに瓦礫を砕いていた。

17追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:33:37 ID:BgfcJG1E
すかさず間合いをつめるアリーシャ。
動きっぱなしでそろそろ息があがってきている。
(まだなの? このままではいつか反撃を許してしまう)
だが、尚も果敢に攻めるアリーシャ。
鋭い踏み込みと共に無数の突きを浴びせる。
大きな動作を伴う攻撃はもう避けたい。
先程のような転移による回避は少々博打が過ぎる。
だが、この思考がいけなかった。
無数に細かい突きを放ってはいたが、どうしても攻撃のリズムが単調になってしまう。
ガブリエルはその旋律にあわせたステップを踏み、これらをことごとくかわした。
そしてガブリエルはアリーシャの疲れが出てきたその時を狙って刀の鍔元を握った。
刀の鍔元は刀身よりも切れ味に劣る。
「しまったっ!」
がっしりと握られ、押す事も引く事もできず驚愕の表情をするアリーシャ。
「離れてくださいませっ!」
背後で詠唱を続けていた女性から朗報が届いた。
すぐさま柄から手を離し、離れた位置にある瓦礫に光子を当て転移する。
「エクスプロード!」
ガブリエルの目の前に直径が人間の身長ほどありそうな火球が生じ、
それが徐々に大きくなりガブリエルを飲み込むと巨大な爆発を起こした。
それなりに離れた距離にいたものの、その熱風はすさまじく、息を吸えば肺が火傷しそうな程だった。
尚も爆発によって生じた煙が立ち昇る中、アリーシャはセリーヌのすぐ側まで駆け寄った。
「間一髪でした。ありがとうございます」
助けてもらった礼を言い、手を差し出す。
「申し遅れました私…」
だが彼女はこちらを見ようとはしない。視線は煙に固定したまま、額からは汗がにじみ出ている。
「まだですわ! 残念ですが自己紹介をする余裕はありませんわ!」
風が吹き、煙を払った。
そこにはまだあの男が立っていた。
爆発によるダメージを受けながら、尚も鋭い殺意と眼光をこちらに向けて。

18追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:34:28 ID:BgfcJG1E
アリーシャは驚いた。
これほどの威力の魔法を放つこの女性にもだが、それに耐え切ったこの男の底の見えない実力と生命力に。
「もう一度…。もう一度だけ、時間を稼いでくれませんこと? 今度はもっと強力な魔法をお見舞いしてやりますわ」
呆然とガブリエルを眺めていたアリーシャにセリーヌが告げた。
そう言った彼女の表情は硬く険しい。
アリーシャは自信が無かった。既にかなり疲弊していたし、扱いになれた刀剣タイプの武器は奪われてしまっている。
手元の武器は近接戦闘ではおよそ役に立ちそうに無いボーガンと、使用者と対峙した事はあるが扱ったことなど無い戦斧だけだ。
(けれど、やるしかない! 相手も疲れているだろうし、ダメージも残っているはず)
「わかりました。私の命を貴女に預けます。そして、貴女の命を預かります!」
バックからしまったセントハルバードを取り出し矛先を少し下げたような構えを取る。
矢を装填したボーガンは咄嗟に抜けるように腰帯に括りつけた。
「一蓮托生ってヤツですわね。よろしいですわ。私も貴女に命を預けますわ。私は何があっても詠唱を中断いたしません。
ですから、貴女も何があっても私の詠唱時間を稼いでくださいませ!」
セリーヌは目を瞑ると、体内の魔力を引き出しながら呪詛の言葉を紡ぎ始めた。
それと共に肌に彫りこんだ紋章が淡い光を放つ。
「わかりました。行きますっ!」
アリーシャは地面を蹴ると真っ直ぐ男に向かって行った。
その動きを見て男は左手をかざした。
(またあの攻撃がくる!)
アリーシャはガブリエルと背後で詠唱をしているセリーヌとの間に立ち彼女の盾となった。
吹き飛ばされそうになるが、戦斧の石突を地面に突き刺し何とか踏ん張った。
力場の余波を受けたらしく、背後の女性は苦悶の表情を浮かべていた。
だが尚も詠唱を続けている。
再度間合いをつめるべく駆け抜けた。
ガブリエルを間合いに入れると、アリーシャは戦斧の柄の中程を持ち攻撃した。
リーチの差による優位は捨てがたいが、非力な自分の腕力ではうまく振り回せそうに無いからだ。
力いっぱい振り下ろしたがガブリエルは難なく手にした刀でそれを受け止め、はじき返した。
体勢を崩したアリーシャの首筋目掛けて刀を逆袈裟に振り下ろす。
何とかそれを柄の部分で捌くと、すかさず左手でボーガンを抜きガブリエル目掛けて引き金を絞る。

19追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:35:07 ID:BgfcJG1E
額目掛けて飛んできた矢を、ガブリエルは顔を反らし、寸でのところでかわした。
視線をアリーシャに戻した彼だったがその姿は既にそこにはない。
(どこだ?)
地面に突如影が現れた。咄嗟に振り向くと彼女は空中で戦斧に全体重を乗せた一撃を撃ち下ろそうとしていた。
アリーシャは矢を放つと素早くボーガンを捨て、その矢目掛けて光子を放ち転移していたのだった。
「やあああぁぁぁぁっ!!」
彼女の放つ一撃は天を裂く雷光の様に鋭く、激しい。
流石に受けきれないと判断したガブリエルはサイドステップでそれを回避した。
地面を深々と戦斧は切り裂いた。
「獲った!」
アリーシャの頭部目掛けて刀を唐竹に振り下ろす。
またも光子を撃ちだすアリーシャ。
今度の標的は一矢目の壁に突き刺した矢だった。
カブリエルの剣閃は矢を真っ二つにするだけにとどまった。
壁を蹴り一気に間合いをつめたアリーシャは戦斧をフルスイングした。
肢閃刀でそれを受け止めるガブリエル。
キィンッ!と金属同士がぶつかり合う音と共に火花が散る。
ガブリエルはそのまま剣を押し込み鍔迫り合いに持ち込んだ。
腕力と体重の差から見て負ける要素は無いからだ。
思惑通りに徐々に押し込んでいっている。
(そろそろまずい。あの女の詠唱が完了してしまう)
そう判断すると刀を手前に引き、押し込まれまいと力を加えていたアリーシャの体勢を崩した。
すかさず彼女に足払いをかけ転倒させると、セリーヌ目掛けて刀を腰だめに構え突進した。
「まずは貴様からだ!セリーヌ・ジュレス!!」
地に伏せたアリーシャは背筋に冷たいものを感じた。
「いけない!」
この体勢ではガブリエルの行く手を阻めそうに無い。
これだけは最後の手段だったが迷っている暇など無かった。
アリーシャはセリーヌ目掛けて光子を連射した。
光子が命中したセリーヌは1射目で凍結、2射目で眩い光を放った。
ガブリエルはそれには構わず、刀を光の中にある人影に突き刺した。
確かな手応えを感じたガブリエルだったが、刀で突き刺した相手は先程まで対峙していた少女だった。
「貴様っ!あの女と入れ替わったのか!?」
刀を引き抜こうとするがその手を少女は力強く掴んで離さない。
「はい。もうこうする…しかなかったから…」
口からこぼれる言葉は擦れ始めていたが、手に込めた力は一向に緩くならない。
「人間同士の転移が可能ならば、私と入れ替われば…」
「それだと、ダメです…。あの人の魔法の…照準が定…まらないから」
「クソッ!放せっ!!」
ほぼ密着状態の上、右腕は刀傷によりまともに使えない。必死に体を振り動かすもこの少女は腕を放さない。

20追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:37:38 ID:BgfcJG1E
キィンッ!と金属同士がぶつかり合う音が前方から聞こえてきた。
(もう少し耐えてくださいませ)
そう思いながらセリーヌは、己の中に秘めた魔力を込めながら自分の習得した最強の呪文『メテオスォーム』を放つため詠唱を続けていた。
続けてどさりと何かが地面に倒れる音が聞こえたかと思うと、何者かがものすごい勢いで近づいてくる気配を感じた。
目を開けて回避したい衝動に駆られたが、その衝動を押しとどめた。
(私が命を預けたあの娘は時間を稼ぐと約束してくれました。それに、私はあの娘の命を預かりました。
あの娘の命を救うにはガブリエルを今一度倒す他ありませんわ。だから私は詠唱をやめるわけにはいきませんの!)
そう思った刹那。体に何か魔力のかたまりの様な物が触れたかと思うと、離れた位置で刃物が肉を突き刺す嫌な音が聞こえてきた。
「貴様っ!あの女と入れ替わったのか!?」
ガブリエルの叫びが聞こえる。
「はい。もうこうする…しかなかったから…」
あの娘の次第に擦れてくる声が聞こえる。
「人間同士の転移が可能ならば、私と入れ替われば…」
「それだと、ダメです…。あの人の魔法の…照準が定…まらないから」
「クソッ!放せっ!!」
尚も詠唱を続けるセリーヌ。もうまもなく術は完成する。
「刺し違えてでもこの私を倒したいかっ!?小娘!!」
「ええ…。貴方はこの暴力が支配する…島にいてはいけない…。
貴方の振りかざす拳は…、この殺し合いに…抗う者達の命を奪ってしまう…。私は…この島に来る…前、確かに死にました。
貴方の…様に、この殺し合いの…主催者の様に、強大な力を…己のために使い、弱者を虐げる…暴君を討つ為…戦って死にました…。
でも、気付くと…なぜかこの島にいました…。けどきっと…ここにいるのは意味があるのだ…と思います…。
最初はルーファスと…もう一度会って…ここから抜け出す事だと思って…いました。けれど、それは間違っていました…。
生前…果たす事の出来なかった…事を成す為。弱者を虐げる…者の蛮行を…止める為。きっと私は…ここにいる! 
だから…私は貴方を止めるっ! 命を賭してでも…貴方を止めるっ!!」
(そこまでの覚悟がおありでしたのね…。ならば私も貴女の想いに応えます!)
最後の呪詛の言葉を紡ぎ術は完成した。
標的の再確認のため目を開く。
少女と一瞬目が合った。
(私に構わずこの男を倒してください!)と瞳が告げている。
体内に溜め込んだ精神力と魔力を解放し呪文を発動させた。
「メテオスォーム!!」
仮想空間のエクスペルの遺跡内部で見つけた呪文書に記されし、失われた太古の呪文にして最強の呪文。
次元を切り裂き無数の隕石を召喚して操る呪文。
隕石の全てを過去最大の敵であったであろう男目掛けて降り注がせた。

21追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:38:22 ID:BgfcJG1E
辺りにはエクスプロードの時以上に煙が昇っている。
地面には無数のクレーターが出来上がっている。
自身の放った呪文『メテオスォーム』の残した爪跡を見てセリーヌは身震いをした。
(相変わらずとんでもない呪文ですわ)
突如眩暈を感じその場に跪いた。
(いつも以上に堪えますわね。これも制限の影響ですのね)
まだ精神力は枯渇してないが中級魔法一発も満足に撃てそうにない。
(これでも止めをさせてなければ…)
突然煙がはれた。
強い衝撃波がセリーヌを襲った。
(これは…?ガブリエルのディバインウェーブ!?)
大きく後方に弾き飛ばされるセリーヌ。
頭を振り、頭上を回る星を振り払って前を見据える。
はれた煙の向こうには、やはりガブリエルが立っていた。
その体には『エクスプロード』の時以上のダメージが見て取れたが、ガブリエルは尚も生きている。
少女の死体を自分に覆い被せ直撃を防いでいたらしい。
(実は光子で転移する為の一時的な凍結により詠唱が途絶え、
術が完全な威力を発揮することができなかった事もガブリエルを倒しきれなかった要因となっていた)
ガブリエルは少女を貫いた刀を振り払い無造作に死体を抛った。
セリーヌは歯噛みした。
彼女の死体をゴミ同然に扱ったガブリエルに。
そして、それ以上に自分で任すようにと頼んでおきながら、仕留める事の出来なかった自分の無力さに。
「今の…は、かなり…堪えた…。だが、もう…仕舞いだ…。
いくら今…の私が傷ついて…いようが、壁役の…いない術師を始末…する事は…容易い」
一歩一歩とこちらに近づいてくるガブリエル。
彼の言うとおり前衛のいない術師は大した抵抗も出来ないだろう。
だがそれでもセリーヌは詠唱を始めた。
(私にはこれしかございませんものね。それに、ここで諦めてはあの娘に申し訳が立ちませんわ! 
せめてもう一撃。でないと死んでも死に切れませんものっ!)
そう思ったところでセリーヌの目に予想もしなかった光景が映った。
なんと、死んだと思っていたジェストーナが立ち上がり、ガブリエルを羽交い絞めにしているではないか。

22追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:40:12 ID:BgfcJG1E
羽交い絞めしたガブリエルが叫ぶ。
「貴様っ!!大人しく死んだ振りを続けていれば見逃してやったものを!」
あっ、やっぱばれてたか。
「何故今になってその様な真似を!?」
あぁ、なんでだろうな?
俺はもっと賢しく生きていたはずなんだけどなぁ。
ただ理由はなんとなく察しがつく。
俺は過去に子供を盾に取り、敵に自害を迫るという鬼畜な事をした。
何故かって?あいつらを止めないと俺がダオス様に殺されちまうからだ。
クレス一行を殺せと命じられれば何としてでも殺さねばならない。
例えどんな汚い手を使おうとな。
きっと草葉の陰で息子も泣いていたに違いない。
まぁ、息子はおろか嫁すらいなかったわけだが。
けどそんな事を本心からしたかったわけじゃなかったんだ。
そう、言うなれば俺もダオス様という強者に虐げられる弱者だったんだ。
生きるためには仕方が無い。ダオス様の命令に逆らったら死が待っている。イヤだがやるしかない。そんな想いがどこかにあった。
そしてそこに来て少女Aのセリフだ。
(生前…果たす事の出来なかった…事を成す為、弱者を虐げる…者の蛮行を…止める為、
きっと私は…ここにいる! だから…私は貴方を止めるっ! 命を賭してでも…貴方を止めるっ!!)
俺の抱えていた憤りに対して少女Aはそう言った。
もし少女Aと過去に出会っていたら、もしかしたら俺にも、まともな生き方が出来ていたのかもしれない。
それに、窮地を救ったとはいえ(主にセリーヌだが)見ず知らずの俺達(こっちも主にセリーヌだが)を信頼して命を賭けやがる。
こんな年端もいかない少女がだ。
そんな熱い想いを見せられて、このまま死体の振りを続ける程、俺様は腐っちゃいないぜ。
「放せ!この下等魔族が」
俺の戒めを解こうと、ものすごい力で暴れるガブリエル。
あのバカみたいな威力の呪文を食らって、死に掛けなんじゃねぇのかよ?
「へっ、確かに俺はあんたの言うような下等魔族かも知れねぇ。あんたに手も足も出せなかった下等魔族かも知れねぇ。
だがな、そんな俺でも呪文の詠唱時間を稼ぐことぐらいならできる。流石にその傷じゃあもう一発も耐えられねえだろ? 
あんたはその下等魔族が稼いだ時間で死ぬんだ!」
「ちっ」
ガブリエルは悪態をつくと呪文の詠唱を始めた。
「無駄だ無駄だ。セリーヌの詠唱速度を侮っちゃあいけねえ。あの人より先に呪文を撃とうなんざ無理だね。
良くて同時発動で相打ち。普通に行けば発動することなくてめえは死ぬ」
呪文を完成させたらしいセリーヌがこちらを見て微笑みを浮かべている。
(ありがとうジェストーナ。あなたは良くやってくれたわ)とでも言いたげな表情だ。
恐らく俺も呪文に巻き込まれて死ぬだろう。
けど死ぬ前に見た光景が、これ程素敵な美女の微笑み(服装がかなり奇抜でぶっ飛んでいるが)なら俺は地縛霊となる事もなく天に召されるだろうさ。
そう思わせるほど魅力的な微笑みだった。
今目にしている光景を一枚の絵にしてタイトルを付けるなら、俺だったらこう付けるね『勝利の女神の微笑み』ってさ。

23追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:41:40 ID:BgfcJG1E
「スターライト!」
セリーヌが今唱えられる最大威力の呪文に、極限まで魔力を込め発動させたその次の瞬間。
「スターフレア!」
ガブリエルも呪文を発動させた。
星々の光の奔流が混ざり合い地表に降り注いだ。
その光は術者以外の全ての者をなぎ払った。


辺りに静寂が訪れた。
この場にただ一人立った勝者がつぶやいた。
「危険な…、賭けであった…」
ジェストーナに羽交い絞めにされ、セリーヌの詠唱を阻止できない絶望的な状態においてガブリエルは咄嗟に閃いた。
それは今戦っていた者達が、死を間際にして見せた最後の抗いに似ていた。
アリーシャはガブリエルの攻撃を阻止できないと悟ると、その身を犠牲にしてセリーヌを守った。
あまつさえその傷ついた体のどこに秘めているのか分からないような握力でガブリエルの自由を奪った。
セリーヌは前衛がいない絶望的な状況の中、不屈の闘志を見せガブリエルにせめて一噛み牙を突きたてようと呪文を唱えガブリエルを追い詰めた。
ジェストーナはそんな二人の姿に心を打たれ、自らも決死の覚悟を伴い時間を稼ごうと、
彼の生涯で恐らく最初で最後であったであろう、圧倒的な力の差を持つ者に逆らってみせた。
そんな追い詰められし者達の最後の抵抗が、力の差が歴然としている相手ガブリエルをとうとう追い詰めた。
だが、彼らが見せたようにガブリエルも最後の抵抗をした。
ガブリエルの場合、それはこの窮地を脱する閃きだった。
彼は紋章術同士の干渉を引き起こす事を思い立った。
紋章術の干渉とは、同属性または、それに近い属性。もしくは、対立する属性同士の紋章術がほぼ同時に発動した場合に起こる現象で、
威力の強い術の方が弱い術を飲み込んで、威力まで取り込み標的を襲う。
過去に戦った経験があるが、それでもあの場でセリーヌが放つ呪文の属性は予測する事しかできない。
仮に予測と一致したとしても、術の完成がもう少し遅かったりしたらこの現象は引き起こせなかった。
干渉を起こせても自分の術のほうが飲み込まれるリスクもあった。
そうなれば確実に自分が死んでいただろう。
一種の賭けであったがそれでも、あの状況はそれを狙わねばならぬ程切迫していた。
そして、閃きを実行し、その賭けに勝った。
その賭けの払い戻しとして敵を駆逐する事ができた。
「一寸の虫にも五分の魂とは、よく言ったものだな…。いや、この場合は窮鼠猫を噛むか…。
これからは、何か事を起こされる前に手早く始末すべきだな。」
ガブリエルは3つの死体の持つバックを戦利品として回収すると再び焼き場の建物の中に消えていった。

24追い詰められし者の牙(修正ver):2007/08/24(金) 06:42:21 ID:BgfcJG1E
[現在位置:H-07 焼場建物内部/現在時刻:午後(もうまもなく夕方)]
【ガブリエル(ランティス)】[MP残量:10%]
状態:右の二の腕を貫通する大きい傷。右腕は使えない。右肩口に浅い刺し傷。太ももに軽い切り傷。右太腿に切り傷。
左腕をはじめとする全身いたるところの火傷と打撲傷(ジェストーナの火炎、エクスプロード、メテオスォームによるもの)
装備:肢閃刀@SO3+ゲームボーイ+ス○ースイ○ベーダー@現実世界
道具:荷物一式 *4+セントハルバード@SO3+ボーガン@RS+矢*28本
+暗視機能付き望遠鏡@現実世界+????(0〜2)(セリーヌからの戦利品)
行動方針:フィリアの居ない世界を跡形も無く消し去る
思考1:コンテニュー
思考2:参加者の人数が減るまで行動はしない
思考3:潜伏先に侵入者が現れた場合は排除する。その際は何か手を打たれるような暇も与えず殺す
思考4:体の傷を癒す

備考:3人の死体は焼き場前に放置されています。原形はとどめているので知人なら誰だか識別できるでしょう。
スターネックレス@SO2はセリーヌの首にかかったままです。
無人君は次なる主を求めどこかに逃げました。特にどこに向かった等は指定しませんので、使えると思った書き手の方使ってください。
【アリーシャ 死亡】
【セリーヌ 死亡】
【ジェストーナ 死亡】


【残り36人】

25 ◆yHjSlOJmms:2007/08/24(金) 06:44:04 ID:BgfcJG1E
主な変更箇所は>>19>>20です。

26本スレ>>99修正 ◆Zp1p5F0JNw:2007/09/14(金) 20:52:14 ID:3AR7MfEQ
(来ましたね!)
やはり少女は逃げていなかった。
姿を消して数分、少女は再びミラージュの前に現れた。先程と違い鎧を付けている。
姿を見せると同時に凄まじい速さでミラージュに襲いかかる。

(速い…でも、見切れない速さじゃない!)
少女が放った斬撃をサイドステップでギリギリ回避。
攻撃後の隙を狙い、ミラージュが踏み込む。
「インフィニティ・アーツ!」
ミラージュの蹴りが一発、二発と息吐く間もなく放たれた。
防御態勢を取る事も出来ない女にその連撃が叩き込まれていく。
合計十一発。ミラージュの全力を込めたキックの雨は、全てクリーンヒットした。


(決まった!)
フィニッシュで少女を吹っ飛ばし、ミラージュは勝利を確信した。
十一発全てに手応えがあった。今の技をまともに喰らえば、あの少女もさすがに…。


しかし次の瞬間、ミラージュの顔が驚愕に染まった。
吹っ飛ばされた少女はノックダウンされるどころか、空中で体勢を立て直し、着地と同時に攻撃を仕掛けてきたのである。
反応が遅れたミラージュは回避行動を取るも、左頬を剣がかすった。
見ると少女はダメージを負うばかりか、体に殴られた痕すらも残ってなかった。
(まさか…!あの攻撃をまともに受けてダメージをほとんど受けてないなんて…)
クリフや多くの魔物を沈めてきたミラージュの攻撃が全く効いていない。
「忍法五月雨!」
今度は少女の連撃がミラージュを襲う。
ステップを取る暇はない。一太刀一太刀身を捻って攻撃を避ける。
だが少女の猛攻は止まらず、ミラージュは次第に後ろに下げられていった。

首輪から声が聞こえてきたのは、その時だった。

27本スレ>>103修正 ◆Zp1p5F0JNw:2007/09/14(金) 20:53:00 ID:3AR7MfEQ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『首輪爆破まで後20秒』
首輪から二度目の警告が聞こえる。
ミラージュの体は痺れたまま動かない。このままでは首輪の爆発で自分は死ぬ。状況は絶望的だ。
だが諦めるわけにはいかない。まだ爆発まで20秒ある。
その間にこの危機を乗り越える方法を考えようと、ミラージュは必死で頭をフル回転させた。
ここに人が来て助けてもらうのが一番確実だが、ここに人が来る可能性は限りなく低い。
一発逆転ができそうなアイテムも無い。
自分で何とかするしかない。何か、何かないか。この禁止エリアから脱出する方法は。


…一つだけ思いついた。
幸いにもその方法を行えるように、今自分はうつ伏せで倒れている。
上手くいくかは分からないし、失敗する可能性の方が高い。
だがやってみるしかない。
『首輪爆破まで後10秒』
痺れながらも全員のエネルギーを一点に―胸の前に集中させた。


「マイト・ディスチャージ」

瞬間、ミラージュの体と地面の間に爆発が起こる。
その衝撃で彼女は空中へ投げ出された。

麻痺しているため受け身も取れず、地面に叩きつけられる。
そして…首輪の警告が止まった。


成功したようだ。
自分と地面の間で爆発を起こし、自分の体を吹っ飛ばす。
運良くC-04エリアの方向へ飛んでくれたおかげで、ギリギリC-05から脱出できた。
ミラージュは安堵の溜息を吐く。
どうやら麻痺が解けたようで、体を動かすことが可能になった。
起きあがろうとするが、体中に激痛が走る。何とか近くの塀まで這っていって寄りかかるが、立てそうにない。
「…無様、ですね」
自分は何をやっているのだろうか。
開始早々油断して気絶させられ、目が覚めたのは放送後。
荷物は無くなり、禁止エリアも、仲間の安否を確認することもできず。
そして殺し合いに乗った者を止める事にも失敗し、残ったのは自身へのダメージだけだ。

ともかく、この状態では何もすることは出来ない。
しばらくは傷の回復に専念するしかない。
「…本当に、無様です」
これまで何もできず、そして今も何も出来ないのが、たまらなく歯痒かった。

28本スレ>>104修正 ◆Zp1p5F0JNw:2007/09/14(金) 20:55:26 ID:3AR7MfEQ
【C−4/午後】
【ミラージュ・コースト】[MP残量:70%]
[状態:疲労大、全身に傷痕(特に前の上半身に集中、深い傷もあり)、左頬に切り傷、衣服ボロボロ]
[装備:無し]
[道具:無し]
[行動方針:このゲームから脱出してルシファーを倒す]
[思考1:体力の回復]
[思考2:鎌石村で仲間及び参加者を探す]
[思考3:第一放送についての情報を集める]
[思考4:煙の発生場所(G−3平瀬村分校跡)に行く]
[現在位置:C-04北東、C-05との境界線付近]
[備考:第一放送は聞いていません。(C-05が禁止エリアという事は把握)]



【藤林すず】[MP残量:0%]
[状態:疲労極大]
[装備:アントラー・ソード@VP]
[道具:サーペントトゥース@SO2、ブラッディーアーマー@SO2、ノエルの支給品×0〜2(本人確認)、荷物一式×3]
[行動方針:生き残る]
[思考1:次の放送まで休息]
[思考2:暗くなったら行動開始]
[思考3:自分が死んだ場合はクレス、チェスター、アーチェ、クラースの誰かに優勝して欲しい。そのため四人の殺害には消極的]
[現在位置:C-04中心部 民家の一室]
[備考:ミラージュ(名前は知らない)は死んだと思っています]

29 ◆Zp1p5F0JNw:2007/09/14(金) 20:57:32 ID:3AR7MfEQ
修正個所は
・ミラージュの技をフラッシュチャリオット→インフィニティ・アーツへ変更、それに伴い一部の文章を修正
・ミラージュの倒れ方を仰向け→うつ伏せに修正
・すずの状態欄に備考の欄を追加

の三つです。

30名無しのスフィア社社員:2007/09/15(土) 16:42:06 ID:f0CokdPY
激しく乙

31本スレ投下話の状態表 ◆wNjp7OZc.s:2007/10/02(火) 03:36:56 ID:.HV52BlA



【C-06/夕方】

【IMITATIVEブレア】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔100/100〕@SO3]
[道具:万能包丁@SO2、荷物一式]
[行動方針:参加者にできる限り苦痛を与える。優勝はどうでもいい]
[思考1:]放送を待って行き先を決定。特に思う所が無ければホテル跡を目指す
[思考2:]レザードがマーダーだと広める
[思考3:]もしまた会ったら、レザードには出来る限りの苦痛を与えて殺す
[現在位置:鎌石小中学校校舎内の教室]
[備考]:※クロード、ルシオ、ルーファス、クリフの特徴を聞きました。
     ガウェインとは彼らがマーダーだと広めるように約束しています。
     名前は聞いていませんが、前持って人物情報を聞かされているなら特定しているかもしれません。


【ガウェイン・ロートシルト】[MP残量:100%]
[状態:左肩、左わき腹脇腹裂傷(処置済み)、後悔]
[装備:グランスティング@SO2]
[道具:確認済の支給品×0〜2、荷物一式]
[行動方針:リドリーを優勝させる]
[思考1:]鎌石村へ向かう
[思考2:]レザードがマーダーだと広める。ブレアについては保留
[現在位置:鎌石小中学校から北西へ少し進んだ道沿い]

32 ◆yHjSlOJmms:2007/10/17(水) 01:10:15 ID:Deg3Z3Wo
『待ち合せ』の訂正に来ました。
修正箇所はほんの少しなので、本スレの>>176のみ変更をかけます。

33待ち合せ(本スレ176の修正):2007/10/17(水) 01:12:24 ID:Deg3Z3Wo
二人の男が地面に座り込み昼食を摂っていた。
一人はすらっとした長身に緑色の長髪、切れ長な瞳が印象的な青年。
もう一人はまばゆい金髪を短く刈り込んだ大男だ。
「で、これからどうするわけ?」
一足先に食べ終えた緑髪の青年ルーファスは、大男の方クリフに尋ねた。
「どうするって嬢ちゃん達はどこに行くか聞いてなかったのか?」
支給されたブロック状のレーションを食べる手を止めクリフは答えた。
「あぁ、あの二人なら鎌石村に行くって言ってたな。凶悪な魔物がいるから止しとけって言っといたんだがな」
午前中に遭遇した魔物の顔を思い出す。
言葉を話す事ができたから高位の魔物であることは間違いない。
「なら、俺たちもそこに行くぞ」
最後の一口を飲み下したクリフはそう告げた。
「正気か?今やばい魔物がいるっつったばかりじゃねぇか」
ある程度そんな返事がくると予測はしていたが、あの魔物とまた遭遇すると思うとあまり気乗りがしない。
「だからだよ。俺の読みだと嬢ちゃんの能力はルシファーを倒すのに不可欠だ」
頭上に?マークを浮かべるルーファス。
「あのソフィアがか?正直ルシファーって野郎を倒す切り札になる力は無さそうだけどな」
と少し前に別れた童顔少女の顔を思い出す。
「まぁ、これも勘の域をでないんだがな。ルシファーは今どこから俺達を監視してると思う?少なくともこの島にはいないだろう。
以前戦った時同様に別の次元世界から監視してるに違いねぇ。
そこで、嬢ちゃんの力『コネクション』の出番だ。あの力は別次元への入り口をこじ開けることができる。
ルシファーの声で放送があったから、少なくとも奴の居場所とこの島は完全に隔離されてねぇ。
この島のどこかに接点となる場所があるはずだ。そこに連れていければ野郎の居場所に行けるわけよ。
だがまだ問題があって、別次元にいるルシファー側からすれば俺たちは紙に書いた絵のようなもの。
そこで、まだ二人程力が必要な人間がいる。俺と一緒に一回ルシファーを倒した、マリアとフェイトだ。
マリアの力『アルティネイション』で俺達を別次元に存在できるように、
フェイトの力『ディストラクション』で俺達の世界の物理法則を別次元世界の中で通用するようにそれぞれ改編させる。
この三つが合わさればルシファーの所に殴り込みに行けるって寸法よ。
それに加えるなら、マリアとフェイトはそんじゃそこらのヤツに遅れをとるほど弱くはねぇ。
となると戦闘能力に不安の残るソフィアの嬢ちゃんの保護が最優先って訳よ」
確証は無いが、ルシファーの性格を考えるにFD空間の様な所からあれこれ干渉しているのは間違っていないはずだ。
仮に同じ次元世界から監視していたとしても放送用の電波を逆探知すれば、ルシファーの居場所は簡単に判明できる。
通信機とソレを改造できるような工具、然るべき知識を持つ人間が揃えば容易に可能だ。
ここから判明した場所への移動手段に心当たりがないが、まぁ何とかなるだろう。
「いまいちわかんねぇけど、その三人が揃えばこの島から出られるんだな?」
「まぁ、そういうこった。但し、能力を制限しているこの首輪を外さないとな。
ルシファーもバカじゃねぇ。あの三人の力は首輪のせいで発揮出来ねぇはずだ」
自分の首を指差し告げた。
「お前以外と考えてるんだな。勢いに任せて行動するタイプに見えたんだが」
肩をすくめ立ち上がると、ルーファスは体を鎌石村の方向に向けた。
「けっ、言ってろ。とにかくさっさと鎌石村に行くぞ」
クリフも立ち上がり、北へ向かい歩き始めた。

34名無しのスフィア社社員:2007/10/18(木) 02:40:42 ID:AybIFvDo
超乙!

35 ◆pLCc.qkfzw:2007/11/04(日) 00:51:02 ID:M5hvvKqU
『光の勇者の不幸(解決編)』
の後半部分の修正、投下します。

36 ◆pLCc.qkfzw:2007/11/04(日) 00:53:05 ID:M5hvvKqU
(まいったな……)
クロードはため息を吐きながら森の中を歩いていた。
(完璧にチサトさん達に誤解されたよなぁ。あの時はとりあえず撤退したけど、考えてみると状況が悪化してるかもしれない。
チサトさん達はこれから会う人会う人に『クロードはこのゲームにのった』って言うわけだよなぁ。
かといってあの時チサトさん達を追ってたら、最悪死人が出てたかもしれないし………どうしたら良かったんだろ?
……ハハッ泣きたくなって来た)
クロードはチサト達の攻防の後、南東にしばらく走った後、一旦足を休め、これからの事、自分のことを考えていた。
今来た道を戻ったり進んだりの繰り返しで、ある一定の場所からほとんど動かず、ウロウロする状態で、
先ほど起こったことから引き起こされる事象を検討していた。
(今僕にとって一番良い状況は、チサトさん達の誤解が解けることだ。それにはおそらく、第三者を介してが一番だろう。
できればかつての仲間達がいい。欲を言えば、頭が良くて、状況判断が適切で、パーティーでの発言力、信頼度がある人。
そう、ボーマンさんなんかがベスト…)
「クロードか?」
そんな事を考えていたクロードの少し離れた前方に、白衣を着た今クロードが思ったその人、
ボーマン・ジーンが現れた。

クロードの思考は一瞬停止した。

そしてすぐに思考が再起動した。
(え!?え、何で!?何で!?何でボーマンさんがここにいるの!?いや、そんなこと言ってる場合じゃない!
これはチャンスだ、クロード・C・ケニー!!この人に事情を説明して、チサトさん達の誤解を解いてもらえば!!
そうだ、正に最高のタイミングで最適の人選に巡り合えたんだ!珍しく僕は憑いてる!間違った、ついてる!)
「ボーマンさ…」
「それ以上近づくな」
だが、クロードがボーマンに話しかけようとしたのに対し、ボーマンからの返答は、拒絶だった
クロードは一瞬何を言われたが解からなかったが、すぐに気を取り直し、
「ど、どういうことですか?」と訊ねた。
「チサトからお前の事を聞いた」

クロードの目の前が真っ暗になった。

そしてすぐに気を取り戻した。
「ち、違うんです!誤解です!チサトさんは誤解してるんです!」
クロードは誤解を解こうとボーマンに迫った。
ボーマンは近づいてくるクロードに対し一定の距離を保ちながら、言葉を返した。
「だから近づくなと言ってるだろう。安心しろ、チサトから言われた事を全部鵜呑みにしたわけじゃない。
勘違いしてるということもあるからな。だから武器を捨ててあの時何が起こったか説明してみろ。
それ聞いてチサトの話と矛盾した事が無ければ、信用しよう。ただ、お前が嘘をついてると解かった場合、
悪いが殺らせてもらう。それでいいな?」
クロードは心の底から安堵したような顔をして、武器を下に起き、あのとき何があったのか、
事の顛末を話し出した。

37 ◆pLCc.qkfzw:2007/11/04(日) 00:54:27 ID:M5hvvKqU

「なるほどな」
なるほど、そう言うことだったか。確かに今のクロードの説明ならチサトの証言とも合うし、チサトが何故勘違いしたのかも頷ける。
しかし……俺はやはり今になって覚悟が決め切れてない。一番最初にクロードを見かけた時。
襲い掛からずに『声をかける』と言うところまでに留めたのも、あの時は『様子をみるため』と言い訳した。
単に怖かったからだ。
クロードが話すために武器を捨てたとき、見送ったのも、『まずは話を聞いてから』と言う見苦しい言い訳に頼ったためだ。
いや、今ここに来ている理由とて、考えてみれば、チサト達にクロードが一人らしいと言われたから、
よし、三人を相手するよりクロード一人のほうが殺しやすいぞ、と思いここに来た
(勿論チサトの話を確かめる半ば好奇心みたいなものもあったが)。
今から思えばなんて見苦しい言い訳だ。
そして今。一思いにやろうと思えばできるはずなのに、『様子を見る』という言い訳に頼っている。
…なんて、自分は醜いんだろう。
「…解かった。嘘はなさそうだ。信用しよう。これからチサト達のとこに行って、それを言えばいい。
俺も口添えするから十中八九大丈夫だろう。ところで……お前はこのゲームを……どうするか…考えがあるか?」
「ルシファーを倒します」
…ほう、迷わず言ってのけやがった。
「こんなふざけたゲームを行うルシファーを、僕は絶対に許せない。必ず倒して、元いた場所に帰ります!」
「…何か策はあるのか?」
「…ありません。ですが、この島にはまだ仲間がいます。頼りになれる仲間が。皆と一緒なら必ず、必ずルシファーを倒す事ができるはずです!」

…ああ。

思い出した。

この目だ。

俺がクロード達と旅をしようと決意した理由。

大切なニーネを置いてまで、旅をしようと思った理由。

この目だ。

この、クロードの、真っ直ぐな瞳。

これに惹かれた。

この、何者にも染まらず、また、何者にも染まる。

己の意思の堅固さと純粋さを絵に描いたような、この瞳。

これに俺は惹かれた。

と同時に今までの俺の行動がとんでもなく恥ずかしくなってきた。

そうだ、俺は、俺は今まで何を考えていたんだ?

俺が、旅に同行したのは、こんなクロードの様な瞳を持ちたかったからじゃないのか?

この瞳を、傍で見ていたからじゃなかったのか?

俺は、ようやく気づいた。

俺が進む道を


「……………クロード………怪我、してるみたいだな?秘仙丹食うか?」


少し経ち、森でかすかな爆発音がした。

38光の勇者の不幸(解決編):2007/11/04(日) 00:57:21 ID:M5hvvKqU

ボーマンは、かつてクロード"だった"モノを見下ろしていた。
秘仙丹だといって実際は破砕弾を渡し、爆死させる。

これで二度目だ。

元々二つは同じ"丸薬"であり、少々偽装すれば、素人目にはどっちがどっちか見分けがつかなくなるようにするなど、
ボーマンにとっては朝飯前だった。
現に、クロードは何の疑いもなく口にほうばり、今の現状に至っている。
クロードの骸は、かつてのアドレーのように、上半身がほぼ爆散された状態で、
地面を真っ赤に染め、顔などは"原型"が全く解からない状態で、言葉で表すなら
『無残』
の一言に尽きた。
それを見下ろしているボーマンの瞳は、クロードの死体を見ているようで、見ていないようでもあり、
また、果てしなく澄んでいるかのような色なのに、果てしなく濁っているようでもあった。

「迷わず、成仏するんだな」

ボーマンは、ポツリと、呟いた。

 ◆ ◆ ◆

「ん?……おい、戻ってきたようだぞ」
「え?ホント!?」
チェスターが言った通り、ボーマンが森の中からホテル焼け跡前に戻ってきた。

「どうだった!?ボーマン!?」
チサトが聞いた。
「ああ……。お前らの言った通りだったよ。クロードは…俺を見るなり…攻撃してきた…」
「やっぱり!それで、クロードは?」
「ああ……俺は……俺は、自分の身を守る、ためとは言え……クロードを…この手で…殺して……殺してしまっ…」
ボーマンは悲痛な声を出した。本当に、喉が擦り切れそうな声で、呻き、泣いているようだった。
チサトはそれを聞き、クロードが死んだとの悲しみ以上に、ここで自分が励まさなければ、
ボーマンは壊れてしまうのではないかと感じた。
「…そんなのアンタが気にすることじゃあない」
チェスターも、それを察知したのか、ボーマンを励ます言葉を言った。
「……そうよ、ボーマン。クロードのことは……確かに、確かに残念だったけど、クロードも、きっと、
覚悟してやっていたことでしょう?私達がクロードの分まで背負って、生きていかなくてはいけないわ」
チサトもボーマンを擁護した。
「………そうだな」

39光の勇者の不幸(解決編):2007/11/04(日) 00:58:54 ID:M5hvvKqU

そうだったな。

俺には、迷う資格なんて無かったんだ。

アドレーを殺したときから。

なあ、クロード。

俺は、お前のようになりたかったんだ。

純粋で、真っ直ぐで、頑固な。

そんな瞳を持ったお前に。

だが、既に、俺は道を誤った。

俺は地獄に堕ちるだろう。

かまわない。

もう、止まる止まらねぇの次元じゃないんだ。

歩き続けよう。

最後まで。

クロード。

ありがとよ。

気付かせてくれて。


──もう、迷いはしない。

40光の勇者の不幸(解決編):2007/11/04(日) 00:59:41 ID:M5hvvKqU
【E-4/夕方】
【ボーマン・ジーン】[MP残量:80%]
[状態:迷いが解消された気分(良)]
[装備:エンプレシア@SO2]
[道具:調合セット一式+荷物一式*3+エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP+昂魔の鏡@VP]
[行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還]
[思考1:もう迷いは無い]
[思考2:自分が確実に殺せると判断した時のみ、行動に移る(ステルスマーダー?)]
[思考3:チサト達とはこの後別れるかどうか、検討中]
[思考4:調合に使える薬草があるかどうか探してみる]
[備考:調合用薬草の内容はマンドレイク、ローズヒップ、アルテミスリーフ、トリカブトがそれぞれ一枚づつ。
      マンドレイクとアルテミスリーフは1/3づつ位消費]
[現在位置:ホテル跡前]

【E−4/夕方】
【チサト・マディソン】[MP残量:70%]
[状態:全身に軽度の筋肉痛(大分回復]
[装備:パラライチェック@SO2・フェイトアーマー@RS]
[道具:七色の飴玉×3@VP・荷物一式]
[行動方針:主催者打倒、首輪をどうにかするために味方を集める]
[思考1:仲間を探す(レオン・プリシス優先)]
[思考2:ボーマンとこの後も行動を共にしたい]
[思考3:クロードが死んだことへの少なからぬショック]
[現在位置:ホテル跡前]

【E−4/夕方】
【ガルヴァドス】[MP残量:100%]
[状態:左ひざに打撲、上半身に無数の打撲、顔面に中程度の火傷(大分回復)]
[装備:なし]
[道具:パラスアテネ@SO2・ガソリン入りペットボトル×2・荷物一式]
[行動方針:最後まで生き残る?強き者に従う]
[思考1:チサトの言う事に従う]
[思考2:???]
[現在位置:ホテル跡前]
※ ガソリンは合計で4リットルあります。

【E−4/夕方】
【チェスター・バークライト】[MP残量:100%]
[状態:全身に火傷(大分回復)、左手の掌に火傷(大分回復)、胸部に浅い切り傷、精神的疲労(軽度)、焦り]
[装備:なし]
[道具:スーパーボール@SO2]
[行動方針:力の無い者を守る(子供最優先) ]
[思考1:ホテルでクレスの捜索]
[思考2: クレス・アーチェ・クラース・力のない者を探す]
[思考3:クレス・アーチェ・クラースと子供を除く炎系の技や支給品を持つ者は警戒する]
※ホテル跡にいるのがクレスだと思っています]
[現在位置:ホテル跡前]
[備考:チサト、ガルヴァドス、チェスターはクロードがマーダーで分校に火を放った人物だと思っています]

※クロードの装備・道具は全てボーマンが回収しました。

【クロード・C・ケニー@SO2 死亡】


【残り 35人】

41光の勇者の不幸(解決編):2007/11/25(日) 14:11:59 ID:8.Og8BXA
上の修正したものを、投下します。

42光の勇者の不幸(解決編):2007/11/25(日) 14:12:29 ID:8.Og8BXA
(まいったな……)
クロードはため息を吐きながら森の中を歩いていた。
(完璧にチサトさん達に誤解されたよなぁ。あの時はとりあえず撤退したけど、考えてみると状況が悪化してるかもしれない。
チサトさん達はこれから会う人会う人に『クロードはこのゲームにのった』って言うわけだよなぁ。
かといってあの時チサトさん達を追ってたら、最悪死人が出てたかもしれないし………どうしたら良かったんだろ?
……ハハッ泣きたくなって来た)
クロードはチサト達の攻防の後、南東にしばらく走った後、一旦足を休め、これからの事、自分のことを考えていた。
今来た道を戻ったり進んだりの繰り返しで、ある一定の場所からほとんど動かず、ウロウロする状態で、
先ほど起こったことから引き起こされる事象を検討していた。
(今僕にとって一番良い状況は、チサトさん達の誤解が解けることだ。それにはおそらく、第三者を介してが一番だろう。
できればかつての仲間達がいい。欲を言えば、頭が良くて、状況判断が適切で、パーティーでの発言力、信頼度がある人。
そう、ボーマンさんなんかがベスト…)
「クロードか?」
そんな事を考えていたクロードの少し離れた前方に、白衣を着た今クロードが思ったその人、
ボーマン・ジーンが現れた。

クロードの思考は一瞬停止した。

そしてすぐに思考が再起動した。
(え!?え、何で!?何で!?何でボーマンさんがここにいるの!?いや、そんなこと言ってる場合じゃない!
これはチャンスだ、クロード・C・ケニー!!この人に事情を説明して、チサトさん達の誤解を解いてもらえば!!
そうだ、正に最高のタイミングで最適の人選に巡り合えたんだ!珍しく僕は憑いてる!間違った、ついてる!)
「ボーマンさ…」
「それ以上近づくな」
だが、クロードがボーマンに話しかけようとしたのに対し、ボーマンからの返答は、拒絶だった
クロードは一瞬何を言われたが解からなかったが、すぐに気を取り直し、
「ど、どういうことですか?」と訊ねた。
「チサトからお前の事を聞いた」

クロードの目の前が真っ暗になった。

そしてすぐに気を取り戻した。
「ち、違うんです!誤解です!チサトさんは誤解してるんです!」
クロードは誤解を解こうとボーマンに迫った。
ボーマンは近づいてくるクロードに対し一定の距離を保ちながら、言葉を返した。
「だから近づくなと言ってるだろう。安心しろ、チサトから言われた事を全部鵜呑みにしたわけじゃない。
勘違いしてるということもあるからな。だから武器を捨ててあの時何が起こったか説明してみろ。
それ聞いてチサトの話と矛盾した事が無ければ、信用しよう。ただ、お前が嘘をついてると解かった場合、
悪いが殺らせてもらう。それでいいな?」
クロードは心の底から安堵したような顔をして、武器を下に起き、あのとき何があったのか、
事の顛末を話し出した。

43光の勇者の不幸(解決編):2007/11/25(日) 14:13:16 ID:8.Og8BXA

「なるほどな」
なるほど、そう言うことだったか。確かに今のクロードの説明ならチサトの証言とも合うし、チサトが何故勘違いしたのかも頷ける。
しかし……俺はやはり今になって覚悟が決め切れてない。一番最初にクロードを見かけた時。
襲い掛からずに『声をかける』と言うところまでに留めたのも、あの時は『様子をみるため』と言い訳した。
単に怖かったからだ。
クロードが話すために武器を捨てたとき、見送ったのも、『まずは話を聞いてから』と言う見苦しい言い訳に頼ったためだ。
いや、今ここに来ている理由とて、考えてみれば、チサト達にクロードが一人らしいと言われたから、
よし、三人を相手するよりクロード一人のほうが殺しやすいぞ、と思いここに来た
(勿論チサトの話を確かめる半ば好奇心みたいなものもあったが)。
今から思えばなんて見苦しい言い訳だ。
そして今。一思いにやろうと思えばできるはずなのに、『様子を見る』という言い訳に頼っている。
…なんて、自分は醜いんだろう。
「…解かった。嘘はなさそうだ。信用しよう。これからチサト達のとこに行って、それを言えばいい。
俺も口添えするから十中八九大丈夫だろう。ところで……お前はこのゲームを……どうするか…考えがあるか?」
「ルシファーを倒します」
…ほう、迷わず言ってのけやがった。
「こんなふざけたゲームを行うルシファーを、僕は絶対に許せない。必ず倒して、元いた場所に帰ります!」
「…何か策はあるのか?」
「…ありません。ですが、この島にはまだ仲間がいます。頼りになれる仲間が。皆と一緒なら必ず、必ずルシファーを倒す事ができるはずです!」
…ああ。

思い出した。

この目だ。

俺がクロード達と旅をしようと決意した理由。

大切なニーネを置いてまで、旅をしようと思った理由。

この目だ。

この、クロードの、真っ直ぐな瞳。

これに惹かれた。

この、何者にも染まらず、また、何者にも染まる。

己の意思の堅固さと純粋さを絵に描いたような、この瞳。

これに俺は惹かれた。

と同時に今までの俺の行動がとんでもなく恥ずかしくなってきた。

そうだ、俺は、俺は今まで何を考えていたんだ?

俺が、旅に同行したのは、こんなクロードの様な瞳を持ちたかったからじゃないのか?

この瞳を、傍で見ていたからじゃなかったのか?

俺は、ようやく気づいた。

俺が進む道を


「……………クロード………怪我、してるみたいだな?秘仙丹食うか?」

44光の勇者の不幸(解決編):2007/11/25(日) 14:15:06 ID:8.Og8BXA

「あ、いただきます」
クロードはボーマンが差し出した"ボーマン曰く秘仙丹"を受け取ろうとした。
その時、クロードの目の前に赤い球の様な物がポウッと浮き出た。

え?

クロードは戸惑った。それはそうだろう。長年の、それも命を共にした仲間が、
エネミーサーチにより"敵"と判断されたのだ。
(な、何で!?ボーマンさんは味方だ!ずっと一緒に旅をしてきた!今だって僕の話を
聞いてくれたし、これからの事を考えてくれた!な、何より、もし、もし万が一、
ボーマンさんがヤル気だったなら、ボーマンさんと会った瞬間エネミーサーチ
が発動しているはずだ!…解からない…解からない……でも、今は)
「どうした?クロード?」
ボーマンがクロードの様子が変なことに気づき、尋ねた。
「あ、何でもありません。大丈夫です。僕には活人剣がありますんで。
秘仙丹は、この先のためにとっておいてください」
クロードは、今の所"様子を見る"に徹した。
「そうか?解かった」
ボーマンはそう言い、秘仙丹をしまった。
(どうしたらいい?エネミーサーチの効力は…多分本当だ。でも……だからと言って、
ボーマンさんを、仲間を疑うなんて……いや、でも最初の時みたいに、この島は、
何が起こるか解からない。警戒だけは…して、損は無いだろう)
クロードは猜疑心と、仲間に疑いを持っている自分に対する自己嫌悪に、気分を悪くした。
そんなクロードの様子を目にし、ボーマンは言った。
「どうしたクロード?本当に大丈夫か?」
その言葉は更にクロードの自己嫌悪を増幅させた。
(う……すいません、ボーマンさん…。でも、でも今は……とりあえず武器を…)
そう思ってクロードは、ボーマンに話すために、地面に置いておいた剣を
そのままにしてあったことに気付いた。
そしてそれをとろうとした。しかし
(……あれ?)

45光の勇者の不幸(解決編):2007/11/25(日) 14:19:52 ID:8.Og8BXA

剣が、無かった。

すぐ下に置いてあった筈の剣が、無かった。

だが、すぐに見つかった。剣は、クロードから十数メートル離れた草むらにキラリと光るのが見えた。
まるで、邪魔だとばかりに蹴飛ばされたかのように。

「どうした、クロード」

もはや疑問系ですらなく、それでもボーマンはクロードに"尋ねた"。
「……ボ、ボーマンさん?」
クロードは
「あ、あの、ボーマンさんは、このゲームに乗って、ません、よね?」
尋ねた。
「あははははは、オイオイ、クロード、まさか俺が乗ったと思ってんのか?
あ、はははははははは」
ボーマンは笑った。
笑った。
それに釣られてクロードも、笑った。
「あ、あはは、そ、そうですよね?ボーマンさんがそんな…あははははははははは」

「正解だ」

瞬時にクロードは後ろに飛んだ。
しかしボーマンも速かった。
後ろに飛んだクロードに、瞬時間合いを詰め、蹴りを放った。
その蹴りをクロードは手でガードした。
手を通しても伝わる痛みに耐えながらクロードは判断した。
剣が無い徒手格闘技で、しかも見た限り、ナックルを装備しているボーマンに勝つのは無理だ。
一旦退くしかない。
だが…できるだろうか?
そう考えている内にボーマンは再び間合いをつけて来た。
繰り出される拳をクロードは何とか受け流し、再び距離をはかる。
それを見たボーマンは、クロードを追いながら胸ポケットに手を入れる。

46光の勇者の不幸(解決編):2007/11/25(日) 14:25:13 ID:8.Og8BXA

胸ポケットから破砕弾を取り出し、クロードに投げつける。
瞬時にクロードははるか上空へと脱出した。
"兜割り"である。
上空へ脱出した直後に、破砕弾の爆発音がクロードの耳に聞こえる。
(間一髪だった)
クロードはそう思いながら、上空で体勢を立て直し、ボーマンの位置を把握しようとした。
着地地点で待ち伏せでもされたら、待っているのは死だ。
だが、
(……いない!?)
ボーマンの姿は無かった。
破砕弾の爆発地も、その周辺にも、ボーマンの姿形は無かった。
その直後、空中にいながら背後に気配を感じる。
クロードが気配に気づいたと同時に、首を腕で絞められる。
腕は的確にクロードの頚動脈を締め付ける。
(……し、しまっ…)
クロードは自分の愚かさを呪った。
自分には"兜割り"がある。だが、ボーマンにも"首枷"があった。
読まれていた。
どこまで読まれていたのかは解からない。
もしかしたら最初からかもしれない。
(…何てこった……)
人間は頚動脈を絞められると約6、7秒でおちる。
そんなことを以前どこかで聞いた気がする。
薄れ行く意識の中、クロードはボーマンの顔を見ようとした。
だが、ガッチリ腕に絞められているため、首が回らなかった。
「…ボー……マ…さ……な…何……で…」
蚊が鳴くような声で、クロードはそれだけを言い、また、それだけしか言えず、
意識を失った。


 ゴキン


森で人の首を折ったような、鈍い音が響いた。

47光の勇者の不幸(解決編):2007/11/25(日) 14:26:19 ID:8.Og8BXA

ボーマンは、かつてクロード"だった"モノを見下ろしていた。

クロード"だった"モノは、首の骨が本来はありえない方向に曲がったまま、ピクリとも動かなかった。

それを見下ろしているボーマンの瞳は、クロードの死体を見ているようで、見ていないようでもあり、
また、果てしなく澄んでいるかのような色なのに、果てしなく濁っているようでもあった。

「皮肉なモンだな」

ボーマンは自嘲めに呟いた。

人を助けたいから医学を学んだ。

人を守りたいから武術を学んだ。

その二つをもって、かつての戦友の命を奪った。

「…迷わず、成仏するんだな」

ボーマンは、ポツリと、呟いた。

 ◆ ◆ ◆

「ん?……おい、戻ってきたようだぞ」
「え?ホント!?」
チェスターが言った通り、ボーマンが森の中からホテル焼け跡前に戻ってきた。

「どうだった!?ボーマン!?」
チサトが聞いた。
「ああ……。お前らの言った通りだったよ。クロードは…俺を見るなり…攻撃してきた…」
「やっぱり!それで、クロードは?」
「ああ……俺は……俺は、自分の身を守る、ためとは言え……クロードを…この手で…殺して……殺してしまっ…」
ボーマンは悲痛な声を出した。本当に、喉が擦り切れそうな声で、呻き、泣いているようだった。
チサトはそれを聞き、クロードが死んだとの悲しみ以上に、ここで自分が励まさなければ、
ボーマンは壊れてしまうのではないかと感じた。
「…そんなのアンタが気にすることじゃあない」
チェスターも、それを察知したのか、ボーマンを励ます言葉を言った。
「……そうよ、ボーマン。クロードのことは……確かに、確かに残念だったけど、クロードも、きっと、
覚悟してやっていたことでしょう?私達が背負って、ルシファーを倒して、生きていかなくてはいけないわ」
チサトもボーマンを擁護した。
「………そうだな」

48光の勇者の不幸(解決編):2007/11/25(日) 14:27:00 ID:8.Og8BXA

そうだったな。

俺には、迷う資格なんて無かったんだ。

アドレーを殺したときから。

なあ、クロード。

俺は、お前のようになりたかったんだ。

純粋で、真っ直ぐで、頑固な

そんな瞳を持ったお前に

だが、既に、俺は道を誤った

俺は地獄に堕ちるだろう

かまわない

もう、止まる止まらねぇの次元じゃないんだ

歩き続けよう

最後まで

クロード

ありがとよ

気付かせてくれて


──もう、迷いはしない。

49光の勇者の不幸(解決編):2007/11/25(日) 14:36:53 ID:8.Og8BXA
【E-4/夕方】
【ボーマン・ジーン】[MP残量:80%]
[状態:迷いが解消された気分(良)]
[装備:エンプレシア@SO2]
[道具:調合セット一式+荷物一式*3+エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP+昂魔の鏡@VP]
[行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還]
[思考1:もう迷いは無い]
[思考2:自分が確実に殺せると判断した時のみ、行動に移る(ステルスマーダー?)]
[思考3:チサト達とはこの後別れるかどうか、検討中]
[思考4:調合に使える薬草があるかどうか探してみる]
[備考:調合用薬草の内容はマンドレイク、ローズヒップ、アルテミスリーフ、トリカブトがそれぞれ一枚づつ。
      マンドレイクとアルテミスリーフは1/3づつ位消費]
[現在位置:ホテル跡前]

【E−4/夕方】
【チサト・マディソン】[MP残量:70%]
[状態:全身に軽度の筋肉痛(大分回復)、仲間の死による精神的疲労]
[装備:パラライチェック@SO2・フェイトアーマー@RS]
[道具:七色の飴玉×3@VP・荷物一式]
[行動方針:主催者打倒、首輪をどうにかするために味方を集める]
[思考1:仲間を探す(レオン・プリシス優先)]
[思考2:ボーマンとこの後も行動を共にしたい]
[思考3:クロードが死んだことへの少なからぬショック]
[現在位置:ホテル跡前]

【E−4/夕方】
【ガルヴァドス】[MP残量:100%]
[状態:左ひざに打撲、上半身に無数の打撲、顔面に中程度の火傷(大分回復)]
[装備:なし]
[道具:パラスアテネ@SO2・ガソリン入りペットボトル×2・荷物一式]
[行動方針:最後まで生き残る?強き者に従う]
[思考1:チサトの言う事に従う]
[思考2:???]
[現在位置:ホテル跡前]
※ ガソリンは合計で4リットルあります。

【E−4/夕方】
【チェスター・バークライト】[MP残量:100%]
[状態:全身に火傷(大分回復)、左手の掌に火傷(大分回復)、胸部に浅い切り傷、精神的疲労(軽度)、焦り]
[装備:なし]
[道具:スーパーボール@SO2]
[行動方針:力の無い者を守る(子供最優先) ]
[思考1:ホテルでクレスの捜索]
[思考2: クレス・アーチェ・クラース・力のない者を探す]
[思考3:クレス・アーチェ・クラースと子供を除く炎系の技や支給品を持つ者は警戒する]
※ホテル跡にいるのがクレスだと思っています]
[現在位置:ホテル跡前]
[備考:チサト、ガルヴァドス、チェスターはクロードがマーダーで分校に火を放った人物だと思っています]

※クロードの装備・道具は全てボーマンが回収しました。
※2クロードの死体はE−4、E−5、F−4、F−5の丁度中間にあります。

【クロード・C・ケニー@SO2 死亡】


【残り 35人】


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