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一時投下スレ

1強化外骨格「名無し」:2007/06/30(土) 11:32:35 ID:eRgFhlzs0
名前の通り一時投下のスレです。
主な使用法は
「投稿規制で投下できない」
「危険な可能性があるので事前にチェックしてほしい」
「修正したので本投下前に確認を取ってもらいたい」
等です。

なお、「試験投下」目的でこのスレに投下された作品は通常より審査が厳しくなる可能性があります。
そのためご利用の際はしっかり心構えを持ってお願いします。

629人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:19:19 ID:SP/RWL.o0
 バダンに対抗する自分たちの中では、最強のメンバーといっても過言ではないだろう。
 次に、エレオノールと独歩を見る。
 先ほどの三人ほどとまでは言わないが、体力の消耗はそれほどはない。
 自動人形を壊した数も、先ほどの三人と比べて負けてはいなかった。特にエレオノールは、自動人形との戦いになれている様子である。
 戦力としても、先ほどの三人には及ばないとはいえ、充分だ。
 そして、服部とヒナギクはこの戦いにおいて、はっきりと暗雲を示していた。
 しかし、赤木は二人をいくらか評価している。
 服部は場を見極め、必要なら指示を他の面子に伝えていた。
 赤木もいくらか行なおうと考えたが、自分が指揮するより、信頼されているだろう服部のほうが場が混乱せずに済む。
 そう考えて指揮を譲った。
 ヒナギクは他のメンバーのサポートがあったとはいえ、数体自動人形を倒している。
 だが、ヒナギクの能力が問題なのではない。ヒナギクの、覚悟が赤木は気に入った。
 ヒナギクにどんな影響があったのかは知らないが、戦わねば、刺し違えねば、という覚悟が見えているのだ。
 まるで、誰かの隣りを歩みたがっているような。
 おそらく、ヒナギクは長生きはしない。だが、その覚悟は何かこちらに望ましい結果を生むだろう。
 赤木は、捨て札としてヒナギクを使うことを思考した。
 そして、かがみ。
 彼女は己の無力を悔いていた。村雨や覚悟などに気を使ってか、なんでもないように装っているが、バレバレだ。
 何人かはかがみの様子に気づいているだろう。普通なら、かがみはもっとも殺すべき存在だと判断する。
 事実、赤木は……
(死んでもらっては困るな。柊かがみ……)
 と、だけ考えた。理由は、かがみを気遣う男、村雨良。
 確かに村雨良は戦闘力がある男だ。しかし、かがみを喪う事態になればどうなるか、検討もつかない。
 恋……などと甘い感情ではないのだろうが、村雨はかがみを守ろうとしている。

630人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:19:42 ID:SP/RWL.o0
 自動人形戦でも、明らかにかがみを守るために動いていた節があった。
 つまり、彼女の死はなるべく避けねばならない。赤木は長々と、肺に煙草の煙を送り込んだ。


「さてと、一仕事も済んだし、どうする?」
 ジョセフが首をポキポキ鳴らしながら、尋ねてくる。その視線を受けた一同は、黙した。
 結論はでている。しかし、先ほどの戦闘で戦いなれないヒナギクやかがみのコンディションを考えると、誰も進言しにくい。
 服部は、ため息を吐いた。こういう役割は自分がすべきだ。
 赤木は煙草を吹かしながら、こちらを見ている。
「……突入や」
 服部の言葉に皆が頷く。できればここで、一息をついて体力の回復を待ちたいが、そうもいかない。
 時間をかければかけるほど、こちらの襲撃への対処される確率が高くなる。
 首輪に関しても、ジョセフや失言や、覚悟たちの大首領との接触でばれているであろう。
 向こうから攻められてしまえば、一貫のお終いだ。
 だからこそ、服部は決意する。ここは突撃するところだと。
「へっ、腕が鳴る……」
 独歩が最初に賛同を示し、指を鳴らす。風を切り裂く拳が宙へと走り、隻眼を雷雲の向こうへと向けていた。
 獰猛な表情が、虎を思い出させていた。
「とうとうバダンと…………」
「村雨さん……」
 村雨が感慨深げに呟いた。落ち着かないのか、拳を握ったり開いたりして、力の具合を確かめている。
 かがみは村雨を心配そうに見ていた。
 村雨は元はバダンに所属していたのだ。思うところがあるのだろうか。
 いや、そうではない。村雨の瞳には熱い炎が宿っている。
 そこに宿るのは姉を殺された復讐ではなく、正義に燃える義憤であった。

631人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:20:07 ID:SP/RWL.o0
「応!」
『長引けばこちらが不利なるのは明白。今が攻め時だ!』
 零式防衛術を収め、戦術にも長ける覚悟と、数多の英霊を抱え、戦術の何たるかを知る零が同意を示した。
 戦場の機を知ることにおいて、二人ほど特化した者もそう多くはない。
 ヒナギクも無言で頷いた。
 服部は大きく息を吸い、吐き出す。全員を見渡し、戦いに向かうことを告げようとする。
 しかし、喉が渇いてうまく言葉が出ない。
 それもそうだ。服部は今、誰か死ぬかもしれない宣言を告げねばならない。
 みんなに、死んでくれと頼むのも同然なのだ。誰かが告げねばならない。なぜ自分が告げねばならないのか、服部の胃がキリキリする。
 だが、村雨も覚悟もジョセフもエレオノールも独歩も赤木もヒナギクもかがみも命を懸けている。
 自分だけ安全な居場所にいるわけには行かない。服部は震えている拳をぎゅっと握る。
「みんな。聞いてくれへんか」
 服部の頼もしい仲間たちは、自分の決意に答えてくれた。
 今の時期を逃せば、バダンは自分たちが首輪を外していることに気づき、倒す機会を逃がしてしまうかもしれない。
 攻め込むならともかく、守りに入れば人数の少ない自分たちが不利だ。
 死人を減らすなら、特攻するしかない。それでも、死人は出るだろう。
 服部はつばを飲み込み、舌の滑りをよくする。いつの間にか震えは止まっていた。

「おどれらの命、俺に預けてくれ。これから、特攻する!!」

 服部の決意の言葉に、鴇の声が上がる。
 決戦の幕が上がった。



632人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:20:28 ID:SP/RWL.o0
 そして、現在に至る。
 覚悟とZXが共に梅雨払いをしながら、長足クラウン号の進路を確保して進む。
 敵の本拠地に潜入するまでは、二人の戦闘力頼みだ。
 服部は攻撃に揺れるクラウン号の中、唾を飲み込む。服部に煙草の煙がかかった。
 むっとしながら振り向くと、赤木が服部と視線を合わせた。
「よう落ちついとるな」
「……別に珍しいことじゃない」
 含み笑いをする赤木に服部は不思議に思う。これから命を懸けた戦場へと向かわねばならないのだ。
 しかも、一つ判断を誤れば自分の命だけでなく、周りの死を招く。
 そんな状況なのに赤木は顔色一つ変えない。まるで異次元の生物のような印象を抱き、服部は苛立った。
「……怖いのか?」
「当たり前や。自分が死ぬかもしれないのに、平然としている奴が……」
「違うな。お前は……自分の死が怖いんじゃない……」
 赤木の言葉に、服部が目を見開く。服部の心臓がバクバク鳴る。
 他人に聞こえるのではないか、と思うほどに心臓の鼓動が大きい。
「いや、お前だけではない……。ここにいる連中は全員……死線を潜り抜け……死を恐れなくなった。
それどころか、最初から死を覚悟しているものもいる。麻痺しているといっていい…………」
 赤木がどこかで見つけたのか、二つのサイコロを弄んでいる。
 服部の心臓がドクン、と一際大きく跳ね上がった。
「お前が怖いのは……死を恐れない奴らを……一人でも喪うことだ……」
 服部はカッと頭に血が昇り、赤木を睨みつける。
 赤木はの言うことは真実だ。服部は己の死は覚悟した。
 だが、他人の、仲間たちの死は……?
「当たり前やないか! 一人でも失うのを嫌と思うのが、そんなにおかしいんか……」
「そんなものは捨てろ……。でなければ……お前は失う……。本当に失いたくないものをな……」

633人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:20:51 ID:SP/RWL.o0
「そないなこと!」
「できなければ……ただ一度、凡人を捨てて異端にならなければ……ここにいる人間は死んでいく……」
 赤木の不吉な予言に、服部が顔を歪めた。
 赤木はそれ以上何も言わない。長足クラウン号の先頭車両で、二人は沈黙の中にいた。


「あいつらなにを話しているかねー……」
「まあ、頭のいい連中は連中で、詰めるものがあるさ」
 リラックスしているように見えても、独歩とジョセフは戦闘態勢を整えていた。
 長足クラウン号は暗雲の中を突き進み、再生怪人たちを跳ね飛ばしていた。
 中には飛びついて侵入する怪人がいるかもしれない。警戒を怠らず、エレオノール、ジョセフ、独歩が迎撃準備をしているのだ。
 とはいえ、今のところ暇であるのだが。
「そういえばかがみさん、腕のほうはどうですか?」
「うん、全然問題ない。凄いね、スタンドって。…………腕だけが飛んでくるなんて光景、怖かったけど」
「へへ……あいつの記憶にこのスタンドを使って、人の怪我を治療している場面があったからな。
もしかしてと思ったら、ビンゴだったぜ」
 ジョセフが背後にクレイジーダイヤモンドを発現させ、得意気に告げる。
 かがみの片腕は、すでにくっついていた。神経まで完全に治癒を終えているらしく、問題なく動かしている。
 その様子にエレオノールは安堵しかけ、かがみの額に手を当てた。
「かがみさん、もしかして辛いのでは……?」
「え……? そんなことは……」
「よく見るとかがみ、顔色が悪い……いつから?」
 ヒナギクの言葉に、かがみは答えを窮する。長らく切断された右腕を放置していたのだ。
 応急処置を済ませたとはいえ、雑菌が入るのは止められなかった。

634人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:21:13 ID:SP/RWL.o0
「うん……ちょっとここに乗り込んで……しばらくしてから……安心したのかな……?
ごめんね、また私足手まといに……」
 ヒナギクがかがみの言葉を否定しようと身体を乗り出した瞬間、エレオノールがあるるかんの聖ジョージの剣で指を傷つけた。
 何をするのか理解ができない彼女たちの前に、エレオノールは血の出ている指をかがみへと差し出す。
「かがみさん、私の指を舐めてもらえますか? しろがねの血を飲めば、病気や怪我に耐性ができます。
大丈夫、しろがねの血からしろがねになるほどの生命の水は得ることができません」
 そういう問題ではないのだが、エレオノールの気遣いを無駄にするのも悪いため、その好意を受けることにした。
 かがみはエレオノールの右手の人差し指を見つめる。白磁のような肌に、赤い筋の傷口から雫が珠を作って留まっている。
 火照った身体のまま、喉が渇いたかがみはエレオノールの白い指に、赤い舌を絡めた。
 生命の水が含まれたエレオノールの血がかがみの身体を駆け巡る。少し、熱が収まった気がした。
「ありがとう、エレオノールさん」
「どういたしまして。ですが、安静にしていてください」
 エレオノールの天使のような笑顔を見て、かがみは座席に背を預けた。



「ギィィィィィィィ!!」
「チィッ!!」
 ZXが列車に張り付いて攻撃を加えていたクワガタ奇械人に近づく。敵の鋸状の両腕の一撃を、身を低くして躱した。
 身体が泳いでいるクワガタ奇械人の懐に、黒い影がもぐりこむ。強化外骨格を纏った覚悟が、右腕の一撃を繰り出す。
「因果!」
 高速で突っ込んできたクワガタ奇械人の身体が覚悟の拳で真っ二つになった。
 爆発を背に、攻撃を受けながらも長足クラウン号が無事な事実にホッとしながら次々と迫り来る奇械人に視線を向ける。
「これ以上、列車には近づけん!!」
「ああ!」

635人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:21:36 ID:SP/RWL.o0
 覚悟の言葉に、ZXが決意を込めて頷く。列車には彼らの仲間がいるのだ。
 指一本触れさせはしない。クルーザーのアクセルを全開にして、ZXはコウモリ奇械人を狙って空を翔る。

「クルーザーアタック!!」

 白い弾丸と化したバイクで、敵を砕いた。そのまま空中でアクセルを捻り、急降下をする。
 群れている奇械人を三匹まとめて吹き飛ばす。暴風となったZXが稲妻を避けて、後輪で奇械人ワニーダの顔を踏み潰した。
『覚悟! 良! 怪人どもが列車に取り付いたぞ!!』
「ちぃっ!」
 群がる再生怪人が列車に到達した時、真っ二つに切り裂かれた。
「あるるかぁぁぁん!!」
 エレオノールが高速で走る列車のうえに跳び乗り、列車に飛びつこうとした怪人を斬り裂いた。
 糸を手繰り寄せて、着地した瞬間、エレオノールの背中に奇械人モーセンゴケが飛び掛ってきた。
「エレオノール!!」
 ZXが反転しようとするが、到底間に合わない。
 歯噛みするZXの視界に、エレオノールと奇械人モーセンゴケの間に割ってはいる影が現れた。
「ドラララ!!」
 ジョセフが奇械人モーセンゴケをクレイジーダイヤモンドで砕き、華麗に着地を……
「とっとと……ってやべっ!」
「ジョセフ!」
 列車からバランスを崩すジョセフを認め、バイクを進ませる。
 エレオノールもジョセフを助けようと、片腕を伸ばした。
「なーんちゃって」
 ZXは列車の壁に立つジョセフを見て目を見開く。くっつく波紋を操作して、足を壁に固定したのだ。

636人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:22:02 ID:SP/RWL.o0
 無事な様子にホッとするが、次第に怒りの感情も浮かんでくる。
 ZXはバイクを反転させ、再生怪人へと走った。



「ちっ……キリがねえな」
 両腕にモータギアを装備した独歩が、踏み込んできたコマンドロイドを砕いてぼやく。
 赤木より首輪のまかれた核鉄を渡され、使っているのだ。
 怪人たちは固く、独歩の鍛え抜かれた拳でも一撃で貫くことは難しい。
 そのことに少々落ち込みながらも、核鉄の力で打撃力を上げて応戦していたのだ。
「まったく、こいつら倒しても倒してもわいてきやがる……」
「文句言わないで……こっち手伝ってよ!!」
「待っていろ!」
 ヒナギクの声に答えながらも、独歩はコマンドロイドの腹にモーターギアを装着した回し蹴りを放つ。
 真っ二つになった敵を窓から放り投げ、独歩は後方を見る。
「このままじゃジリ貧だな……」
「せめて後ろから追いかけてくる奴を何とかできれば……」
 独歩の言葉に、服部が返す。かがみを守るように円陣を組んでいた各々の人物はため息をついた。
 だが、屋根にでているエレオノールとジョセフはこれ以上の敵を相手にしている。
 露払いを買って出たZXと覚悟はさらに桁の違う数の敵を相手にしていたのだ。
 弱音は誰も吐かなかった。
「……前方に魔方陣が見え始めた。稲妻の迎撃装置も……ここでは効力が薄いみたいだな……。
ゴールが見えているが……」
 赤木が報告するが、列車が揺れる。再生怪人たちの攻撃を受けているのだ。
 このままでは魔法陣に飛び込む前に潰されてしまう。不安がよぎる中、赤木は不敵に笑った。

637人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:22:22 ID:SP/RWL.o0
「車両を一つ……切り離すぞ……」
「なるほど……それで再生怪人を巻き込んで先に進むというわけやな」
「けど……それで本当に無事に突入できるの……?」
 ヒナギクの疑いの言葉に、服部は押し黙る。
 たとえ後方車両を切り離して、再生怪人をまとめて振り払ったとしても列車が魔方陣まで持つ確率は低い。
 予想以上に敵の攻撃が激しいのだ。
 地中を行くという機能があることは伊藤博士の手紙でみんなが知っている。
 同時に、手紙には地中を突き進むのは勧められていない。
 理由は、地中を走る怪人が何体も配備されているため、格好の的ということだ。
 ZXや覚悟が護衛をしている地上のほうが、まだ確率はあると判断した結果だった。
「いくぞ……独歩。あんたは俺と来てくれ……」
「おう。お前たちはここで待っていな」
 赤木は独歩を連れて、重苦しい車両を涼しげに進んだ。


「おめえさん……切り離すのは車両だけじゃねえな」
「ほう……」
「切り離すのは後方車両と……あの場にいた、戦闘力があるうちの一人。つまり俺だ」
 赤木がニヤリ、と微笑む。独歩はその表情に己の考えが正しいと知る。
 同時に、その策は独歩も想定していた。このまま列車を進ませるには誰か残り、敵を惹きつけないといけない。
「モーターギアの特性は把握している……。スカイウォーカーモード……これで敵を引っ掻き回し……列車から遠ざける……」
「だから俺を呼んだというわけか」
 独歩の言葉に赤木は返さない。
 独歩は頭髪の生えていない頭部をがしがしと掻き、まあしょうがないか、と呟いた。
 車両の連結部に辿り着いた時、赤木が右手を差し出した。

638人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:22:47 ID:SP/RWL.o0
「……何のつもりだ?」
「核鉄を……渡してもらおう……」
「敵を引っ掻き回すには、必要だとさっきいったばかりじゃねえか」
 不可解な表情で問う独歩に、赤木は変わらぬ不敵な笑顔を向けながら、静かに告げた。
「なにを言ってる……。囮役は……独歩、あんたじゃあない……。
敵を惹きつける手札は……モーターギアを使う役割は……この俺だ……ッ!」
 赤木の意外な提案に、独歩は驚愕した。車両は列車の揺れしか響かない。
「あんたは貴重な戦力……。モーターギア以外にも打撃力を上げる核鉄は……もう一つある……。
あんたとビーキーガリバーなら……充分敵に通用する……。
ヒナギクやかがみ、服部では敵を惹きつけきれない……なら、戦闘力が下の方で……この核鉄を知り尽くしている俺こそが……」
 赤木が一旦言葉を切り、口の端を持ち上げた。目に宿る光に、独歩は勇次郎や刃牙を思い出す。
 そう、世界最強。男なら一度は憧れるそれを、いくつになっても追い求める自分たちとの同類だけが宿す光。
 確かに、赤木の中に確認した。

「俺こそが……もっとも捨て札に……相応しい……!」

 己を捨て札と言い切る男赤木しげる。
 だが、その瞳に己の身を犠牲にする気は少しも持ち合わせていなかった。
 自分ならどんな境地でも、生き残れる。
 ふてぶてしく、傲慢な思想。勇次郎が持ち合わせていた、王者の思考を、赤木もまた持っていた。


「おめえさん、生き残るつもりだろう?」
「当たり前だ……まだ、俺は奴と再会していない……」
「たく、どんな手段で生き残るつもりだよ。雷様もお前を狙うんだぜ?」

639人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:23:09 ID:SP/RWL.o0
「魔方陣が近いせいか……雷の落ちる頻度も減っていっている……。
真直ぐに移動さえしなければ……スカイウォーカーモードで対応はできる……。
そして……見張りの再生怪人……。いざという時……奴らを戻す手段は必ずある……。
俺はそれを使い……単独で突入する……。だからあんたたちは先に行け……」
「確率は相当低いぜ?」
「ククク……おそらく、成功確率は1%もないだろうな……。
だが、その1%を物にできないのなら……奴に再会する意味などない……」
 できる、と確信しているその瞳には慢心の二文字はない。
 できることをできる、と告げている。本人はおそらく、そのつもりだろう。
(傍から見ればどんなに無茶なこともやり遂げる……勇次郎もそんな奴だったな……)
 だが、赤木は勇次郎ではない。本人も断定するほど、純粋な戦闘力は下の方だ。
 勇次郎のようにはいかないだろう。
「どうした……早く核鉄を……」
 渡せ、と言い切る前に、独歩は赤木の鳩尾を殴る。睨みながら崩れ落ちる赤木をその場に寝かせ、独歩は核鉄を持って連結部へと進む。
 レバーに手をかけて、前方車両にいる仲間たちを思った。
「へっ……らしくないぜ」
 だが、赤木はきっと敵との戦いに必要になる人材だ。なぜかそう信じる気持ちが独歩に湧き上がっている。
 独歩は今まで共に過ごした仲間たちを思い返しながら、彼らが生きて変えれる道を作ってやるのが自分の役目だと確信した。
 思いっきりレバーを倒し、切り離されていく車両を見届けて、己も地面へと降り立つ。
 独歩は迫り来る怪人へと向かって、前羽の構えをとった。


 切り離された車両が多くの敵を巻き込んで遠のいていく。
 たいした機転だと覚悟が感心していると、列車から降り立つ独歩の姿を目撃した。
「独歩殿!!」

640人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:23:30 ID:SP/RWL.o0
「くっ!」
「村雨殿はそのまま列車の護衛を頼む! 独歩殿は私が!」
「頼む!」
 覚悟はバーニアを全開して反転、独歩を迎えに進む。
 左右からコマンドロイドが迫り来る。覚悟は身体を倒し、脇から抉りこむように蹴りを放つ。
「重爆!!」
 丸太を振り回したような衝撃がコマンドロイドを二体まとめて胴から引き裂き、覚悟は勢いを緩めず独歩に向かう。
 右手を差し出し、独歩に届こうとした手は、
「悪いな」
 あっさりと拒否された。覚悟は再度独歩に近づこうとして、独歩の視線に気づいた。
「独歩殿……」
「俺ぃらは、ここで奴らを食い止める。後のことは頼んだぜ……」
『覚悟……!』
 零の言いたいことは理解している。独歩の意を汲んでやれ。
 覚悟とて戦士だ。決死の思いで仲間のために危地に挑む戦士を救出など、侮辱に等しいことは理解している。
 コマンドロイドの右腕を独歩が捌き、モーターギアを拳につけて顔を砕いた。
 片目を器用に上下左右に動かして敵の動きを把握している。
「独歩殿……生還の当ては?」
「あいつらから、突入のための道具を奪えばいいだろう?」
「…………了解した。独歩殿、敵本拠地で会おう!」
「おうよ!!」
 回し蹴りによって真っ二つになった怪人が爆発を起こし、爆炎をまといながら独歩が構えを解かず敵を見据えている。
 覚悟は一度だけ、敬礼をして列車へと向かった。
 拳は強く握り締めたため、血が流れている。
『覚悟……忘れるな! 独歩殿は戦士として、戦ったているのだ! それを無駄にするな!!』

641人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:23:56 ID:SP/RWL.o0
「応!!」


 覚悟が列車に並んだとき、ZXは不思議に思った。独歩がいないのである。
「覚悟、独歩は……?」
「……独歩殿は、敵を惹きつけてから突入するということだ」
「なんだと……」
 ZXは信じられないものを見るように、覚悟へと視線を向けた。
 独歩を回収するために、反転しようとするZXへ、零の怒声がかかる。
『よせ! 戦士の矜持を踏み躙る気か!』
「戦士の矜持だと……独歩を見捨てたも同然じゃないか!!」
『良よ……無駄だ。独歩殿は自ら進んで囮を買って出た。その決意は超鋼よりも固い!』
「だからといって……!」
『それに良よ。危険を省みず、戦場へとたった戦士を侮辱する権利など……誰にもない!』
「だからといって……」
「独歩殿は……生き残るつもりだ」
 覚悟が搾り出すようにZXに告げた。覚悟自身も己の言葉を信じていないのだろう。
 身体が震えていた。己への怒りか。
 ZXは黙したまま、引き返すのをやめる。覚悟も、零も耐えているのだ。
 自分だけが子供のように駄々をこねるわけにはいかない。
 悔しさを噛み締める二人の眼前で、魔方陣が展開を始めた。


「いったか」
 独歩は魔法陣に飛び込んでいく長足クラウン号とZXと覚悟を見届けて、追いかけようとするコマンドロイドの首を貫手で貫く。

642人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:24:14 ID:SP/RWL.o0
 さらに一つのモーターギアで地面を走り、もう一つのモーターギアを拳につけて、敵を殴り砕いた。
 敵の残骸が身体にかかることも構わず、次の標的へと独歩は突進する。
「キキィー!!」
 コウモリ奇械人が不快な鳴き声と共に空より強襲してくる。
 独歩は冷静に両腕の突きを捌き、喉元に正拳を叩きつけた。
 だが、砕くことは敵わない。なぜなら独歩の拳はモーターギアを装着していないからだ。
「たくっ、自信がなくなっちまうぜ。何十年も繰り返しついた突きなんだがな」
「キキキキキィー」
「笑っているのか? だったら俺からの忠告だ」
 独歩が次の言葉を告げる前に、コウモリ奇械人の頭が宙に舞う。独歩の右腕には空を旋回してきたモーターギアが留まっていた。
「後方不注意……って、遅かったか」
 そのまま拳にモーターギアを装着したまま、幾百もの怪人を前にして空手の構えを取る。
 かつて武神と呼ばれた男は誰一人通す気などないと、無言で示した。
 次の怪人の襲撃を独歩は待ったが、敵は遠巻きにこちらを見るだけだ。
 不審に思っていると、怪人の群れを掻き分ける一人の白い男がいた。
「誰か残ったと聞けば、ただの人間か……」
「ほう、こりゃ驚いた。怪人の連中は全員、ギーだのガーだのしかいえないホラー映画の怪物じみた連中しかいないと思っていたぜ」
「我々デルザー軍団の改造魔人には魂はない。ゆえに、蘇ったとしても記憶や知識を失うことはない。
もっとも……なぜか今回蘇ったのは俺だけだがな……」
「あんまり嬉しそうじゃねえな……」
 独歩の問いにシャドウは答えず、鞘に納まるシャドウ剣の柄に手をかけている。
 その動きに隙がない。不意打ちを仕掛けようかと思ったが、シャドウはそれも想定しているだろう。返り討ちは必須だ。
 大物に出くわしたことに内心冷や汗をかきながらも、独歩は構えを解かない。
 うごめく後方の再生怪人を視界に納めると、独歩は奥歯を噛み締めた。
 とても雑魚を潰しながら相手にできるような敵ではない。すると、シャドウは独歩を向いたまま口を開いた。

643人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:24:32 ID:SP/RWL.o0
「キサマらは手を出すな。奴は俺が殺す」
 敵の意外な言葉に独歩は目を丸くする。好都合だが、敵が何か考えているのではないか、警戒をする。
 否定の言葉はあっさりとシャドウの口から出た。
「案ずるな。キサマごときに策をとったなど、我が改造魔人の名に傷がつく」
「そうかい」
 舐められたことにむかっ腹を立てながらも、シャドウの隙を独歩は待ち続ける。
 剣を使った武術でも収めているのだろうか。喋っている最中ですら、ピクリとも動かない。
 知能がある分、改造されている身に過信して付け入る隙がないかとも思ったが、そんなに甘くはないようだ。
 止まっているのに、落雷は来ない。目の前の男が止めたのだろうか。
 風が吹いて、コマンドロイドの残骸が転がる。その残骸が再生怪人の一匹に踏み潰された音が響いた。
 瞬間、独歩とシャドウがほぼ同時に地面を蹴る。
 シャドウが剣を逆袈裟に振り上げた。凄まじい速度で、独歩の右目でも追えない。
 ゆえに、剣を握る手を手刀で捌けたのは偶然というしかなかった。
 懐に入った独歩は、五十年以上繰り返した正拳突きの構えを取り、右腕を突き出した。
 幾人も沈めた拳が、改造魔人ジェネラルシャドウへと迫る。
 その拳は、シャドウの身体を、
「トランプフェード」
 貫かず、トランプの束を風圧で吹き飛ばしただけだった。
 すぐに敵を探そうと体勢を整える独歩の腹から、剣が生えていた。
「終わりだ」
 シャドウは独歩と背中合わせに呟いている。
 逆手に構えた剣が独歩の背から腹まで貫いていた。シャドウは剣を引き抜いて、血を振り払う。
 腹に感じる痛みと熱さに耐え切れず、独歩は膝をついた。


(他愛もない……)

644人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:24:55 ID:SP/RWL.o0
 シャドウはどこか虚しい気持ちを抱えながら、崩れ落ちた独歩には視線もくれず進んだ。
 列車にいる仮面ライダーを含む生存者を始末せねばならない。
 それが自分に与えられた仕事だ。本来のシャドウならその仕事をそれほど熱心に遂行しようとは思わなかっただろう。
 誇り高きトランプの魔人は使い走りになることを良しとはしない。
 暗闇にいいように扱われている現状は、本来の彼なら不満を持って当然の出来事なのだ。
 だが、ストロンガーがいないという事実は、シャドウをナーバスにしていた。
「待ちやがれ……」
 聞こえた声に、シャドウは驚く。急所は確実に貫いたはずなのだが。
 首を回して視線だけ向けると、重症の独歩が立ち上がっている。
「ち……今隙ができたのに……不意打ちする元気すらねえ……」
 モーターギアとかいう武器を核鉄に戻し、傷跡に当てている独歩を認めたシャドウは再び構えを取る。
 人間にしてはしぶとい相手だと思いながらも、笑っている独歩に不思議に思う。
「なにがおかしい?」
「ああ……なんでかな。俺は死にかけで、お前さんは万全だが……」
 独歩の両腕が段々と上がる。そのまま核鉄を、独歩は捨てた。
「……どういうつもりだ?」
「へ……あんなものに頼っているから、お前さんに半歩踏み込みが足りなかったぜ。
こっからは……俺が五十年鍛え続けた拳がお前を殺す……」
 シャドウが独歩の殺す、という言葉に反応する。
 独歩の隻眼には諦めという文字は浮かんでいない。
「その拳が、俺に……いや、それどころか改造人間にすら通用すると思っているのか?」
「思っているぜ。人間が幾千年もかけて闘争のために練り上げた技法なんだからよ」
「血反吐を吐き、致命傷を負い、そこまで吼えるか……」
「てめえに一つ教えてやるよ……」
「む?」
 独歩が腰をどっしり構えて、息を整えた。

645人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:25:25 ID:SP/RWL.o0
 その構え、重傷人とは思えないほど隙が見当たらない。

「人の瞳が背中についてねぇのはな……後ろを振り返らず、前に進むためだぁ……いくぜぇ」

 シャドウは口角を僅かに上げ、首だけではなく身体を向きなおす。
 剣のかっ先を独歩へと向けて、風に白いマントをはためかせた。
「キサマの名……聞かせてもらおう」
「今更か? まあ、いいがな。愚地独歩……ただの空手家よ」
「愚地独歩……覚えておこう」
 シャドウが呟いたと同時に互いの殺気が膨れ上がる。
 またも隙の探りあい。シャドウは独歩の認識を改めている。
 一度見せた技、トランプフェードがもう一度使える相手だと思ってはいない。
 五枚の巨大トランプとなって囲んだり、シャドウ分身で二つ身となって独歩に迫るの手もある。
 そのどちらも、シャドウは良しとしなかった。久しぶりに宿る胸の何かに従ってただ純粋に剣技をもって葬りたい。
 シャドウにしては珍しい欲求に従い、独歩と対峙する。
 今度は独歩の荒い息遣いが聞こえる。再び風が吹くと同時に、シャドウの身体に覇気が漲る。
 わざわざ、迎撃装置をオフにした甲斐があるものだ。
(ああ。ストロンガー……城茂。キサマは常に、俺にこんな感情を抱かせてくれたな。
キサマは俺に、多くの力を刻んでくれたな。あの時も!)
 かつて、ストロンガーと黄金の剣と赤い悪魔の剣を交えたころの気持ちを思い出し、シャドウが僅かに高揚する。
 久しぶりに心地よくなり、知らずシャドウは笑っていた。

「うりゃアアァァァァッ!!」

 独歩の怒声がシャドウの耳朶を打つ。神速の踏み込みで間合いに入った独歩が拳を振るうと同時に、シャドウも剣を水平に薙ぎ払う。

646人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:25:52 ID:SP/RWL.o0
 互いに身体をすれ違いさせ、剣を、拳を振るいきったままの姿勢で固定した。


 静寂。
 二人の間に風が流れ、音を消す。
 シャドウの口元から、血が一筋つつっ……と流れ落ちた。
「俺が魔人なら、キサマはさしずめ……」
 シャドウが告げると同時に、独歩の身体が崩れ落ちる。左脇腹から心臓までを一気に斬り裂いた。
 生存は不可能だ。
 その代わり、命を懸けて独歩は最後の突きをシャドウの右胸へと叩き込んでいた。
 避けきれず、充分な威力を持ってシャドウへと傷を負わせた。シャドウは自然と、剣を眼前へと掲げ、死体となった独歩に敬意を示す。
「武神といったところか……。感謝する、キサマのおかげで思い出した」
 戦士とは、戦いにおいて死ぬべきだと。
 シャドウの瞳に闘志が戻る。
 かつてストロンガーの命を狙い続けた、雇われ幹部としての闘志が。
 再生怪人の群れが、独歩の死体に殺到しかける。

「触るなッ!!」

 再生怪人の頭部に、トランプが突き刺さって爆発した。
 爆炎が風に散る中、シャドウは悠然と仁王立ちで一群を睨みつける。
「魂を持たぬお前らに誰一人として、この男を触ることは許さん!」
 シャドウはマントをはためかせ、独歩を抱き列車が消えたほうへ視線を向ける。
 再生怪人たちに待機するよう命じ、トランプとなって姿を消した。
 独歩の肉体の確保の命令が届いたのは、その直後だった。

647人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:26:36 ID:SP/RWL.o0


(ああ……俺はここいらで終わりか……)
 薄れいく意識の中、独歩は自分が死に近づく感覚を噛み締めた。
 戦いの中で死ねるのなら、それなりに幸せじゃないか。
 唯一つ、地上最強となれなかったことが心残りだった。
(最後の最後まで……頑張ったな……俺の拳……)
 シャドウの頑強な身体を殴り、砕かれた拳を見つめて独歩は労う。
 五十年、ただ突き、貫き、無茶をし続けた己の半身だ。
 ふと、視界の向こうに手招きする鬼がいたような気がする。
(ああ……たく。そんなにそこは暇なのかよ……。お前が望む最強に近い生物はいるだろう……?)
 ニィッとその男が生前と変わらぬ笑みを浮かべた。
 独歩ははげ頭の後頭部をガシガシ掻き、呆れた表情をする。
 ただ、口は笑みを形作っていた。
(しょうがねえ。俺もやることはやったし、そこで付き合ってやるよ。すぐにトンでもねえ奴が来ることも、教えてやらねばな)
 独歩は光に向かって歩いた。
 そこには、彼の知る鬼が永遠の闘争を持って存在していた。


【愚地独歩@グラップラー刃牙 死亡】
【残り9人】




648人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:27:06 ID:SP/RWL.o0
「おい! てめえ……どういうことか説明しやがれ!!」
「そうよ……なんで独歩さんが囮になっているのよ!?」
 ヒナギクとジョセフの声で、意識が覚醒した赤木が目を瞬かせる。
 腹に鈍い痛みが残っているが、直前に独歩に気絶されたことを思い出した。
 ジョセフの剣幕を見て、赤木は不機嫌な表情となる。
「やめい……ジョジョ、桂」
「だがよ! 服部!!」
「赤木……囮になるッつーたのは、お前のほうやな」
 服部の確認するような言葉に、赤木は答えない。その態度にヒナギクがさらに怒りを募らせている。
 対してジョセフは、服部に答えを求めるように続きを促していた。
「独歩はんを囮にするつもりなら、ここで赤木が寝とる理由がつかん。独歩はんの性格と現状なら、文句を言わずに向かうやろうからな」
「待てよ! こいつが煽ったってこともあるじゃないか!?」
「無意味やな。煽ったところで独歩はんは都合よく動かせるような人やない。それは短い付き合いやけど、よく分かったはずや」
「でもよ……」
 ジョセフはどこか納得しきれないように呻く。ヒナギクは悔しそうに俯いていた。
 それもそうだろう。仲間が一人死んだのだ。服部の胸も抉れるような痛みが襲う。
「いつ魔方陣を抜けるか分からん。とっとと持ち場に戻るで。突入前の打ち合わせは覚えているやろう?」
「分かったよ。だが、俺は納得はしねえ。いいな、服部」
「ええで」
 そういって先頭車両に戻るヒナギクとジョセフを見送り、服部は赤木に右手を差し出した。
 赤木が掴み、立ち上がったのを確認して服部は問う。
「……実際のところはどうなん?」
「俺がけしかけたかどうか……か?」
「ジョジョや桂にはああいったが……お前さんが独歩はんが自ら囮を買って出るように仕向けたんじゃないか、少し疑うている」
「ククク……はっきり言う」

649人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:27:27 ID:SP/RWL.o0
 服部の表情が僅かに歪む。少なからず、二人を騙したことをすまなく思っているのだ。
 とはいえ、敵本拠地に乗り込むというのに、わだかまりができたままではまずい。
 非情ともいえる判断をとらざるを得なかった。もしかしたら、ジョセフあたりは理解して、あえて乗ってくれたのかもしれない。
「……正直に言えば、独歩が囮になる手は現状……二番目に有効な手だった……」
 歯に衣を着せない言い方に、服部はカチンとくる。
 正直とは違う。隠すことに意味を感じないと言わんばかりの、非人間的な態度だ。
「もっとも……独歩の生還が望めないという点では愚策……。後の戦闘のことを考えると、独歩の喪失は痛い……」
「お前さんが囮になることのほうが、何倍もよかったちゅうわけか」
「……ククク。何より、独歩はお前たちの信頼が厚い……まとめ役としては充分……」
「……だとしたら、お前が独歩はんの代わりにまとめ役をやることや。今回は独歩はんの性格を読みきれなかった、お前のミスやで」
「確かにな…………」
 あっさりと認めた赤木に驚きながらも、服部も先頭車両へと向かう。
「とはいえ……お前が死ぬ必要もなくなったな……」
「……嫌な言い方するな。独歩はんなら、確かに内と外から大首領を倒す計画を知ってる。信頼も厚い……。けどな……くそっ!」
 僅かにホッとしている自分を許せず、服部は己の手の平に拳を打ち込む。それも、落ち着くためだ。
 もうじき、戦場へと突入しなければならない。
 最後の決戦が、今始まる。


『良よ……』
「零……俺は納得はしない。あまりにも理不尽だ……」
「残念ながら、それが戦場というもの。我ら葉隠一族は理不尽に耐えることを良しとしない。
理不尽に勝利することを目指す……村雨殿、我らは今、理不尽を強いる敵へと向かっている」
「ああ……覚悟、零。俺はもう、俺や姉さん……死んでいったみんなのような、悲しい気持ちを抱かせる理不尽はごめんだ……」
『その怒りを、悲しみを決意に変えるのだ! 良よ!』

650人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:27:50 ID:SP/RWL.o0
「ああ……俺は……」
 ZXがバイクのアクセルを全開にして異空間を駆け抜ける。
 後ろは振り返らなかった。振り返ることじたい、今は残った独歩への侮辱のように思えたからだ。
 悔しさと無念を抱えながらも、ZXの中に燃える覚悟が生まれる。
 誰も悲しませない。全てを抱えて戦い続ける。
「俺は……仮面ライダーだ!」
 魔方陣を駆け終えて、光がZXの視界に満ちる。
 クルーザーの白い車体が、ZXの思いに応えるかのようにエンジン音を唸らせた。



 黒い巨体を地面に下ろし、全てを飲み込むように不気味に佇む要塞が一つ。
 サザンクロスと呼ばれたバダンの要塞は、目の前に現れた列車の突撃を避けきれず、突入を許してしまう。
「だからドリルは外せといっただろ……なんて誰か言わんかねー」
「アホかい」
 長足クラウン号の先端についているドリルで、サザンクロスの外壁を砕いて突入したのだ。
 服部はこのまま、長足クラウン号を走らせ続ける。
「このまんまぶっちぎるでぇー!!」
 襲い掛かる再生怪人ごと長足クラウン号が突き進み続ける。
 何もかも蹂躙するその歩みを止めるものはいない。
 ―― …………トランプフェード………… ――
 その声が、小さくだが服部に聞こえた。と、同時に長足クラウン号が傾き、地面と車体を削る不快な音が響く。
 必死でブレーキをかけるが、効果が薄い。
「みんな、席に掴まれぇぇぇー!!!」
 服部の声が車内に響く。壁にぶつかって大きく長足クラウン号が揺れ続いた。

651人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:28:15 ID:SP/RWL.o0
 何が起きたのか、中にいるメンバーには理解ができなかった。


「あれは……ッ!」
『列車の車輪を斬っただと……!?』
 絶技といえる所業に、覚悟と零に戦慄が走った。
 突如現れた、バイクにまたがる白い怪人に驚きを隠せない。
「くっ! 列車に、近づかせるか! マイクロチェーン!!」
 ZXはクルーザーからシャドウへと飛び掛り、右腕から鎖を射出。
 シャドウはZXの姿を認めたとき、僅かに微笑んでチェーンを切り払った。
 そのまま体勢を崩すZXへと迫ろうとした時、横から覚悟が蹴りを捻じ込む。
「重爆ッ!」
「ちッ!」
 シャドウは飛び退き、列車の屋根へと立つ。いつの間にか、エレオノールもあるるかんを構えて屋根へ立っていた。
 ジョセフも、波紋を漲らせてシャドウの右斜め前方で待機している。
「……ここでは邪魔が多いか」
「逃がしはしねえぜ、化け物野郎!」
 ジョセフが拳を叩き込んだとき、トランプの群れが虚しく散る。
 あっけにとられた一同に、隙ができた。突如列車の中から、かがみの悲鳴があがる。
「かがみから手を離しなさいよ!」
 列車から出てきたヒナギクが叫ぶが、周囲にシャドウの姿はない。
「あいつはどこよ! いきなり中に入ってきたと思ったら、かがみ連れて行っちゃうし、トランプしかないし!」
「落ち着け、桂。かがみは……」
「俺ならここだ。仮面ライダー」
 声に振り返ると、星型のヘッドライトをつけたバイクにまたがるシャドウの姿が目に入った。

652人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:28:33 ID:SP/RWL.o0
 警戒心を剥き出しにする彼らを前に、気絶したかがみを脇に抱えたまま、ZXに視線を向けていた。
「かがみを離せ!」
「構わんぞ」
 あっさりと返った声に、一同は戸惑う。
 明らかな罠じゃないか? 猜疑心に苛まれる一同の様子に、シャドウはまったく気にもしなかった。
「ただし……」
 シャドウがカードを投げ、列車の壁に突き刺さる。
 ZXが視線をシャドウに向けたまま引き抜くと、カードに要塞内地図が描かれたいた。
 一室に指定がある。どういうことかと、ZXはシャドウに視線を向けた。
「ここでは邪魔が多いからな。そこに……一人で来い」
「決闘というわけか……?」
「さあな」
 ZXに曖昧な態度を返して、バイクのエンジンを唸らせる。
 シャドウを逃がすかと、ジョセフが走った。
「そういうわけにはいかないだろうがッ! 普……!?」
 しかし、ジョセフは途中で急ブレーキをかけて止まる。
 シャドウとジョセフの間に、十字手裏剣が飛び込んできたのだ。
 コマンドロイドの群れが現れ、ジョセフが舌打ちをする。
「言っただろう。ここは邪魔者が多いとな。……待っているぞ、仮面ライダー。トランプフェード!」
 シャドウが言い切り、トランプが舞い散って姿が消える。
 襲い掛かってきたコマンドロイドと再生怪人と組み合いながら、ZXは必死で手を伸ばすが届かない。

「かがみぃぃぃぃぃ――――!!!」

 残ったのは、無数に散るトランプのカードだけだった。

653人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:28:50 ID:SP/RWL.o0


「因果ッ!!」
 シオマネキングを砕き、血に塗れながら覚悟は降り立つ。ZXと背中合わせになり、前方の敵を睨みつけた。
「村雨殿……行くがいい。ここは任せてもらおう」
「覚悟……」
「けどよ、罠って可能性もあるんじゃないか?」
 ジョセフが波紋でコマンドロイドの身体機能へと異常を起こさせてから、疑問を投げかける。
 その疑問ももっともだが、覚悟は静かに首を横に振った。
「あの瞳は一流の武人の魂が宿っていた。技にも曇りがない。おそらく、本気で村雨殿との決闘を望んでいる。
もしも私が決闘を申し込まれたなら、唇に朱をひいて向かわねばならぬほどの武士【もののふ】と見受けた」
「ですが、かがみさんを人質にとるような人なので、油断はできないのでは?」
「そうよ! かがみを連れ去るような奴のところに、一人で行く必要はないわよ! 村雨さん、一緒に行ってかがみを取り返しましょう!」
 エレオノールとヒナギクが反対の意を示しながら、蜂女を八つ裂きにする。
 その意見ももっともだと思う。名前の知らない白装束の怪人の言葉を信用するのは危険が大きかった。
「いや、俺は一人で向かおうと思う。あいつは、俺をZXではなく、仮面ライダーと呼んだ」
 その理由を、どうしても知りたい。だからこそ、罠かもしれないが、ZXは一人で向かう気になった。
 エレオノールは心配そうにこちらを見ている。ヒナギクはムッとした表情で、不機嫌なのが一目瞭然だ。
「行くなら、こっち来る前のいうたこと、覚えているよな?」
「……一旦離散し……再び合流する……」
 ZXは知らないが、服部が作戦前に告げた、仲間の死に覚悟や村雨が影響されないための策である。
 ZXたちには、基地を探索し、幹部を仕留めるためと教えていた。
 頷いたZXを確認して、服部が頷き息を吸った。
「じゃあいくでぇ! お前ら!!」
 応!と各々の応える声が響く。

654人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:29:18 ID:SP/RWL.o0
 それぞれ、未来のためへと散っていった。



「きゃっ!?」
 かがみは地面に乱暴に降ろされて、目を覚ました。目の前にいるのはここで出会った頼れる仲間じゃない。
 畏怖すべき、異形の怪人だ。かがみは恐怖に錯乱した。以前のかがみなら、だが。
「……き、きっと……村雨さんがあんたを倒しにくるんだから……!」
 恐怖に脅えながらも、かがみはシャドウを睨みつけた。
 そのかがみを認め、シャドウは感心したような眼差しを向ける。
「な……何よ……」
「この俺と一対一でいる割りに、それほど恐れていないのを感心しただけだ」
「恐れて欲しかったの……?」
「いや、どうでもいい」
 シャドウは投げやりに答える。扉が急に開き、コマンドロイドが入ってきた。シャドウは鬱陶し気に見る。
 コマンドロイドは無機質な動きのまま、シャドウへと声をかけてきた。
「ジェネラルシャドウ様……愚地独歩を殺したアナタ様に質問がございます」
「独歩さんが……ッ!」
 かがみの声を無視して、シャドウは顎で続きを促した。
「独歩を優勝者と認め、回収命令が出ています。生死は問わないので、その身の在り処を教えて欲しいと暗闇様からの伝言です」
「フン……」
 シャドウは鼻を鳴らしながら、コマンドロイドに出口を示す。
 戸惑うコマンドロイドに不機嫌なまま会話を続けた。
「あの男は見事な死に様だった。欲しければ俺を倒して無理やり吐かせろ。そう伝えとけ」
「まさか……アナタも反逆をっ……!」

655人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:29:46 ID:SP/RWL.o0
 するつもりか、と続ける前にコマンドロイドの頭が吹飛ぶ。
 その額に、シャドウがトランプを撃ち込んでいたのだ。
 シャドウは死骸には目もくれなかった。


「アナタが……独歩さんを殺したの!?」
「……奴には感謝をしている」
「え……?」
 シャドウの意外な言葉に、かがみは目を見開いた。
 シャドウの眼差しに懐かしむ色が宿る。手前にあるバイクの星型のヘッドライトを撫でた。
「このバイクは我が宿敵、仮面ライダーストロンガーのものだ……」
「仮面ライダー……って村雨さんの……」
「先輩に当たる。奴は強い。俺は奴と戦うことを至上とした。そう、最後のあの決闘……あれは心躍った……」
 饒舌な怪人を前に、かがみは反応に戸惑う。しかし、シャドウの声のトーンが急に下がった。
「だが、死んで大首領の力で蘇ったこの世界には、ストロンガーはいない……。
奴が残したカブトローを乗り回しているが……俺には虚しさが積もるだけだった」
 かがみはここまで人間臭い怪人もいることに不思議に思う。
 だがすぐに、村雨のことを考え、そんな相手もいるだろうと考え直した。
「独歩さんは……」
「キサマらを逃がすために、最後まで戦い続けた。己が負けることなど、微塵も信じずに。
この核鉄とやらを捨てて、自分の鍛えた拳だけでな。奴の形見だ、持っておけ」
 シャドウがそういうと、首輪のまかれた核鉄を投げた。
 かがみは抵抗できる手段を渡したことに驚くが、逆を返せば核鉄程度の力があろうと、シャドウは問題視していない、ということだ。
 そしてその認識が正しいことを知っているため、村雨たちの足を引っ張る形となり、己自身を責める。
「俺はこのまま腐るつもりは、もうない……。ストロンガーがいないというのなら、その後輩と戦う。だが……」

656人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:30:04 ID:SP/RWL.o0
 シャドウが急に構えて、独歩の死体の在り処をかがみに耳打ちして離れる。
 独歩の死体の在り処を教えてもらうのはありがたいが、突然のことでかがみは戸惑う。
 シャドウはかがみを無視して、覇気を入り口に向かって放った。

「キサマがストロンガーに誇れる仮面ライダーであるかどうかは、この剣に聞く!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 壁をバイクで破壊し、座席から跳んで入ってきたZXが十字手裏剣を投げつけた。
 シャドウはそれを切り払って、ZXへと踏み込む。
 二人の身体が交差し、互いに距離をとった。

「俺の名はジェネラルシャドウ……行くぞ! 仮面ライダー!!」
「俺は……仮面ライダー! ZX!!」

 仮面ライダーと改造魔人、二人の意地が激突する。

657人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:30:23 ID:SP/RWL.o0
【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】

【ジェネラルシャドウ@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]右胸に打撃痕。疲労(小)。
[装備]シャドウ剣。トランプ内蔵ベルト。
[道具]なし。
[思考]
基本:心残りを解消する。
1:仮面ライダーと決着を着ける。
2:独歩の死体の在り処を、暗闇たちに教えるつもりはない。
[備考]
※暗闇の指令【独歩の死体を使って大首領の復活】を知りません。

658人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:30:47 ID:SP/RWL.o0
【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に負傷小。核鉄の治癒力と自己再生にほぼ回復。疲労(小)。首輪が解除されました。ZXに変身中。
[装備]十字手裏剣(2/2)、衝撃集中爆弾 (2/2) 、マイクロチェーン(2/2)、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、工具
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:ジェネラルシャドウを倒す。
2:かがみを助ける。
3:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る。
4:仲間と合流する。
5:穿孔キックを完成させる。
6:パピヨンを止める。
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です。
※参戦時期は原作4巻からです。
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※穿孔キックを習得しましたが、まだ未完成です。見た目は原作で村雨が放ったものと大体同じものです。
※首輪は解除され、身体能力、再生能力への制限が解けました。また首輪は核鉄(ピーキーガリバー)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます。

659人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:31:17 ID:SP/RWL.o0
 かがみはなぜシャドウが独歩の死体を教えたのか、おぼろげに理解した。
 シャドウはZXとの戦いを、無傷で済むと考えていないのだ。
 むしろ、命を落とす可能性も考えての行為だろう。覚悟も似たようなことを行なうと聞いた。
 そして、彼と話していると独歩に敬意を払っていることに気づいた。
 純粋にZXとの戦いに赴くシャドウに複雑な気持ちを抱えた。
 シャドウは強いのだろう。
 そうでなければ、仮面ライダーに戦いを挑もうと考えはしない。
(私には祈ることしかできない……。でも、村雨さん、お願いだから勝って!)
 かがみは静かに祈る。それだけしかできないから。
 だがそれこそが、戦うものの力となる。


【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】

【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:健康(クレイジーダイヤモンドにより、左腕復活)、首輪が解除されました。
[装備]:巫女服
[道具]:ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン。モーターギア(核鉄状態)@武装練金
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:村雨の勝利を祈る。
2:別れた仲間と合流。
3:独歩の死体に、手を合わせたい。
[備考]
※独歩の死体の在り処を知っています。

660人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:31:45 ID:SP/RWL.o0




「へっ……侵入者が入ったとさ」
 黒いライダースーツを身に纏う、粗野な男が置くに潜む二人に問う。
 その言葉を受けて、妖艶な印象の美女が研いでいた爪に息を吹きかけて、振り向く。
「聞いているわよ。プログラムに参加の連中が、列車を使って進入したってことでしょ。
それにしてもよかったじゃない」
「へえ……」
 裏切りとも取れる発言を女性はするが、切れ目の宝石の如く輝く瞳には、決して生易しい色を宿していない。
 妖艶な笑みを浮かべる美貌が、雌の蟷螂を思わせるような鋭い視線を向けた。
「これで私たちも退屈しなくて済む……あーっはっはっは!」
「いいねえ……俺たちも楽しもうじゃないか……!」
「………………」
 老人の姿をした男が聞こえないほどの声で『溶かす』と呟いて、暗い廊下へと消える。
「ところで、独歩とか言うオッサンはどうするの?」
「適当に潰していきながら、居場所を吐かせればいいさ……ああ、簡単に吐いてくれちゃ愉しくねえなぁ……」
「ほんっと……性格悪いわねぇ」
「お互い様だろう……?」
 笑い声を男があげて、窓より光が入り三人の影が伸びる。
 黒いライダースーツを纏う男の影は、頭部に二本の角が伸びる異形の怪人の姿をかたどっていた。
 モデルのような妖艶な女性の影は、細身に切れ味の鋭い日本刀を思わせる印象を抱かせる。
 小さな老人の影は、大柄でいて岩を思わせる強固な装甲を纏う、重戦車の威圧感を与えていた。
 三人の本性を現したような影を引き連れ、それぞれ胸に悦びを宿す。

661人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:32:02 ID:SP/RWL.o0
 それぞれ愉悦を浮かべた表情のまま、ゆっくりと歩いていった。



 神父衣装に身を包んだ、長身の男が息も荒く立っていた。
 周囲は騒がしく、侵入者が現れたことに慌てふためいている。
 エンリコ・プッチは都合がいいと思いながら、フラフラと目的の場所へ向かって歩いた。
 これは神がくれた好機だ。このまま騒ぎに乗じて姿を消す。
 脱出用の通路は目の前だ。地上へと向かうUFOを前にしてプッチは微笑んだ。
 事前に用意したディスクを使って、UFOを運転してもらい二日後の新月へと向かう。
 そのための人材は伊藤博士こそ相応しい。首輪の解除も行なわなければならないのだから。
 格納庫で脱出用のUFOがあるかどうかの確認を済ましたプッチは踵を返す。
 伊藤博士に会わねばならない。
 プッチが歩みを進めると、周囲の機材が浮かび上がった。
(これも……君が私に力を与えた影響か……)
 目を瞑ると、あの時の光景が思い浮かぶ。
 そう、パピヨンを倒したあと、生まれたものを確認した時に、プッチは彼に出会ったのだ。



 トイレのロッカーで寝るそれは、一言で言えば赤ん坊と呼べるものだったのだろう。
 だが、明らかに人の容貌ではなかった。
 緑色の肌にとんがった耳を持つ、異形の赤ん坊。
 それこそ、プッチが求める天国への道しるべだ。

662人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:32:16 ID:SP/RWL.o0
 プッチはゆっくりと、生まれたものに向かって歩く。
「『らせん階段』……! 『カブト虫』! 『廃墟の町』! 『イチジクのタルト』!」
 傍から見れば病人にも見て取れる、意味不明な単語を並べながらプッチは一歩一歩進めた。
 もはや見てくれなどどうでもいい。プッチは熱のこもった視線を生まれたものに向ける。
「『カブト虫』! ……『ドロローサへの道』! 『カブト虫』!」
 少しずつ、大切なものに近づくようにプッチはその赤ん坊へとにじり寄る。
 単語に赤ん坊に反応する様子はない。
「『特異点』! 『ジョット』! 『天使』! 『紫陽花』! 『カブト虫』! 『特異点』!」
 最後の単語を告げる前なのに、プッチの心境は穏やかだった。
 あれほど望んでいた瞬間だというのに、興奮の色は皆無だった。少なくとも、表面上は。

「『秘密の皇帝』!!」

 プッチは全てを告げ終える。同時に、眠っていた赤ん坊の目が見開いた。
 怪我を負っていた右腕をホワイトスネイクで貫いた。隠していたDIOの骨を取り出す。
 赤ん坊はDIOの骨へと手を伸ばした。
「興味を示してくれたか? 君の方から私の方へ来てくれるのか?」
 心臓の鼓動がドッドッドとうるさく流れる。
 プッチははやる動悸を無視しながらも、もはや興奮を抑えきれない。
「これで全ては幕を開けるのか!?」
 一際想いを込めた言葉を告げた瞬間、赤ん坊が掴んだプッチの腕から肉が削げ落ちる。
 新しく生まれ変わる感覚を持って、プッチは喜びに満ちた。
「これで君の世界へ共に旅立てるぞッ! DIOッ!」
 こうして、プッチは生まれたものと一つになった。
 充実感を胸に、その場を離れたのである。

663人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:32:41 ID:SP/RWL.o0



(もはや私にここにいる理由はない。早く首輪を解除して、脱出しなければ)
 北緯二十八度二十四分西経八十度三十六分のケープ・カナベラルを目指す。
 天国への扉はもう少しだ。バダンの未知の技術が使われたUFOなら、二日で辿り着くのもわけはない。
 プッチにもう障害はほとんどない。
 輝ける主の祝福はもうすぐだ。ふと、靴紐がほどけていることにプッチは気づく。
 靴紐を直そうとしゃがんだ瞬間、
「オラァッ!」
 プッチの上空を炎が駆けた。すぐに立ち上がり、振り向くとマジシャンズレッドを背後に立たせる、ジョセフと服部がいた。
「ジョジョ! こいつは敵なんか!!」
「ああ、敵だね。俺のかわいい孫と曾孫を殺す……バリバリの敵だッ!」
 プッチは敵意を向けるジョセフへと向き直り、承太郎の記憶を見たのだろうと勘付いた。
 やはり、ジョースターの血統との因縁は片付けておかねばならないようだ。
「ジョセフ・ジョースター……キサマがここまで生き延びていることこそが……私の誤算であった」
「そうかい。お前さんが俺の未来でとんでもないことをやらかしているのは知っている。
だからここは逃がしはしねえ……未来のジョースターの血統の決意に懸けてな!」
 プッチはジョセフの言葉に沈黙を返す。
 プッチにとって目の前の男は乗り越えなければならない『運命』!
 ジョセフにとっては倒さねばならない『悪』!
 ありえないはずの対決は、それぞれの心臓の鼓動を響かせて幕を開いた。

664人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:34:00 ID:SP/RWL.o0
【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】

【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]骨を蘇らせた際に右掌に怪我、微植物化、強い決意、疲労(小)。『生まれたもの』と融合。
[装備]
[道具]死神13のDISC@ジョジョの奇妙な冒険、BADANより支給された携帯電話、リンプ・ビズキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:天国に行く。
1:ジョセフ・ジョースターを含む、障害を全て跳ね除ける。
2:首輪を解除する。
3:伊藤博士を確保して、首輪の解除と脱出。
[備考]
※首輪をつけています。
※空条承太郎の記憶DISCは、既に確認した後です。
※蝶野攻爵の記憶を見ました。


【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手骨折、全身重度の打撲、精神疲労中、体力消費大、深い悲しみ、脇腹にダメージ大、首輪解除済
[装備]:マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギターをばらしたて出来た弦@BATTLE ROYALE、支給品一式×2、空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険 、
スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:BADANとかいうボケ共を一発ぶん殴る。
1:目の前のプッチを、自分たちの世界の未来のために倒す。
2:別れた仲間と合流。
[備考]
※水を使うことで、波紋探知が可能です。
※承太郎の記憶ディスクの中身を確認しました。

665人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:34:16 ID:SP/RWL.o0


【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:肉体疲労中(ある程度回復)、三村を殺したことから大分立ち直りました。首輪解除済み。
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、携帯電話、ソードサムライX(核鉄状態)@武装錬金、二アデスハピネス (核鉄状態)@武装錬金
[道具]:支給品一式×2(食料一食消費)、首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、
色々と記入された名簿、ノート数冊、ノートパソコン@BATTLE ROYALE ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、
綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく(未開封)、 ギーシュの造花@ゼロの使い魔、キュルケの杖、拡声器、
包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック) 病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)、
バヨネット×2@HELLSING、 紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)、外れた首輪(服部平次)
[思考・状況]
基本:一撃でいいから大首領をぶん殴る。
1:ジョセフの援護をする。
2:別れた仲間と合流。
3:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
[備考]
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。

666人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:34:37 ID:SP/RWL.o0


「あるるかぁん!!」
 エレオノールの叫びに応えるように、あるるかんが再生怪人を切り裂いた。
 銀糸を繰り出す指が可憐に動き、白き道化が宙へと踊る。
「エレノン! あぶねえ!」
「はい! 御前!」
 御前が危険を告げると同時にエレオノールは跳躍、空振りをしたヤモリジンの身体を、あるるかんが押さえる。
「赤木! ヒナギクさん、今です」
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 ヒナギクが雄たけびながら、バルキリースカートで横っ飛びに勢いを得て木刀正宗を振るう。
 ヤモリジンは真っ二つに斬られ、頭部に赤木が銃弾を叩き込んだ。
 素早くあるるかんと共にヒナギクは離れ、爆発を見届けてため息をつく。
「……一息つくのはまだ早い……。敵がどれほどいるのか……不明なのだからな……」
「分かっているわよ!」
 ヒナギクが乱暴に赤木に応えて、先を進む。不機嫌な歩みだが、赤木は気にも留めない。
 そこにエレオノールが並ぶ。
「赤木……なぜシルバースキンを使わないのですか?」
「今はまだ機じゃない……それだけだ……」
「とんがった顎で難しい顔しないで素直に使いなよ。アカギン」
 馴れ馴れしい御前だが、赤木は気分を害していない。
 むしろ、珍しい相手に僅かだが、興味を持った。
「御前……失礼ですよ」
「いや、構いはしない……」
「お前見かけによらずいいやつだな!」

667人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:35:10 ID:SP/RWL.o0
 御前がポンポンと赤木の頭を叩き、上機嫌で上空を漂う。
 その様子を振り替えもせず確かめたヒナギクはふと、前方から近づく人影を見つけた。


「アナタは……?」
「んー? あーら、覚悟って奴もZXもいないの……? 外れねえ……。賭けなんてするんじゃなかったわ。別れ道って面倒ね……」
「……! もしかして……」
「敵だろう……どう考えても」
 ヒナギクの疑問に、いつの間にか右隣に並んだ赤木が告げた。
 ヒナギクは木刀正宗を構えて、エレオノールはあるるかんを立たせる。
 モデルのようなスタイルの妖艶な女は妖しげな笑みを返した。
「健気ねぇ……私に勝てる気なのが、あまりにも滑稽で」
「勝てるさ」
 赤木が断言し、女は笑みを崩さず視線を向けた。
 負けず、赤木は不敵な笑みを返す。
「ククク……あんたにツキはない……。醜く朽ちていくだけの化け物が……勝てるはずもないだろう……」
「へえ……」
 赤木の挑発に女は表情を一変させる。
 鬼のような形相にヒナギクとエレオノールは気圧されたが、赤木は微動だにしない。
「あんた程度……俺たちなら勝てる……。運も流れもまだ俺たちのもの……あんたの詰みだ……」
「……あんた……私を舐めたわねッ!」
 女から粒子が上がった。あれは村雨の変身時と同じ反応だと、エレオノールとヒナギクは構える。
 ただ一人、赤木はつまらなさそうに核鉄を持って佇んでいた。
「舐めちゃいないさ。ただ……あんたじゃ無理だ……。俺に死を……死線を与えることはな……」
 赤木の口が狂気に歪む。

668人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:35:27 ID:SP/RWL.o0
 神に愛された男は、女蟷螂を前に不適に笑う。
 カマキロイドと、神に愛された男と、恋を知る少女たちの戦いが始まった。


【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】

【カマキロイド@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]健康。怪人態に変身中。
[装備]なし。
[道具]なし。
[思考]
基本:大首領の復活。
1:目の前の生意気な男(赤木)を後悔させる。
2:この状況を愉しむ。
3:独歩の死体の在り処を探る。

669人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:35:45 ID:SP/RWL.o0
【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、首輪がありません。
[装備]:基本支給品、ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス(残り8本)、マイルドセブンワン1箱、
    454カスール カスタムオート(6/7)@HELLSING 13mm爆裂鉄鋼弾(20発) 、シルバースキン@武装錬金(首輪を巻いています。核鉄状態)
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
    始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます)、水のルビー@ゼロの使い魔
    工具一式、医療具一式、沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)、成仏鉄球@覚悟のススメ 、伊藤博士からの手紙、
    伊藤博士からの手紙(ポケット内)、『注意書きを必読』と書かれたエニグマの紙(ポケット内)
    ジャッカル@HELLSING(残弾数1)、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂
    ベレッタM92(弾丸数0/15)、ハート様気絶用棍棒@北斗の拳、懐中電灯@現地調達、包帯と湿布@現地調達、不明支給品×2
[思考・状況]
基本:対主催・大首領の肉体となる。
1:カマキロイドを倒す。
2:大首領との再会。バトルロワイアルに引きずり込む。
3:覚悟に斗貴子を死に追いやった事を隠し、欺く。
[備考]
※大首領との接触により、大首領とBADANとの間のズレを認識。
※BADANという組織はあまり合理的に動かないと認識。
※首輪は核鉄(シルバースキン)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます。

670人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:36:03 ID:SP/RWL.o0


【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:疲労小 全身に火傷(ほぼ完治)。首輪が解除されました。
[装備]:エンゼル御前(核鉄状態&首輪@エレオノールが巻かれている)@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ) 保健室で手に入れた様々なもの
[思考・状況]
基本:自分を助けてくれた者、信じてくれた者のためになんとしてでも主催者を倒す。
1:カマキロイドを倒す。
2:別れた仲間と合流。
3:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器(強化外骨格)を破壊する。
4:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。
5:一人でも多く救う。
6:できる事ならパピヨンを助けたい(優先順位は低い)
[備考]
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
※解除した首輪は核鉄(エンゼル御前)にパピヨンがやっていたように巻きつけており、使用できます。

671人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:36:24 ID:SP/RWL.o0
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。右肩が外れている、手の平に裂傷、勇次郎平手によるダメージ 、核鉄の治癒力により回復中 首輪が解除されました。
[装備] バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金、木刀正宗@ハヤテのごとく、イングラムM10(9ミリパラベラム弾0/32)、陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた
[道具]支給品一式、ボウガン@北斗の拳、ボウガンの矢17@北斗の拳
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:カマキロイドを倒す。
2:別れた仲間と合流。
3:覚悟を愛さない。
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです 。
※服は現地調達したものに着替えました。
※首輪は核鉄(バルキリースカート)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます

672人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:36:45 ID:SP/RWL.o0


「高速分裂昇華弾!」
 コマンドロイドの群れが、ショットガンのように撃ちだされた昇華弾によって燃え上がる。
 黒焦げとなった死骸をの中から、原始タイガーが牙を向けて襲ってきた。
 頭を噛み砕かんと迫った原始タイガーの顎を掴み、膝蹴りを脇腹に叩き込む。
『覚悟!』
「応ッ! 赤熱化!!」
 真っ赤に燃える身体で原始タイガーを砕く。
 炎を背に通路で次の敵を発見し、迎撃する。
 獣の唸り声が響き、覚悟に迫る。ハサミジャガーの腕の刃を潜り抜け、顎に正拳をたたきつけた。
 血を被る覚悟だが、油断はない。すぐに壁に隠れていたコマンドロイドを探り当て、腹に蹴りを突き刺した。
「ギィ……ゲェ……ッ!」
 覚悟が零式防衛術の構えを取って、周囲を警戒する。
 遠巻きに警戒するしか、コマンドロイドの群れには取る手段がなかった。
「おぃおぃ……情けねぇな」
 男の声が通路に響き、覚悟はいっそう警戒を強める。
 黒いライダースーツに身に纏う男がゆったりと歩いてきた。
 その男は、覚悟を認めるとニヤリ、と嬉しげに笑う。
「ビンゴ……当たりってわけか」
『何奴ッ!』
 零の声に男は満足そうに笑う。村雨が変身する時に上がる粒子が、男からあがった。
「そういきり立つな。ちゃんと教えてやるよ。俺の名は……ジゴクロイド」
 いっそう粒子が上がって男の身を見えなくし、晴れ上がったころには頭に大きな二本の角を持つ怪人が姿を見せた。
 両手のグローブが破れると同時に、垂直の剣のような刃が生まれた。

673人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:37:09 ID:SP/RWL.o0
「正調零式防衛術 葉隠覚悟」
「いちいち義理堅い奴だな! かたっくるしいのは抜きだ! いくぜっ!」
 ジゴクロイドが大振りに刃を振るう。
 壁が削れ、コマンドロイドが数人巻き込まれた。
「己が仲間ごとッ……!」
「仲間だぁ? 虫けらと一緒にしてんじゃねえ!!」
「キサマッ……!」
 ジゴクロイドの冷徹な言葉に覚悟は怒りを示す。
 もっとも、すぐに己が怒りを殺した。
『覚悟ッ! 後ろから攻撃が来る! 避けろ!』
「了解!」
 覚悟がバーニアを全開にして避けた先には、カニの怪人が泡を吐き出していた。
 またも、コマンドロイドごと地面が溶ける。
「おい! カニロイド! てめえ、こっそり後をついてきたな! 邪魔するんじゃねえ!」
「シュシュシュシュ……」
 不気味に笑ったような反応を、カニロイドは返した。
『二対一か……!』
「仔細ない。仲間をゴミのように見捨てる相手、唇に朱をひく価値もない!
悪鬼よ! 俺はキサマらを許しはしない。この拳に懸けてお前らを討つ!」
「ひゃはは! 吼えるじゃねえか!!」
「シュシュシュシュ……」
 強化外骨格『零』のヘルメットのバイザーが下りる。
 ゴーグルが輝き、力が漲った。
「当方に迎撃の用意あり……!」
 稲妻のような覇気が覚悟の周囲に駆け巡る。

674人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:37:24 ID:SP/RWL.o0
 見るもの全てを圧倒する気がコマンドロイドの動きを奪った。
 覚悟の正義の怒りが、炎となって吹き荒れる。
 たとえ敵であろうとも、人として扱われる存在には痛みを覚える。
 覚悟は優しく、そして強い男だった。だからこそ、零の痛みを理解できた。
 ゆえに、その瞳に喪っていった仲間が宿る。それこそが、覚悟が戦える理由であり、信念だった。
 だからこそ覚悟は、強敵を二体も前にして、一歩も退かなかった。
 ゆえに宣戦布告の言葉は一つ。

 ―― 覚悟完了



【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】


【ジゴクロイド@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]健康。怪人態に変身中。
[装備]なし。
[道具]なし。
[思考]
基本:大首領の復活。
1:覚悟を嬲る。
2:この状況を愉しむ。
3:独歩の死体の在り処を探る。

675人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:38:04 ID:SP/RWL.o0


【カニロイド@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]健康。怪人態に変身中。
[装備]なし。
[道具]なし。
[思考]
基本:大首領の復活。
1:覚悟を嬲る。
2:この状況を愉しむ。
3:独歩の死体の在り処を探る。


【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身にダメージ小。疲労小。首輪が解除されました。
[装備]:強化外骨格『零』@覚悟のススメ
[道具]:大阪名物ハリセンちょっぷ 滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)、首輪(覚悟)
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者BADANを必ず倒し、大首領を殺す。
1:目の前の怪人二体を倒す。
2:別れた仲間と合流。
3:葉隠四郎を必ず倒す
4:ヒナギクを愛さない
【備考】
※零と一体になる事に迷いはありません


【対主催者グループ共通思考】
『大首領を殺す作戦』
1:大首領を強化外骨格の中に降ろしてから、成仏鉄球で成仏させる。
2:そのためには大首領を弱らせる必要がある。
3:強化外骨格内部の死者ならば、大首領を内側から攻撃できる可能性が高い。

676強化外骨格「名無し」:2008/10/21(火) 21:16:41 ID:ZWvRhN/E0
age

677強化外骨格「名無し」:2008/10/23(木) 11:07:59 ID:OZLXDtL60
ageます

678 ◆1qmjaShGfE:2008/10/28(火) 22:43:44 ID:DBZWeeKc0
Part17 >>634差し替え

どうせ使えないからと、ブーメランにでもして飛ばしてやろうかと構えるジョセフ。
食事中というのにお行儀の悪い事この上ない。
いつもならば本気で投げていた。
そう自分で確信出来るジョセフだったが、どうしたものだか、このディスクにそんなぞんざいな扱いは出来ない模様。
どうにも投げ捨てる気にならず、やはり懐に収める。
しかし、そうなるとちょっと悔しい。何というかとてもディスクを投げたい気分なのだ。
確かマジシャンズレッドのディスクもあったなと近くに置いておいたバッグを漁り出す。
「あっれ〜。よう服部、マジシャンズレッドのディスクってどうしたっけか」
「俺が知るかい。ジョジョが持ってたんちゃうんか? 確かずっと頭に入れっぱなしだった……や……ろ……」
一つの可能性に思い至る服部。ジョセフも気が付いたらしい。
「ちょ、ちょっと待て! いけるか? いける……か?」
ジョセフは祈るように念じる、マジシャンズレッドよ、この場に姿を現せと。

祈りは通じた。

ジョセフはマジシャンズレッドのディスクを頭に入れたままだったのだ。
彼の背後に幽鬼のように立ち上る鋼の肉体持つ真紅の鳥。
最早お行儀の域を軽く通り越している行為だったが、誰もそれを責めたりしないどころか、喝采で迎えられる。
実はこれは大層不可思議な現象である。
スタンド能力を持たぬ者は、スタンドを見る事が出来ないはずなのだから。
にも関わらずこの場に居る全ての者にスタンドが見えているのは何故か。
首輪に付けられていたスタンド適正付与の効果は、これだけは大首領の力によるもの。
その力は他の機能より強力で、首輪が外された状態であっても、側にあればある程度の効果を及ぼしているのだ。
それ故見えているスタンドであったが、そんな予期せぬ効果に、誰一人気付いていなかった。
「おおおおおお!! 何!? 入れっぱなしだったらオッケーって事か!?」
思わぬ出来事を単純に喜ぶジョセフ。しかし服部は少し納得がいってない模様。
「何やねんそれ、そないな単純な話なん? ……ジョジョ、記憶ディスクの方はどや? 今の状態でそれも使えるか?」
使用を躊躇していたジョセフだったが、ディスクが使えた事が嬉しかったのか、上機嫌で早速試してみる。

そんな気軽に使うような物ではなかったと知ったのは、すぐ後の事である。


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