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一時投下スレ

578襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:37:35 ID:vx9w9hQA0
 こなたを食った事実だけは、己が帝王への道を示したそれだけは、隠すことが帝王のプライドが許さなかった。


 パピヨンの言葉を受け、かがみたちを庇うように村雨が前に出る。
 意気消沈している御前を後方へ下げて、鷹のように鋭い村雨の視線がパピヨンを射抜いた。
「……それは、やむを得なくか?」
「確かに、やむを得なかったかもな」
「どういう意味よ! こなたを食べたなんて! あ、あいつは、あんたのことを……」
 かがみの言葉を受けて、パピヨンは目を細めた。
 視線は村雨たちに向いていない。天を仰いだ姿勢のまま、パピヨンは呟く。
「そうだな。こなたは俺はこなたに対して、好意を抱いていた。認めてやる……」
 パピヨンの瞳に、人の光が、悲しみの色が浮かぶ。
 それも刹那の間。すぐにいつものパピヨンへと戻る。
「だからこそだ。だからこそ、こなたを食うのは意味があった」
「どういう意味だ!」
 村雨は鋭い声で問うが、そよ風のようにパピヨンに流される。
 ゆらりと、幽鬼のごとくパピヨンが村雨たちに視線を向けなおす。
 一瞬だが、パピヨンの周囲の空間が歪んだような錯覚に村雨は捉われた。

「この俺の、帝王への道に愛はいらない。村雨、俺と手を組め。
覚悟や赤木……ああ、赤木なら生きているぞ。放送で呼ばれていたがな。あいつらは俺に従わない。
だが、こなたを、俺を殺そうとしたお前なら違うだろう? 首輪を外してやる。俺の下につけ。バダンを乗っ取るぞ」

 手を差し伸べるパピヨン。
 まるで、地下ですれ違ったDIOと似たような空気をまとう彼に、村雨は声を失っていた。
「カズキンとの! カズキンとの決着はまだ着けれるんだろ!? パッピー!」

579襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:37:48 ID:vx9w9hQA0
「……そんな物、ここに来た時点で、決着を着けた武藤を見て価値を失った。
未来の分かる決着など、武藤と馴れ合う自分が想像できる未来など、意味などない」
 僅かな執着を持つパピヨンの声色。それは明らかな決別の宣言だ。
 御前の大粒の涙が零れ落ち、地面で爆ぜた。その瞬間、

「あるるかぁん!!」

 飛び出した銀色の影が、白装束の人形を引きつれて宙を舞う。
 パピヨンがいる地点に、あるるかんの右腕の刃、聖ジョージの剣を打ち込む。
 しかし、すでにその場にパピヨンはいなかった。
「俺と殺り合うのか? エレオノール」
「御前は私の仲間です。仲間を悲しませる相手を……私は討つ!」
 言葉とは裏腹に、予想していたような口調のパピヨンが五メートルほど後方に着地する。
 エレオノールは御前を庇うように、あるるかんを構えた。


「まあ、殺してもいいだろう。俺の部下にするには貧弱すぎるからな」
「くっ!」
 エレオノールは舌打ちをしながら、あるるかんを操る。
 あるるかんが繰り糸によって回し蹴りを放つが、パピヨンは跳躍であっさりと避ける。
 あるるかんを無視してパピヨンが拳を放つ。制限が解けた一撃は、ケンシロウや変身時の村雨にも迫っていた。
 辛うじて避け、エレオノールはあるるかんと共に逃げるが、パピヨンは追ってこない。
「余裕のつもりですか?」
「つもりじゃない。余裕なんだよ」
 ギリッ、とエレオノールは歯を食いしばる。もともとパピヨンは戦闘能力を持っている。

580襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:38:06 ID:vx9w9hQA0
 その上、制限が解けているのだ。自分が勝てる道理などない。
 それでも、御前は自分の仲間でいてくれた。信じてくれた。
 彼女を泣かすなど、許せるはずがない。
 エレオノールがあるるかんの糸を操る。
 パピヨンが右手に、核鉄を構える。

「LES ARTS MARTIAUX!(レ ザア マシオウ) 炎の……」
「武装……」

 二人の声が重なろうとしたとき、間に割って入った影が躍る。
 村雨良のもう一つの姿、仮面ライダーZX。
 彼は二人の間に割って入り、無言で激突を止めた。


「引いてください。村雨さん。申し訳ありませんが、彼を許すのは……」
「エレオノール、かがみを頼む」
「え?」
「今のあいつは俺とやりあう気だ。戦いになれば、かがみを人質に捕られるのが一番厄介だ。頼む」
 エレオノールは迷い、一度ZXに頭を下げて、かがみの元へと引く。
 その様子を確認し、安堵したZXはパピヨンと対峙した。
「さっきの返事を聞かせてもらおうか?」
「パピヨン……お前に何があったか分からない。だが、今のお前は……空っぽだ」
 パピヨンの眉がピクリと動く。
 彼が見せる、初めての人間らしい反応にZXは期待を抱いた。
「記憶を求めていたころの、俺に似ている。支配を求めている、お前はな。それで、空っぽが埋まるわけがない」

581襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:38:28 ID:vx9w9hQA0
「くだらない。お前も武藤や覚悟のような『偽善者』というわけか。俺を襲ったころと随分変わったもんだな」
 皮肉を言われるが、ZXは揺らがない。
 正義という名の下に、ZXもまた確固たる想いを刻んできたからだ。
「まあ、未来の部下に見せてやるか。俺の新たな力を。
本気を出せよ、村雨。でないと、死の恍惚をお前が味わうことになるからな」
 パピヨンは右手に黒い核鉄を、左手に通常の核鉄を握り締めて、眼前にかざす。
 ゆっくりと彼の口が動いた。

「ダブル武装錬金」

 光が周囲を包み、パピヨンが蝶人へと進化を果たした。


 光が晴れた先には、背中より黒い黒い蝶の羽を生やし空に浮かぶパピヨンがいた。
 いや、背中だけではない。ふくらはぎより、もう一組の蝶の羽が生えている。
 計四つの蝶の羽をまといながら、パピヨンはZXを見下ろした。
「どうだ、ニアデスハピネスのダブル武装錬金は? 蝶華麗だろう」
「待てよ、パッピー! ダブル武装錬金って、核鉄はなんか影響を……」
「ふん。首輪のせいさ。闘争本能誤読装置……バダンの研究陣は無駄に能力が高いらしいな。
だから、こういったダブル武装錬金も可能だ。武装解除」
 脚のニアデスハピネスを解除、パピヨンは首輪を核鉄に巻きつける。
 何をするのか、疑問を持つZXたちを前にして、パピヨンは厳かに告げる。
「武装錬金……サンライトハート」
 黒い核鉄は展開、同時に武藤カズキの武装錬金サンライトハート+へと姿を変えた。
 柄の部分に首輪が巻かれている。

582襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:38:47 ID:vx9w9hQA0
「爆薬を無効化した首輪なら、武藤と俺のダブル武装錬金も可能だ。
制限が働いて、武装錬金自体の能力は下がるが、複数の特性を活かせるのはメリットだ。
行くぞ、村雨。死なない程度に殺してやる。屈服するんだな」
「くそっ!」
 サンライトハートの穂先が伸び、ZXへと迫る。
 ZXの跳躍により、サンライトハートは地面を抉るだけだ。
「跳んだ先には、っと」
 ZXの周囲に黒い蝶が二匹舞う。蝶が破裂、爆発の花が宙に咲く。
 同時に、ZXの姿がフッと、掻き消える。
「ほう」
「前回の戦い方から見るに、お前は策を二重にも三重にも持つ相手だからな!」
 パピヨンの後ろの地面の土が盛り上がり、ZXが跳び出る。
 降りかかる土砂を鬱陶しげに振り払いながらも、パピヨンは余裕を見せていた。
「なるほど、ますます価値が上がる男だ」
「言うな! ゼクロスパンチ!!」
 ZXの鉄板をも砕く正拳がパピヨンに迫る。
 山吹色の光がZXの視界に入ると同時に、パピヨンはZXと逆方向に加速。数十メートルほどの距離が開いていた。
「制限されているが、制限の解けた俺……つまり人型ホムンクルスと遜色ない怪力を発揮している。
元のスペックが楽しみだ。俺の元で働く、お前がな」
 パピヨンの甘言を聞き捨て、突撃しようとしたZXの前に、犬並みの大きさの黒死蝶が迫る。
 爆発の効果範囲ギリギリで避ければいいと判断し、ZXはパピヨンに向かい続ける。
 しかし、黒死蝶は効果範囲外にZXがいるのにもかかわらず、爆発を起こす。
 なぜそこで爆破をするのか? ZXは疑問を持つが、答えは右肩に熱と痛みを持って返ってきた。
「ぐっ!」
「あっちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

583襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:39:01 ID:vx9w9hQA0
 ZXの右肩に突き刺さる、反りの入った剣。
 剣が喋ることの驚きよりも、パピヨンに一手先を行かれた悔しさのほうが勝った。
 パピヨンは黒死蝶の中に剣を隠し、爆発と同時にこちらに突き刺さるように仕掛けたのだ。
「久々の出番がこれかよ!? って、あんた誰?」
 ZXはうるさい剣、デルフブリンガーを無視して、サンライトハートを持って突撃するパピヨンを睨みつける。
 だが、迎撃が間に合わない。胸にサンライトハートの刃先が刺さり、校舎に昆虫の標本のごとく縫い付けられた。
 いつかの戦いと同じ結末。ただし宿る感情は違う。
「チェックメイトだな。村雨良」
 第一ラウンドは、パピヨンの勝利だった。


 青ざめた顔で戦いの決着を見届けたかがみの前で、デルフリンガーがパピヨンへ言い放つ。
「お、おい! パピヨンっての。やりすぎだ!」
「…………これで満足か?」
 ZXがパピヨンの瞳をまっすぐ射抜き、問いかけてきた。
 パピヨンが嫌った光だ。嫌悪に任せて引きちぎろうかと考える。
 ―― 以前の、パピヨンなら
「ああ、満足には程遠いな」
「村雨さん!」
「今、私が行きます。かがみさんは避難を!」
「動くなよ」
 ZXを心配するかがみの周囲に、四匹の黒死蝶が舞い踊る。
 エレオノールとかがみを囲む蝶をパピヨンはZXに見せ付け、ニヤニヤと笑う。
「俺に協力をしろ。でなければ、あの二人を殺す。もちろん、あの二人にはニアデスハピネスの粉末を飲んでもらう。
俺の目的を達成する前に裏切られては困るしな」

584襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:39:25 ID:vx9w9hQA0
 かがみとエレオノールの周辺を蝶を遊ばせ、パピヨンの唇が描く。
 さあ、どうする?と。
「おでれーた……お前さん、相当の悪党だったんだな」
「……いや、違う。名も知らない剣」
「……一応、デルフブリンガーっていう、由緒正しい名前があるんだ。頑丈なお兄さんよ」
「そうか。デルフリンガー、俺も悪党だった……」
 ZXは胸のサンライトハートの刃先を掴み、押し返そうとする。
 もっとも、制限の解けたパピヨンが相手では力で勝るのも難しいが。
「俺は平賀才人という少年を、殺した」
「お前さんが相棒を!!?」
 デルフの言葉を受け、ZXは仮面の下でどこか安堵した表情を浮かべた。
 劉鳳は死んでしまったが、才人の死を悲しみ、自分を糾弾する資格があるものがいる。
 才人の死を、悲しんでくれるものがいる。
「記憶を求めて、俺は少年を殺した。だから、俺は奴を悪党だと切って捨てることができない」
 少しだけ、サンライトハートを押し返す。
 僅かな距離をずらしただけ。それでも、偉大な第一歩だ。
「パピヨン、空っぽを埋めたお前に、俺たちの協力をしてもらうぞ!」
「ハッ、お前と俺は違う。俺は帝王。お前は地を這う虫けらだ。それに、人質の存在を忘れたか?」
 パピヨンが言い放つと同時に、ZXの額の中央のOシグナルが輝く。
 瞳の光と共に、サンライトハートの刃先を握る両手に力が入った。

「クルーザー!! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 無人のバイクがグラウンドを駆ける。白い巨体が黒死蝶をかがみたちを庇うように遮り、爆発に揺れていた。
 目を見開くパピヨンを尻目に、ZXは一気にサンライトハートを引き抜く。

585襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:39:45 ID:vx9w9hQA0
 地面と叩きつけて、着地。息も荒くZXは正面を睨みつけると、余裕を持ってたたずむパピヨンがいた。


「なるほど。そのバイクも無線での通信が可能か。ヘルダイバーだけだと思ったがな」
「ヘルダイバーだと?」
「まあ、いいさ」
 パピヨンはデイバックよりマスクを取り出し、ZXに見せ付けるように両手で頭部に運ぶ。
 その様子を、かがみが、エレオノールが、何よりZXが驚愕に満ちた眼で見つめていた。
「このマスクで周波数を合わせれば、ヘルダイバーとの通信が可能になる。
そして、通信が可能なバイクはヘルダイバーのみ、と考えていたんだがな。しかし、もはやどうでもいい」
 ZXの赤い仮面と似たマスク、ライダーマンヘルメットに視線が集中する。
 本郷の、村雨の正義の証。称号『仮面ライダー』。

「ヘ・ン・シ・ン」

 呟きが消えると同時に、パピヨンの頭部へとヘルメットが収まる。
 と、同時に黒い強化スーツが身にまとわれ、赤い胸部アーマーが装着された。
 青いヘルメットに触角が二本生え、赤い複眼を持つ仮面。
 ZXと同じく仮面ライダー四号の名を持つライダーマンの力をパピヨンは得る。
「何で……あんたが仮面ライダーに…………?」
「なかなか素敵だな。『仮面ライダー』とは。なら」
 かがみの疑問を前に、パピヨンはチッチッチ、と指を振る。

「今の俺は仮面ライダーパピ♪ヨン♪ もっと恐怖をこめて」

 どろりとした、淀んだ空気の中、パピヨンが告げた。

586襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:40:04 ID:vx9w9hQA0
 ライダーマンヘルメットの額中央に存在するOシグナルが輝くと同時に、漆黒のバイク、ヘルダイバーが現れる。
「さあ、次はバイク戦といくか。あそこに突入するのに、バイクをうまく扱えません、じゃあ話にならないしな」
 パピヨンの挑発に、ZXは応えるようにクルーザーにまたがる。
 バイクでの戦いは、仮面ライダーとして譲れなかった。
 ZXが肩に突き刺さったデルフリンガーを地面に落としたとき、それが合図となって同時にエンジンを吹かして、互いに一気に駆け抜ける。
 学校を後にした、黒と白の風が交差をして、遠のいていった。
 かがみとエレオノールを巻き込まないように。


「え……と……」
「なあ、嬢ちゃんたち。俺に……あいつ。村雨とか呼ばれていた奴のこと、教えてくれないか?
なんで、相棒が死なないといけなかったのかな」
 デルフリンガーの沈んだ声がかがみたちに届く。
 かがみはエレオノールと目を合わせて、頷いた。
 そっと、残った手でデルフリンガーの刀身を撫でながら、かがみは呟く。
 今までの出来事を。村雨の経歴を。
 そして、今戦わねばならない相手を。



 クルーザーの排気音が唸ると同時に、前輪を上げてウィリー状のままヘルダイバーへと迫る。
 鉄槌のごとく振り下ろされた前輪を、ヘルダイバーは潜り抜けて、クルーザーはコンクリートを粉々に砕いた。
 クルーザーの持ち主、ZXは余裕で回避するパピヨンを歯噛みしながら睨みつける。
 視線を受けたパピヨンはピューッと、口笛を吹いた。
 パピヨンはそのまま勢いを増すヘルダイバーで雑居ビルの壁を走る。その後をクルーザーは追いかける。

587襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:40:22 ID:vx9w9hQA0
 ヘルダイバーがビルの壁の端に達して、宙へと舞う。そこに、雷鳴のごとくバイクの排気音が響いた。
 刹那、ヘルダイバーにクルーザーが迫る。白い巨体で吹き飛ばすつもりなのだ。
 単純にして強い。
 シンプルな攻撃に、ヘルダイバーが捉えられた。
「武装錬金」
 パピヨンが呟くと同時に、ニアデスハピネスのアナザータイプが背中に蝶の羽を形作られる。
 空を飛ぶときと同じ要領でヘルダイバーの車体を方向転換、正面から激突するために、前方へヘルダイバーを走らせる。
 車体と車体がぶつかり合い、互いに仮面ライダーの相棒を勤めた馬力を競い合わせる。
 数瞬の拮抗、互いにすれ違い、前輪を地面を噛ませ、後輪を滑らせる。
 二度目の対峙。
 エンジンのアイドリングが無人の街に響く中、黒と白のバイクをそれぞれ抑えて、互いに隙を探り出す。
 数秒にも永遠にも感じる対峙の時。
 風が、砂埃が舞う。パピヨンの背後の遥か向こうの地平線に暗雲が雷を伴っているのを見えた。
 ここは……
「気がついたか。ここは奴らの居城が見える地点だ」
 パピヨンの声に、ZXは無言。構わず、パピヨンは続けた。

「俺は手に入れる。奴らの力を、組織力を。愛などいらない。俺に必要なのは、渇きを癒す『畏怖』だけだ!!」

 ぐにゃりと、パピヨンの周囲が歪んだ錯覚をZXは受ける。
 一際大きく、クルーザーの排気音を鳴らした。
「いくぞ……パピヨン」
「フン。いいだろう。受けてやる」
 ブオン!!と熱風と共に、二つのバイクのエグゾーダスノイズが重なる。

588襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:40:35 ID:vx9w9hQA0
 宙に黒と白のバイクが舞い上がった。

「クルーザーアタック!!」

 かつて、クルーザーを駆った男と同じ言葉をZXは言い放つ。
 昔の自分の愛車に乗る、帝王を宣言する蝶へと向かって。



「……そう……かい…………」
 すべてを教えられたデルフリンガーはグランドの中央で沈黙している。
 その重苦しい声色に、かがみはどう声をかけていいか分からなかった。
「あいつさ……無茶してさ。ガンダールヴだっていっても元は子供だったんだぜ。
ご主人様のために無茶をする奴だけど……けど、死んでいい奴じゃなかった……」
「分かっているわよ! みんな……死んでいい人は……そりゃ、勇次郎やアーカードみたいに酷い人たちもいたけど、いなかったんだから」
「デルフリンガーさん、かがみさん……」
 エレオノールが何かを言いたげに口を開閉させるが、結局は言葉を紡ぐことはなかった。
 村雨の庇護をしたいのだろうが、エレオノール自身も人を殺しているため、負い目を感じて何もいえないのだ。
 すでにパピヨンを伴ってZXが駆けてから、三十分は経った。
(村雨さん、大丈夫かな?)
 かがみは不安げに校門を見つめるが、バイクの轍が二つ視界に入るだけ。
 再びデルフリンガーに視線を戻そうとするかがみの耳朶を、バイクのエンジン音が打つ。
 すぐに校門から出て道路を確認すると、傷だらけの村雨がクルーザーにまたがりながら現れた。
「……おかえりなさい」
「ただいま」

589襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:40:51 ID:vx9w9hQA0
 それ以外、かがみにはかける言葉が思い浮かばなかった。


「よく戻ってまいりました。パピヨンは……?」
「すまん、取り逃がした」
「パッピー……」
 村雨はポン、と御前の頭部を叩いた。落ち込んでいる彼女の姿は痛ましい。
「おい……」
 村雨が視線を移動させると、殺気をぶつけてくる剣に気づく。
 それもしょうがない。彼は怒る資格がある。パピヨンは無言で彼に近寄った。
「……お前が、俺の相棒を殺したんだってな」
「ああ」
 庇護しようとするかがみとエレオノールを左手で制して、村雨は姿勢を低くして視線の位置を落とす。
 デルフリンガーの目がどの位置にあるのか分からないが、目と目を合わせるために姿勢を低くしたのだ。
「……お前がどういう状態かは、あの嬢ちゃんたちから聞いた。でも、俺はお前さんを許せねえ」
「そうか」
 覚悟はしていた。デルフリンガーの怒りを。
 もともとはジョセフや劉鳳がもつべきだった怒りだ。甘んじて受ける。
「デルフリンガー。俺をお前が殺しても構わない」
 村雨の声に、かがみが驚きの表情を浮かべる。エレオノールは厳しい目つきで村雨を射抜いた。
 そんな中、村雨の決意は揺らいでいない。
「だが、俺を殺すのはせめて、バダンを倒してからにしてくれ。俺に……昔の俺がやった罪を購えるとは思っていない。
俺はまだ戦わなければならないからな」
「知るかよ、そんなこと」
「おめ……いい加減にしろよ!!」

590襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:41:08 ID:vx9w9hQA0
 デルフリンガーの態度に、御前が耐え切れず絡みつく。エレオノールに止められているが、それでももがくのをやめない。
 村雨は御前に感謝をしつつも、デルフリンガーの断罪の視線から逃げない。
「おめーは俺の相棒を殺した。俺は絶対許さねえ。だから……」
 デルフリンガーの声が一旦止まる。怒りに真っ赤な御前を無視して、時は流れる。

「だから、お前、俺を使いやがれ! 戦い続けやがれ! あきらめることは絶対認めないからな!
相棒を、貴族の嬢ちゃんを巻き込んだクソヤローを、本当にお前が潰すのか見極めてやる!!」

 デルフリンガーの言葉に、周囲が言葉をなくす。
 フッと、村雨は微笑んで、デルフリンガーを引き抜いた。
「……バダンを潰すまで、よろしく頼む」
「絶対、お前だけは『相棒』って呼ばねえからな!」
 フッ……と微笑んだ村雨は立ち上がろうとして、ガクッと崩れた。
 間一髪、エレオノールが肩を貸し、村雨を見つめる。
「勇次郎にパピヨン、連戦が堪えたでしょう。一旦手当てをしに、校内へ入ります。かがみさん、手伝ってください」
 かがみが頷き、三人と+2は校舎へと向かった。



(村雨くんが学校に向かっている……)
 白い壁に囲まれた、ディスクと資料整理棚という簡素な研究室の一角で、首輪管理用の画面を除いている中年の男。
 固太りにメガネをかけた、白衣の彼の名は、バダンの研究者伊藤博士であった。
(盗聴器とガモン大佐の様子から察するに、彼は記憶を取り戻している。これはチャンスだ。
彼に首輪の解除法を教えれば、バダンに反撃の狼煙を上げれる)
 伊藤博士のメガネのフレームが光る。もっとも、そんなことをすればバダンに自分の裏切りがばれてしまう。
 伊藤博士は自分が監視されていることを知っている。自分の命はないのだろう。
(だから、なんだ?)

591襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:41:28 ID:vx9w9hQA0
 このバトルロワイヤルにおいて、すでに五十人もの人間が死んだ。
 さらに、今回のバトルロワイヤルを円滑に進めるため、罪もない人々が犠牲になっている。
 なのに、自分だけ命を危険に晒さないのは彼らに申し訳ない。
 『首輪の解除法を記入したマニュアル』をメールに添付して、送信にカーソルを合わせる。宛先は、バトルロワイヤル会場に放置されているパソコンすべて。
 これを押すと同時に、自分を殺しに刺客が現れるのだろう。前回はコンピューター室にいる人間が殺し合いに乗っているかどうか、判断できないためチャットを通しての解説だった。
 今回は、自分が知る青年に戻った、よく知る人物がいる。
 伊藤博士は目を瞑り、深い深いため息を吐いた。
 やがて、意を決して指をマウスに押し込む。カチリ、と普段は気にしない、小さな音が大きく聞こえた。


(届いてくれ、希望よ)
 そう遠くない未来に、自分の叛意はバダンに伝わる。僅かな余命、伊藤博士はソファにもたれて待ち続けた。
 数分後、警報機が鳴る。
「馬鹿な……私が送ってから、まだ十分も経っていないのに…………」
 伊藤博士はバダンの見せる対応の早さに歯噛みする。これでは、首輪の情報が渡ったことを知り、巻かれているうちに爆破されるかもしれない。
 絶望が伊藤博士を襲う中、アナウンスが響いた。
『侵入者あり! 侵入者あり! 直ちに迎撃を開始せよ!!』
 侵入者、の部分に伊藤博士は疑問を持った。これは自分のことではない。
 だとすれば、誰が?
 疑問が駆け巡る中、壁が爆砕した。
「げほ、げほ!」
「お前が『Dr.伊藤』か?」
「き、きみは……ライダー…………マン?」
 伊藤博士の目の前で、ヘルダイバーにまたがる青年がチッチッチと指を振る。
 後ろから襲い掛かる蜘蛛男の周囲に黒色の粉末が舞い、爆破する。

592襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:41:45 ID:vx9w9hQA0
 襲い掛かる粉塵に咳き込む伊藤の前で、見せ付けるように青年がライダーマンヘルメットを取った。

「帝王・パピヨン、もっと畏怖をこめて♪」

 村雨を部下にすることを一旦諦め、バダンを手に入れるために伊藤博士を確保しに来たパピヨンが告げる。
 伊藤博士は、初めて悪意に満ちた仮面ライダーを見ることとなった。



【マップ外/サザンクロス内部 二日目 朝】


【パピヨン@武装錬金】
[状態]:全身に軽い打撲。左腕に被弾。核鉄の治癒力で回復中。ドブ川の濁ったような瞳。帝王への決意。首輪が解除されました。
[装備]:ライドル@仮面ライダーSPIRITS、マイクロウージー(9ミリパラベラム弾32/32)、予備マガジン2、
    猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険、アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙
    サンライトハート(核鉄状態&首輪@パピヨンが巻かれている)@武装錬金
    ニアデスハピネス・アナザータイプ=核鉄(激戦)@武装錬金、ヘルダイバー@仮面ライダーSPIRITS
    ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾1発、劣化ウラン弾、残弾0発)@HELLSING、ライダーマンのヘルメット@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、チョココロネ(残り4つ)@らき☆すた、
    地下鉄管理センターの位置がわかる地図、地下鉄システム仕様書
    ルイズの杖、参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿、首輪探知機@BATTLE ROYALE、
    ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン
    首輪(鳴海)、解除済みの首輪の残骸×2(赤木、川田)、ツールセット、不明支給品1(未確認)

593襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:42:06 ID:vx9w9hQA0
[思考・状況]
基本:BADANを打倒し、DIOにも届かなかった「真の帝王」の地位を手にする。
1:伊藤博士を確保。バダンを掌握する。
2:「部下」になり「帝王パピヨン」に忠誠を誓うのなら、他の参加者の首輪も「解除してやってもいい」
3:赤木、大首領に自分を舐めたことを後悔させる。
[備考]
※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です
※スタンド、矢の存在に興味を持っています。
※詳細名簿を入手しました。DIOの能力については「時を止める能力」と一言記載があるだけのようです。
※こなたの死体を『食べ』ました。
※覚悟、アカギのことを快く思っていません。

※首輪の構造を理解しました。少なくとも、死体(川田)の首輪の分解には成功しました。
 ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。


【伊藤博士@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]後頭部に異変、少し興奮気味
[装備]無し
[道具]無し
[思考・状況]
1:バダンに反抗する覚悟を決めた。
2:突然のパピヨン登場に混乱

594襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:42:21 ID:vx9w9hQA0
[備考]
※首輪をしていません。
※解除された首輪が、自室の棚に隠してあります。
※赤木しげるは、大首領により殺害されたものと判断しました。


【首輪について】
※エネルギー抑制装置 = 身体能力、異能力を弱体化させる装置。
 スタンド適正付与装置 = 嵌めた者を強制的に、全てのスタンドDISCに対する『適性』が存在する状態にする装置。
 起爆装置 = 爆薬を爆発させる装置。マップ外や禁止エリアに入った場合三十秒以内に安全地域に戻らねば、作動。また作動スイッチを押されれば、十秒ほどで作動。
 盗聴器 = 振動を計測。その振幅を変調・音声として出力させる。
 GPS = 上空の衛星に信号を送り、それを受信機で受け取ることで、現在位置を知るシステム
 闘争心誤読装置 = 核鉄を誤起動させる装置。ただし、これがないと武装錬金世界出身の人物でないと、核鉄を発動できない。

※上記の六つの装置に加え、爆薬が内蔵されています。
※能力制限装置は、制限する能力と制限の度合いを選択可能です。
※現在参加者に嵌められている首輪は、強者と弱者の格差をなくすように働いています。
※その為に弱者には軽い制限、強者には重い制限がかけられています。
※首輪が解除、或いは装着している者が死亡した場合、首輪はGPSを除く全機能を停止します。
 ただし、爆弾のスイッチをオフにした場合は、GPSと起爆装置のみ機能停止します(ガモンの首輪はその原理を利用)。

【起爆装置作動スイッチについて】
※スイッチを押せば、十秒ほどで起爆装置が作動します。
※最初に徳川光成がルールの説明を行った部屋にあります。取り外し不可。あの場でルール説明を行ったのは、その為。

595襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:42:53 ID:vx9w9hQA0
【イヤホンについて】
※チャンネルを合わせれば、その番号の首輪内の盗聴器が捉えた音が流れます。
※チャンネル01なら赤木しげる、チャンネル18なら愚地独歩と、チャンネルは名簿順です。

【探知機について】
※GPSより送られた信号を元に、首輪を装着した者の居場所を映し出します。
※空条承太郎に支給された探知機と原理は変わりません。しかし、索敵範囲がマップ全体です。






 コンピュータ室に、彼らが来たのは理由がある。
 川田という青年を埋葬するためだ。戦場となった場所に、彼の死体があるのでは、と推理したのだ。
 村雨の怪我を治療してからの方がいい、と主張するかがみとエレオノールを押しのけ、核鉄で回復するからと村雨は言った。
 室内の半分が焦げて、窓に近い方のパソコンが吹き飛んでいるのが分かった。
 酷い有様だ、と思った彼らの視界に、起動していたパソコンが入る。
 パピヨンと赤木が、伊藤博士と接触しようとしてつけたままのパソコンだ。
 そこに、メールが届いたことを告げる電子音が響いた。
「これは……?」
「『Dr.伊藤』より、親愛なる村雨くんへ……?」
 希望の紙は戦士に届く。興奮した様子で、三人はメールを開いた。


「首輪の解……もが」

596襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:43:13 ID:vx9w9hQA0
 うっかりもらそうとするデルフリンガーを黙らせ、三人と御前は顔を合わせる。
 伊藤博士という人物がもたらした、首輪の構造図と、その解除方法が示された資料。
 かがみがペンを取り出し、紙に文字を躍らせる。
『信用できる?』
 村雨はその文字を確認し、黙考。数十秒を費やした後、答えを書き出す。
『大丈夫だ。俺の父さんの親友、海堂博士の研究仲間だった。この人は信用できる』
『……なら、首輪を解除しましょう』
『でも、失敗したら……』
 かがみの弱気な態度に、エレオノールは元気付けるように胸をたたく。
『任せてください。私が最初に実験台になって、安全かどうか確かめますから』
『ちょ! エレノン!!』
『御前、村雨さん、かがみさん、この中では一番信用できない私だからこそ、意味があるのです』
『どういうことだ?』
『首輪の反応が消えたら、バダンの連中も警戒をします。
ですが、あなた方の信用が薄いと推察されやすい私と小芝居をして、私が殺されたことにするのです』
『なるほど!! エレノンすげー!』
 御前がぽん、と手をたたいてエレオノールを褒め称える。
 エレオノールは紙に文字を躍らせる。
『さあ、準備ができ次第、行いましょう』
 テキパキと行動するエレオノールに感心しながら、村雨は視線を落とす。
 エレオノールの文字は……意外と汚かった。
「どうでもいいけど、こういうとき俺は何もできないよな……」
 そりゃ剣にはペンを使う手も、口もないしな、と村雨は内心突っ込んだ。
 口にするとデルフリンガーがうるさいだけなので、黙っていたが。


 学校の見取り図より、武道館に辿り着いた彼らを迎えたのは川田の死体だった。

597襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:43:31 ID:vx9w9hQA0
 口元を押さえるかがみに少しはなれるようにいい、片付ける。
 かがみはその場にある妹の遺品を見つけ、同時に医療具など放置されていた道具を拾っている。
 校庭に簡易な墓を作り、黙祷をささげた。川田章吾、彼の判断は褒められたものではない。
 その上、パピヨンの思考すら曲げるきっかけになった。
 村雨は間に合わなかったことを謝りながらも、決して本郷を裏切るような真似だけはしないと、墓前に誓う。
 踵を返し、武道館へ足を踏み入れた村雨を、かがみを人質に捕った『真似』をするエレオノールが視界に入る。
「支給品をすべて渡せ! 村雨良!」
「裏切るのか、エレオノール」
「私はやはり生き残る! 人間となれたのだから!! そのために、支給品をよこせ。かがみの命が惜しければな!」
「分かった、支給品を引き渡す。かがみと交換だ」
「いいだろう!」
 エレオノールと村雨は互いに頷いて、近寄る。
 お互いの距離が詰まったとき、村雨がエレオノールの腕を掴んで、地面に派手な音を出しながら、されどダメージが残らないように投げ飛ばす。
「不用意に近づいたのが運の尽きだ」
「こ、殺せ」
「いわれなくても、今殺してやる。さすがに、二度の裏切りは許せない」
 そういいつつ、エレオノールの隣で神棚と共に清めの手順をとるかがみに視線を向ける。
 ステルスが解けたのを確認して、継ぎ目に工具を当てた。外装が外れたと同時に、爆薬と思わしきブロック部品の電源をオフにする。
 この間、十分弱。カラン、と落ちた首輪を見つめて、三人は何も考えられず、ほうけたように首輪を見つめる。
 同時に、空に浮いていた御前も核鉄となって、落ちた。


 校門にクルーザを押して歩く村雨の周囲に、首輪をベルトのように巻いている御前が目に入る。
 当初、声こそ出すのをこらえたものの、核鉄を発動できない状態にエレオノールは不安そうな目をしていた。
 パピヨンが行っていた行為を思い出し、核鉄に首輪を巻くと、発動できた。
 再び御前が姿を見せたときのエレオノールの喜びは、傍から見て微笑ましい。

598襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:44:02 ID:vx9w9hQA0
「かがみ、みんなと合流をするぞ」
「うん、ここにはもう用はないしね」
 つかさのリボンをかがみはギュッと握りながら呟いた。
『そして、みんなの首輪の解除を』
『ええ、私だけが自由とは、申し訳ありませんし』
 そう、村雨たちの首輪はまだはまっている。理由は、バダンに首輪解除が可能になったことを知らせないため。
 合流した際に、みんなの首輪を外す。そして、目指すはバダンの本拠地。
(待っていろよ。パピヨン。俺が必ず、お前が間違っていることを証明してみせる!)
 村雨はバイクを加速させて、突き進む。
 反撃の狼煙は、今上がった。




【C-4 学校・校門 二日目 朝】

【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に無数の打撲、頬に軽い腫れ 全身に更なる重度の打撲傷を負う 胸に貫通痕 核鉄の治癒力により回復中
[装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2) 核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金
    デルフリンガー@ゼロの使い魔。工具
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ

599襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:44:18 ID:vx9w9hQA0
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る
2:繁華街のホテル(E-2中心部)で再集合。
3:パピヨンを止める。
4:仲間の首輪を外す。
5:かがみを守る
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※記憶を取り戻しました
※光成がBADANに脅されていると考えています。また、BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※勇次郎の放送を聴きました。
※エレオノールから改心に至る事情を聞きました
※ラオウ、勇次郎との戦闘を経て戦闘技術が劇的に向上しました
※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました。
※ジョセフと和解しました。
※怒り等感情に任せて行動しないよう自制する事を覚えました

※首輪の構造、そして解除法を得ました。

600襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:44:32 ID:vx9w9hQA0
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。

※川田章吾の死体は、埋葬されました。



【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:全身に強度の打撲、左腕欠損(止血済み)、休息により(?)それなりに回復 、核鉄の治癒力により回復中
[装備]:巫女服
[道具]:二アデスハピネス (核鉄状態)@武装錬金 ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:みんな元気になれっ……もちろん自分も
2:村雨と行動を共にする
3:神社の中にある、もう一つの社殿が気になる。
4:仲間の首輪を外す。
[備考]
※光成がBADANに脅されていると考えています。また、BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※勇次郎の放送を聴きました。
※零の暗雲についての推測を知りました。

601襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:44:47 ID:vx9w9hQA0
※かがみの主催者に対する見解。
①主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている
②主催者は時を越える"何か"を持っている
③主催者は①・②の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
④だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について
かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。
ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。
清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。
神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。
※ステルス機能について
漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、
解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。
ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。
※S1駅にハヤテのジョセフに対する書置きが残っています
※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました
※村雨との協力を申し出てくれた服部に感謝しています

※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。

602襲来!蝶男の帝王舞 ◆WXWUmT8KJE:2008/06/21(土) 14:45:06 ID:vx9w9hQA0

【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:疲労小 全身に火傷(ほぼ完治)。首輪が解除されました。
[装備]:エンゼル御前(展開中&首輪@エレオノールが巻かれている)@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス(頭部半壊、胸部、腹部に大きな損傷、全身にへこみと損傷あり)
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ)
[思考・状況]
基本:自分を助けてくれた者、信じてくれた者のためになんとしてでも主催者を倒す。
1:仲間達と共に行動する。
2:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器を破壊する。
3:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。
4:一人でも多く救う。
5:仲間の首輪を外す。
[備考]
※ジグマール、村雨達(村雨、かがみ、覚悟、ヒナギク、独歩、服部、ジョセフ)と情報交換をしました。
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※自転車@現実は消防署前に落ちています。
※才賀勝、三千院ナギの血液が溶けた生命の水を飲みました。2人の記憶をある程度取得しました。
 才賀正二の剣術や分解などの技術は受け継いでいません。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
※独歩の言葉が聞こえたかは不明です。

※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。

603雛菊想恋 ◆03vL3Sy93w:2008/07/12(土) 19:02:28 ID:ytNms78E0
…あれからどれくらい泣いたのだろうか。
気がつくと、自分は真っ白な空間の中にいた。
「…どこなのよ、ここ」
桂ヒナギクはその空間にただ一人ぽつんと立っていた。
(何でこんなところに…)
そう思っていたときに、一人の少女が姿を現した。
「だ、誰!?」
その少女は、自分にとって馴染み深い少女だった。

「…つか、さ?」

かつての仲間だった、柊つかさが、目の前にいた。

「久しぶりだね、ヒナちゃん」
「どうしてつかさがここに…?」
ヒナギクは、今目の前にいるつかさに驚いていた。
今の状況を整理しようと、とりあえず頭を回転させてみる。
しかし、つかさはそんなことも気にせずに話し始めた。

「お姉ちゃんは、元気にしてるの?」
「え?…うん。元気にしてるわ」
…とりあえず今は話し合おう。そう考えたヒナギクは、今いるつかさと話し続けた。

604雛菊想恋 ◆03vL3Sy93w:2008/07/12(土) 19:03:17 ID:ytNms78E0

◆     ◆     ◆

ヒナギクはつかさに今までの状況を話した。
かがみに出会ったこと。村雨が記憶を取り戻したこと。勇次郎やラオウを覚悟たちが倒したこと。
色々なことをつかさに話した。
川田がゲームに乗ったことや、川田がこなたを殺したことは隠した。つかさがショックを受けるかもしれないからだ。

「…ねえ、つかさ。私、聞きたいことがあるんだけど」
「どうしたのヒナちゃん?」
状況を話し終えたヒナギクは、つかさに一つ聞きたいことがあった。
それは、覚悟を愛することをやめたヒナギクにとって重要なことだった。

「どうして、『違う世界にいる』川田君を最期まで愛することが出来たの?」
「……え?」
ヒナギクは、つかさが死ぬ間際に川田に愛の告白をしたことを思い出した。
川田もつかさも違う世界から来ている。今となっては無理だが、もし生きて帰るのならば二度と会えなくなってしまう。
それなのに何故愛し合うことが出来たのか?ヒナギクはそれが疑問でならなかった。
「えっと、……それってどういう意味?」
つかさはヒナギクの心情を知らないのか、少しおどけた表情で言葉を返した。

「……元の世界に帰ることができるようになっても、つかさは川田君とは違う世界にいるのよ。
 帰ったら、二度と会えないのよ。それなのに、どうしてつかさは川田君のことをずっと好きになれたの?」
ヒナギクが再び質問すると、意外な答えが返ってきた。

605雛菊想恋 ◆03vL3Sy93w:2008/07/12(土) 19:04:34 ID:ytNms78E0

「…人を好きになるのって条件がいるの?」
「え?」
「私は必要ないと思うよ。川田君がどこの世界にいても私は川田君のことが好きだったと思う。それに…」
つかさは、さらに言葉を続けた。


「人が人を好きになるのは自由なんだよ」


そう言ったつかさは、満面の笑みを浮かべていた。


◆     ◆     ◆


「………夢?」

ヒナギクが目を覚ますと、そこは覚悟と別れた場所だった。
恐らく泣き疲れていつの間にか眠っていたらしい。
今までつかさといたことは全て夢だったのだろう。ヒナギクはそう思った。
しかし、つかさが最後に言った言葉が脳裏に焼き付いて離れない。


       「人が人を好きになるのは自由なんだよ」


その言葉は、彼女が一度固めた『決意』を揺るがせるほどだった。

(…私はどうすればいいの?)
ヒナギクは迷っていた。つかさが川田を愛したように覚悟を愛するのか、それともこのまま愛さないのかを。
そして、彼女の答えは…

606雛菊想恋 ◆03vL3Sy93w:2008/07/12(土) 19:05:19 ID:ytNms78E0

(…学校に行ってからにしよう。葉隠君たちが待ってるかもしれないから。)

…出なかった。ヒナギクは答えを出すことが出来なかった。
そして、答えがでないまま、ヒナギクは村雨たちがいる学校へと走り出した。


【C-3 中央部 2日目 午前】

【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。右肩が外れている、手の平に裂傷、勇次郎平手によるダメージ 、核鉄の治癒力により回復中
[装備] バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金、木刀正宗@ハヤテのごとく
イングラムM10(9ミリパラベラム弾0/32)454カスール カスタムオート(6/7)@HELLSING 13mm爆裂鉄鋼弾(28発) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた
[道具]支給品一式、ボウガン@北斗の拳、ボウガンの矢17@北斗の拳
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:学校へ向かい、覚悟、村雨、かがみ、エレオノール、パピヨンと合流。
2:1が終わり次第、繁華街のホテル(E-2中心部)で再集合
3:覚悟に対して…?
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです 。
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました 。
※バルキリースカートを使いこなしました。バルキリースカート本来の戦い方ができるようになりました。
※エレオノールと和解しました 。
※服は現地調達したものに着替えました。
※服部、ジョセフ、エレオノールと情報交換をし、友好関係を取っています。
※アカギと情報交換をしました。
※覚悟を愛するか愛さないかは、次の書き手にお任せします。

607ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:36:15 ID:quSw.JEE0
生命の意味。
少なくとも俺たちが生きとった世界では、そんな事で悩むやつなんざぁおらへんかった。
部活のレギュラー争い。
期末試験の範囲。
週末のデートのプラン。
俺の周りの『健全な学生サマ共』はそんなもんばっかで悩んどった。
俺や『アイツ』みたいな『不健全な高校生探偵』(アイツは途中から小学生になってもうたけどな)でさえ大差ないわ。
殺人現場に居合わせる度に、『誰が誰を殺した』かなんて事を、出来のええ頭をフル回転させて悩んどった。そんな毎日や。

だから少なくとも俺たちの世界では、生きることに意味なんかあらへん。
目の前に広がる無理難題をなんとかするので精一杯やった。
誰もが『生きること』それ自体に四苦八苦しとったんや。
それでも死にたいとか思っとるやつなんかは(少なくとも日常を生きる俺の視界には)おらへんかった。
生きていることは当たり前のこと。
みんなそう思いながら、人間サマの楽園である大都会を優雅に歩いとったって事や。

いや流石に、あり得へん数の死体をみてきた俺や『アイツ』はそうは思っとらんかったで。
特に『アイツ』は結構な危ない目に会うてきたらしいからのう。
せやかて、そんな俺たちでも『生きること』の意味なんざ考えへん。
そんなもんは逝ってもうた後でも考えられるからな。
閻魔はんに金棒を突きつけられながら問い詰められてから考えればええんや。
そう思っとった。

それが間違いだったとは言わへんで。
仕方のない事や。平和やったんやから。
しかし、今の俺はそれが許されない状況におる。
この生命の意味を考えんとあかんねや。

勿論、『人はなんで生きとるんやろ?』とかいう哲学はパスや。
そんなもんはモッサイ髭を生やしたジジイの暇つぶしに任したらええ。
俺の議題は『何で俺が残ったか』。
(殺人鬼であるものの)吉良はんと、(誤殺であるものの)三村はんを殺した俺。
タバサでなく、アミバはんでなく、ブラボーはんでなく、劉鳳はんでなく……工藤でもなく!
……なんで俺なんや?
無力な両手……血に染まった両手、こんな最悪な両手を持つ俺が……なんで残っとる?
『偶然殺されなかった』なんてそんな意味のない答えは求めとらん。
『神の意思なのだぁ〜』とかそんなお花畑な答えも聞きとうない。

『結果』や。俺が欲しとるのはこの生命の『結果』や。
タバサが劉鳳はんを守ったように、ブラボーはんが劉鳳はんに希望を託したように、劉鳳はんがラオウを殺したように、アミバはんが吉良はんの正体を残してくれたように。
工藤が信念を貫いたように!
生命に意味を与えるための『結果』が必要なんや。
俺が奪ってもうた命に恥じないような『結果』を、この無力な俺が残さなあかんねん。
この俺に何が出来る?
少なくとも、無害な人を殺してもうたんやから、信念なんてもんを貫く資格はあらへん。
ならば、この殺し合いをぶっ壊すために何かせぇへんとあかん。
波紋もアルターも無い俺が、借り物のスタンドと借り物の武装錬金と借り物の銃で。

608ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:36:38 ID:quSw.JEE0

……何が出来んねん。

村雨はんや覚悟はんが必死に戦っとる間に、部屋の隅っこでかがみはんらを守っとることくらいしかできんやろ。
もしかしたら、かがみはんの方が俺なんかよりも強かったりしてな。
……それは流石にないとしてもや、俺なんかが戦ったって邪魔なだけや。
仲間たちの足を散々引っ張るだけ引っ張って、アッサリ死んでまうのがオチや。
つまるところ、俺は『何もしない』のが一番なんやなぁ。

それでええんか?
……ええわけないやろ。
じゃあどうしたらええんや?

どうしたらええねん?!

……何で、何でこんなに役立たずやねん。

畜生……!

ちっくしょう……!


「……とり! …………オ〜イ服部ちゃーん?!」
鼓膜を大きく揺らしたのは、飄々とした声だった。
遠慮の無い声量に、鼓膜がキィィンと悲鳴を上げた。
首を傾け視界を右へとずらせば、ジョセフの大きな口が待ち構えていた。

「服部ちゅわ〜ん? シカトですかぁ? そんなに冷たくされたら僕チン泣いちゃう!」
さて、うるさいのがいたのを忘れていた。
思考は中断。結論は後回しにしなければいけないらしい。
だが、殺し合いの緊迫感を盛大にブチ壊すような彼のこの軽さが今は少しだけ嬉しい。
これも彼なりのやさしさであるのだろう。
落ち込んでいる自分を見かねて、ワザとふざけてくれているのだろう。

「スマンな、ジョジョはん……」
「なんだよ服部〜。……もしかして生理か?」
前言撤回。確実に天然だコレ。
なんと言うか……コイツは大物になりそうだ。
絶対に『隠者』になんかはならない。
大統領になって国をソッコーで滅ぼすのとかがお似合いだ。

「はぁ……取り合えず、独歩はんとこ戻ろかー……」
何にせよ、ここでボーとしているのは時間の無駄だ。
パピヨンに会いに行った連中も、そろそろ戻っているころだろう。
今は一刻も早く、合流しなければ……。

「それなんだけどよ〜。……ちょっと俺の地図見てくれ。こいつをどう思う?」
ジョセフはゴソゴソと汚らしいデイパックに手を突っ込むと、中からグシャグシャの地図を取り出す。
「すごく……地図やな……」
「地図なのはいいからよォ〜、このままじゃ独歩のところに辿り着けないんだよなァ〜」
ジョセフが地図のE-2エリア、自分達の集合地点を指差した。
トントンとジョセフの人差し指が叩いた地点には、「9:00」の文字。

609ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:37:06 ID:quSw.JEE0

「あぁ……せやった。禁止エリアか……」
失念していた。集合場所がもうすぐ禁止エリアになるのであった。
主催者のささやかな嫌がらせだろうか。全くくだらない事をする。
とはいえ、まさか独歩も大人しく待っているわけにはいかないだろう。
参ったな、どこへ移動すればいいか検討もつかない。
適当な施設へ電話でも掛けてみるか……。

「おい……服部……」
俺が思案に暮れていると、ジョセフが多少震えた声を発しながら上着の袖を引っ張ってきた。
さっきまでの明るい声とは違い、まるで亡霊でも見たような声だな。
彼の視線を目で追う。俺のいた世界では、どこにでもある神社の風景だ。
照りつける太陽は昼に近づくにつれて、この地上へと熱を送り続ける。
石段の上を這い回る風が、大量の落ち葉を舞い上げる。
そして神社の入り口(俺らから見たら出口)に悠然と立つ鳥居。
その鳥居の下に佇む男が見える。
逆行が邪魔をしてよく見えない。
それでもなんとか目を凝らす。
銀色の髪。鋭い目つき。覚悟から聞いた通りの服装。

「そんな、アホな……」
死んだはずの男が立っている。こちらを見つめている。
太陽が一番元気な時間にも拘らず、そこには『亡霊』が平気な顔をして立っていた。
だが俺の目に映った彼は『亡霊』と言うより『鬼』、いや違う……『死神』。
そう、何故だか俺には赤木しげるが『死神』に見えて仕方が無かった。


◆     ◆     ◆


「ここを進んだ先に強化外骨格が眠っているはずだ」
「うおー……なんか緊張してきたでー……」
手のひらに滲む汗を拭いながら、社に続く石段を一歩一歩進んでいく。
この社に近づいたものの体調を狂わす、あの憎たらしい首輪の制限からは解放されたはずだ。
それにも関わらず、社から発せられる圧迫感が胸を締め付ける。
この禍々しさは、オーガのもつソレ以上か……。
そう、この先には、この殺し合いの全てを支配している強化外骨格がここに眠っているのだ。


あの後、つまり俺たちが赤木を発見した後の話をしよう。
ジョセフは一応赤木と面識があるらしかったが、それでも俺たちは赤木のことは殆ど知らなかった。
ちょっと前に覚悟から彼の名前と背格好を聞かされた程度。
放送で赤木の名前が呼ばれてからは、(ただでさえ少なかった)彼の情報は俺たちの記憶の隅の隅へと追いやられていた。
死んだ人間の背格好など不要な情報だ、と俺の脳が判断したのだろう。
だから始めのうちは、『あれ』が赤木しげるだとは信じられなかった。
放送の通り赤木は死亡していて、あそこにいるのは『別の誰か』だと疑っていたのだ。

俺たちが彼が赤木しげるだと信じることができたのは、彼が首輪をしていない事に気付いたから。
首輪がない事実は、『彼が生きているにも拘らず、放送で名前が呼ばれたこと』を裏付ける証拠となったのだ。
首輪の解除法は、俺たちがこの殺し合いが始まってからずっと求めてきたものの1つ。
嬉しくて思わず叫びだすところだったのだが、俺だってそこまで馬鹿じゃあない。
主催者が彼の生存に気付いていない。
そんな事実くらい、赤木の首輪がないことを確認してから1秒で把握した。
赤木は数時間前に覚悟たちとも会っているらしく、俺たちはすぐに神社へと引き返して情報交換をすることにした。

610ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:37:30 ID:quSw.JEE0

俺たちが赤木しげるから入手できた情報は少なくない。
『伊藤博士』なる人物からの手紙。そこに書かれていた首輪の情報。神社の社に眠るもの。
大首領を殺す作戦。エンリコ・プッチなる人物。他にも様々な情報。
つまり、赤木が先ほど覚悟たちとしていた筆談の内容を、そっくりそのまま伝えられたのだ。
粗方情報交換が終わると(とは言え俺たちが赤木に与えた情報は皆無と言っていいが)、赤木は意外な提案を持ちかけてきた。

強化外骨格の眠る社の探索。
なんでも、彼が大首領と接触した彼はその後、神社の社にワープさせられていたらしい。
そこに眠っていたのが、強化外骨格。
柊かがみから伝えられた通り、社にはこの殺し合いを支配する鎧が祭られているようだ。
そして赤木は『大首領を殺す方法』を確かなものにするために、社の中で確認したい事があるという。
そこで、俺たちに同行して欲しいと提案してきた。

社の中を見ておきたかった俺にとって、この提案は願っても無いものだった。
先ほど俺とジョセフが決行した、社への侵入作戦が失敗に終わっていた。
これからのプログラム脱出作戦を立てる上で、社へ進入することは必要不可欠であると言えるだろう。
赤木が社に近づいても俺たちのように体調不良を起こさないことから、この体調不良は首輪の制限であると考えられる。
幸い赤木には首輪を解除する技術と知識があり、この問題もなんなくパスできる事となる。
ただし、ここで赤木から1つだけ条件が提示される。

首輪を解除するのはどちらか1人だけ。

一度に2人も首輪を解除したら、つまり『死亡』したら主催者が怪しむのではないか、と赤木が考えたからだ。
それならば、俺とジョセフのどちらか片方がいきなり死んでも、それは充分怪しいと思うのだが。
俺たちの間には何の火種も無いのだから。

とは言え、柊かがみに社の中を確認してきてくれと頼まれている。
この提案は断れないだろう。
それに首輪も解除してくれるのならば、こちらとしても万々歳である。

次に『どちらの首輪を外すか』だが、これは大した問題にはならなかった。
ジョセフが社の探索を辞退したからだ。
『俺にはめんどくさいことはよく分かんねーからな』だそうだ。
そんな訳で、ジョセフを見張りとして残し、赤木と首輪を外した俺は例の社へと向かったのだった。


「これが……!」
「ああ。これが強化外骨格だ……!」
俺の目の前に佇んでいるコレが……全ての絶望の元凶。
少女を貫いた弾丸も、青年を潰した拳も、全てはコイツから始まったのだ。
今すぐにでも破壊してしまいたい。
溢れ出しそうな怒りを、すり減った理性で必死に押さえつける。

(なんや……引っかき傷か?)
憎き鎧の中央部やや左側(こちらから見て右側)に小さな傷があるのが確認できた。
外部からの何らかの攻撃によって付いた傷だろう、服部は確信していた。
なぜならば、社の外壁も巨大な刀で切りつけられたかのように、崩れていた。
あの方角から何らかの攻撃、衝撃波のような攻撃がこの社を襲ってきたと考えるのが自然だ。
そしてその衝撃波はこの社の外壁を破壊し、強化外骨格にまで綺麗に跡を残した。
人間で言えばちょうど心臓に位置する部分に、小さな切り傷。
まるで『そこに成仏の光を直撃させろ』と言わんばかりの目印。

隣のアカギも同じことを考えているのだろう。その目線はこの傷へと伸びていた。
誰かが残したんだ。この傷を。
もしかしたらこんな小さな傷、役になど立たないのかもしれない。
この傷は意図的に付けたものではなく、誰かの放った攻撃が偶々命中したのかも……無意識の産物だったのかもしれない。
それでも誰かがコレを残したのは事実だ。
誰かの想いが、制限と言う壁を越えてここに届いたのだ。
この傷は、脱出の証だ。
この鎧を、このプログラムを終わらせる為の傷だ。
忌まわしいこの、鎧を……!

611ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:37:55 ID:quSw.JEE0

「……ッ!」
俺の敵意に呼応するかのごとく、鎧の放つ禍々しさが色濃くなってくる。
そのオーラはブワリと充満し、木造の社を瞬く間に地獄の釜の中へと変えてしまう。
額から滲み出す汗はが服部の黒い肌を湿らせる。
震えが止まらない。
正直に言って、俺はコレに恐怖していた。

それと同時に、悔しかった。
一瞬で「コレには叶わない」と悟ってしまったことに。
分かっている。俺が無力な事くらい。
それでも、仲間の為に何かできる事を探したかった。
だけど、コレは、自分のような人間が立ち向かえる代物じゃない。

一言で表現するならば、『災害』。

大地震や津波のように、一人の人間ではどうする事もできない『災害』だ。
テレビの前で次々と死傷者が増加していくのを見ながら、爪を噛むことしかできない。
この悔しさは、そんな感情に似ている。

自分じゃどうする事もできない。

仲間の為にできる事なんか、存在していない。
俺はただ、見ていればいいのだ。
仲間がコイツを倒してくれるのを、ただ見ていればいいのだ。
仲間が血を流すのを、ただ傍観していればいいのだ。
邪魔にならないように、ひっそりと。
それが俺が唯一、仲間の為に出来る事だ。
それが、2人の人間を殺してまで生き残った俺のできること。
生きる意味。

俺なんかが戦うなんて事、しちゃいけない。
だって敵の抜け殻を前にしただけでこのザマなのだ。なんとも情けない。
隣の赤木は眉一つ動かさないで涼しい顔をしているというのに。
こいつは、少なくともこの男の精神は、人間じゃない。
俺のようなただの人間じゃないから、戦う資格があるのだろう。
ただ震えてるだけの惨めな俺とは、違う。

それでも、俺がコイツに憧れと言う感情を抱く事はなかった。
コイツのようになりたいとは、微塵も思わなかった。

「さて、服部平次よ。唐突で悪いが、貴様に頼みたい事がある……」
目の前の光景を、俺は信じられなかった。
赤木が笑った。笑ったのだ。この状況で、笑ったのだ……!
鎧が放つ狂気と同調するかのように。

「な、なんや……?」
「仲間の為に、死んで見る気はないか……?」
俺が最初にこの男を見たときに抱いた印象は『死神』だった。
その幻想は、今ハッキリと現実という形で俺に突きつけられている。
今なら、この男が地獄から来たと言われても信じてしまうだろう。

「なん……やと?」
「大首領を殺す作戦、貴様にも伝えたと思うのだが、この作戦には1つだけ欠陥がある。
 『強化外骨格の中の死者たち』がこの作戦を知らない可能性がある。
 そこで、必要になってくるのが……強化外骨格内部とのコンタクト……!」

612ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:38:31 ID:quSw.JEE0

「それで、俺にメッセンジャーとなれと……」
皆まで言われなくとも理解できた。出来てしまった。
確かにそうだ。強化外骨格の中の死者に協力を仰ぐのであれば、それを伝える人物は必要不可欠。
そして、その為には……誰かが死ぬしかないのだ。

「そういう事だ。話が早いな」
「……俺からアンタに聞きたい事が3つある。
 まず、死者がこの作戦を知らない可能性、つまり死者が『俺たちを見ていない』可能性はどのくらいや」
死者が強化外骨格の中からこの会場での出来事を感じている可能性は高いのだ。
エレオノールの夢に出てきた死者たちが、この殺し合いでの彼女の行動を把握していたからだ。
自分達が死んだ後のことを死者たちが知っていた事実。
これが本当なら、死者たちがこの作戦を知っている可能性はほぼ100%……!
ただ、その時エレオノールは他人の記憶を大量に取得していた上に、その精神は激しい不安定状態に陥っていた。
『彼女の夢の中で死者たちが言った事』に彼女の妄想が付け加えられている可能性も否定できない。
その可能性はどのくらいか……。俺が赤木に尋ねたのはそういうことだ。

「そうだな。先ほど神社で貴様に聞いた、エレオノールとか言う女の夢の話を考えると……。
 死者たちがこの作戦を知らない確率は……およそ5%」
俺の見立てと全く同じ数値だ。
死者たちがこの殺し合いの会場を見ていない確率を、俺も5%程度と予測していた。

5%の確率で世界が滅ぶ。

5%……高い。高すぎる。

勿論、そんな事を言うのならば、俺たちが勇次郎やアーカードに皆殺しにされる確率のほうが遥かに高かった。
だが、それらは『立ち向かうしかない危険』なのだ。
勇次郎やアーカードを避けて脱出を成功させるなど、絶対に不可能であっただろう。
これはそれとは違う。不可避の危険ではない。
これは『俺が死ねば簡単に0%に出来る危険』なのだ。
『俺の命と比較しての5%』は、余りにも高すぎる。

「次の質問や、何で俺なんや? アンタはどないするつもりや?」
本音をブチ撒けてしまうと、この質問には殆ど意味はなかった。
おれ自身も、この質問の答えはなんとなく知っていた、感づいていたから。
だからこの質疑には、答え合わせ程度の価値しかない。

「貴様を選んだ理由は4つ。
 『他者への信頼が厚い』、『自分が死ぬことの重要度を理解できる』、『無力である事』……そして……」
赤木の顔が少しだけ歪んだ。
笑ったのだろうか、よく分からないが、少しだけ歪んだのだ。
それに呼応するかのように周囲の空気も淀む。

「『人殺しである事』だ……!」
ほら、やっぱりそうか。
自分でも分かっていた。俺以上の適任者はいない。
そしてこれは、俺という『生命』の最後のチャンス……!
仲間の役に立てる最初で最後の機会なのだ。

自分の『生命』の意味を考えた矢先にやってきた死神……。
なんというタイミングなのだろうか……。
まるで俺は、このために生かされたと言わんばかりのタイミングだ。
実際にそうなのかもしれない。
この化物が集まった殺し合いの中で、俺なんかができる事なんか無いに等しい。
それならば、これが俺に与えられた唯一の役割なのだろう。最初からこの台本が用意されていたのだろう。

「……アンタは…………?」
「俺は肉体だ……!」
これも予想通り。
コイツは自分が死にたくないが為に俺を自殺させようってわけじゃあない。
コイツはコイツで役割があるのだ。
この男にしか出来ない、大首領との賭けに勝利したこの男にしか演じる事のできない役割だ。
コイツじゃないと、大首領は降りてこない可能性すらある。
コイツはここで死んじゃいけない人間(?)だ。

「……最後の質問や……他の奴らには、俺が死んだ事なんて説明すんねん?」
ジョセフや覚悟、村雨たちは俺の事を仲間だと思ってくれている……はず。
『必要なんで死んでもらいました』じゃあ納得などするはずもない。
恐らく赤木の信用は地に堕ち、赤木の発案したこの作戦自体が成り立たなくなるかもしれない。

613ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:39:03 ID:quSw.JEE0

「『全て貴様が考えた』事にする……!
 『死者たちがこの作戦を知らない可能性』を貴様が俺に指摘し、『自殺する事』も貴様が思いついた。
 俺は貴様の自殺を止めることが出来なかった。それだけだ……!」
全く。アフターケアも万全か……。
コイツは狂っている。狂っているが、冷静に先を見通している。

『首輪を外すのは、俺かジョセフのどちらか片方だけ』と提案された時点で気付くべきだった。
こいつの話には裏があるのだ、と。
おそらく、ジョセフがこの社へ同行するのを辞退するのも分かっていたのだろう。
首輪を外したのも、この社で俺と2人きりになるため。
誰も介入できない条件を造るためだ……!

「さて、どうする? 服部平次……!」
こいつ、断れないのを分かってて訊いてきやがる。
死ぬのはあくまで俺の意思。赤木が強要したわけではない。あくまで『自殺』なのだ。

「答えなんか……決まっとるやろ……。
 死ぬ……しかないやんか……」
悩む事なんか許されない。
これは俺が役に立つ最後のチャンスだ。
このままズルズル生き延びて、仲間の邪魔になるくらいなら。
『世界が滅ぶ5%』を無くす為に死んだ方が遥かにマシだ。

「そうか、それならば、『そんなに死にたいならば仕方がない』……!」
明らかに棒読みなセリフを吐き出すと、懐からナイフを取り出した。
あんなに『俺の意思での死』に拘っていたのに、最後は自分の手で殺すのか……。
まぁ、その方がありがたい。自分で自分にナイフを突き立てるのは流石に勇気がいる。
赤木の掲げたナイフが、正確にこちらに狙いを定める。
これで、終わり。
俺の人生は、俺の命はこれで終わる。

「……ハハハ……ホンマにコレで終いかい……」
乾いた笑いしか出てこなかった。
こんな終わり方なのか……。
2人を殺し、仲間に思いを託された俺の最期が……コレか。
情けない。
こんな形でしか役に立てない事が、悔しい。

(弱いって罪なんやな……)
俺がもっと強かったら、結果は変わっていたはずだ。
覚悟や村雨のような力があれば、もっと違う死に方もあったのに。
死んだみんなに恥ずかしくないような死に方もできたのに!

「安心しろ、貴様の死は必ず役立たせる。
 貴様の仲間にも、そう伝えておいてやる」
役に立つ……? そうか、俺は役に立ったのか。
こんな俺でも、脱出の役に立てたのか。
死んでいった仲間達のように……。

仲間達の……ように……?

彼らは……タバサは、ブラボーは、アミバは、劉鳳は……。
彼らの死に様は……。

工藤の死に様は!

そうか、そうだったのか……。
今になって思い出したよ。

「スマン、ジョジョはん。俺はここまでや……」
ナイフが躊躇無く振り下ろされた。
小さなナイフなのだろうが、俺の目にはギロチンよりも大きく見える。
死神の鎌。まさにそんなイメージだ。

614ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:39:27 ID:quSw.JEE0

銀を呈した刃は、ザクリと俺の肌を肉を抉り切る。
飛び散った血が数滴だけ、汚い床に赤い斑点を作りだした。


◆     ◆     ◆


「おっせぇなァー、服部のやつ……」
服部と赤木が社へと向かってから、既に1時間以上経つ。
社の中で確認したい事があると言っていたが、余りにも時間がかかりすぎではないのか?
仮に時間がかかるとしても、そんなに距離も離れてはいないのだから、ちょこっと出てきてそのことを伝えてくれればいいだけではないか。

「何かあったんじゃねーだろうな……」
服部は赤木を信用していたし、さっきまでは自分も特に赤木の事を害のある人物とは見ていなかった。
だが、今にして思うと……どこか信用ならない気配が漂っていたような……。
赤木が、服部に何かしたのではないか?

それに、例えそうじゃなくても、あの社には敵の親玉の最終兵器が眠っているという話だ。
もしかしたら、主催者の罠か何かにかかってしまったのでは……。

「オイオイ……ヤバイことになってるんじゃねぇのか?」
そう考えると、一気に不安な気持ちが押し寄せてくる。
服部の身に、何かあったのではないか……。

しかし、今服部たちがいるのは社の中。
自分は首輪の制限があって社の中に入る事はできない。
無理に入ろうとすればどうなるのか……。
おそらく、ただじゃ済まない。

「じゃあ、服部を見捨てんのかよ……!」
社からは今も気持ちの悪いオーラが漂っている。
ジョセフの五感全てが『近づいてはならない』と警告を発している。

「見捨てられるわけ……ねぇだろうが!」
社へ向けて歩き出す。一歩一歩。
体が重くなろうが、眩暈がしようが関係ない!
服部は必ず助け出す!
このままここで大人しくしているなんて……服部を見捨てるなんて考えられない。
例え服部が、人殺しでも……。
大切な親友を殺した張本人でも……。

「人を殺したアイツが許されないなら、間違いを犯した服部が許されないなら!」
社へ近づくたびに重くなる体。
おかしい……さっきよりも制限が強くなっている……。

まさか、強化外骨格が目覚めかけているのか?
大首領の復活が……近いから?
主人となる大首領の復活を、強化外骨格が感じ取っているのか?
そうだとしたら、ますます服部が危険だ!

「服部がシンジに許してもらえないなら!」
もしも過去の罪が永遠に許されないならば、その罪に縛られて生きていかなければならないならば……。

「誰1人としてッ……許されるやつなんか……いないだろうがよォ!」
かがみは仲間の死に絶望して暴走した。
彼女だって許されないって言うのか!
そんなはずはない! そんな事あっていいはずがない!
過去の罪のせいで、前を向いて必死に生きているやつらが許されないなんて……俺は信じねぇ!

例え世界中が服部を拒絶しても、俺はアイツの隣で一緒に戦ってやる!
俺はアイツを許し続ける。
許しちゃいけねー悪ってのはなぁ……間違っちまったヤツのことを言うんじゃねぇ!
俺は正義とか悪だとか、そんなことは良く分かんねーけど、コレだけは言える。

服部を許すやつがいないんなら……この世は地獄だ!
重ねた罪を消せないなら……生きていることは苦痛でしかない!

615ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:39:49 ID:quSw.JEE0

そんなのは……悲しいじゃねぇか!

「待ってろ服部……今行くから……待って……やがれ……!」
膝をつき、汗まみれになりながらも、それでもジョセフは進み続けた。
服部平次を許す為に。


【D-1 神社/2日目 午前】

【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手骨折、全身重度の打撲、精神疲労中、体力消費大、深い悲しみ、脇腹にダメージ大、核鉄の治癒力により回復中
[装備]:マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険 、ソードサムライX(核鉄状態)@武装錬金
[道具]:七原秋也のギターをばらしたて出来た弦@BATTLE ROYALE、支給品一式×2、空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険 、スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:BADANとかいうボケ共を一発ぶん殴る。
1:社へ向かい、服部を救出する。
2:どこかで仲間達と再集合したい。
3:マップの端を見に行く。
4:気が向いたらこのディスクでも確かめてみるか……けど、なんでこれが気になったんだ?
[備考]
※二部終了から連れてこられていますが、義手ではありません。
※吉良の名前に何か引っかかっているようです。
※水を使うことで、波紋探知が可能です。
※三村の留守電を聞き逃しました。
※主催者の目的は強者を決めることであり、その中にはイレギュラーもいると考えています。
※少なくともかがみとは別の時代の人間であるということを認識しました。
※波紋の力を使うことで対象のディスクを頭部を傷つけることなく強制排出することができます。
 ただし、かなりの集中力を要求します。
※マジシャンズ・レッドの火力は使用者の集中力によって比例します。
 鉄を溶かすほどの高温の炎の使用は強い集中力を要します。
 火力センサーは使用可能ですが精神力を大きく消耗します
 また、ジョセフのマジシャンズ・レッドは通常の炎の威力の調節が極端に難しい状態です。
 ただし、対象に直接マジシャンズ・レッドの手を当てて炎を出した場合に限り調節が可能です。
 修練をすれば通常の炎の精度が上がる可能性があります。
※S7駅がかなり脆くなっていることを発見しました。
※第四回放送は劉鳳からの又聞きでしか記憶にありません。
※服部との相互理解を深め、より信頼しあえる関係になりました
※服部の時のような誤解による失敗を二度とすまいと考えています
※服部から儀式のやり方を聞き、首輪のステルス解除のやり方を知りました
※社の奥に何かがある、そしてそれを守る為に近づくと体が重くなる装置がある事を知りました
※ 覚悟、村雨、かがみ、ヒナギク、独歩、エレオノールと情報交換をし、友好関係を結んでいます。
 また、アカギとパピヨンは協力者、川田は危険人物と認識しています。
※以下の事を考察しています。
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
※赤木と情報交換をしました。
※強化外骨格が大首領の復活を近いと感じ取ったせいか、なぜか社から放たれる制限が強くなっています。






◆     ◆     ◆


「……どういうつもりだ?」
赤木のナイフが切り裂いたのは、服部平次の右手の甲。
狙いを外したわけではない。
ナイフが首筋に到達する前に服部が防御行動を取った為だ。


「そうや、俺はここまでや……!」
誰かの役に立つ。
俺は、そんな事ばかり考えていた。
生き残ったことの意味は、脱出の役に立つ事で証明されると思っていた。
覚悟たちの力になる事が、自分がしなくてはならない事だと思っていたのだ。

616ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:40:13 ID:quSw.JEE0

「仲間の役に立つ?
 俺がそんな下らんことを考えるのはここまでやッ!」
覚悟は、仲間達を脱出させる為に命を賭けて戦っている。
村雨だって、仲間達の為にBADANと戦う決意をした。
そして彼らは、これからも仲間の為に戦い続ける。
確かにそれは素晴らしい事だし、そんな風に生きるべきなのだろう。

「死にたくないがために、開き直ったか……?」
「うっさいッ! このオモシロ顎オバケ!」
でもな、無理なんや。
そんな生き方、俺には無理や。
俺は仲間の為には生きれへん。

弱いからじゃない。人を殺したからじゃない。
ここで死ぬからじゃない!

「タバサはなぁ! ずっと仏頂面しとって、感情なんかあるのかないのかも分からんかった……。
 そんなアイツが、命を捨ててまで劉鳳はんを守った理由が葉隠覚悟に分かるんか?!」
アイツは嬉しかったんや。
俺はそう信じとる。
劉鳳はんが自分を助けてくれたことが嬉しかったんや。
だから、命を捨てた。
誰の為でもない。劉鳳はんのためでもないんや。
自分の為に。自分の気持ちを偽らんために。

「ブラボーはんがたった1人でアーカードに立ち向かった理由が村雨良に分かるんか?!」
あそこでブラボーはんが残ったのは、お世辞にもお利口な策とは言われへんわ。
ブラボーはん自身もそれは分かっとった。それでもあの人は残ったんや。
劉鳳の為じゃない。ましてや俺らの為じゃない。
自分の為に。
正義の意思を貫く為に。
自分の信念に嘘をつかん為にや。

「劉鳳はんがなんでラオウに勝てたのか、愚地独歩に分かるんか?!」
アルターが強いから? 違う。
ラオウが消耗していたから? 違う。
守りたい人間がいたから? 惜しいが、違う。

……馬鹿だからや。

馬鹿だから、ただひたすらに馬鹿だったから勝ったんや。
誰でもない自分の正義しか見えんかったから、勝てたんや。
自分の正義の為に勝利した。

「アミバはんが叫んでいた。いつもいつも叫んでいた……」
今俺が言っとることは覚悟はんたちを侮辱しとるって事になるんやろうな。
それでええ。俺は一向に構わん!
俺の事を最悪だと罵るなら……罵るがええわ!
気に入らんのなら殴ればええわ……。
だがなぁ俺が出会った奴らってのは『そういう奴ら』やねん。
そういう最悪で自分勝手なやつらや。

「『反逆』っちゅー言葉の意味がお前に分かるんかコラァッッ!!!」
アミバはんは言った。
弱い心に反逆するんだと。
この殺し合いをぶっ壊すのも、誰かを守ろうとしたのも……その『反逆』の副産物に過ぎん。
自分の心のままに動いとっただけや。
みんな、俺の出会ったやつらはみんな……そんなケモノやった。

617ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:40:41 ID:quSw.JEE0

少なくとも俺にはそう見えたんや。
俺にはそれが美しいと思えたんや!

俺だってそうや! 俺だってあいつらと同じケモノや!

「俺は死ねんのや! 『大首領サマ』の面に一発ぶち込むまではなッ!」
ヘナチョコパンチでもええ。カス当たりでもええ!
たった一撃でええんや。

あいつらの思いは俺しか知らん。
この思いを『大首領』へと届けるのは俺しかおらんねん。

すまんな、覚悟はん、村雨はん。
あんたらの邪魔になるかもしれん。
もしかしたら、俺のせいで世界が滅んでしまうかもしれん。

「……それが、こんな弱っちぃ俺が生き残った理由や」
あくまで『正解』は葉隠覚悟や。
覚悟たちの生き方が正しいし、俺のこの答えは確実に間違っとる。
そうや、こんなことするなんて大馬鹿モンや……俺を笑うか、工藤?

だが俺はもう、お前のような探偵やない。
人を殺した瞬間に俺は探偵じゃあなくなってもうたわ。

工藤……お前が正しかったんやな……。

「そんな事で……そんな身勝手な理由で、世界を危険に晒すのか……?」

「身勝手なのは分かっとる。地獄に堕ちるならそれでええ。
 それでもこの『気持ち』には嘘つきたくないんや。
 アミバはんに全てを託された俺は……『反逆』せなあかんのや。
 それでも俺に死んで欲しい言うなら……」
探偵で無いなら俺はなんや?
間違え続けた俺に残されてんのは『意地』。それだけ。
タバサがブラボーが劉鳳がアミバが俺に託した、少なくとも俺は託されたと思っとる、意地や。

「俺を殺してみせろや……アンタの意思でなァッ!」
「それが貴様の答えか……!」
死神はまだ動かんかった。
ナイフを手元でクルクルと弄びながら、つまらなそうにしてやがる。
その目は、酷く冷静で、それでいてナイフよりも尖っている。
赤木は強い。俺のような一般人とは格が違う。
例え、腕っ節では俺の方が強くても、何故か勝てるとは思えへん。

「いや……違うでぇ……」
だが、その弱い考えに反逆や……。
コイツに勝って……意地を貫く。

「『俺たち』の答えやッ!」
さぁ来い死神!
首輪を外してもうた俺たちには……スタンドも核鉄もない。
もちろんアルターも波紋も持ってない。
パンピー同士のしょーもないケンカや。



(どうしたものか……)
赤木しげるは考える。
どうやら服部平次を見誤っていたようだと。
赤木が葉隠覚悟から聞いた服部の人物像と目の前の実物の間には、かなりのズレが生じている。
折角いい流れで来ていたのに、コイツにかなり乱されてしまった。

しかし、こいつが死なない事には、作戦の穴が埋められない。
こいつが死ななかった場合……世界が滅ぶ確立は、5%……!
さて、このまま殺すか……それとも……。

618ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:41:00 ID:quSw.JEE0



それから数時間後、サザンクロス内部ではパピヨンが再生怪人相手に大立ち回りを演じ、後から駆けつけたエンリコ・プッチと戦闘になっていた。
この殺し合いを彩った武器の双璧である、スタンドと武装錬金が激突していたのだ。
そしてそれとほぼ同じ時間に行われるかもしれないこの戦いは、スタンドも、武装錬金もない戦い。
オーガも北斗も人形もない。
プログラム始まって以来の、一般人同士の戦い。

その気配を感じ取ったのか、それとも復活のときが近いのか……。
部屋の隅で鎮座していた強化外骨格が怪しく輝く。

ジョセフの制限が強くなったのも、この輝きのせいだろう。
だが、首輪を外してしまった赤木と服部は、制限が強まったことには気付かない。
その微小な輝きにも気付くことはなかった。





【D-1 神社 強化外骨格の眠る社/2日目 午前】
【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:肉体疲労中(ニアデスハピネス換算で一発分のみ)、三村を殺したことから大分立ち直りました。首輪解除済み。
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、携帯電話、
クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式×2(食料一食消費)、首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、
色々と記入された名簿、ノート数冊、ノートパソコン@BATTLE ROYALE ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、
綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく(未開封)、 ギーシュの造花@ゼロの使い魔、キュルケの杖、拡声器、
ソードサムライX(核鉄状態)@武装錬金、包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック) 病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)、
バヨネット×2@HELLSING、 紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)、外れた首輪(服部平次)、モーターギア(核鉄状態)@武装練金、
[思考・状況]
基本:一撃でいいから大首領をぶん殴る。
1:赤木が向かってくるなら戦う(殺すつもりは無い)。
2:ジョセフと再集合
3:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
4:全員が集合し次第情報の整理と休息を行いたい
[備考]
※劉鳳、コナン、神楽、ジョセフの事は全面的に信用しています。
※コナンと二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」
「盗聴器を利用した光成への  呼びかけの策」 等については、まだ他の人間に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。
※三村信史の死ぬ直前の記憶を見ました。
※第四回放送の内容は劉鳳からの又聞きでしか記憶にありません。
※ルイズをF-3の川岸に埋葬しました。折れた軍刀は墓標として刺してあり、キュルケの杖、拡声器は服部が所持しています。
※アミバの持っていた支給品一式×3 (食料一食消費) は、F−2民家の中にあります。
※アミバの持っていたノートパソコンには、大東亜共和国謹製のOSが組み込まれています。
※ジョセフとの相互理解を深め、より信頼しあえる関係になりました
※かがみから儀式のやり方を聞き、首輪のステルス解除のやり方を知りました
※社の奥に何かがある、そしてそれを守る為に近づくと体が重くなる装置がある事を知りました
※ 覚悟、村雨、かがみ、ヒナギク、独歩、エレオノールと情報交換をし、友好関係を結んでいます。
 また、アカギとパピヨンは協力者、川田は危険人物と認識しています。
※以下の事を考察しています。
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
※赤木と情報交換をしました。

619ダイヤモンドダスト・クルセイダース ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:41:17 ID:quSw.JEE0



【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、首輪がありません。
[装備]:基本支給品、ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス(残り9本)、マイルドセブンワン1箱
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます)、水のルビー@ゼロの使い魔
工具一式、医療具一式、沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)、成仏鉄球@覚悟のススメ 、伊藤博士からの手紙
[思考・状況]
基本:対主催・大首領の肉体となる。
1:服部を殺す?
2:大首領との再会。バトルロワイアルに引きずり込む。
3:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する。
4:強敵を打ち破る策を考えておく
5:覚悟に斗貴子を死に追いやった事を隠し、欺く。
[備考]
※マーティン・ジグマール、葉隠覚悟と情報交換しました。
※エレオノールとジグマールはもう仲間に引き込むのは無理だと思っています。
※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法は、JUDOの能力であると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も考慮しています)
 そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要であると認識しました。
※主催者のアジトは200メートル以内の雷雲によって遮られていると考察しています
※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています
※三千院ナギは疫病神だと考えています、また彼女の動向に興味があります。
※川田、ヒナギク、つかさの3人を半ツキの状態にあると考えています。
※ナギ、ケンシロウと大まかな情報交換をし、鳴海、DIO、キュルケの死を知りました。
※こなたのこれまでの経緯を、かなり詳しく聞きだしました。こなたに大きなツキがあると見ていますが、それでも彼女は死にました
※『Dr.伊藤』の正体は主催側の人間だろうと推測しています。
※葉隠覚悟、桂ヒナギクと情報交換をしました。

『Dr伊藤』とのチャットによりわかった事
1:首輪は霊的に守護されている
2:首輪の霊的守護さえ外せれば、後は鋭い金属を継ぎ目に押し込む程度で爆発無しに外せる
3:既にその霊的守護を外した者が居る。そいつが首輪を外したかは不明だが、おそらく外してはいない
4:監視カメラは存在せず。首輪についた盗聴器のみでこちらを監視。その監視体制も万全ではない
5:敵には判断能力と機転に乏しい戦闘員が多い
6:地図外に城? がある
7:城には雷雲を突破しなければならず、そのためには時速600キロ以上の速度が必要

※大首領との接触により、大首領とBADANとの間のズレを認識。
※BADANという組織はあまり合理的に動かないと認識。


『大首領を殺す作戦』
・大首領を強化外骨格の中に降ろしてから、成仏鉄球で成仏させる。
・そのためには大首領を弱らせる必要がある。
・強化外骨格内部の死者ならば、大首領を内側から攻撃できる可能性が高い。

620 ◆d4asqdtPw2:2008/08/06(水) 23:42:43 ID:quSw.JEE0
本当はwikiで修正しようと思ってたんですが、wikiがあのような状態なのでここに修正版を投下させていただきました。
本スレへの投下は不要です。

621人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:16:00 ID:SP/RWL.o0

 雷雲が空を覆い、時折雷鳴が轟いている。
 岩肌が目立つ地面の見張り塔の中、空に漂う雷雲を見つめ、男は門へと視線を戻した。
 全身白装束に身を包み、すらっとした体格の男は、深々とため息を吐いた。
「変化なし。…………当然だがな」
 透明なフードの下の視線を、物言わぬかつての同僚百つ目タイタンへと向けてジェネラルシャドウはどこか虚しげに呟いた。
(大首領……なぜ、ストロンガーのいないこの世界に俺を蘇らせたのだ……)
 かつてシャドウと仮面ライダー七号に呼ばれた男は、敬愛する大首領へと疑問を投げかけた。


 もしも、参加者が首輪を外すという不測の事態が起きれば、真っ先に訪れる門の見張りをシャドウが任された理由はいくつかある。
 一つは、他の再生怪人と違って、判断能力があるからだ。
 シャドウを始めとして、デルザー軍団の改造魔人は魂を持たない存在である。
 ゆえに再生しても、他の改造人間たちのように意思を持たない人形とならず、適切な行動が取れるシャドウが指揮を執っているのだ。
 二つ目は、パピヨンの侵入だ。
 誰も入ってこないと思われ、今まで百つ目タイタンに指揮を任されていたが、あっさり突破された。
 失った戦力の補充として、急遽シャドウがここの指揮官として派遣されたのだ。
 三つ目が、バダンが首輪と雷雲の防壁に、まだ絶対の自信があるからだ。
 見張り程度、暗闇や暗闇三兄妹でなくとも、充分務めることができるということだ。
 ようするに、シャドウは冷や飯食いなのだ。
 シャドウは、暗闇にかけられた言葉を今でも覚えている。
『誰も来ぬ門の見張り程度、破れた組織の再生怪人でもできるだろう』
 後ろに控える彼の物の子供を名乗る三人の嘲笑と共に、聞こえてきた声が耳に蘇った。
 昔のシャドウなら即座に剣を突きつけただろう。
 しかし、今の彼のその覇気はなかった。

622人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:16:29 ID:SP/RWL.o0
(なぜ……マシーン大元帥でなく、俺なのだ……。ストロンガー……)
 彼の宿敵とも言えるストロンガーは、大首領との戦いで死んだと聞かされている。
 このバトルロワイヤルことプログラムに、大首領の力を持って呼び出されたのは1号ライダーと10号ことZXだけだ。
 せめて、ストロンガーがいるのなら、首輪を解除して雷雲を突破し、自らの眼前に立つと確信して楽しみにしていたのだが。
 シャドウは己の中に燻る感情を持て余し、無為に時間を過ごしていた。
(あの1号ライダーも死んだ。ストロンガー、キサマのいない生存者がここに来ることもないだろう。
……なぜキサマは死んだ。俺は、お前の超電子の技を覚えている。お前の力を刻んでいる。
なのに……なぜいない! そして、お前のいないこの世界に、なぜ俺がいる!?)
 シャドウの独白に答えるものなど、もういなかった。
 くるりと踵を返し、少し休憩を取ろうと考えた。
 ビーっと、電子音が塔内に響く。不快な電子音はシャドウの耳に入り、雷雲を突破した連中がいると気づく。
 シャドウはその場を後にし、戦場へと向かった。


 風を切り裂き、音をたなびかせ、神速をもって攻める影が二つ。
 落ちてくる雷を、右へ左へと巧みに避けながら、前へ前へと進み続ける。
 一つは、クルーザーにまたがり、群がる怪人を轢き倒す赤い稲妻。
 仮面ライダーZXが弾丸となって道を切り開いていた。
 その隣に並ぶ漆黒の人影が、一匹の怪人を胴から真っ二つにした。
 背面に取り付けられたブースターが火を噴き、時速600Km以上の速度を生み出している。
 神風となり、ただ目指すは敵の拠点、サザンクロス。
 その後方を走るクラウン号を引きつれて、二人はただ加速を続けていた。



 時は突入する前に遡る。

623人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:16:56 ID:SP/RWL.o0

「ここが駅なり! 駅長殿鳴らす笛ぽっぽう!! 我等の元へと馳せ参じよ!」

 全員が声をそろえて呼び出した列車は、ピエロのような顔を持つ奇妙な列車だ。
 構えていたZXはやや拍子抜けをし、
「村雨殿、油断するな!!」
 覚悟の鋭い声に射抜かれる。ハッとしたZXは左手をかがみの顔に出して、列車より飛び出た銃弾を弾いた。
 その銃弾が合図となって、クラウン号から次々と影が飛び出してくる。
「これはっ!」
 エレオノールの透き通る声が驚愕で染まる。なにしろ、相手は彼女がよく知る敵なのだ。
「あはははは……アタイが全員撃ち殺してやるよ!」
 カウボーイの格好をしたブロンドの自動人形が笑いながら銃を発砲してくる。
 四本の腕が異形をの印象を強めていた。
「あらァ、今日のディナーは貴方たちなのね。なんて素敵なんでしょう」
 貴婦人の上半身に、蜘蛛の下半身を持つ自動人形が気品溢れる笑みを向けた。
 その背後よりぶわっと、あふれ出る自動人形の山が、ZXたちを襲ってくる。

「あるるかぁぁぁん!!」

 エレオノールの声が一際大きく響く。
 白い道化人形が宙を跳び、エレオノールが両手の指を巧みに動かして、刃を煌かせた。
 聖ジョージの剣が自動人形を斬り裂いて突き進む。
「ちぃ、しろがねぇぇぇぇ!!」
 道化の仮面をつけた自動人形が牙と爪をエレオノールを襲うために突進してくる。
 しかし、エレオノールは微動せず、眼前の自動人形を破壊していく。三体の自動人形がエレオノールの背後に迫った瞬間、その頭が爆ぜた。

624人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:17:19 ID:SP/RWL.o0
 十字型の手裏剣が、自動人形の頭を砕いたのだ。そのまま、自動人形の群れに突撃した赤い影が、竜巻を起こす。

「ライダァァアァアきりもみシュゥゥゥゥゥトォォォォォォォ!!」

 舞い上がった自動人形の群れに向かい、あるるかんが空を翔る。
 エレオノールは指を巧みに動かし、何千回、何万回繰り返した指繰りを行なう。
 あるるかんの胴部が割れ、歯車がむき出しになる。

「LES ARTS MARTIAUX!(戦いのアート) 虎乱!!」

 むき出しの歯車が激しく回転して、あるるかんの上半身が第二の竜巻と化す。
 無防備な姿を晒す自動人形を細切れにして、あるるかんと共にエレオノールが地面に着地する。
 エレオノールの背中に、ZXが背中合わせに立った。背後に戦いを任せられる仲間がいる。
 その事実をこの上なく喜び、エレオノールは指を操りあるるかんを駆った。


「波紋疾走ッ!!」
 腕に走る太陽のエネルギーをジョセフは自動人形へと叩き込む。
 波紋のエネルギーは自動人形の装甲を抜けて、擬似体液へと到達した。
「ぎぇっ! な、何だ……体液が沸騰……ッ!!」
 自動人形の体液が残らず逆流し、太陽のエネルギー・波紋によって蒸発する。
 いかに永遠の命を持つ自動人形たちでも、擬似体液がなければ動くことも敵わない。
 崩れ落ちる自動人形を尻目に、後方に控える服部へとジョセフは振り返る。
「駄目元でやったら効果抜群じゃないの」
「ええからつづけれ!!」

625人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:17:38 ID:SP/RWL.o0
 服部が余裕の表情のジョセフを苦々しく見て、スーパー光線銃の引き金を引く。
 面白いように自動人形が吹飛んでいくが、当事者である服部は生きた心地はしない。
 味方をいつ撃ちかねないか、不安でしょうがないからだ。ニアデス・ハピネスも同様だ。
 爆発力を正確に把握していない服部では、味方を傷つけかねない。ソードサムライXを使おうにも、覚悟や村雨のように人間離れした身体能力は持っていない。
 服部は、赤木の言うとおり自分は死ぬべき人間でないか。不穏当な思考が脳裏を掠めた。
 それでも、服部が死という結論を出さない。
 前に進むと決めたのだ。その決意にだけは嘘を吐きたくない。
 もう一度、スーパー光線銃の引き金を引いた。


 火炎放射器を備えた自動人形が火を噴き、一人の男を焼き尽くそうとする。
 しかし、構えを取っていた独歩は微動だにしない。炎が独歩の身体に到達する瞬間、独歩は二の腕を回した。
「げえっ! 炎を受け流しただと!!」
「まわし受けっていうんだ……よっ!」
 独歩が言葉を切ったと同時に、貫手を自動人形の胴の間接部に、疾風のごとくの速さで抉りこんだ。
 そのまま自動人形の体内で歯車を掴み、引き抜く。苦悶の表情で崩れていく自動人形を無視して、直進する。
 ヒナギクの背後に、自動人形が一機迫っていたのだ。
 地面を蹴ってとび蹴りを浴びせて、独歩は危なげもなく着地する。
 前羽の構えを取りながら、ヒナギクの背を庇うように立つ。
「あ……ありが……とう……」
 息も荒く礼を告げるヒナギクの声を耳にして、独歩は軽く笑った。
 必死で疲労を隠そうとしている姿が健気でしょうがない。少し前まで、普通の(と、言えば多少は語弊があるが)学生だったのだから疲労が大きいのも当然だ。
 今では世界の、SFの作り話のような、平行世界すべての平和のために戦っているのである。
 木刀正宗をヒナギクが振るい、自動人形が胴から二つに別れる。間隙を縫い、独歩が正拳を自動人形の顔に叩き込んで砕いた。

626人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:18:07 ID:SP/RWL.o0
 ドラム缶をも粉砕する正拳が、自動人形の装甲に負けるはずがない。理屈などないが、独歩は信じて疑わなかった。


「重爆!!」
 覚悟の零を纏いし蹴りが、自動人形を三体まとめて吹き飛ばした。
 地面に降り立つ覚悟の覇気に、自動人形の群れが一歩退く。されど、覚悟に悪を許す堕落はない。
「く、くそっ! たがが鎧纏った人間一人にびびってんじゃね!!」
 そう鼓舞する自動人形の言葉に反応して、群れが動く。
 四方を囲まれても、覚悟は眉すらも微動だにしなかった。
「遅いッ!」
 覚悟の拳が自動人形の上半身を砕く。後ろから襲い掛かる自動人形を、振り向きもせずに背面回し蹴りで葬った。
 覚悟の猛攻を潜り抜け、数機の自動人形が組み付く。
「非力ッ!」
 覚悟は気合一閃、組み付いた自動人形をまとめて地面に叩きつける。
 背面のバーニアに火をともし、自動人形を焼いて宙に舞う。その腕が赤く染まり、全てを切り裂く熱が宿った。
 赤熱した両腕が次々と自動人形を切り裂いていく。
 銀の体液を飛ばしながら、崩れていく自動人形を見下ろしながら、大きく息を吸い込んだ。

「腑甲斐ないぞ! キサマら!! 斬られるだけなら犬でもできる!!」

 覚悟の怒号が自動人形を貫き、行動を制限した。
 そのまま雷鳴を思わせるような速度で落下して、自動人形を一体踏み潰す。
 血よりも赤い強化外骨格「零」の二つ目が不気味に光る。
 前方の腕がドリルになっている自動人形が突いてくるが、覚悟はすでに見切っている。
 紙一重で躱し、その胸に貫手を繰り出した。

627人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:18:30 ID:SP/RWL.o0
「突いてこい!」
 そのまま腕を赤熱化して、自動人形から引き抜き、次の標的を定める。
 盾を掲げる敵を、上下真っ二つに引き裂いた。
「斬って来い!!」
 続けて、自動人形の顔を掴んで地面に押し倒す。背中のバーニアが噴射して、削り進む。
 悲鳴が聞こえるが、冷徹に覚悟は自動人形を削り続けた。
「骨のある奴出て来い!!」
 悪に容赦などしない。正義を守る覚悟を持つ。
 これが、覚悟だ。


「くくく……」
 赤木は声がつい漏れてしまう。この激戦のなかに身をゆだねても、赤木は赤木であった。
 迫り来る自動人形を横目に、ナイフを一本取り出した。
 なんとなく、銃よりもナイフのほうが、流れがいい。その程度の確信だった。
 だが、その程度の確信を物にせずして、手に入れる未来などに赤木は興味はない。
 ナイフをすっと投げて、自動人形の額に刺さる。
「げぇぇぇ!」
 未来のエレオノールの血が付属したナイフは、自動人形の毒以外になりえない。動きの止まった自動人形を前に、確信を持たないはずの赤木はニヤリ、と微笑んだ。
 454カスールを眼前に掲げ、引き金を引く。頭の失った自動人形が倒れるのを見届けて、覚悟たちの戦力を正確に頭に叩き込む。
 彼らはいわば、手札だ。
 いかに切り捨て、いかに活かすのか、その判断をしていかなければならない。
 ただ、赤木にとっては己さえも、手札の一つに過ぎないと認識している。
 流れを見るのは自分だ。自分に与えられたおもな役割だ。
 そう、

628人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:18:53 ID:SP/RWL.o0
(キサマも……この様子を見ているんだろう……? JUDO)
 すべては、同類と再会するために。


 柊かがみは、彼らの足を引っ張らないために隠れていることが精一杯だった。
 ヒナギクもかがみと似たような立場のはずなのだが、決定的な違いがあった。
 ヒナギクも戦える。ただそれだけなのに、今は溝を感じた。核鉄があったところで、隻腕のかがみにできることなどたかが知れている。
 スタンドディスクなど、使えない。首輪のステルスの解除法を見つけたのはかがみとはいえ、解除した今彼女の居場所はここにはない。
 それが、他のみんなと違う。とてつもない隔たりが、かがみに訪れた。
 だけど、彼女の周りの人間は、かがみを不必要と見ていない。
 彼らにとってかがみは、日常の象徴なのだ。
 いつか帰る。
 だが、かがみに気づける手段はなかった。



 ガシャン……と音を立てて、自動人形の破片が崩れ落ちる。
 自動人形が何十体いたのか、もはや数えようがない。
 分かるのは、彼らが長足クラウン号に設置された罠の自動人形を全滅させたことだけだ。
 赤木は煙草を吸いながら周囲を見渡す。
「え、えらい余裕やっちゃな……」
「まあな…………」
 赤木が視線を周囲にめぐらせて、各々の体調を探り始める。
 覚悟、村雨、ジョセフはさすがというべきか、息も切らしていない。
 自動人形の瓦礫を前に、すでに警戒を解いて楽な姿勢にして、次の戦いに備えている。

629人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:19:19 ID:SP/RWL.o0
 バダンに対抗する自分たちの中では、最強のメンバーといっても過言ではないだろう。
 次に、エレオノールと独歩を見る。
 先ほどの三人ほどとまでは言わないが、体力の消耗はそれほどはない。
 自動人形を壊した数も、先ほどの三人と比べて負けてはいなかった。特にエレオノールは、自動人形との戦いになれている様子である。
 戦力としても、先ほどの三人には及ばないとはいえ、充分だ。
 そして、服部とヒナギクはこの戦いにおいて、はっきりと暗雲を示していた。
 しかし、赤木は二人をいくらか評価している。
 服部は場を見極め、必要なら指示を他の面子に伝えていた。
 赤木もいくらか行なおうと考えたが、自分が指揮するより、信頼されているだろう服部のほうが場が混乱せずに済む。
 そう考えて指揮を譲った。
 ヒナギクは他のメンバーのサポートがあったとはいえ、数体自動人形を倒している。
 だが、ヒナギクの能力が問題なのではない。ヒナギクの、覚悟が赤木は気に入った。
 ヒナギクにどんな影響があったのかは知らないが、戦わねば、刺し違えねば、という覚悟が見えているのだ。
 まるで、誰かの隣りを歩みたがっているような。
 おそらく、ヒナギクは長生きはしない。だが、その覚悟は何かこちらに望ましい結果を生むだろう。
 赤木は、捨て札としてヒナギクを使うことを思考した。
 そして、かがみ。
 彼女は己の無力を悔いていた。村雨や覚悟などに気を使ってか、なんでもないように装っているが、バレバレだ。
 何人かはかがみの様子に気づいているだろう。普通なら、かがみはもっとも殺すべき存在だと判断する。
 事実、赤木は……
(死んでもらっては困るな。柊かがみ……)
 と、だけ考えた。理由は、かがみを気遣う男、村雨良。
 確かに村雨良は戦闘力がある男だ。しかし、かがみを喪う事態になればどうなるか、検討もつかない。
 恋……などと甘い感情ではないのだろうが、村雨はかがみを守ろうとしている。

630人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:19:42 ID:SP/RWL.o0
 自動人形戦でも、明らかにかがみを守るために動いていた節があった。
 つまり、彼女の死はなるべく避けねばならない。赤木は長々と、肺に煙草の煙を送り込んだ。


「さてと、一仕事も済んだし、どうする?」
 ジョセフが首をポキポキ鳴らしながら、尋ねてくる。その視線を受けた一同は、黙した。
 結論はでている。しかし、先ほどの戦闘で戦いなれないヒナギクやかがみのコンディションを考えると、誰も進言しにくい。
 服部は、ため息を吐いた。こういう役割は自分がすべきだ。
 赤木は煙草を吹かしながら、こちらを見ている。
「……突入や」
 服部の言葉に皆が頷く。できればここで、一息をついて体力の回復を待ちたいが、そうもいかない。
 時間をかければかけるほど、こちらの襲撃への対処される確率が高くなる。
 首輪に関しても、ジョセフや失言や、覚悟たちの大首領との接触でばれているであろう。
 向こうから攻められてしまえば、一貫のお終いだ。
 だからこそ、服部は決意する。ここは突撃するところだと。
「へっ、腕が鳴る……」
 独歩が最初に賛同を示し、指を鳴らす。風を切り裂く拳が宙へと走り、隻眼を雷雲の向こうへと向けていた。
 獰猛な表情が、虎を思い出させていた。
「とうとうバダンと…………」
「村雨さん……」
 村雨が感慨深げに呟いた。落ち着かないのか、拳を握ったり開いたりして、力の具合を確かめている。
 かがみは村雨を心配そうに見ていた。
 村雨は元はバダンに所属していたのだ。思うところがあるのだろうか。
 いや、そうではない。村雨の瞳には熱い炎が宿っている。
 そこに宿るのは姉を殺された復讐ではなく、正義に燃える義憤であった。

631人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:20:07 ID:SP/RWL.o0
「応!」
『長引けばこちらが不利なるのは明白。今が攻め時だ!』
 零式防衛術を収め、戦術にも長ける覚悟と、数多の英霊を抱え、戦術の何たるかを知る零が同意を示した。
 戦場の機を知ることにおいて、二人ほど特化した者もそう多くはない。
 ヒナギクも無言で頷いた。
 服部は大きく息を吸い、吐き出す。全員を見渡し、戦いに向かうことを告げようとする。
 しかし、喉が渇いてうまく言葉が出ない。
 それもそうだ。服部は今、誰か死ぬかもしれない宣言を告げねばならない。
 みんなに、死んでくれと頼むのも同然なのだ。誰かが告げねばならない。なぜ自分が告げねばならないのか、服部の胃がキリキリする。
 だが、村雨も覚悟もジョセフもエレオノールも独歩も赤木もヒナギクもかがみも命を懸けている。
 自分だけ安全な居場所にいるわけには行かない。服部は震えている拳をぎゅっと握る。
「みんな。聞いてくれへんか」
 服部の頼もしい仲間たちは、自分の決意に答えてくれた。
 今の時期を逃せば、バダンは自分たちが首輪を外していることに気づき、倒す機会を逃がしてしまうかもしれない。
 攻め込むならともかく、守りに入れば人数の少ない自分たちが不利だ。
 死人を減らすなら、特攻するしかない。それでも、死人は出るだろう。
 服部はつばを飲み込み、舌の滑りをよくする。いつの間にか震えは止まっていた。

「おどれらの命、俺に預けてくれ。これから、特攻する!!」

 服部の決意の言葉に、鴇の声が上がる。
 決戦の幕が上がった。



632人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:20:28 ID:SP/RWL.o0
 そして、現在に至る。
 覚悟とZXが共に梅雨払いをしながら、長足クラウン号の進路を確保して進む。
 敵の本拠地に潜入するまでは、二人の戦闘力頼みだ。
 服部は攻撃に揺れるクラウン号の中、唾を飲み込む。服部に煙草の煙がかかった。
 むっとしながら振り向くと、赤木が服部と視線を合わせた。
「よう落ちついとるな」
「……別に珍しいことじゃない」
 含み笑いをする赤木に服部は不思議に思う。これから命を懸けた戦場へと向かわねばならないのだ。
 しかも、一つ判断を誤れば自分の命だけでなく、周りの死を招く。
 そんな状況なのに赤木は顔色一つ変えない。まるで異次元の生物のような印象を抱き、服部は苛立った。
「……怖いのか?」
「当たり前や。自分が死ぬかもしれないのに、平然としている奴が……」
「違うな。お前は……自分の死が怖いんじゃない……」
 赤木の言葉に、服部が目を見開く。服部の心臓がバクバク鳴る。
 他人に聞こえるのではないか、と思うほどに心臓の鼓動が大きい。
「いや、お前だけではない……。ここにいる連中は全員……死線を潜り抜け……死を恐れなくなった。
それどころか、最初から死を覚悟しているものもいる。麻痺しているといっていい…………」
 赤木がどこかで見つけたのか、二つのサイコロを弄んでいる。
 服部の心臓がドクン、と一際大きく跳ね上がった。
「お前が怖いのは……死を恐れない奴らを……一人でも喪うことだ……」
 服部はカッと頭に血が昇り、赤木を睨みつける。
 赤木はの言うことは真実だ。服部は己の死は覚悟した。
 だが、他人の、仲間たちの死は……?
「当たり前やないか! 一人でも失うのを嫌と思うのが、そんなにおかしいんか……」
「そんなものは捨てろ……。でなければ……お前は失う……。本当に失いたくないものをな……」

633人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:20:51 ID:SP/RWL.o0
「そないなこと!」
「できなければ……ただ一度、凡人を捨てて異端にならなければ……ここにいる人間は死んでいく……」
 赤木の不吉な予言に、服部が顔を歪めた。
 赤木はそれ以上何も言わない。長足クラウン号の先頭車両で、二人は沈黙の中にいた。


「あいつらなにを話しているかねー……」
「まあ、頭のいい連中は連中で、詰めるものがあるさ」
 リラックスしているように見えても、独歩とジョセフは戦闘態勢を整えていた。
 長足クラウン号は暗雲の中を突き進み、再生怪人たちを跳ね飛ばしていた。
 中には飛びついて侵入する怪人がいるかもしれない。警戒を怠らず、エレオノール、ジョセフ、独歩が迎撃準備をしているのだ。
 とはいえ、今のところ暇であるのだが。
「そういえばかがみさん、腕のほうはどうですか?」
「うん、全然問題ない。凄いね、スタンドって。…………腕だけが飛んでくるなんて光景、怖かったけど」
「へへ……あいつの記憶にこのスタンドを使って、人の怪我を治療している場面があったからな。
もしかしてと思ったら、ビンゴだったぜ」
 ジョセフが背後にクレイジーダイヤモンドを発現させ、得意気に告げる。
 かがみの片腕は、すでにくっついていた。神経まで完全に治癒を終えているらしく、問題なく動かしている。
 その様子にエレオノールは安堵しかけ、かがみの額に手を当てた。
「かがみさん、もしかして辛いのでは……?」
「え……? そんなことは……」
「よく見るとかがみ、顔色が悪い……いつから?」
 ヒナギクの言葉に、かがみは答えを窮する。長らく切断された右腕を放置していたのだ。
 応急処置を済ませたとはいえ、雑菌が入るのは止められなかった。

634人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:21:13 ID:SP/RWL.o0
「うん……ちょっとここに乗り込んで……しばらくしてから……安心したのかな……?
ごめんね、また私足手まといに……」
 ヒナギクがかがみの言葉を否定しようと身体を乗り出した瞬間、エレオノールがあるるかんの聖ジョージの剣で指を傷つけた。
 何をするのか理解ができない彼女たちの前に、エレオノールは血の出ている指をかがみへと差し出す。
「かがみさん、私の指を舐めてもらえますか? しろがねの血を飲めば、病気や怪我に耐性ができます。
大丈夫、しろがねの血からしろがねになるほどの生命の水は得ることができません」
 そういう問題ではないのだが、エレオノールの気遣いを無駄にするのも悪いため、その好意を受けることにした。
 かがみはエレオノールの右手の人差し指を見つめる。白磁のような肌に、赤い筋の傷口から雫が珠を作って留まっている。
 火照った身体のまま、喉が渇いたかがみはエレオノールの白い指に、赤い舌を絡めた。
 生命の水が含まれたエレオノールの血がかがみの身体を駆け巡る。少し、熱が収まった気がした。
「ありがとう、エレオノールさん」
「どういたしまして。ですが、安静にしていてください」
 エレオノールの天使のような笑顔を見て、かがみは座席に背を預けた。



「ギィィィィィィィ!!」
「チィッ!!」
 ZXが列車に張り付いて攻撃を加えていたクワガタ奇械人に近づく。敵の鋸状の両腕の一撃を、身を低くして躱した。
 身体が泳いでいるクワガタ奇械人の懐に、黒い影がもぐりこむ。強化外骨格を纏った覚悟が、右腕の一撃を繰り出す。
「因果!」
 高速で突っ込んできたクワガタ奇械人の身体が覚悟の拳で真っ二つになった。
 爆発を背に、攻撃を受けながらも長足クラウン号が無事な事実にホッとしながら次々と迫り来る奇械人に視線を向ける。
「これ以上、列車には近づけん!!」
「ああ!」

635人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:21:36 ID:SP/RWL.o0
 覚悟の言葉に、ZXが決意を込めて頷く。列車には彼らの仲間がいるのだ。
 指一本触れさせはしない。クルーザーのアクセルを全開にして、ZXはコウモリ奇械人を狙って空を翔る。

「クルーザーアタック!!」

 白い弾丸と化したバイクで、敵を砕いた。そのまま空中でアクセルを捻り、急降下をする。
 群れている奇械人を三匹まとめて吹き飛ばす。暴風となったZXが稲妻を避けて、後輪で奇械人ワニーダの顔を踏み潰した。
『覚悟! 良! 怪人どもが列車に取り付いたぞ!!』
「ちぃっ!」
 群がる再生怪人が列車に到達した時、真っ二つに切り裂かれた。
「あるるかぁぁぁん!!」
 エレオノールが高速で走る列車のうえに跳び乗り、列車に飛びつこうとした怪人を斬り裂いた。
 糸を手繰り寄せて、着地した瞬間、エレオノールの背中に奇械人モーセンゴケが飛び掛ってきた。
「エレオノール!!」
 ZXが反転しようとするが、到底間に合わない。
 歯噛みするZXの視界に、エレオノールと奇械人モーセンゴケの間に割ってはいる影が現れた。
「ドラララ!!」
 ジョセフが奇械人モーセンゴケをクレイジーダイヤモンドで砕き、華麗に着地を……
「とっとと……ってやべっ!」
「ジョセフ!」
 列車からバランスを崩すジョセフを認め、バイクを進ませる。
 エレオノールもジョセフを助けようと、片腕を伸ばした。
「なーんちゃって」
 ZXは列車の壁に立つジョセフを見て目を見開く。くっつく波紋を操作して、足を壁に固定したのだ。

636人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:22:02 ID:SP/RWL.o0
 無事な様子にホッとするが、次第に怒りの感情も浮かんでくる。
 ZXはバイクを反転させ、再生怪人へと走った。



「ちっ……キリがねえな」
 両腕にモータギアを装備した独歩が、踏み込んできたコマンドロイドを砕いてぼやく。
 赤木より首輪のまかれた核鉄を渡され、使っているのだ。
 怪人たちは固く、独歩の鍛え抜かれた拳でも一撃で貫くことは難しい。
 そのことに少々落ち込みながらも、核鉄の力で打撃力を上げて応戦していたのだ。
「まったく、こいつら倒しても倒してもわいてきやがる……」
「文句言わないで……こっち手伝ってよ!!」
「待っていろ!」
 ヒナギクの声に答えながらも、独歩はコマンドロイドの腹にモーターギアを装着した回し蹴りを放つ。
 真っ二つになった敵を窓から放り投げ、独歩は後方を見る。
「このままじゃジリ貧だな……」
「せめて後ろから追いかけてくる奴を何とかできれば……」
 独歩の言葉に、服部が返す。かがみを守るように円陣を組んでいた各々の人物はため息をついた。
 だが、屋根にでているエレオノールとジョセフはこれ以上の敵を相手にしている。
 露払いを買って出たZXと覚悟はさらに桁の違う数の敵を相手にしていたのだ。
 弱音は誰も吐かなかった。
「……前方に魔方陣が見え始めた。稲妻の迎撃装置も……ここでは効力が薄いみたいだな……。
ゴールが見えているが……」
 赤木が報告するが、列車が揺れる。再生怪人たちの攻撃を受けているのだ。
 このままでは魔法陣に飛び込む前に潰されてしまう。不安がよぎる中、赤木は不敵に笑った。

637人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:22:22 ID:SP/RWL.o0
「車両を一つ……切り離すぞ……」
「なるほど……それで再生怪人を巻き込んで先に進むというわけやな」
「けど……それで本当に無事に突入できるの……?」
 ヒナギクの疑いの言葉に、服部は押し黙る。
 たとえ後方車両を切り離して、再生怪人をまとめて振り払ったとしても列車が魔方陣まで持つ確率は低い。
 予想以上に敵の攻撃が激しいのだ。
 地中を行くという機能があることは伊藤博士の手紙でみんなが知っている。
 同時に、手紙には地中を突き進むのは勧められていない。
 理由は、地中を走る怪人が何体も配備されているため、格好の的ということだ。
 ZXや覚悟が護衛をしている地上のほうが、まだ確率はあると判断した結果だった。
「いくぞ……独歩。あんたは俺と来てくれ……」
「おう。お前たちはここで待っていな」
 赤木は独歩を連れて、重苦しい車両を涼しげに進んだ。


「おめえさん……切り離すのは車両だけじゃねえな」
「ほう……」
「切り離すのは後方車両と……あの場にいた、戦闘力があるうちの一人。つまり俺だ」
 赤木がニヤリ、と微笑む。独歩はその表情に己の考えが正しいと知る。
 同時に、その策は独歩も想定していた。このまま列車を進ませるには誰か残り、敵を惹きつけないといけない。
「モーターギアの特性は把握している……。スカイウォーカーモード……これで敵を引っ掻き回し……列車から遠ざける……」
「だから俺を呼んだというわけか」
 独歩の言葉に赤木は返さない。
 独歩は頭髪の生えていない頭部をがしがしと掻き、まあしょうがないか、と呟いた。
 車両の連結部に辿り着いた時、赤木が右手を差し出した。

638人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:22:47 ID:SP/RWL.o0
「……何のつもりだ?」
「核鉄を……渡してもらおう……」
「敵を引っ掻き回すには、必要だとさっきいったばかりじゃねえか」
 不可解な表情で問う独歩に、赤木は変わらぬ不敵な笑顔を向けながら、静かに告げた。
「なにを言ってる……。囮役は……独歩、あんたじゃあない……。
敵を惹きつける手札は……モーターギアを使う役割は……この俺だ……ッ!」
 赤木の意外な提案に、独歩は驚愕した。車両は列車の揺れしか響かない。
「あんたは貴重な戦力……。モーターギア以外にも打撃力を上げる核鉄は……もう一つある……。
あんたとビーキーガリバーなら……充分敵に通用する……。
ヒナギクやかがみ、服部では敵を惹きつけきれない……なら、戦闘力が下の方で……この核鉄を知り尽くしている俺こそが……」
 赤木が一旦言葉を切り、口の端を持ち上げた。目に宿る光に、独歩は勇次郎や刃牙を思い出す。
 そう、世界最強。男なら一度は憧れるそれを、いくつになっても追い求める自分たちとの同類だけが宿す光。
 確かに、赤木の中に確認した。

「俺こそが……もっとも捨て札に……相応しい……!」

 己を捨て札と言い切る男赤木しげる。
 だが、その瞳に己の身を犠牲にする気は少しも持ち合わせていなかった。
 自分ならどんな境地でも、生き残れる。
 ふてぶてしく、傲慢な思想。勇次郎が持ち合わせていた、王者の思考を、赤木もまた持っていた。


「おめえさん、生き残るつもりだろう?」
「当たり前だ……まだ、俺は奴と再会していない……」
「たく、どんな手段で生き残るつもりだよ。雷様もお前を狙うんだぜ?」

639人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:23:09 ID:SP/RWL.o0
「魔方陣が近いせいか……雷の落ちる頻度も減っていっている……。
真直ぐに移動さえしなければ……スカイウォーカーモードで対応はできる……。
そして……見張りの再生怪人……。いざという時……奴らを戻す手段は必ずある……。
俺はそれを使い……単独で突入する……。だからあんたたちは先に行け……」
「確率は相当低いぜ?」
「ククク……おそらく、成功確率は1%もないだろうな……。
だが、その1%を物にできないのなら……奴に再会する意味などない……」
 できる、と確信しているその瞳には慢心の二文字はない。
 できることをできる、と告げている。本人はおそらく、そのつもりだろう。
(傍から見ればどんなに無茶なこともやり遂げる……勇次郎もそんな奴だったな……)
 だが、赤木は勇次郎ではない。本人も断定するほど、純粋な戦闘力は下の方だ。
 勇次郎のようにはいかないだろう。
「どうした……早く核鉄を……」
 渡せ、と言い切る前に、独歩は赤木の鳩尾を殴る。睨みながら崩れ落ちる赤木をその場に寝かせ、独歩は核鉄を持って連結部へと進む。
 レバーに手をかけて、前方車両にいる仲間たちを思った。
「へっ……らしくないぜ」
 だが、赤木はきっと敵との戦いに必要になる人材だ。なぜかそう信じる気持ちが独歩に湧き上がっている。
 独歩は今まで共に過ごした仲間たちを思い返しながら、彼らが生きて変えれる道を作ってやるのが自分の役目だと確信した。
 思いっきりレバーを倒し、切り離されていく車両を見届けて、己も地面へと降り立つ。
 独歩は迫り来る怪人へと向かって、前羽の構えをとった。


 切り離された車両が多くの敵を巻き込んで遠のいていく。
 たいした機転だと覚悟が感心していると、列車から降り立つ独歩の姿を目撃した。
「独歩殿!!」

640人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:23:30 ID:SP/RWL.o0
「くっ!」
「村雨殿はそのまま列車の護衛を頼む! 独歩殿は私が!」
「頼む!」
 覚悟はバーニアを全開して反転、独歩を迎えに進む。
 左右からコマンドロイドが迫り来る。覚悟は身体を倒し、脇から抉りこむように蹴りを放つ。
「重爆!!」
 丸太を振り回したような衝撃がコマンドロイドを二体まとめて胴から引き裂き、覚悟は勢いを緩めず独歩に向かう。
 右手を差し出し、独歩に届こうとした手は、
「悪いな」
 あっさりと拒否された。覚悟は再度独歩に近づこうとして、独歩の視線に気づいた。
「独歩殿……」
「俺ぃらは、ここで奴らを食い止める。後のことは頼んだぜ……」
『覚悟……!』
 零の言いたいことは理解している。独歩の意を汲んでやれ。
 覚悟とて戦士だ。決死の思いで仲間のために危地に挑む戦士を救出など、侮辱に等しいことは理解している。
 コマンドロイドの右腕を独歩が捌き、モーターギアを拳につけて顔を砕いた。
 片目を器用に上下左右に動かして敵の動きを把握している。
「独歩殿……生還の当ては?」
「あいつらから、突入のための道具を奪えばいいだろう?」
「…………了解した。独歩殿、敵本拠地で会おう!」
「おうよ!!」
 回し蹴りによって真っ二つになった怪人が爆発を起こし、爆炎をまといながら独歩が構えを解かず敵を見据えている。
 覚悟は一度だけ、敬礼をして列車へと向かった。
 拳は強く握り締めたため、血が流れている。
『覚悟……忘れるな! 独歩殿は戦士として、戦ったているのだ! それを無駄にするな!!』

641人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:23:56 ID:SP/RWL.o0
「応!!」


 覚悟が列車に並んだとき、ZXは不思議に思った。独歩がいないのである。
「覚悟、独歩は……?」
「……独歩殿は、敵を惹きつけてから突入するということだ」
「なんだと……」
 ZXは信じられないものを見るように、覚悟へと視線を向けた。
 独歩を回収するために、反転しようとするZXへ、零の怒声がかかる。
『よせ! 戦士の矜持を踏み躙る気か!』
「戦士の矜持だと……独歩を見捨てたも同然じゃないか!!」
『良よ……無駄だ。独歩殿は自ら進んで囮を買って出た。その決意は超鋼よりも固い!』
「だからといって……!」
『それに良よ。危険を省みず、戦場へとたった戦士を侮辱する権利など……誰にもない!』
「だからといって……」
「独歩殿は……生き残るつもりだ」
 覚悟が搾り出すようにZXに告げた。覚悟自身も己の言葉を信じていないのだろう。
 身体が震えていた。己への怒りか。
 ZXは黙したまま、引き返すのをやめる。覚悟も、零も耐えているのだ。
 自分だけが子供のように駄々をこねるわけにはいかない。
 悔しさを噛み締める二人の眼前で、魔方陣が展開を始めた。


「いったか」
 独歩は魔法陣に飛び込んでいく長足クラウン号とZXと覚悟を見届けて、追いかけようとするコマンドロイドの首を貫手で貫く。

642人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:24:14 ID:SP/RWL.o0
 さらに一つのモーターギアで地面を走り、もう一つのモーターギアを拳につけて、敵を殴り砕いた。
 敵の残骸が身体にかかることも構わず、次の標的へと独歩は突進する。
「キキィー!!」
 コウモリ奇械人が不快な鳴き声と共に空より強襲してくる。
 独歩は冷静に両腕の突きを捌き、喉元に正拳を叩きつけた。
 だが、砕くことは敵わない。なぜなら独歩の拳はモーターギアを装着していないからだ。
「たくっ、自信がなくなっちまうぜ。何十年も繰り返しついた突きなんだがな」
「キキキキキィー」
「笑っているのか? だったら俺からの忠告だ」
 独歩が次の言葉を告げる前に、コウモリ奇械人の頭が宙に舞う。独歩の右腕には空を旋回してきたモーターギアが留まっていた。
「後方不注意……って、遅かったか」
 そのまま拳にモーターギアを装着したまま、幾百もの怪人を前にして空手の構えを取る。
 かつて武神と呼ばれた男は誰一人通す気などないと、無言で示した。
 次の怪人の襲撃を独歩は待ったが、敵は遠巻きにこちらを見るだけだ。
 不審に思っていると、怪人の群れを掻き分ける一人の白い男がいた。
「誰か残ったと聞けば、ただの人間か……」
「ほう、こりゃ驚いた。怪人の連中は全員、ギーだのガーだのしかいえないホラー映画の怪物じみた連中しかいないと思っていたぜ」
「我々デルザー軍団の改造魔人には魂はない。ゆえに、蘇ったとしても記憶や知識を失うことはない。
もっとも……なぜか今回蘇ったのは俺だけだがな……」
「あんまり嬉しそうじゃねえな……」
 独歩の問いにシャドウは答えず、鞘に納まるシャドウ剣の柄に手をかけている。
 その動きに隙がない。不意打ちを仕掛けようかと思ったが、シャドウはそれも想定しているだろう。返り討ちは必須だ。
 大物に出くわしたことに内心冷や汗をかきながらも、独歩は構えを解かない。
 うごめく後方の再生怪人を視界に納めると、独歩は奥歯を噛み締めた。
 とても雑魚を潰しながら相手にできるような敵ではない。すると、シャドウは独歩を向いたまま口を開いた。

643人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:24:32 ID:SP/RWL.o0
「キサマらは手を出すな。奴は俺が殺す」
 敵の意外な言葉に独歩は目を丸くする。好都合だが、敵が何か考えているのではないか、警戒をする。
 否定の言葉はあっさりとシャドウの口から出た。
「案ずるな。キサマごときに策をとったなど、我が改造魔人の名に傷がつく」
「そうかい」
 舐められたことにむかっ腹を立てながらも、シャドウの隙を独歩は待ち続ける。
 剣を使った武術でも収めているのだろうか。喋っている最中ですら、ピクリとも動かない。
 知能がある分、改造されている身に過信して付け入る隙がないかとも思ったが、そんなに甘くはないようだ。
 止まっているのに、落雷は来ない。目の前の男が止めたのだろうか。
 風が吹いて、コマンドロイドの残骸が転がる。その残骸が再生怪人の一匹に踏み潰された音が響いた。
 瞬間、独歩とシャドウがほぼ同時に地面を蹴る。
 シャドウが剣を逆袈裟に振り上げた。凄まじい速度で、独歩の右目でも追えない。
 ゆえに、剣を握る手を手刀で捌けたのは偶然というしかなかった。
 懐に入った独歩は、五十年以上繰り返した正拳突きの構えを取り、右腕を突き出した。
 幾人も沈めた拳が、改造魔人ジェネラルシャドウへと迫る。
 その拳は、シャドウの身体を、
「トランプフェード」
 貫かず、トランプの束を風圧で吹き飛ばしただけだった。
 すぐに敵を探そうと体勢を整える独歩の腹から、剣が生えていた。
「終わりだ」
 シャドウは独歩と背中合わせに呟いている。
 逆手に構えた剣が独歩の背から腹まで貫いていた。シャドウは剣を引き抜いて、血を振り払う。
 腹に感じる痛みと熱さに耐え切れず、独歩は膝をついた。


(他愛もない……)

644人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:24:55 ID:SP/RWL.o0
 シャドウはどこか虚しい気持ちを抱えながら、崩れ落ちた独歩には視線もくれず進んだ。
 列車にいる仮面ライダーを含む生存者を始末せねばならない。
 それが自分に与えられた仕事だ。本来のシャドウならその仕事をそれほど熱心に遂行しようとは思わなかっただろう。
 誇り高きトランプの魔人は使い走りになることを良しとはしない。
 暗闇にいいように扱われている現状は、本来の彼なら不満を持って当然の出来事なのだ。
 だが、ストロンガーがいないという事実は、シャドウをナーバスにしていた。
「待ちやがれ……」
 聞こえた声に、シャドウは驚く。急所は確実に貫いたはずなのだが。
 首を回して視線だけ向けると、重症の独歩が立ち上がっている。
「ち……今隙ができたのに……不意打ちする元気すらねえ……」
 モーターギアとかいう武器を核鉄に戻し、傷跡に当てている独歩を認めたシャドウは再び構えを取る。
 人間にしてはしぶとい相手だと思いながらも、笑っている独歩に不思議に思う。
「なにがおかしい?」
「ああ……なんでかな。俺は死にかけで、お前さんは万全だが……」
 独歩の両腕が段々と上がる。そのまま核鉄を、独歩は捨てた。
「……どういうつもりだ?」
「へ……あんなものに頼っているから、お前さんに半歩踏み込みが足りなかったぜ。
こっからは……俺が五十年鍛え続けた拳がお前を殺す……」
 シャドウが独歩の殺す、という言葉に反応する。
 独歩の隻眼には諦めという文字は浮かんでいない。
「その拳が、俺に……いや、それどころか改造人間にすら通用すると思っているのか?」
「思っているぜ。人間が幾千年もかけて闘争のために練り上げた技法なんだからよ」
「血反吐を吐き、致命傷を負い、そこまで吼えるか……」
「てめえに一つ教えてやるよ……」
「む?」
 独歩が腰をどっしり構えて、息を整えた。

645人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:25:25 ID:SP/RWL.o0
 その構え、重傷人とは思えないほど隙が見当たらない。

「人の瞳が背中についてねぇのはな……後ろを振り返らず、前に進むためだぁ……いくぜぇ」

 シャドウは口角を僅かに上げ、首だけではなく身体を向きなおす。
 剣のかっ先を独歩へと向けて、風に白いマントをはためかせた。
「キサマの名……聞かせてもらおう」
「今更か? まあ、いいがな。愚地独歩……ただの空手家よ」
「愚地独歩……覚えておこう」
 シャドウが呟いたと同時に互いの殺気が膨れ上がる。
 またも隙の探りあい。シャドウは独歩の認識を改めている。
 一度見せた技、トランプフェードがもう一度使える相手だと思ってはいない。
 五枚の巨大トランプとなって囲んだり、シャドウ分身で二つ身となって独歩に迫るの手もある。
 そのどちらも、シャドウは良しとしなかった。久しぶりに宿る胸の何かに従ってただ純粋に剣技をもって葬りたい。
 シャドウにしては珍しい欲求に従い、独歩と対峙する。
 今度は独歩の荒い息遣いが聞こえる。再び風が吹くと同時に、シャドウの身体に覇気が漲る。
 わざわざ、迎撃装置をオフにした甲斐があるものだ。
(ああ。ストロンガー……城茂。キサマは常に、俺にこんな感情を抱かせてくれたな。
キサマは俺に、多くの力を刻んでくれたな。あの時も!)
 かつて、ストロンガーと黄金の剣と赤い悪魔の剣を交えたころの気持ちを思い出し、シャドウが僅かに高揚する。
 久しぶりに心地よくなり、知らずシャドウは笑っていた。

「うりゃアアァァァァッ!!」

 独歩の怒声がシャドウの耳朶を打つ。神速の踏み込みで間合いに入った独歩が拳を振るうと同時に、シャドウも剣を水平に薙ぎ払う。

646人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:25:52 ID:SP/RWL.o0
 互いに身体をすれ違いさせ、剣を、拳を振るいきったままの姿勢で固定した。


 静寂。
 二人の間に風が流れ、音を消す。
 シャドウの口元から、血が一筋つつっ……と流れ落ちた。
「俺が魔人なら、キサマはさしずめ……」
 シャドウが告げると同時に、独歩の身体が崩れ落ちる。左脇腹から心臓までを一気に斬り裂いた。
 生存は不可能だ。
 その代わり、命を懸けて独歩は最後の突きをシャドウの右胸へと叩き込んでいた。
 避けきれず、充分な威力を持ってシャドウへと傷を負わせた。シャドウは自然と、剣を眼前へと掲げ、死体となった独歩に敬意を示す。
「武神といったところか……。感謝する、キサマのおかげで思い出した」
 戦士とは、戦いにおいて死ぬべきだと。
 シャドウの瞳に闘志が戻る。
 かつてストロンガーの命を狙い続けた、雇われ幹部としての闘志が。
 再生怪人の群れが、独歩の死体に殺到しかける。

「触るなッ!!」

 再生怪人の頭部に、トランプが突き刺さって爆発した。
 爆炎が風に散る中、シャドウは悠然と仁王立ちで一群を睨みつける。
「魂を持たぬお前らに誰一人として、この男を触ることは許さん!」
 シャドウはマントをはためかせ、独歩を抱き列車が消えたほうへ視線を向ける。
 再生怪人たちに待機するよう命じ、トランプとなって姿を消した。
 独歩の肉体の確保の命令が届いたのは、その直後だった。

647人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:26:36 ID:SP/RWL.o0


(ああ……俺はここいらで終わりか……)
 薄れいく意識の中、独歩は自分が死に近づく感覚を噛み締めた。
 戦いの中で死ねるのなら、それなりに幸せじゃないか。
 唯一つ、地上最強となれなかったことが心残りだった。
(最後の最後まで……頑張ったな……俺の拳……)
 シャドウの頑強な身体を殴り、砕かれた拳を見つめて独歩は労う。
 五十年、ただ突き、貫き、無茶をし続けた己の半身だ。
 ふと、視界の向こうに手招きする鬼がいたような気がする。
(ああ……たく。そんなにそこは暇なのかよ……。お前が望む最強に近い生物はいるだろう……?)
 ニィッとその男が生前と変わらぬ笑みを浮かべた。
 独歩ははげ頭の後頭部をガシガシ掻き、呆れた表情をする。
 ただ、口は笑みを形作っていた。
(しょうがねえ。俺もやることはやったし、そこで付き合ってやるよ。すぐにトンでもねえ奴が来ることも、教えてやらねばな)
 独歩は光に向かって歩いた。
 そこには、彼の知る鬼が永遠の闘争を持って存在していた。


【愚地独歩@グラップラー刃牙 死亡】
【残り9人】




648人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:27:06 ID:SP/RWL.o0
「おい! てめえ……どういうことか説明しやがれ!!」
「そうよ……なんで独歩さんが囮になっているのよ!?」
 ヒナギクとジョセフの声で、意識が覚醒した赤木が目を瞬かせる。
 腹に鈍い痛みが残っているが、直前に独歩に気絶されたことを思い出した。
 ジョセフの剣幕を見て、赤木は不機嫌な表情となる。
「やめい……ジョジョ、桂」
「だがよ! 服部!!」
「赤木……囮になるッつーたのは、お前のほうやな」
 服部の確認するような言葉に、赤木は答えない。その態度にヒナギクがさらに怒りを募らせている。
 対してジョセフは、服部に答えを求めるように続きを促していた。
「独歩はんを囮にするつもりなら、ここで赤木が寝とる理由がつかん。独歩はんの性格と現状なら、文句を言わずに向かうやろうからな」
「待てよ! こいつが煽ったってこともあるじゃないか!?」
「無意味やな。煽ったところで独歩はんは都合よく動かせるような人やない。それは短い付き合いやけど、よく分かったはずや」
「でもよ……」
 ジョセフはどこか納得しきれないように呻く。ヒナギクは悔しそうに俯いていた。
 それもそうだろう。仲間が一人死んだのだ。服部の胸も抉れるような痛みが襲う。
「いつ魔方陣を抜けるか分からん。とっとと持ち場に戻るで。突入前の打ち合わせは覚えているやろう?」
「分かったよ。だが、俺は納得はしねえ。いいな、服部」
「ええで」
 そういって先頭車両に戻るヒナギクとジョセフを見送り、服部は赤木に右手を差し出した。
 赤木が掴み、立ち上がったのを確認して服部は問う。
「……実際のところはどうなん?」
「俺がけしかけたかどうか……か?」
「ジョジョや桂にはああいったが……お前さんが独歩はんが自ら囮を買って出るように仕向けたんじゃないか、少し疑うている」
「ククク……はっきり言う」

649人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:27:27 ID:SP/RWL.o0
 服部の表情が僅かに歪む。少なからず、二人を騙したことをすまなく思っているのだ。
 とはいえ、敵本拠地に乗り込むというのに、わだかまりができたままではまずい。
 非情ともいえる判断をとらざるを得なかった。もしかしたら、ジョセフあたりは理解して、あえて乗ってくれたのかもしれない。
「……正直に言えば、独歩が囮になる手は現状……二番目に有効な手だった……」
 歯に衣を着せない言い方に、服部はカチンとくる。
 正直とは違う。隠すことに意味を感じないと言わんばかりの、非人間的な態度だ。
「もっとも……独歩の生還が望めないという点では愚策……。後の戦闘のことを考えると、独歩の喪失は痛い……」
「お前さんが囮になることのほうが、何倍もよかったちゅうわけか」
「……ククク。何より、独歩はお前たちの信頼が厚い……まとめ役としては充分……」
「……だとしたら、お前が独歩はんの代わりにまとめ役をやることや。今回は独歩はんの性格を読みきれなかった、お前のミスやで」
「確かにな…………」
 あっさりと認めた赤木に驚きながらも、服部も先頭車両へと向かう。
「とはいえ……お前が死ぬ必要もなくなったな……」
「……嫌な言い方するな。独歩はんなら、確かに内と外から大首領を倒す計画を知ってる。信頼も厚い……。けどな……くそっ!」
 僅かにホッとしている自分を許せず、服部は己の手の平に拳を打ち込む。それも、落ち着くためだ。
 もうじき、戦場へと突入しなければならない。
 最後の決戦が、今始まる。


『良よ……』
「零……俺は納得はしない。あまりにも理不尽だ……」
「残念ながら、それが戦場というもの。我ら葉隠一族は理不尽に耐えることを良しとしない。
理不尽に勝利することを目指す……村雨殿、我らは今、理不尽を強いる敵へと向かっている」
「ああ……覚悟、零。俺はもう、俺や姉さん……死んでいったみんなのような、悲しい気持ちを抱かせる理不尽はごめんだ……」
『その怒りを、悲しみを決意に変えるのだ! 良よ!』

650人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:27:50 ID:SP/RWL.o0
「ああ……俺は……」
 ZXがバイクのアクセルを全開にして異空間を駆け抜ける。
 後ろは振り返らなかった。振り返ることじたい、今は残った独歩への侮辱のように思えたからだ。
 悔しさと無念を抱えながらも、ZXの中に燃える覚悟が生まれる。
 誰も悲しませない。全てを抱えて戦い続ける。
「俺は……仮面ライダーだ!」
 魔方陣を駆け終えて、光がZXの視界に満ちる。
 クルーザーの白い車体が、ZXの思いに応えるかのようにエンジン音を唸らせた。



 黒い巨体を地面に下ろし、全てを飲み込むように不気味に佇む要塞が一つ。
 サザンクロスと呼ばれたバダンの要塞は、目の前に現れた列車の突撃を避けきれず、突入を許してしまう。
「だからドリルは外せといっただろ……なんて誰か言わんかねー」
「アホかい」
 長足クラウン号の先端についているドリルで、サザンクロスの外壁を砕いて突入したのだ。
 服部はこのまま、長足クラウン号を走らせ続ける。
「このまんまぶっちぎるでぇー!!」
 襲い掛かる再生怪人ごと長足クラウン号が突き進み続ける。
 何もかも蹂躙するその歩みを止めるものはいない。
 ―― …………トランプフェード………… ――
 その声が、小さくだが服部に聞こえた。と、同時に長足クラウン号が傾き、地面と車体を削る不快な音が響く。
 必死でブレーキをかけるが、効果が薄い。
「みんな、席に掴まれぇぇぇー!!!」
 服部の声が車内に響く。壁にぶつかって大きく長足クラウン号が揺れ続いた。

651人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:28:15 ID:SP/RWL.o0
 何が起きたのか、中にいるメンバーには理解ができなかった。


「あれは……ッ!」
『列車の車輪を斬っただと……!?』
 絶技といえる所業に、覚悟と零に戦慄が走った。
 突如現れた、バイクにまたがる白い怪人に驚きを隠せない。
「くっ! 列車に、近づかせるか! マイクロチェーン!!」
 ZXはクルーザーからシャドウへと飛び掛り、右腕から鎖を射出。
 シャドウはZXの姿を認めたとき、僅かに微笑んでチェーンを切り払った。
 そのまま体勢を崩すZXへと迫ろうとした時、横から覚悟が蹴りを捻じ込む。
「重爆ッ!」
「ちッ!」
 シャドウは飛び退き、列車の屋根へと立つ。いつの間にか、エレオノールもあるるかんを構えて屋根へ立っていた。
 ジョセフも、波紋を漲らせてシャドウの右斜め前方で待機している。
「……ここでは邪魔が多いか」
「逃がしはしねえぜ、化け物野郎!」
 ジョセフが拳を叩き込んだとき、トランプの群れが虚しく散る。
 あっけにとられた一同に、隙ができた。突如列車の中から、かがみの悲鳴があがる。
「かがみから手を離しなさいよ!」
 列車から出てきたヒナギクが叫ぶが、周囲にシャドウの姿はない。
「あいつはどこよ! いきなり中に入ってきたと思ったら、かがみ連れて行っちゃうし、トランプしかないし!」
「落ち着け、桂。かがみは……」
「俺ならここだ。仮面ライダー」
 声に振り返ると、星型のヘッドライトをつけたバイクにまたがるシャドウの姿が目に入った。

652人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:28:33 ID:SP/RWL.o0
 警戒心を剥き出しにする彼らを前に、気絶したかがみを脇に抱えたまま、ZXに視線を向けていた。
「かがみを離せ!」
「構わんぞ」
 あっさりと返った声に、一同は戸惑う。
 明らかな罠じゃないか? 猜疑心に苛まれる一同の様子に、シャドウはまったく気にもしなかった。
「ただし……」
 シャドウがカードを投げ、列車の壁に突き刺さる。
 ZXが視線をシャドウに向けたまま引き抜くと、カードに要塞内地図が描かれたいた。
 一室に指定がある。どういうことかと、ZXはシャドウに視線を向けた。
「ここでは邪魔が多いからな。そこに……一人で来い」
「決闘というわけか……?」
「さあな」
 ZXに曖昧な態度を返して、バイクのエンジンを唸らせる。
 シャドウを逃がすかと、ジョセフが走った。
「そういうわけにはいかないだろうがッ! 普……!?」
 しかし、ジョセフは途中で急ブレーキをかけて止まる。
 シャドウとジョセフの間に、十字手裏剣が飛び込んできたのだ。
 コマンドロイドの群れが現れ、ジョセフが舌打ちをする。
「言っただろう。ここは邪魔者が多いとな。……待っているぞ、仮面ライダー。トランプフェード!」
 シャドウが言い切り、トランプが舞い散って姿が消える。
 襲い掛かってきたコマンドロイドと再生怪人と組み合いながら、ZXは必死で手を伸ばすが届かない。

「かがみぃぃぃぃぃ――――!!!」

 残ったのは、無数に散るトランプのカードだけだった。

653人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:28:50 ID:SP/RWL.o0


「因果ッ!!」
 シオマネキングを砕き、血に塗れながら覚悟は降り立つ。ZXと背中合わせになり、前方の敵を睨みつけた。
「村雨殿……行くがいい。ここは任せてもらおう」
「覚悟……」
「けどよ、罠って可能性もあるんじゃないか?」
 ジョセフが波紋でコマンドロイドの身体機能へと異常を起こさせてから、疑問を投げかける。
 その疑問ももっともだが、覚悟は静かに首を横に振った。
「あの瞳は一流の武人の魂が宿っていた。技にも曇りがない。おそらく、本気で村雨殿との決闘を望んでいる。
もしも私が決闘を申し込まれたなら、唇に朱をひいて向かわねばならぬほどの武士【もののふ】と見受けた」
「ですが、かがみさんを人質にとるような人なので、油断はできないのでは?」
「そうよ! かがみを連れ去るような奴のところに、一人で行く必要はないわよ! 村雨さん、一緒に行ってかがみを取り返しましょう!」
 エレオノールとヒナギクが反対の意を示しながら、蜂女を八つ裂きにする。
 その意見ももっともだと思う。名前の知らない白装束の怪人の言葉を信用するのは危険が大きかった。
「いや、俺は一人で向かおうと思う。あいつは、俺をZXではなく、仮面ライダーと呼んだ」
 その理由を、どうしても知りたい。だからこそ、罠かもしれないが、ZXは一人で向かう気になった。
 エレオノールは心配そうにこちらを見ている。ヒナギクはムッとした表情で、不機嫌なのが一目瞭然だ。
「行くなら、こっち来る前のいうたこと、覚えているよな?」
「……一旦離散し……再び合流する……」
 ZXは知らないが、服部が作戦前に告げた、仲間の死に覚悟や村雨が影響されないための策である。
 ZXたちには、基地を探索し、幹部を仕留めるためと教えていた。
 頷いたZXを確認して、服部が頷き息を吸った。
「じゃあいくでぇ! お前ら!!」
 応!と各々の応える声が響く。

654人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:29:18 ID:SP/RWL.o0
 それぞれ、未来のためへと散っていった。



「きゃっ!?」
 かがみは地面に乱暴に降ろされて、目を覚ました。目の前にいるのはここで出会った頼れる仲間じゃない。
 畏怖すべき、異形の怪人だ。かがみは恐怖に錯乱した。以前のかがみなら、だが。
「……き、きっと……村雨さんがあんたを倒しにくるんだから……!」
 恐怖に脅えながらも、かがみはシャドウを睨みつけた。
 そのかがみを認め、シャドウは感心したような眼差しを向ける。
「な……何よ……」
「この俺と一対一でいる割りに、それほど恐れていないのを感心しただけだ」
「恐れて欲しかったの……?」
「いや、どうでもいい」
 シャドウは投げやりに答える。扉が急に開き、コマンドロイドが入ってきた。シャドウは鬱陶し気に見る。
 コマンドロイドは無機質な動きのまま、シャドウへと声をかけてきた。
「ジェネラルシャドウ様……愚地独歩を殺したアナタ様に質問がございます」
「独歩さんが……ッ!」
 かがみの声を無視して、シャドウは顎で続きを促した。
「独歩を優勝者と認め、回収命令が出ています。生死は問わないので、その身の在り処を教えて欲しいと暗闇様からの伝言です」
「フン……」
 シャドウは鼻を鳴らしながら、コマンドロイドに出口を示す。
 戸惑うコマンドロイドに不機嫌なまま会話を続けた。
「あの男は見事な死に様だった。欲しければ俺を倒して無理やり吐かせろ。そう伝えとけ」
「まさか……アナタも反逆をっ……!」

655人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:29:46 ID:SP/RWL.o0
 するつもりか、と続ける前にコマンドロイドの頭が吹飛ぶ。
 その額に、シャドウがトランプを撃ち込んでいたのだ。
 シャドウは死骸には目もくれなかった。


「アナタが……独歩さんを殺したの!?」
「……奴には感謝をしている」
「え……?」
 シャドウの意外な言葉に、かがみは目を見開いた。
 シャドウの眼差しに懐かしむ色が宿る。手前にあるバイクの星型のヘッドライトを撫でた。
「このバイクは我が宿敵、仮面ライダーストロンガーのものだ……」
「仮面ライダー……って村雨さんの……」
「先輩に当たる。奴は強い。俺は奴と戦うことを至上とした。そう、最後のあの決闘……あれは心躍った……」
 饒舌な怪人を前に、かがみは反応に戸惑う。しかし、シャドウの声のトーンが急に下がった。
「だが、死んで大首領の力で蘇ったこの世界には、ストロンガーはいない……。
奴が残したカブトローを乗り回しているが……俺には虚しさが積もるだけだった」
 かがみはここまで人間臭い怪人もいることに不思議に思う。
 だがすぐに、村雨のことを考え、そんな相手もいるだろうと考え直した。
「独歩さんは……」
「キサマらを逃がすために、最後まで戦い続けた。己が負けることなど、微塵も信じずに。
この核鉄とやらを捨てて、自分の鍛えた拳だけでな。奴の形見だ、持っておけ」
 シャドウがそういうと、首輪のまかれた核鉄を投げた。
 かがみは抵抗できる手段を渡したことに驚くが、逆を返せば核鉄程度の力があろうと、シャドウは問題視していない、ということだ。
 そしてその認識が正しいことを知っているため、村雨たちの足を引っ張る形となり、己自身を責める。
「俺はこのまま腐るつもりは、もうない……。ストロンガーがいないというのなら、その後輩と戦う。だが……」

656人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:30:04 ID:SP/RWL.o0
 シャドウが急に構えて、独歩の死体の在り処をかがみに耳打ちして離れる。
 独歩の死体の在り処を教えてもらうのはありがたいが、突然のことでかがみは戸惑う。
 シャドウはかがみを無視して、覇気を入り口に向かって放った。

「キサマがストロンガーに誇れる仮面ライダーであるかどうかは、この剣に聞く!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 壁をバイクで破壊し、座席から跳んで入ってきたZXが十字手裏剣を投げつけた。
 シャドウはそれを切り払って、ZXへと踏み込む。
 二人の身体が交差し、互いに距離をとった。

「俺の名はジェネラルシャドウ……行くぞ! 仮面ライダー!!」
「俺は……仮面ライダー! ZX!!」

 仮面ライダーと改造魔人、二人の意地が激突する。

657人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:30:23 ID:SP/RWL.o0
【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】

【ジェネラルシャドウ@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]右胸に打撃痕。疲労(小)。
[装備]シャドウ剣。トランプ内蔵ベルト。
[道具]なし。
[思考]
基本:心残りを解消する。
1:仮面ライダーと決着を着ける。
2:独歩の死体の在り処を、暗闇たちに教えるつもりはない。
[備考]
※暗闇の指令【独歩の死体を使って大首領の復活】を知りません。

658人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:30:47 ID:SP/RWL.o0
【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に負傷小。核鉄の治癒力と自己再生にほぼ回復。疲労(小)。首輪が解除されました。ZXに変身中。
[装備]十字手裏剣(2/2)、衝撃集中爆弾 (2/2) 、マイクロチェーン(2/2)、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、工具
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:ジェネラルシャドウを倒す。
2:かがみを助ける。
3:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る。
4:仲間と合流する。
5:穿孔キックを完成させる。
6:パピヨンを止める。
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です。
※参戦時期は原作4巻からです。
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※穿孔キックを習得しましたが、まだ未完成です。見た目は原作で村雨が放ったものと大体同じものです。
※首輪は解除され、身体能力、再生能力への制限が解けました。また首輪は核鉄(ピーキーガリバー)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます。

659人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:31:17 ID:SP/RWL.o0
 かがみはなぜシャドウが独歩の死体を教えたのか、おぼろげに理解した。
 シャドウはZXとの戦いを、無傷で済むと考えていないのだ。
 むしろ、命を落とす可能性も考えての行為だろう。覚悟も似たようなことを行なうと聞いた。
 そして、彼と話していると独歩に敬意を払っていることに気づいた。
 純粋にZXとの戦いに赴くシャドウに複雑な気持ちを抱えた。
 シャドウは強いのだろう。
 そうでなければ、仮面ライダーに戦いを挑もうと考えはしない。
(私には祈ることしかできない……。でも、村雨さん、お願いだから勝って!)
 かがみは静かに祈る。それだけしかできないから。
 だがそれこそが、戦うものの力となる。


【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】

【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:健康(クレイジーダイヤモンドにより、左腕復活)、首輪が解除されました。
[装備]:巫女服
[道具]:ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン。モーターギア(核鉄状態)@武装練金
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:村雨の勝利を祈る。
2:別れた仲間と合流。
3:独歩の死体に、手を合わせたい。
[備考]
※独歩の死体の在り処を知っています。

660人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:31:45 ID:SP/RWL.o0




「へっ……侵入者が入ったとさ」
 黒いライダースーツを身に纏う、粗野な男が置くに潜む二人に問う。
 その言葉を受けて、妖艶な印象の美女が研いでいた爪に息を吹きかけて、振り向く。
「聞いているわよ。プログラムに参加の連中が、列車を使って進入したってことでしょ。
それにしてもよかったじゃない」
「へえ……」
 裏切りとも取れる発言を女性はするが、切れ目の宝石の如く輝く瞳には、決して生易しい色を宿していない。
 妖艶な笑みを浮かべる美貌が、雌の蟷螂を思わせるような鋭い視線を向けた。
「これで私たちも退屈しなくて済む……あーっはっはっは!」
「いいねえ……俺たちも楽しもうじゃないか……!」
「………………」
 老人の姿をした男が聞こえないほどの声で『溶かす』と呟いて、暗い廊下へと消える。
「ところで、独歩とか言うオッサンはどうするの?」
「適当に潰していきながら、居場所を吐かせればいいさ……ああ、簡単に吐いてくれちゃ愉しくねえなぁ……」
「ほんっと……性格悪いわねぇ」
「お互い様だろう……?」
 笑い声を男があげて、窓より光が入り三人の影が伸びる。
 黒いライダースーツを纏う男の影は、頭部に二本の角が伸びる異形の怪人の姿をかたどっていた。
 モデルのような妖艶な女性の影は、細身に切れ味の鋭い日本刀を思わせる印象を抱かせる。
 小さな老人の影は、大柄でいて岩を思わせる強固な装甲を纏う、重戦車の威圧感を与えていた。
 三人の本性を現したような影を引き連れ、それぞれ胸に悦びを宿す。

661人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:32:02 ID:SP/RWL.o0
 それぞれ愉悦を浮かべた表情のまま、ゆっくりと歩いていった。



 神父衣装に身を包んだ、長身の男が息も荒く立っていた。
 周囲は騒がしく、侵入者が現れたことに慌てふためいている。
 エンリコ・プッチは都合がいいと思いながら、フラフラと目的の場所へ向かって歩いた。
 これは神がくれた好機だ。このまま騒ぎに乗じて姿を消す。
 脱出用の通路は目の前だ。地上へと向かうUFOを前にしてプッチは微笑んだ。
 事前に用意したディスクを使って、UFOを運転してもらい二日後の新月へと向かう。
 そのための人材は伊藤博士こそ相応しい。首輪の解除も行なわなければならないのだから。
 格納庫で脱出用のUFOがあるかどうかの確認を済ましたプッチは踵を返す。
 伊藤博士に会わねばならない。
 プッチが歩みを進めると、周囲の機材が浮かび上がった。
(これも……君が私に力を与えた影響か……)
 目を瞑ると、あの時の光景が思い浮かぶ。
 そう、パピヨンを倒したあと、生まれたものを確認した時に、プッチは彼に出会ったのだ。



 トイレのロッカーで寝るそれは、一言で言えば赤ん坊と呼べるものだったのだろう。
 だが、明らかに人の容貌ではなかった。
 緑色の肌にとんがった耳を持つ、異形の赤ん坊。
 それこそ、プッチが求める天国への道しるべだ。

662人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:32:16 ID:SP/RWL.o0
 プッチはゆっくりと、生まれたものに向かって歩く。
「『らせん階段』……! 『カブト虫』! 『廃墟の町』! 『イチジクのタルト』!」
 傍から見れば病人にも見て取れる、意味不明な単語を並べながらプッチは一歩一歩進めた。
 もはや見てくれなどどうでもいい。プッチは熱のこもった視線を生まれたものに向ける。
「『カブト虫』! ……『ドロローサへの道』! 『カブト虫』!」
 少しずつ、大切なものに近づくようにプッチはその赤ん坊へとにじり寄る。
 単語に赤ん坊に反応する様子はない。
「『特異点』! 『ジョット』! 『天使』! 『紫陽花』! 『カブト虫』! 『特異点』!」
 最後の単語を告げる前なのに、プッチの心境は穏やかだった。
 あれほど望んでいた瞬間だというのに、興奮の色は皆無だった。少なくとも、表面上は。

「『秘密の皇帝』!!」

 プッチは全てを告げ終える。同時に、眠っていた赤ん坊の目が見開いた。
 怪我を負っていた右腕をホワイトスネイクで貫いた。隠していたDIOの骨を取り出す。
 赤ん坊はDIOの骨へと手を伸ばした。
「興味を示してくれたか? 君の方から私の方へ来てくれるのか?」
 心臓の鼓動がドッドッドとうるさく流れる。
 プッチははやる動悸を無視しながらも、もはや興奮を抑えきれない。
「これで全ては幕を開けるのか!?」
 一際想いを込めた言葉を告げた瞬間、赤ん坊が掴んだプッチの腕から肉が削げ落ちる。
 新しく生まれ変わる感覚を持って、プッチは喜びに満ちた。
「これで君の世界へ共に旅立てるぞッ! DIOッ!」
 こうして、プッチは生まれたものと一つになった。
 充実感を胸に、その場を離れたのである。

663人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:32:41 ID:SP/RWL.o0



(もはや私にここにいる理由はない。早く首輪を解除して、脱出しなければ)
 北緯二十八度二十四分西経八十度三十六分のケープ・カナベラルを目指す。
 天国への扉はもう少しだ。バダンの未知の技術が使われたUFOなら、二日で辿り着くのもわけはない。
 プッチにもう障害はほとんどない。
 輝ける主の祝福はもうすぐだ。ふと、靴紐がほどけていることにプッチは気づく。
 靴紐を直そうとしゃがんだ瞬間、
「オラァッ!」
 プッチの上空を炎が駆けた。すぐに立ち上がり、振り向くとマジシャンズレッドを背後に立たせる、ジョセフと服部がいた。
「ジョジョ! こいつは敵なんか!!」
「ああ、敵だね。俺のかわいい孫と曾孫を殺す……バリバリの敵だッ!」
 プッチは敵意を向けるジョセフへと向き直り、承太郎の記憶を見たのだろうと勘付いた。
 やはり、ジョースターの血統との因縁は片付けておかねばならないようだ。
「ジョセフ・ジョースター……キサマがここまで生き延びていることこそが……私の誤算であった」
「そうかい。お前さんが俺の未来でとんでもないことをやらかしているのは知っている。
だからここは逃がしはしねえ……未来のジョースターの血統の決意に懸けてな!」
 プッチはジョセフの言葉に沈黙を返す。
 プッチにとって目の前の男は乗り越えなければならない『運命』!
 ジョセフにとっては倒さねばならない『悪』!
 ありえないはずの対決は、それぞれの心臓の鼓動を響かせて幕を開いた。

664人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:34:00 ID:SP/RWL.o0
【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】

【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]骨を蘇らせた際に右掌に怪我、微植物化、強い決意、疲労(小)。『生まれたもの』と融合。
[装備]
[道具]死神13のDISC@ジョジョの奇妙な冒険、BADANより支給された携帯電話、リンプ・ビズキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:天国に行く。
1:ジョセフ・ジョースターを含む、障害を全て跳ね除ける。
2:首輪を解除する。
3:伊藤博士を確保して、首輪の解除と脱出。
[備考]
※首輪をつけています。
※空条承太郎の記憶DISCは、既に確認した後です。
※蝶野攻爵の記憶を見ました。


【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手骨折、全身重度の打撲、精神疲労中、体力消費大、深い悲しみ、脇腹にダメージ大、首輪解除済
[装備]:マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギターをばらしたて出来た弦@BATTLE ROYALE、支給品一式×2、空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険 、
スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:BADANとかいうボケ共を一発ぶん殴る。
1:目の前のプッチを、自分たちの世界の未来のために倒す。
2:別れた仲間と合流。
[備考]
※水を使うことで、波紋探知が可能です。
※承太郎の記憶ディスクの中身を確認しました。

665人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:34:16 ID:SP/RWL.o0


【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:肉体疲労中(ある程度回復)、三村を殺したことから大分立ち直りました。首輪解除済み。
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、携帯電話、ソードサムライX(核鉄状態)@武装錬金、二アデスハピネス (核鉄状態)@武装錬金
[道具]:支給品一式×2(食料一食消費)、首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、
色々と記入された名簿、ノート数冊、ノートパソコン@BATTLE ROYALE ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、
綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく(未開封)、 ギーシュの造花@ゼロの使い魔、キュルケの杖、拡声器、
包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック) 病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)、
バヨネット×2@HELLSING、 紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)、外れた首輪(服部平次)
[思考・状況]
基本:一撃でいいから大首領をぶん殴る。
1:ジョセフの援護をする。
2:別れた仲間と合流。
3:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
[備考]
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。

666人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:34:37 ID:SP/RWL.o0


「あるるかぁん!!」
 エレオノールの叫びに応えるように、あるるかんが再生怪人を切り裂いた。
 銀糸を繰り出す指が可憐に動き、白き道化が宙へと踊る。
「エレノン! あぶねえ!」
「はい! 御前!」
 御前が危険を告げると同時にエレオノールは跳躍、空振りをしたヤモリジンの身体を、あるるかんが押さえる。
「赤木! ヒナギクさん、今です」
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 ヒナギクが雄たけびながら、バルキリースカートで横っ飛びに勢いを得て木刀正宗を振るう。
 ヤモリジンは真っ二つに斬られ、頭部に赤木が銃弾を叩き込んだ。
 素早くあるるかんと共にヒナギクは離れ、爆発を見届けてため息をつく。
「……一息つくのはまだ早い……。敵がどれほどいるのか……不明なのだからな……」
「分かっているわよ!」
 ヒナギクが乱暴に赤木に応えて、先を進む。不機嫌な歩みだが、赤木は気にも留めない。
 そこにエレオノールが並ぶ。
「赤木……なぜシルバースキンを使わないのですか?」
「今はまだ機じゃない……それだけだ……」
「とんがった顎で難しい顔しないで素直に使いなよ。アカギン」
 馴れ馴れしい御前だが、赤木は気分を害していない。
 むしろ、珍しい相手に僅かだが、興味を持った。
「御前……失礼ですよ」
「いや、構いはしない……」
「お前見かけによらずいいやつだな!」

667人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:35:10 ID:SP/RWL.o0
 御前がポンポンと赤木の頭を叩き、上機嫌で上空を漂う。
 その様子を振り替えもせず確かめたヒナギクはふと、前方から近づく人影を見つけた。


「アナタは……?」
「んー? あーら、覚悟って奴もZXもいないの……? 外れねえ……。賭けなんてするんじゃなかったわ。別れ道って面倒ね……」
「……! もしかして……」
「敵だろう……どう考えても」
 ヒナギクの疑問に、いつの間にか右隣に並んだ赤木が告げた。
 ヒナギクは木刀正宗を構えて、エレオノールはあるるかんを立たせる。
 モデルのようなスタイルの妖艶な女は妖しげな笑みを返した。
「健気ねぇ……私に勝てる気なのが、あまりにも滑稽で」
「勝てるさ」
 赤木が断言し、女は笑みを崩さず視線を向けた。
 負けず、赤木は不敵な笑みを返す。
「ククク……あんたにツキはない……。醜く朽ちていくだけの化け物が……勝てるはずもないだろう……」
「へえ……」
 赤木の挑発に女は表情を一変させる。
 鬼のような形相にヒナギクとエレオノールは気圧されたが、赤木は微動だにしない。
「あんた程度……俺たちなら勝てる……。運も流れもまだ俺たちのもの……あんたの詰みだ……」
「……あんた……私を舐めたわねッ!」
 女から粒子が上がった。あれは村雨の変身時と同じ反応だと、エレオノールとヒナギクは構える。
 ただ一人、赤木はつまらなさそうに核鉄を持って佇んでいた。
「舐めちゃいないさ。ただ……あんたじゃ無理だ……。俺に死を……死線を与えることはな……」
 赤木の口が狂気に歪む。

668人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:35:27 ID:SP/RWL.o0
 神に愛された男は、女蟷螂を前に不適に笑う。
 カマキロイドと、神に愛された男と、恋を知る少女たちの戦いが始まった。


【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】

【カマキロイド@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]健康。怪人態に変身中。
[装備]なし。
[道具]なし。
[思考]
基本:大首領の復活。
1:目の前の生意気な男(赤木)を後悔させる。
2:この状況を愉しむ。
3:独歩の死体の在り処を探る。

669人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:35:45 ID:SP/RWL.o0
【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、首輪がありません。
[装備]:基本支給品、ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス(残り8本)、マイルドセブンワン1箱、
    454カスール カスタムオート(6/7)@HELLSING 13mm爆裂鉄鋼弾(20発) 、シルバースキン@武装錬金(首輪を巻いています。核鉄状態)
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
    始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます)、水のルビー@ゼロの使い魔
    工具一式、医療具一式、沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)、成仏鉄球@覚悟のススメ 、伊藤博士からの手紙、
    伊藤博士からの手紙(ポケット内)、『注意書きを必読』と書かれたエニグマの紙(ポケット内)
    ジャッカル@HELLSING(残弾数1)、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂
    ベレッタM92(弾丸数0/15)、ハート様気絶用棍棒@北斗の拳、懐中電灯@現地調達、包帯と湿布@現地調達、不明支給品×2
[思考・状況]
基本:対主催・大首領の肉体となる。
1:カマキロイドを倒す。
2:大首領との再会。バトルロワイアルに引きずり込む。
3:覚悟に斗貴子を死に追いやった事を隠し、欺く。
[備考]
※大首領との接触により、大首領とBADANとの間のズレを認識。
※BADANという組織はあまり合理的に動かないと認識。
※首輪は核鉄(シルバースキン)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます。

670人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:36:03 ID:SP/RWL.o0


【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:疲労小 全身に火傷(ほぼ完治)。首輪が解除されました。
[装備]:エンゼル御前(核鉄状態&首輪@エレオノールが巻かれている)@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ) 保健室で手に入れた様々なもの
[思考・状況]
基本:自分を助けてくれた者、信じてくれた者のためになんとしてでも主催者を倒す。
1:カマキロイドを倒す。
2:別れた仲間と合流。
3:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器(強化外骨格)を破壊する。
4:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。
5:一人でも多く救う。
6:できる事ならパピヨンを助けたい(優先順位は低い)
[備考]
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
※解除した首輪は核鉄(エンゼル御前)にパピヨンがやっていたように巻きつけており、使用できます。

671人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:36:24 ID:SP/RWL.o0
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。右肩が外れている、手の平に裂傷、勇次郎平手によるダメージ 、核鉄の治癒力により回復中 首輪が解除されました。
[装備] バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金、木刀正宗@ハヤテのごとく、イングラムM10(9ミリパラベラム弾0/32)、陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた
[道具]支給品一式、ボウガン@北斗の拳、ボウガンの矢17@北斗の拳
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:カマキロイドを倒す。
2:別れた仲間と合流。
3:覚悟を愛さない。
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです 。
※服は現地調達したものに着替えました。
※首輪は核鉄(バルキリースカート)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます

672人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:36:45 ID:SP/RWL.o0


「高速分裂昇華弾!」
 コマンドロイドの群れが、ショットガンのように撃ちだされた昇華弾によって燃え上がる。
 黒焦げとなった死骸をの中から、原始タイガーが牙を向けて襲ってきた。
 頭を噛み砕かんと迫った原始タイガーの顎を掴み、膝蹴りを脇腹に叩き込む。
『覚悟!』
「応ッ! 赤熱化!!」
 真っ赤に燃える身体で原始タイガーを砕く。
 炎を背に通路で次の敵を発見し、迎撃する。
 獣の唸り声が響き、覚悟に迫る。ハサミジャガーの腕の刃を潜り抜け、顎に正拳をたたきつけた。
 血を被る覚悟だが、油断はない。すぐに壁に隠れていたコマンドロイドを探り当て、腹に蹴りを突き刺した。
「ギィ……ゲェ……ッ!」
 覚悟が零式防衛術の構えを取って、周囲を警戒する。
 遠巻きに警戒するしか、コマンドロイドの群れには取る手段がなかった。
「おぃおぃ……情けねぇな」
 男の声が通路に響き、覚悟はいっそう警戒を強める。
 黒いライダースーツに身に纏う男がゆったりと歩いてきた。
 その男は、覚悟を認めるとニヤリ、と嬉しげに笑う。
「ビンゴ……当たりってわけか」
『何奴ッ!』
 零の声に男は満足そうに笑う。村雨が変身する時に上がる粒子が、男からあがった。
「そういきり立つな。ちゃんと教えてやるよ。俺の名は……ジゴクロイド」
 いっそう粒子が上がって男の身を見えなくし、晴れ上がったころには頭に大きな二本の角を持つ怪人が姿を見せた。
 両手のグローブが破れると同時に、垂直の剣のような刃が生まれた。

673人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:37:09 ID:SP/RWL.o0
「正調零式防衛術 葉隠覚悟」
「いちいち義理堅い奴だな! かたっくるしいのは抜きだ! いくぜっ!」
 ジゴクロイドが大振りに刃を振るう。
 壁が削れ、コマンドロイドが数人巻き込まれた。
「己が仲間ごとッ……!」
「仲間だぁ? 虫けらと一緒にしてんじゃねえ!!」
「キサマッ……!」
 ジゴクロイドの冷徹な言葉に覚悟は怒りを示す。
 もっとも、すぐに己が怒りを殺した。
『覚悟ッ! 後ろから攻撃が来る! 避けろ!』
「了解!」
 覚悟がバーニアを全開にして避けた先には、カニの怪人が泡を吐き出していた。
 またも、コマンドロイドごと地面が溶ける。
「おい! カニロイド! てめえ、こっそり後をついてきたな! 邪魔するんじゃねえ!」
「シュシュシュシュ……」
 不気味に笑ったような反応を、カニロイドは返した。
『二対一か……!』
「仔細ない。仲間をゴミのように見捨てる相手、唇に朱をひく価値もない!
悪鬼よ! 俺はキサマらを許しはしない。この拳に懸けてお前らを討つ!」
「ひゃはは! 吼えるじゃねえか!!」
「シュシュシュシュ……」
 強化外骨格『零』のヘルメットのバイザーが下りる。
 ゴーグルが輝き、力が漲った。
「当方に迎撃の用意あり……!」
 稲妻のような覇気が覚悟の周囲に駆け巡る。

674人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:37:24 ID:SP/RWL.o0
 見るもの全てを圧倒する気がコマンドロイドの動きを奪った。
 覚悟の正義の怒りが、炎となって吹き荒れる。
 たとえ敵であろうとも、人として扱われる存在には痛みを覚える。
 覚悟は優しく、そして強い男だった。だからこそ、零の痛みを理解できた。
 ゆえに、その瞳に喪っていった仲間が宿る。それこそが、覚悟が戦える理由であり、信念だった。
 だからこそ覚悟は、強敵を二体も前にして、一歩も退かなかった。
 ゆえに宣戦布告の言葉は一つ。

 ―― 覚悟完了



【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】


【ジゴクロイド@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]健康。怪人態に変身中。
[装備]なし。
[道具]なし。
[思考]
基本:大首領の復活。
1:覚悟を嬲る。
2:この状況を愉しむ。
3:独歩の死体の在り処を探る。

675人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU:2008/10/21(火) 18:38:04 ID:SP/RWL.o0


【カニロイド@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]健康。怪人態に変身中。
[装備]なし。
[道具]なし。
[思考]
基本:大首領の復活。
1:覚悟を嬲る。
2:この状況を愉しむ。
3:独歩の死体の在り処を探る。


【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身にダメージ小。疲労小。首輪が解除されました。
[装備]:強化外骨格『零』@覚悟のススメ
[道具]:大阪名物ハリセンちょっぷ 滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)、首輪(覚悟)
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者BADANを必ず倒し、大首領を殺す。
1:目の前の怪人二体を倒す。
2:別れた仲間と合流。
3:葉隠四郎を必ず倒す
4:ヒナギクを愛さない
【備考】
※零と一体になる事に迷いはありません


【対主催者グループ共通思考】
『大首領を殺す作戦』
1:大首領を強化外骨格の中に降ろしてから、成仏鉄球で成仏させる。
2:そのためには大首領を弱らせる必要がある。
3:強化外骨格内部の死者ならば、大首領を内側から攻撃できる可能性が高い。

676強化外骨格「名無し」:2008/10/21(火) 21:16:41 ID:ZWvRhN/E0
age

677強化外骨格「名無し」:2008/10/23(木) 11:07:59 ID:OZLXDtL60
ageます


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