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避難所SS投下スレ五

85桃髪と銀髪 外伝 イザベラさんの冒険:2008/12/18(木) 09:45:03 ID:7jIqzPP.
 北の本来の仕事は、特定の〝人物〟を消すことだ。それは政治であり、経済であり、宗
教であり、まあ要するにくだらない欲の皮の代行だ。くだらないから、イザベラはその結
末を好きに決める。任務が完了したという体裁さえあれば、誰も文句は言わないからだ。

 翌朝。誰も朝食など食べる気もしないのだが、全員が集まれる場所が食堂だけなので集
まる。赤い顔と青い顔、そして黄色い顔が集う。
「そこの二人、また黄疸が出てるぞ。断酒三ヶ月」
「そ、そんなあ」
「まだまだ飲めますよお」
「そうやって酒で死んだお前らの墓の前で、わたしにどうして欲しい?」
「えっ?」
「泣いてなんかやらないぞ。これは絶対だ。むしろお前らの墓の上でジグを踊ってやる」
「くっ」
「そ、それはそれでッ!」
「このバカ! わたしを得るために死んだら、それで最後。指一本触れられないんだぞ」
 そこで彼らは思い出す。この団、唯一の鉄の規則を。
「――戦場以外で死ぬな。忘れたか?」
「いえ!」
「忘れるはずがッ!」
「フン、ならばよし。お前らは断酒と謹慎だ」
 そして本日の本題に入る。
「さて、では今回の任務への参加人員を決めよう。まず、火がメインの奴、これは留守番
だ。きこりに請われて行った先で木を燃やしてたら、依頼者に殺される」
「そりゃそうだ」
「ちげえねえ!」
「で、お次だ。風の奴、これも分が悪い。相手は翼人だからな。風の精霊との契約は硬い
だろう」
「お、俺もかよう」
「くはは、残念だのう」
「土も同じだな。何せ連中は空の上だ。ゴーレムに唾をかけられるのオチだ」
「くそうっ!」
「空飛ぶのとか、卑怯ッスよ!」
「よって、今回の遠征は水メインで行く。水なれば連中の〝眠り〟にも耐性が高いからな。
皆、文句はあるまいな?」
「異議なし!」
「久々の出番だぜ!」
「ケッ! てめえグッドラックだぜ!」
 いつもは水のスクウェアである〝地下水〟がいるからと、後方待機を命じられがちな水
系統メイジたちが、猛る。攻撃より防御、癒しを主に請け負うあらくれだ。〝らしく〟な
いとからかわれることの多い、いかつい顔の優しいあらくれたちだ。
「イザベラさんを頼むぞ!」
「てめえら、イザベラさんに傷一つでもつけて帰ってきてみろ、焼き土下座だからな!」
「おうよ!」
 彼らにとってイザベラの戦術は絶対なのだ。それに逆らおうだとか、勝手にこっそりつ
いて行こうだとかは、決して考えない。なぜならば、彼女が頭に立って以来、この北花壇
警護騎士団の戦死者はゼロだからだ。
 むろん、任務があれば怪我の一つ二つは当たり前だ。腕を、目を失うものとて珍しくは
ない。ないのだが、不思議と誰も死なないのだ。彼女がここへ来た日の約束は、寸分違わ
ず守られている。そしてたぶんそれは、彼女がここにある限り続くのだろう。


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