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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

807使空高:2010/06/25(金) 06:54:20 ID:6kZ6pi7U
 本題が片付けられたあとも、オスマン氏とリキエルはしばらく話を続けた。使い魔としての生活や
学院の運営について愚痴をこぼしあい、ルイズの生活態度や生徒たちの馬鹿親のことで頭を抱え合い、
リキエルの世界の話で盛り上がった。リキエルの持つ使い魔の能力が、本当に伝説並みのものである
という話で、あらためてリキエルが驚いたりもした。
 とりとめもない雑談に、何度目かの区切りが生まれたときだった。オスマン氏が、おもむろに言っ
た。
「ところで、ミス・ヴァリエールはいいのかね? デートしておったのじゃろ」
「HA HA HA,ナイスジョーク。……いや、待ち合わせはしてるんだからなァ、一応はデートになる
のか。そういや、いまは何時だ? ええと、一時の鐘は鳴ってなかったッスよね?」
「ふむ、いま少しといったところじゃ。しかし動くことを考えればちょうど頃合といったところかの。
いやはや、この老いぼれのためにだいぶ時間をとらせてしまったの」
「なんかよォ〜、前にも聞いたことがある気がするぜ〜、そんなセリフを。実はそんなに申し訳なく
思っちゃいないでしょう?」
 リキエルがそう言って口の端を広げると、オスマン氏は好々爺よろしく莞爾と笑った。
「ふぉっほ。……さて、君はそろそろ行きなさい。私はもうしばらくここに残るとする。お代も持っ
ておくとしよう」
「いやあ、それこそ悪いことだぜ。ルイズから小遣いも頂いてるしな」
「紅茶の一杯や二杯、年長に奢らせるとしておくものじゃよ。接待でもあるまいし。それに君の手持
ちは新金貨じゃろう。こういったところで使うものではないよ」
 それじゃあとリキエルは言葉に甘えることにして、オスマン氏に軽く頭を下げた。オスマン氏は手
をひらひらとやって、気にするなという素振りをした。
「そいじゃ、また機会があれば話でも」
 席から立ち上がると、リキエルは小刻みに頭を下げ下げ、オスマン氏に暇を請うた。オスマン氏は、
一度だけ深く頷き返した。
 店を十歩ほど出たあたりで、リキエルは足をとめて振り返った。くるくると立ち働く娘たちの姿は
見えたが、店の奥にいるはずのオスマン氏や、ましてフーケの姿は当然見つからない。どうでもいい
だのなんだのといったところで、まるで気にならないといえば嘘だった。
 胸のうちでもう一度だけ「機会があれば」と呟いてから、リキエルはまた歩き出した。


 リキエルが広場に戻ってまず目にしたのは、ベンチに足組んで座るルイズの姿だった。学院の制服
を着ているからというのもあるが、やはりその可憐な容姿が目を引く。しかしその可憐さを裏切るよ
うに、ルイズの顔はいささか不機嫌の形に歪んでいた。
 間もなくルイズのほうもリキエルに気づいて、ベンチから立ち上がった。
 そうして合流したふたりは、そのまま示し合わせたように横並びになりながら、初めのように人い
きれの中に入り込んでいった。行き先は例の武器屋と決まっている。
「遅いじゃないの。五分は待ったわ」「鐘が鳴ってまだ間もないはずだぜ、オレの耳が腐って落ちてな
いんならな」「主人を待たせるなってことよ」「悪かったな。そこで『土くれ』のフーケを見かけたんでよぉ、様子を見てたんだ」「どうせ吐き出すなら、もっと面白い出まかせにしなさいよ」「今度から
そうさせてもらうぜぇ〜、ユーモアの先生よォォ〜」「あんまり調子に乗るとご飯抜くわよ。……あ、
そっちのが近道よ。さっき見つけたの」「よく見つけたもんだぜ、こんな細い道をよぉ。もしかして、
あれか? 迷子の副産物とかな」「…………」「ふはーッ、図星かよ〜」「……ご飯抜くわよ!」
 見目の良い貴族の令嬢と、それを笑う従者らしき平民という図は目立ち、すれ違う人間は誰も彼も
ルイズらを振り向いたが、当の本人たちはそれに気づかない。
 声高に、はた目も知らず、木の洞のような掛け合いをそこそこに楽しむうち、虚無の曜日は暮れて
いくようである。


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