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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

804使空高:2010/06/25(金) 06:51:47 ID:6kZ6pi7U
 学院は騒然となった。一度はまた討伐隊を組もうという話も出かかったが、目撃者もないままフー
ケを探し出すことは、わら束に放り込んだ砂粒を見つけるのにも等しかった。そこから今日まで二週
間が経っているが、フーケの行方はようとして知れないままである。
 リキエルがそういった事情を知ったのは、フーケ捕縛の二日後のことだった。
「いやあ、大変じゃった。事後の収拾もせにゃならんし、責の所在もはっきりさせねばならんしの。
引渡しの衛士への説明もある。王宮からはまたあらためて叱責の書面がくる。一度などはな、『破壊の
杖』強奪からの一連、すべて学院の狂言だったのではとまで言われてしもうた。そこは調べもあって、
疑いはすぐに晴れたがの」
 言って深く息をつくオスマン氏を眺めながら、そういえば、あのときは何かとざわついていたなと、
リキエルはまた思い返した。あずかり知らぬところで、そう暢気でもないことがあったようである。
「一度は捕縛に成功したということで、これといって罰があったわけでもないがの。すこしばかり信
用は落ちたやもしれん。爵位や勲章の申請も、言い出せたものではなかった」
「ふうん、流れちまったんですか、その話。ちょっと惜しいことぜ。しかし、そのフーケの話がなん
なんです? オレの理解力のせいか知らないが、話が見えてこないんスけど」
 リキエルが言ったとき、ちょうどさっきの娘が、頼んだ紅茶を盆に載せてきた。ふたりはいったん
話を切って、娘が席を離れるのを待った。
「さて、たしかに愚痴ばかり聞かせていては何じゃな。論より証拠。見たほうが早い。リキエル君、
いまの娘さんが戻っていく先を追ってみなさい。そう、体は出来るだけ隠しての」
「追う? 隠れてって?」
「いまの時間帯なら、厨房に入っておるはずじゃて」
 言われるままリキエルは、衝立からなるだけ体を出さぬように気をつけて、茶汲み娘の後姿を目で
追った。娘はおもてと厨房とをつなぐ間口に立つと、奥から顔を出した人間に盆を手渡した。相手の
人間に何か言われ、それでくすくすと笑ったりしている。そんな様子を眺めていると、だんだんに英
国人的な羞恥心が沸いてきて、自分がずいぶんと浅ましいことをしているような、変な心地の悪さに
胸がムカムカした。
 だがそんなリキエルの葛藤は、すぐ驚きに取って代わった。茶汲み娘と話している人間こそが、あ
の『土くれ』のフーケだったのである。
 初めはそれとわからなかったが、凝然と見ているうちに気がついた。裸眼で髪の色や型も変えてい
るが、何度か間近で見たその顔と、たがうところはない。今日はよくよく意外な面と行き会うなと、
リキエルはその積りもなしに呻いた。
「あれは、ミス・ロングビル……ッ。いや、もといフーケじゃあねーのか」
「その通り。どうやら彼女は、ここで働いておるようなのじゃ」
 リキエルは体を戻して、オスマン氏に向き直った。
「わけがわからねえぜ。働いているだって?」
「先週のことじゃ。私がこのあたりをぶらついておるとな、ふと知ったような顔が、大きな買い物籠
を持ってこの店に入ったのじゃ。言わずもがな、それがフーケじゃな。気になった私は、この一週間
独自の調査を行っていたのじゃ」
 オスマン氏は調査と言ったが、要は暇に飽かせていたという話であった。それもいまの口ぶりから
すると、ほとんど通い詰めでこの店に来ている様子である。ある意味では根気の要る話だった。
 学院長って仕事は、五月病に罹患した大学生みたいなザマで務まるらしい、という思案は脇に置い
て、リキエルはふうんと頷いておいた。しかしそうやって頷きつつも、首は傾いでしまう。
「たしかここは王宮の膝元なんスよね。変装はしてるみたいだが、お尋ね者だってのによおォ、よく
見つからないもんだ」
「灯台の下はなんとやら、かの」


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