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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

802使空高:2010/06/25(金) 06:50:05 ID:6kZ6pi7U
 興味に飽かして回っていたが、やはり人ごみの中を泳ぐのは体力を使う。やがて疲れがきた。リキ
エルは場所の確認もかねて、一度ルイズとの合流場所へ向かうことにした。約束の時間はまだ先だが、
いまは一休みしたかった。広場なら、ベンチのひとつもあるだろう。
 商店がまばらになって来たなと思っていると、急に道幅が広くなり、間もなくそれらしい広場に出
た。住宅街にほど近いらしく、時間帯のこともあってか、ひとの流れも比較的緩やかなものだった。
円状の広場は、中央にこれも円形の花壇が設けられ、そのぐるりに鉄の柵と、案にたがわずベンチ
が置いてある。リキエルはベンチのひとつに腰掛けて、ほぐすように背を張った。
 ――さてと……。
 こいつをどうするかな。リキエルはポケットに手を突っ込んで、中の金貨を弄んだ。
ルイズからもらった小遣いだが、使うにあぐねている。何せ価値がわからない。渡された金貨は三
枚で、たしか新金貨と呼ばれているものだったが、それでどの程度のものが買えるのか、相場が判然
としないのだ。
 リキエルは手のひらに金貨を並べて、しばらくじっと見つめていたが、不意にそれを握りこむと、
立ち上がって歩き出した。まずは軽く、どこかで使ってみるかという気になっていた。
 それとするなら、どこか手軽にお茶でも飲めるところがいいとリキエルは思った。元の世界とこの
ハルケギニアと、物価はそう変わらないだろうから、そのくらいがいい目安になるはずである。こと
さらにぼられるような心配もない。
 それにこちらの世界の嗜好品や、あるのであればどんなジャンクフードがあるのか、元の世界のも
のとどれだけ違うのか、比べてみるのも悪くない。買い物のような散歩のような、そんな状況を存外
に楽しめている自分に、リキエルは気がついている。
 広場を北から出て、ブルドンネの大通りとは逆の、一本入った道を歩く。さっきまで感じていたよ
うな熱のある活気こそないものの、こちらはこちらで味のある賑わいを見せている。若い恋人連れや、
散歩中の隠居然とした紳士の姿があり、囁き交わしては笑いあうトリスタニア娘の集団もあり、リキ
エルと同じように、目的もなしに歩いているらしい者もちらほら見えた。
 穏やかな空気にあてられたように、あるいはその空気を楽しむように、必要以上に遅々として歩い
ていると、不意に耳を打つ、にぎやかな笑い声に行き会った。
 何かと思ってそちらに首を曲げてみると、少し離れたところに、リキエルの世界で言うオープンカ
フェに近いなりの店が見える。趣味のよさそうな店で、その証拠に、いい具合に客も入っている様子
だった。どうやらいまの笑い声は、ちょうどテラスでお茶でも飲んでいたらしい、妙齢のご婦人方か
ら上がったものである。
「…………」
 リキエルは、呆然とそちらに目を向けている。店の外装を眺めているのでも、また当然、ご婦人方
を眺めているのでもなかった。
 店のそばの塀にへばりついて、不審な動きをしている者がいた。どうも店の中の様子をうかがって
いるらしい。店からはそれと知れないだろうが、リキエルの位置からではそれが丸わかりだった。と
いうよりも、はたから見るとその格好は異様に目立つ。
 そしてその不審者は、どうもリキエルの知る人間なのだった。眉をひそめつつ首を捻りつつ、リキ
エルはそちらに近づいていった。
 不審者の背後から、おずおずと声をかけた。
「あのォ〜、何やってんスか?」
「ふむ? ……むッ、何奴じゃぁっ!」
 向き直ってきて、いきなり大喝した顔はオスマン氏である。よほど熱心になっていたのか、声をか
けるまで、リキエルがすぐそばまで来ていたことにも気づかなかったらしい。
「何奴と言われりゃあ、オレっスけど。老年性健忘症ですか? つまりはボケだがなぁ」


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